伊江島の一周サイクリングコースとは、沖縄本島の本部港からフェリーで約30分の沖縄離島・伊江島を、全長約13キロメートルの道のりで巡る人気の周遊ルートのことです。最大の見どころは、米軍補助飛行場の旧滑走路を自転車で駆け抜けるという、日本でも他に例を見ないユニークな体験ができる点にあります。電動アシスト付き自転車を使えば観光込みで約3〜4時間で一周でき、本島からの日帰り旅行でも十分に楽しめる手ごろなサイズの離島サイクリングとして注目を集めています。
本記事では、伊江島へのアクセス方法、レンタサイクルの料金や種類、一周サイクリングコースの詳細、城山(タッチュー)や湧出(わじー)といった観光スポットの見どころ、そして最大の目玉である滑走路サイクリングの体験までを、これから訪れる方が迷わず計画を立てられるよう徹底的に解説します。沖縄離島の中でも独特の魅力を持つ伊江島の全容を、ぜひつかんでください。

伊江島とは|沖縄本島から30分で行ける沖縄離島
伊江島とは、沖縄県国頭郡伊江村に属する東シナ海上の沖縄離島のことです。沖縄本島北部の本部半島から北西約9キロメートルに位置し、面積は約22.7平方キロメートル、人口は約4,000人ほどの小さな島です。
島の地形は基本的に平坦な台地状で、その中央部にぽつんとそびえる岩山が城山(ぐすくやま)です。標高172メートルのこの城山は、烏帽子のような独特の形状から方言で乳頭を意味する「タッチュー」の愛称で親しまれています。海上からも遠くから見えるため、昔から近海を航海する船の目印として利用されてきました。
伊江島は農業が盛んな島で、テッポウユリやタバコの栽培が行われています。一方で、太平洋戦争において非常に激しい地上戦が繰り広げられた場所としても知られ、現在も島の北西部には米軍の伊江島補助飛行場が存在しています。村面積の約35パーセントを米軍施設が占めているという現状があり、この歴史と現在の状況が、伊江島の景観や観光体験に独特の表情を与えています。
平坦な地形、コンパクトな一周距離、海沿いの絶景、戦争の歴史を伝える史跡、そして滑走路を自転車で走るというユニークな体験。これらすべてが詰まっているからこそ、伊江島は沖縄離島サイクリングの新定番として、近年人気が高まっているのです。
伊江島へのアクセス|本部港からフェリーで気軽に渡れる
伊江島へのアクセスは、沖縄本島北部の本部港(もとぶこう)からフェリーに乗るのが唯一の方法です。本部港は沖縄自動車道の許田インターチェンジから車で約30分、那覇市内からは車で約1時間30分が目安となっています。
フェリーは伊江島運輸が運航しており、1日4便(夏季は5便)が運航されています。所要時間は約30分と短く、波が穏やかな日であれば揺れも少なく快適な船旅を楽しめます。運賃は大人1名で片道730円(2024年時点)と非常にリーズナブルで、那覇から日帰りでも気軽に訪れることが可能です。
車両を積み込む場合は事前予約が必須ですが、徒歩乗船の場合は予約なしで乗船できます。ただし、繁忙期や夏休みシーズンは混雑するため、早めに港へ向かうことをおすすめします。本部港には無料駐車場があるため、車で本部港まで来て、そこから徒歩でフェリーに乗り込み、伊江島ではレンタサイクルを活用するというプランが観光客の間で人気となっています。
フェリーに乗ると、船が進むにつれてタッチューのシルエットが徐々に大きく見えてきます。青い海に浮かぶユニークな形の岩山と平坦な島の景色は、乗船した瞬間から伊江島観光が始まったことを感じさせてくれる、忘れがたい光景です。
伊江島のレンタサイクル情報|料金と自転車の種類
伊江港フェリーターミナルのすぐ近くにはレンタサイクルショップがあり、島に到着してすぐに自転車を借りることができます。主なレンタルショップとして「TM.Planning(ティーエムプランニング)」が知られており、港ターミナルのすぐ裏手に位置しています。
営業時間は8時から17時30分ごろまでで、フェリーの到着時刻に合わせて運営されています。料金の目安は、一般的な自転車(ママチャリタイプ)が2時間から24時間まで1,100円程度、電動アシスト付き自転車が2,800円程度です。料金体系の比較は以下の通りです。
| 自転車の種類 | 料金の目安 | 一周の所要時間目安 |
|---|---|---|
| 一般自転車(ママチャリ) | 1,100円程度 | 4〜5時間 |
| 電動アシスト付き自転車 | 2,800円程度 | 3〜4時間 |
伊江島の地形は基本的に平坦なため、体力に自信がある方は一般の自転車でも一周を十分に楽しめます。ただし、城山(タッチュー)への登山道や、島の中央部には若干のアップダウンがある区間も存在します。また、夏の沖縄は日差しが非常に強く気温も高いため、体力の消耗が激しくなります。電動アシスト付き自転車を選ぶことで、体力を温存しながらより多くのスポットを巡れるでしょう。
子ども連れの場合は子ども乗せ対応の自転車を用意しているショップもあります。レンタル前に必ず確認し、ヘルメットの貸し出しもあわせて確認しておくと安心です。なお、伊江島内では電動キックボードのレンタルを提供しているサービスもあり、より手軽に島内を移動することも可能です。島内一周のツアーを組んでいる業者もあるため、ガイド付きで回りたい方はそちらを活用するのもおすすめです。
伊江島一周サイクリングコースの全体像
伊江島一周のサイクリングコースとは、全長約13キロメートルの島の外周路を巡るルートのことです。電動アシスト付き自転車であれば観光込みで約3〜4時間、一般の自転車でも4〜5時間あれば一周できます。コース自体に大きなアップダウンはなく、初心者や体力に自信のない方でも無理なく楽しめる難易度です。
サイクリングは時計回り(右回り)が一般的にすすめられています。伊江港を出発点として、島の南側から東側、北側、西側と進む順路です。南側から始まると最初は比較的平坦な道が続き、徐々に北側へ向かうにつれて緩やかな上り坂になります。時計回りに進むことで坂の傾斜が緩く感じられるため、サイクリングの快適さが増すというメリットがあります。
逆回り(反時計回り)だと最初に急な下り坂が多く、その後の登り返しが大変になることが多いため、初めて伊江島を訪れる方は時計回りを選ぶのが無難です。コースは基本的に島の外周を走る海沿いの道が中心で、東シナ海の青い海を眺めながら気持ちよく走れます。道路は整備されており、地元の車や農作業の車が行き交う程度の交通量で、比較的安全に走れる点も魅力です。
サイクリングコース沿いの主な観光スポット
伊江島を一周するコース沿いには、多彩な観光スポットが点在しています。ここでは、訪問者がぜひ立ち寄りたい主要スポットを順に紹介します。
城山(タッチュー)|伊江島のシンボル
城山とは、海抜172メートルの岩山であり、伊江島のシンボルとなっている島最大の観光名所です。「タッチュー」の愛称で知られるこの山は、島のほぼ中央部に位置しており、サイクリングコースの途中に立ち寄れます。
城山への登山道は整備されており、山頂までの所要時間は約15〜20分です。山頂からは伊江島全体を一望できるほか、晴れた日には沖縄本島の本部半島や古宇利島なども見渡せます。360度に広がるパノラマビューは、まさに伊江島随一の絶景といえるでしょう。
ユリの季節には城山の周辺にも白いテッポウユリが咲き、青い空と海のコントラストが美しい絶景が楽しめます。タッチュー周辺にはユリ畑が整備されており、観光客でにぎわう場所のひとつです。タッチュー頂上への入山料が別途かかる場合があるため、事前に確認しておきましょう。
ニャティヤ洞|聖地として知られる鍾乳洞
ニャティヤ洞とは、伊江島北部に位置する鍾乳洞であり、島の聖地として古くから人々の信仰を集めてきた場所です。洞窟内部には「ビジル石(力石)」と呼ばれる子授けの神様が祀られており、この石を持ち上げて軽く感じれば女の子、重く感じれば男の子を授かるという言い伝えがあります。
洞窟の内部は神秘的な雰囲気が漂い、一般公開されているため観光客も見学できます。サイクリングコースからも立ち寄りやすい場所にあり、神聖な空気感に触れる時間は伊江島観光ならではの体験となるでしょう。
湧出(わじー)|断崖絶壁の絶景スポット
湧出と書いて「わじー」と読むこの場所は、伊江島の北側に位置する断崖絶壁の景勝地です。切り立った崖の上から眼下に広がる東シナ海を見渡せる展望台があり、伊江島内でも屈指の絶景スポットとして知られています。
天候が良ければ、エメラルドグリーンからコバルトブルーへと変化する海の色を楽しめます。断崖のすぐ下には岩礁が広がっており、波が打ち寄せる様子は迫力満点です。日の出や夕暮れ時にもとても美しいスポットで、サイクリングの途中でぜひ立ち寄ってほしい場所のひとつです。
伊江ビーチ|白砂が約1キロメートル続く美しい海岸
伊江ビーチとは、島の東側に広がる白砂のビーチで、約1キロメートルにわたって美しい海岸線が続いています。透明度の高い海と白砂のコントラストが美しく、シュノーケリングや海水浴も楽しめます。
ビーチの背後にはモクマオウの林が広がっており、木陰でのんびり休憩するのも気持ちよい時間となります。ビーチ周辺には青少年旅行村があり、施設利用者向けのキャンプ場も整備されています。サイクリングの途中で立ち寄り、海に入って涼をとる観光客も多く見られます。
ヌチドゥタカラの家|戦争の歴史を伝える資料館
ヌチドゥタカラの家とは、「命こそ宝」を意味する名前を持つ反戦平和資料館です。伊江島は太平洋戦争中に激しい地上戦が行われた島で、多くの住民が犠牲になりました。この資料館には、地元の方が集めた戦時中の遺品や写真、証言などが展示されており、沖縄戦の歴史を学べる場所として多くの人が訪れます。
戦後、土地を接収されながらも非暴力で土地闘争を続けた島民の記録も展示されており、「島ぐるみ闘争」の歴史的意義を理解できる貴重な場所です。観光の一環として、ぜひ立ち寄りたいスポットといえるでしょう。
伊江島サイクリング最大の目玉|米軍補助飛行場の滑走路を走る
伊江島サイクリングの最大の特徴であり、他の沖縄離島では絶対に体験できない圧倒的なシーンが、米軍伊江島補助飛行場の旧滑走路を自転車で走ることです。広大なアスファルトを独占しながら東シナ海の風を全身に受けて走るこの体験は、日本のサイクリングスポットの中でも極めて稀有な存在となっています。
伊江島補助飛行場とは
伊江島補助飛行場とは、アメリカ海兵隊が使用する飛行場兼演習場であり、伊江島の北西部に位置する米軍施設のことです。その区域面積は約8.02平方キロメートルにのぼり、村の面積の約35パーセントという広大な土地を占有しています。
滑走路の歴史|太平洋戦争から現在まで
この飛行場の起源は、太平洋戦争中に遡ります。日本軍は伊江島に「東洋一の規模の飛行場」を建設しようと計画し、東飛行場・中飛行場・西飛行場の3つの飛行場を整備しました。東飛行場には3本の滑走路、中飛行場には2本の滑走路が計画されていましたが、資材や労働力の不足、そして米軍の沖縄上陸が目前に迫っていたため、完成前に日本軍は1945年3月10日に大本営から飛行場の破壊命令を受けました。
1945年4月16日、米陸軍第77歩兵師団が西崎海岸から伊江島に上陸しました。激しい戦闘の末に島を占領した米軍は、ただちに飛行場を復旧・拡張し、日本軍が完成できなかった西飛行場も整備しました。この西飛行場が現在の伊江島補助飛行場の前身にあたります。
戦後、1974年に沖縄国際海洋博覧会が開催されるにあたり、東側の滑走路が米軍から返還され、民間の伊江島空港として生まれ変わりました。現在の伊江島空港は定期航空便の就航はなく不定期チャーター便の利用のみとなっており、西側の広大なエリアが引き続き米軍補助飛行場として使用されています。
滑走路サイクリングの体験|全長約1,500メートルを駆け抜ける
伊江島一周サイクリングコースを走ると、島の北西部で米軍補助飛行場のエリアに差し掛かります。ここでは、広大なアスファルト上のかつての滑走路跡を、自転車で走り抜けることができます。
全長約1,500メートルにも及ぶ広大なアスファルトの路面が目の前に広がり、その両脇には何もない広大な空間が続きます。飛行機の離着陸に使われた空間を自転車で走るという非日常体験は、訪問者に強烈なインパクトを与え、伊江島サイクリングを語るうえで欠かせないハイライトとなっています。
ただし、滑走路の路面はかなり傷んでいる箇所もあり、でこぼこや亀裂も見られます。体験した観光客の口コミでは「タイヤがパンクするのではないかとヒヤヒヤした」という声もあるほどです。速度は控えめに、路面の状態に注意しながら走ることが大切です。
また、この滑走路は米軍の施設に隣接しており、走行できるエリアとそうでないエリアがあります。立入禁止区域には絶対に入らず、標識や案内に従って走行することが重要です。現在も米軍が使用する可能性がある施設のため、常識的なマナーと安全への配慮が求められます。
滑走路上では周囲を遮るものが何もなく、東シナ海から吹いてくる風を全身に受けながら走れます。特に風が強い日には向かい風になることもありますが、広大な空と海のパノラマを見渡しながら滑走路を独占するような感覚は、他のどこにもない伊江島だけの絶景体験です。
伊江島サイクリング日帰りモデルプラン
日帰りプランの場合、本部港発の早便(午前中)のフェリーで伊江島に到着し、レンタサイクルを借りて一周し、午後の便で帰るという流れが一般的です。おすすめのモデルプランの一例は次の通りです。
午前9時ごろ本部港からフェリーに乗船し、約30分の船旅を経て午前9時30分ごろ伊江港に到着します。港でレンタサイクルを借り、荷物を預けてからサイクリングをスタートします。
まず港から南側を経由して東側の伊江ビーチへ向かいます。白砂のビーチで少し休憩し、景色を楽しんだあと、島の北側へと向かいます。北部では城山(タッチュー)の麓を通り過ぎて、ニャティヤ洞に立ち寄り神秘的な洞窟を見学します。そこから北西部の米軍補助飛行場エリアへ向かい、滑走路サイクリングを体験します。
滑走路を走り抜けた後は、湧出(わじー)の断崖絶壁の展望台で絶景を堪能します。その後島の南側に戻りながら、ヌチドゥタカラの家に立ち寄り、伊江島の戦争の歴史に触れます。
昼食は島内の食堂でゴーヤーチャンプルーや海鮮料理などの沖縄料理を楽しんでから、午後2時〜3時ごろのフェリーで本部港へ帰るという流れです。この行程ですべての主要スポットを効率よく巡ることができ、日帰りでも伊江島の魅力を十分に感じられます。
サイクリングを楽しむための注意点と持ち物
伊江島サイクリングを快適に楽しむためには、服装・持ち物の準備と、季節・天候への理解が欠かせません。事前に押さえておきたいポイントを整理して紹介します。
服装と持ち物のポイント
沖縄は日差しが非常に強いため、日焼け止めは必須です。サイクリング中は日焼けが進みやすいため、SPF値の高いものを選び、こまめに塗り直しましょう。帽子やサングラス、UPF対応のアームカバーも役立ちます。
水分補給も重要です。島内にはコンビニやスーパーがありますが、コース上の補給ポイントは限られているため、水やスポーツドリンクを多めに持参することをおすすめします。特に夏場は熱中症のリスクが高いため、こまめな休憩と水分補給を心がけてください。
スマートフォンには地図アプリをダウンロードしておくと道に迷いにくくなります。伊江島の道路は比較的シンプルですが、初めての方は港でもらえる観光マップを活用すると効率よく回れます。また、撮影ポイントが多いのでカメラやバッテリーの充電も忘れずに準備しましょう。滑走路や湧出(わじー)の絶景は特に写真映えするスポットで、SNSでも人気の被写体となっています。
季節と天候による違い
伊江島のベストシーズンは春(3月〜5月)と秋(10月〜11月)です。春のゆり祭りシーズン(4月下旬〜5月上旬)は特に観光客が多く、島全体がにぎわいます。
夏(6月〜9月)は気温・湿度ともに高く、サイクリングには体力的にハードな季節です。また台風シーズンでもあるため、フェリーの欠航や観光スポットの閉鎖が生じることもあります。旅行前には天気予報と交通情報を必ず確認してください。冬(12月〜2月)は気温が比較的穏やかで過ごしやすい日も多い一方、北風が強い日はサイクリングが大変になることがあります。
フェリーの時刻と滑走路走行の注意点
日帰りの場合、フェリーの最終便を逃さないよう注意が必要です。帰りの便の時刻をあらかじめ確認し、逆算してスケジュールを立てましょう。サイクリング中は想像以上に時間が経つのが早く感じるため、余裕を持った計画を立てることをおすすめします。
米軍補助飛行場周辺では立入禁止区域が設けられています。絶対に柵や標識を越えて立ち入らないよう注意してください。また、滑走路上では路面が荒れている箇所があるため、速度を落として慎重に走行しましょう。スリップや落車を防ぐためにも安全運転が基本です。
伊江島ゆり祭り|100万輪のテッポウユリが咲き誇るイベント
伊江島ゆり祭りとは、毎年4月下旬から5月上旬にかけて開催される、島最大の春のイベントです。島のリリーフィールド公園を舞台に、約100万輪ものテッポウユリと100種以上の世界のゆりが一斉に咲き誇る壮観な光景が楽しめます。2026年も開催され、多くの観光客でにぎわいました。
伊江島で栽培されるテッポウユリは、沖縄の温暖な気候と豊かな土壌で育った純白の花が特徴で、その甘い香りが公園全体に漂います。青い空と東シナ海を背景に広がる白いユリ畑は、まさに絶景の一言に尽きるでしょう。「世界のゆり花壇」では日本のゆりの原種や世界各地の園芸品種が展示されており、ゆりファンにはたまらないイベントとなっています。
ゆり祭り期間中は屋台も立ち並び、伊江島産小麦を使った沖縄そば、島らっきょうの天ぷら、地元の食材を使ったご当地ジェラートなど、島ならではのグルメを楽しめます。打ち上げ花火や乗馬体験、ステージイベントなども開催され、観光客だけでなく地元の人々も一体となって盛り上がる、伊江島の春の風物詩です。
この時期のフェリーは特に混雑するため、来年以降に訪れる予定の方は早めの乗船を心がけましょう。また、公園の駐車場が満車になることもあるため、レンタサイクルでの移動が一層おすすめです。
伊江島の戦争の歴史|激戦地から平和の島へ
伊江島は太平洋戦争において非常に激しい地上戦が繰り広げられた場所であり、現在も各地に戦争の傷跡が残っています。この歴史を知ることは、伊江島をより深く理解するうえで欠かせません。
1943年、日本軍は伊江島の中央部に「東洋一」と呼ばれる大規模な飛行場の建設を計画し、強制的な土地接収が行われました。住民は土地代として戦時国債の証書を渡されただけで実質的に強制立ち退きを余儀なくされ、島の農地の大半が接収されました。
1945年4月16日から21日にかけての「六日戦争」と呼ばれる地上戦では、日本軍約2,000人、島民約1,500人が命を落としました。わずか6日間で多数の命が失われたこの戦いは、沖縄戦の中でも特に悲惨な戦闘のひとつとして記録されています。戦後、生き残った島民は島を離れ、各地に分散して疎開生活を強いられました。
戦後も試練は続きました。1953年以降、米民政府は沖縄各地の農民の土地を接収し続け、伊江島でもブルドーザーで住宅を壊し、農作物を焼き払うという強制接収が行われました。これに対し伊江島の人々は「乞食行進(ほこうぎしき)」として沖縄本島を歩いて島の実情を訴え、この活動が沖縄全土での「島ぐるみ闘争」の導火線となりました。1961年には「伊江島土地を守る会」が結成され、「団結道場」が建設されて非暴力での抵抗運動が続けられました。
こうした歴史の積み重ねが、島内に設立されたヌチドゥタカラの家に記録・保存されています。戦時中の遺品や写真、証言を通じて戦争の悲惨さと平和の大切さを伝えるこの場所は、サイクリングコースの立ち寄りスポットとして多くの観光客が訪れます。滑走路を自転車で走る体験と、この資料館での学びを併せることで、伊江島の歴史と現在を立体的に理解できるでしょう。
伊江島で楽しめるグルメと宿泊
サイクリングの途中や昼食の時間に、ぜひ伊江島の地元グルメも楽しんでください。島内にはいくつかの食堂があり、沖縄そば、ゴーヤーチャンプルー、海鮮料理などを味わえます。
伊江島はモズクの名産地としても知られており、新鮮な海産物を使った料理が特徴です。伊江島産の小麦粉を使ったそばや、地元農産物を使った料理は、伊江島ならではの味として観光客に人気があります。ゆり祭り期間中には屋台も充実しており、島らっきょうの天ぷらやご当地ジェラートなど、季節限定のグルメも楽しめます。島内の直売所ではユリの球根や地元農産物のお土産を購入することもできます。フェリーターミナル周辺にもお土産ショップがあるため、帰り際にチェックしてみましょう。
伊江島の魅力は日帰りだけでは語り尽くせません。島に宿泊することで、早朝の海や夕暮れ時の絶景、星空など、日帰りでは見られない島の表情を楽しめます。島内には民宿、ペンション、ゲストハウス、コテージ、キャンプ場まで多彩な宿泊施設があります。リゾート感を求めるなら全室オーシャンビューのリゾートホテルが選択肢となり、ダイビング後のサウナやジャグジーでリラックスできる施設もあります。アットホームな体験を求めるなら、島民が営む家族経営の民宿がおすすめで、地元の家庭料理を味わいながら伊江島の生活文化に触れられます。
アウトドア派には、伊江ビーチに隣接したキャンプ場も人気です。テントサイトで波音を聞きながら過ごす夜は格別で、夜空には満天の星が広がります。本島に近い割に光害が少ないため、天の川を肉眼で楽しめる夜もあります。
宿泊すれば夕日に染まる城山(タッチュー)や、水平線から昇る朝日など、日帰りでは体験できない伊江島の絶景に出合えます。翌朝の早い時間帯には観光客が少なく、島の静寂の中でサイクリングを楽しめるのも宿泊ならではの醍醐味です。
伊江島で体験できるその他のアクティビティ
伊江島ではサイクリング以外にも多彩なアクティビティが楽しめます。透明度の高い伊江島の海はダイビングやシュノーケリングの聖地としても知られており、カラフルな熱帯魚やサンゴ礁が広がる豊かな海中世界を体験できます。島内にはダイビングサービスがあり、初心者向けの体験ダイビングから上級者向けのファンダイビングまで対応しています。
伊江島の広大な原野や海沿いでの釣りも人気のアクティビティです。島の豊かな漁場では、グルクン(和名タカサゴ)やイカ、タコなどが釣れることがあり、地元の漁師と交流しながら海の恵みを体感できます。
伊江ビーチではカヤックやサップ(スタンドアップパドルボード)などのマリンスポーツも楽しめ、海の上から伊江島の景色を眺める体験も格別です。陸からでは見えない視点で島の全容を感じられるため、サイクリングとあわせて体験すれば、伊江島の魅力をより多面的に味わえます。
伊江島サイクリングについてよくある疑問
伊江島の一周サイクリングコースを計画する際に、初めての方が抱きがちな疑問について、ここでまとめて回答します。
伊江島の一周にかかる時間は、電動アシスト付き自転車を使えば観光込みで約3〜4時間、一般の自転車でも4〜5時間が目安です。コースは全長約13キロメートルと手ごろなサイズで、平坦な道が中心のため、サイクリング初心者でも無理なく走破できます。
レンタサイクルの予約は必須かという質問もよく寄せられます。基本的には予約なしでも借りられますが、ゆり祭りシーズンや夏休みの繁忙期は混雑するため、事前予約が安心です。電動アシスト付き自転車は台数が限られているため、特に優先したい方は早めの予約をおすすめします。
滑走路は誰でも走れるのかという疑問については、サイクリングコース沿いの旧滑走路エリアは一般の観光客も走行できますが、立入禁止区域には絶対に入らないという基本ルールを守る必要があります。標識や案内に従い、米軍施設に隣接する場所であることを常に意識して安全に走行してください。
子どもや高齢者でも楽しめるのかという点については、電動アシスト付き自転車を選び、無理のないペースで走れば十分に楽しめます。ただし、夏場の暑さや日差し対策は万全にし、こまめな水分補給と休憩を取りながら進むことが大切です。
まとめ|伊江島の一周サイクリングコースは沖縄離島旅の新定番
伊江島とは、沖縄本島から30分というアクセスの良さと、豊かな自然・歴史・ユニークな体験が凝縮された沖縄離島です。一周約13キロメートルのサイクリングコースには、城山(タッチュー)の絶景、神秘的なニャティヤ洞、断崖絶壁の湧出(わじー)、美しい伊江ビーチ、そして日本でも稀少な米軍補助飛行場の滑走路サイクリングなど、数多くの見どころが詰まっています。
特に滑走路での体験は、広大なアスファルトを独占して東シナ海の風を感じながら走るという、他のどこにもない伊江島だけの体験です。歴史的な背景を持つこの場所を自転車で走りながら、太平洋戦争から現在に至るまでの沖縄の歴史を肌で感じられます。春には100万輪のテッポウユリが咲き誇り、島全体が白い花に彩られるゆり祭りも、一生の思い出になる体験となるでしょう。
日帰りでも宿泊でも、伊江島は何度訪れても新しい発見がある魅力的な沖縄離島です。沖縄旅行の際にはぜひ伊江島の一周サイクリングコースを計画に組み込み、ここにしかない絶景と体験を思い切り楽しんでください。
沖縄本島の観光スポットが混雑する連休や夏休みのシーズンでも、伊江島は比較的ゆったりとした時間が流れており、離島ならではの穏やかな空気感を楽しめます。タッチューが見守る青い海と白い砂浜、歴史の重みを持つ滑走路、そして島民のあたたかなもてなし。伊江島はきっと、あなたの沖縄旅行の中でも特別な一ページになるはずです。城山からのパノラマ絶景と、滑走路を颯爽と駆け抜ける爽快感を、ぜひ自分の目と体で確かめてみてください。








