琵琶湖一周、通称「ビワイチ」は、日本最大の湖である琵琶湖を一周する約200キロメートルのサイクリングコースとして、国内外のサイクリストから高い人気を集めています。特にロードバイクでの走行は、その性能を存分に活かせる理想的なコースとして注目を集めています。
2019年には国土交通省が定める「ナショナルサイクルルート」第1号として認定され、サイクリングの聖地としての地位を確立しました。整備された走行環境、豊かな自然景観、そして歴史的な観光スポットが点在する魅力的なルートは、ロードバイク愛好家にとって格好の挑戦の場となっています。
ビワイチの特徴は、琵琶湖大橋を境に北湖(約160キロメートル)と南湖(約40キロメートル)に分かれており、ライダーの体力や目的に応じて走行区間を選べる点にあります。ロードバイクでの走行では、舗装された道路を効率よく走れることから、上級者であれば1日での完走も可能です。ただし、道中の歴史的な名所や絶景ポイント、グルメスポットなどを十分に楽しむために、1泊2日以上の行程を組むことをお勧めしています。
本格的なロードバイクでのビワイチは、爽快な湖畔走行と達成感を味わえる素晴らしい体験となることでしょう。これから、初めての方にも参考になる具体的なルート情報や、準備のポイント、そして安全に楽しむためのアドバイスをご紹介していきます。

ロードバイクでビワイチを走る場合、実際にどのくらいの時間がかかりますか?
ロードバイクでの琵琶湖一周(ビワイチ)における所要時間は、走行スタイルや体力、経験値によって大きく異なります。実際の走行時間と併せて、休憩や観光なども含めた全体の所要時間について詳しく解説していきましょう。
まず、純粋な走行時間について見ていきます。ロードバイクでの平均速度を時速20〜25キロメートルと想定した場合、約200キロメートルの全周走行には8〜10時間程度が必要となります。これは休憩を含まない純粋な走行時間であり、経験豊富なサイクリストの場合は、さらに早いペースでの走破も可能です。ただし、この時間はあくまでも理想的な条件下での計算であり、実際には天候や体調、特に風の影響によって大きく変動する可能性があることを覚えておく必要があります。
次に、実際の所要時間について考えてみましょう。ビワイチでは、道中での休憩や観光、食事の時間を十分に確保することが重要です。特に琵琶湖北部の賤ヶ岳付近では標高差のあるアップダウンが続くため、体力の消耗を考慮した休憩が必要となります。また、彦根城や白鬚神社といった観光名所、各地の道の駅やサイクルステーションでの休憩を含めると、実際の所要時間は純粋な走行時間の1.5倍から2倍程度を見込んでおくべきでしょう。
さらに、安全面での配慮も重要です。ビワイチでは基本的に反時計回りでの走行が推奨されていますが、これは琵琶湖の景観を楽しみやすいだけでなく、安全面での配慮も含まれています。特に湖西の国道161号線区間では交通量が多いため、余裕を持った走行時間の設定が必要です。また、日没後の走行は危険を伴うため、確実に明るいうちに目的地に到着できるよう、スタート時刻を早めに設定することをお勧めします。
このような要素を総合的に考慮すると、初めてビワイチに挑戦する方の場合、1日での完走を目指すよりも、1泊2日以上の行程を組むことを強くお勧めします。1日目に北湖エリアの約160キロメートル、2日目に南湖エリアの約40キロメートルというように分割することで、観光やグルメも十分に楽しみながら、無理のない走行が可能となります。宿泊地としては、長浜市や近江今津、大津市内などが人気で、特に温泉施設がある場所は疲れを癒やすのに最適です。
また、経験者でも季節による影響を考慮する必要があります。春や秋は比較的穏やかな気候で走りやすい一方、夏場は猛暑による体力消耗が激しく、冬場は湖北エリアでの積雪の可能性もあります。そのため、季節に応じて所要時間には余裕を持たせることが賢明です。X(旧Twitter)などのSNSで当日の道路状況や天候を確認できる情報も、走行計画を立てる上で有用です。
このように、ロードバイクでのビワイチは、純粋な走行時間以外にも考慮すべき要素が多くあります。初回は余裕のある計画を立て、経験を重ねながら自分に合った走行スタイルを見つけていくことをお勧めします。周辺施設や観光スポットの情報も年々充実してきているので、それらを活用しながら、安全で楽しいサイクリングを実現してください。
ロードバイクでビワイチに挑戦する際、どのような装備や準備が必要ですか?
ロードバイクで琵琶湖一周を安全かつ快適に楽しむためには、適切な装備と事前準備が欠かせません。必要な装備と準備について、重要度の高いものから順に詳しく解説していきます。
まず、最優先で準備すべき安全装備について説明します。ヘルメットは必須アイテムで、事故や転倒時の頭部保護に極めて重要です。ロードバイク用の軽量ヘルメットは通気性も良く、長時間の走行でも快適に使用できます。また、視界を確保し紫外線から目を守るためのアイウェアも重要です。日中のまぶしい日差しだけでなく、虫や小石からも目を保護できます。さらに、暗くなった際の安全確保のため、フロントライトとテールライトの装備も必要不可欠です。
次に、快適な走行のための装備を見ていきましょう。パッド入りのサイクルジャージとビブショーツは、長距離走行時の快適性を大きく向上させます。特にお尻の痛みを軽減するパッドの性能は、製品によって大きく異なるため、できれば事前に短い距離で試走することをお勧めします。グローブも重要で、手のひらの保護と振動の吸収、そして万が一の転倒時の怪我防止に役立ちます。また、天候の変化に備えて、コンパクトに収納できる防風・防水ジャケットも携行すべきです。
メンテナンス用品と補給品も重要な準備項目です。パンク修理キット(予備チューブ、タイヤレバー、携帯ポンプ)は必携で、使用方法も事前に練習しておく必要があります。携帯工具(六角レンチセット、マルチツール)も、走行中の微調整や緊急時の対応に必要です。また、水分補給用のボトルは最低2本、補給食(エネルギージェルやバー)も十分な量を携行することをお勧めします。
ナビゲーションと通信手段の確保も忘れてはいけません。スマートフォンは必須で、専用のホルダーでハンドル周りに固定することをお勧めします。滋賀県が提供する「BIWAICHI Cycling Navi」アプリをインストールしておくと、ルート案内だけでなく、周辺施設の情報も得られて便利です。また、モバイルバッテリーの携行も推奨します。緊急時の連絡手段として、スマートフォンのバッテリー切れは避けたいところです。
荷物の収納方法にも工夫が必要です。長距離ライドでは、できるだけ身軽に走ることが重要です。サドルバッグにはパンク修理キットと工具類、ジャージのポケットには補給食と防風ジャケット、フレームに取り付けたボトルケージには飲み物を入れるなど、効率的な荷物配置を心がけましょう。1泊以上する場合は、大きな荷物は宿泊先に事前に送付することをお勧めします。
さらに、事前の整備点検も重要な準備項目です。特にタイヤの状態、ブレーキの効き、変速機の動作は入念にチェックが必要です。できれば出発前に自転車店での点検を受けることをお勧めします。また、サドルの高さやハンドルポジションなど、フィッティングの調整も重要で、長距離走行に適した設定を事前に見つけておく必要があります。
最後に、トラブル時の対応準備も忘れずに行いましょう。滋賀県内には「ビワイチサイクルステーション」が200カ所以上設置されており、トイレや空気入れの利用が可能です。また、「びわ湖サイクルレスキュー」のサービスも提供されているので、連絡先は必ずメモしておきましょう。体調不良や機材トラブルの際には、近くの駅まで移動して電車を利用するという選択肢も頭に入れておくと安心です。
ロードバイクでビワイチを走る場合、どのようなルート選択と注意点があるでしょうか?
ロードバイクでのビワイチでは、効率的なルート選択と各区間における適切な注意点の把握が重要です。定評のある推奨ルートと、区間ごとの特徴や注意点について詳しく解説していきます。
まず、スタート地点の選択が重要です。多くのサイクリストが選択するのが、新幹線停車駅である米原駅です。輪行でのアクセスが容易なうえ、駅周辺にはレンタサイクルショップも充実しています。また、大津駅や堅田駅など、京阪神方面からのアクセスが便利な駅をスタート地点とすることも可能です。特に初めてビワイチに挑戦する場合は、帰路の交通手段が充実している場所をスタート地点に選ぶことをお勧めします。
続いて、走行方向の選択について説明します。ビワイチでは反時計回りでの走行が強く推奨されています。これには重要な理由があります。まず、道路交通法に基づく左側走行により、常に琵琶湖を身近に感じながら走ることができます。また、主要な観光スポットやサイクリストステーションへのアクセスが容易になります。さらに、青矢羽根型路面標示が反時計回りルートに沿って整備されており、迷うことなく安全に走行できます。
区間ごとの特徴と注意点を詳しく見ていきましょう。米原駅をスタートした場合、最初に訪れる長浜エリアは比較的平坦で走りやすい区間です。歴史的な街並みが残る黒壁スクエア周辺は、最初の休憩ポイントとして最適です。ここから湖北エリアに入ると、徐々に景色が開けてきますが、賤ヶ岳付近では標高差約200メートルのアップダウンが待ち受けています。ロードバイクの利点を活かし、適切なギア選択で効率的に上り坂を攻略しましょう。
湖西エリアに入ると、マキノ高原のメタセコイア並木など、見どころが増えてきます。しかし、高島市から近江舞子にかけての国道161号線区間は、交通量が多く大型車両も頻繁に通行します。この区間では特に注意が必要で、路肩を確実にキープし、前後の安全確認を徹底する必要があります。また、観光名所である白髭神社付近では、写真撮影の際の飛び出しにも注意が必要です。
琵琶湖大橋から南湖エリアに入ると、市街地走行が中心となります。大津市内は交通量が多く、信号も頻繁にあるため、スピードを抑えめにして走行する必要があります。特に近江大橋付近では車線の切り替えに注意が必要で、早めに左側の自転車歩行者道に移動することをお勧めします。
季節や時間帯による配慮も重要です。夏季は湖面からの照り返しが強く、熱中症のリスクが高まります。また、琵琶湖特有の気象現象として、「比良おろし」と呼ばれる強風に注意が必要です。特に午後になると風が強まる傾向があるため、重要な峠越えは午前中に済ませることをお勧めします。
休憩ポイントの戦略的な設定も成功の鍵となります。約30キロメートルごとに休憩を取ることを基本とし、主要な観光スポットや道の駅、コンビニエンスストアの位置を事前に把握しておくことをお勧めします。特に湖北エリアは施設が少ないため、補給食や水分の携行には余裕を持たせる必要があります。
最後に、緊急時の対応手段の確認も必要です。県内200カ所以上に設置されている「ビワイチサイクルステーション」の位置を把握し、トラブル時には最寄りの施設を頼ることができます。また、体調不良や機材トラブルの際には、近くの駅から輪行で帰路に就くことも想定し、主要駅の位置も確認しておきましょう。
ロードバイクでのビワイチで立ち寄るべき観光スポットやおすすめのグルメスポットを教えてください。
ビワイチでは、効率的な走行と観光の両立が重要です。ロードバイクでの走行に適した立ち寄りスポットと、サイクリストに人気のグルメスポットについて、エリアごとに詳しくご紹介します。
まず、米原・長浜エリアの見どころを紹介します。米原駅をスタートして最初に訪れたい場所が、長浜市の黒壁スクエアです。江戸時代からの町並みが残る商店街で、特に明治時代の洋風建築を利用したガラス館は必見です。自転車は専用の駐輪スペースが用意されており、安心して観光できます。グルメスポットとしては、長浜名物の焼き鯖そうめんや長浜ラーメンがおすすめです。特に老舗の町家を改装したカフェでは、近江牛を使った軽食メニューも提供されており、サイクリストの休憩場所として最適です。
湖北エリアに入ると、賤ヶ岳リフト周辺が重要な観光ポイントとなります。戦国時代の古戦場としても有名なこのエリアからは、琵琶湖の絶景を楽しむことができます。ロードバイクは賤ヶ岳リフト駐車場に停めることができ、休憩施設も充実しています。このエリアでは、地元の食材を使った田舎定食やへしこ(鯖の糠漬け)など、滋賀の伝統的な食文化も味わえます。
湖西エリアの目玉は、メタセコイア並木です。高さ約40メートルの巨木が立ち並ぶ約2.4キロメートルの並木道は、四季折々の美しい景観を楽しめます。特に朝方は交通量も少なく、写真撮影にも適しています。続いて訪れたい白髭神社は、湖上に大鳥居が立つ神秘的なスポットです。自転車は専用の駐輪場があり、参道には近江牛コロッケやしじみの佃煮などを販売する店舗も並んでいます。
琵琶湖大橋付近では、ピエリ守山が重要な休憩ポイントとなります。サイクリスト向けの施設が充実しており、レストランも多数あります。特に近江ちゃんぽんや守山メロンを使ったスイーツは、エネルギー補給にぴったりです。ここには琵琶湖サイクリストの聖地碑もあり、記念撮影スポットとして人気です。
大津エリアでは、浜大津アーカスが便利な休憩ポイントです。琵琶湖の眺めを楽しみながら、近江牛料理や琵琶湖の食材を使った和食を楽しめます。また、比叡山延暦寺へのアクセスも可能で、ロードバイクを駐輪して坂本ケーブルで山上まで行くこともできます。
各エリアの道の駅も、サイクリストにとって重要な休憩ポイントです。特に道の駅びわ湖大橋米プラザや道の駅浅井三姉妹の郷は、サイクルラックや工具の貸し出しなど、サイクリスト向けのサービスが充実しています。また、地元の特産品や琵琶湖の食材を使った弁当なども販売されており、補給食の調達にも便利です。
サイクリスト向けのカフェも各地に点在しています。X(旧Twitter)などのSNSで情報発信している店舗も多く、季節限定メニューやサイクリスト向けの特別サービスなどもあります。特に、彦根のカフェ街は、国宝・彦根城を眺めながらコーヒーブレイクを楽しめる穴場スポットです。
なお、観光スポットへの立ち寄りの際は、自転車の盗難防止にも注意が必要です。短時間の観光でもワイヤーロックを使用し、可能な限り人目につく場所に駐輪することをお勧めします。また、観光地での滞在時間は、全体の走行計画に影響するため、事前におおよその時間配分を決めておくことも重要です。
ロードバイクでビワイチを走る際に、想定されるトラブルとその対策について教えてください。
ビワイチでは様々なトラブルが想定されます。代表的なトラブルとその対応策、そして利用可能なサポート体制について、詳しく解説していきます。
まず、最も発生頻度の高いパンクトラブルへの対応について説明します。ロードバイクは細いタイヤを使用するため、路面の小石や段差でパンクするリスクが比較的高くなっています。基本的な対策として、出発前のタイヤ空気圧チェックが重要です。ロードバイクの場合、通常6〜8気圧程度の高圧での走行が推奨されます。また、走行中は路面の状態に注意を払い、特に路肩付近の小石や金属片を避けるように心がけましょう。パンク修理キットの携行は必須で、予備チューブ、タイヤレバー、携帯ポンプを最低限備えておく必要があります。
機械系トラブルへの備えも重要です。特に変速機のトラブルは、長距離走行中によく発生します。事前の対策として、出発前に変速動作の確認を行い、異音や違和感がある場合は調整が必要です。走行中は、変速時にペダリングを軽くするなど、機材に優しい操作を心がけましょう。また、チェーンの脱落や緩みにも注意が必要です。基本的な工具(六角レンチセット、マルチツール)は必ず携行し、簡単な調整ができるようにしておくことをお勧めします。
天候によるトラブルも重要な考慮点です。琵琶湖周辺は天候が急変することがあり、特に比良おろしと呼ばれる強風には注意が必要です。防風・防水ジャケットの携行は必須で、天候の急変に備えて常にアクセスしやすい場所に収納しておきましょう。また、夏場は熱中症のリスクが高まります。こまめな水分補給と休憩を心がけ、体調管理には特に注意を払う必要があります。
体調面でのトラブル対策も重要です。長距離走行による疲労、特にお尻の痛みは多くのサイクリストが経験します。対策として、パッド付きのサイクルジャージの着用が効果的です。また、1〜2時間ごとの休憩を取り、適度なストレッチを行うことで、筋肉の疲労を軽減できます。さらに、低血糖を防ぐため、エネルギー補給用の食品を携行し、定期的に摂取することをお勧めします。
トラブル発生時のサポート体制も整備されています。滋賀県内には「ビワイチサイクルステーション」が200カ所以上設置されており、簡単な工具の貸し出しやトイレ利用が可能です。また、「びわ湖サイクルレスキュー」(電話番号:0748-26-0803)では、自転車の修理や搬送サービスを提供しています。トラブル時には、最寄りのサイクルステーションを確認し、必要に応じてレスキューサービスを利用することをお勧めします。
走行不能となった場合の代替手段も把握しておく必要があります。琵琶湖周辺には JR琵琶湖線、湖西線などの鉄道路線が整備されており、多くの駅で輪行(自転車を分解して電車に乗せること)が可能です。また、「滋賀県サイクリストタクシー」では、自転車を載せての搬送サービスも提供しています。これらの連絡先は事前に保存しておくことをお勧めします。
最後に、盗難対策も忘れてはいけません。観光スポットや食事の際は、必ず施錠を行いましょう。ワイヤーロックだけでなく、できればU字ロックなど、複数の施錠手段を用意することをお勧めします。また、自転車から離れる際は、バッグやライトなど、簡単に取り外せる装備品は持ち歩くようにしましょう。
これらのトラブル対策を万全にしておくことで、より安全で楽しいビワイチを実現できます。特に初めての方は、トラブル発生時の対応手順を事前に確認し、必要な道具や連絡先をリストアップしておくことをお勧めします。
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