瀬戸内海は、穏やかな気候と美しい多島美により「サイクリングの聖地」として世界的に注目されています。特にしまなみ海道はナショナルサイクルルートに指定され、その知名度は群を抜いています。しかし、瀬戸内海の魅力はしまなみ海道だけではありません。ゆめしま海道やとびしま海道といった公式サイクリングコースも存在し、サイクリストのレベルや好みに応じた多様な選択肢を提供しています。2025年は、しまなみ海道の自転車通行料金が2026年3月末まで無料となる「しまなみサイクリングフリー」措置が継続されており、より手軽にサイクリングを楽しむことができます。充実したレンタサイクルサービス、手荷物輸送、サイクルオアシスなどのサポート体制も整備され、初心者から上級者まで安心してサイクリングを満喫できる環境が整っています。

Q1: 瀬戸内海サイクリングコースの中で初心者におすすめなのはどこですか?
初心者の方には、交通量が少なく平坦な道が多いゆめしま海道が最もおすすめです。信号やトンネルが一つもなく、海沿いを走る区間が多いため、ストレスフリーなサイクリングを楽しめます。
ゆめしま海道の初心者向けコースとして、サイクルージング3時間コース(22km)があります。このコースは基本的に平坦で獲得標高も100m〜150m程度と、初心者でも挑戦しやすい難易度です。特定の島でゆっくり過ごしたり、海水浴や体験アクティビティを楽しんだりするのにも適しています。
しまなみ海道の初心者コースでは、今治から大島への往復約14kmルートがおすすめです。サンライズ糸山で自転車をレンタルし、来島海峡大橋の絶景を楽しみ、道の駅よしうみいきいき館で海鮮グルメを満喫できます。海面からの高さがビルの21階分に相当する橋上からの眺めは、まるで海の上を飛んでいるかのような爽快感を与えてくれます。
また、大三島から生口島への約17.5kmルートも初心者向けです。多々羅大橋は世界最長の斜張橋で、その橋上からの眺めは格別です。生口島のしおまち商店街では、昭和レトロな雰囲気の中で蔵をリノベーションした複合施設や古民家食堂を散策できます。
とびしま海道も初心者におすすめで、全体的にアップダウンが少なく、海沿いを走る平坦な道が多いのが特徴です。交通量がしまなみ海道より少ないため、一人で景色を楽しみながらのんびり走りたい方には特に向いています。
初心者の方は電動アシスト自転車やE-bikeを選ぶことで、坂道も楽に走行でき、より快適にサイクリングを楽しむことができます。
Q2: しまなみ海道以外の瀬戸内海サイクリングコースにはどんな魅力がありますか?
ゆめしま海道は、2022年3月に岩城橋が開通し全線開通となった比較的新しいコースです。最大の魅力は圧倒的に少ない交通量で、信号やトンネルが一つもないため、瀬戸内海の静かな時間を心ゆくまで満喫できます。
舟折瀬戸展望台では、瀬戸内海の急流難所である舟折瀬戸の激流や、村上海賊の本拠地である能島城跡を望むことができます。大森神社は海と空、そして鳥居が織りなす美しい景観が特徴の海の神社で、インスタ映えスポットとしても人気です。積善山は愛媛屈指のお花見スポットとして知られ、「三千本桜」が有名です。
とびしま海道は、広島県呉市川尻町から愛媛県今治市岡村島まで、7つの島を7つの橋で結ぶコースです。しまなみ海道に比べて田舎の島々の素朴な雰囲気を色濃く残しており、昔の島の生活を感じることができます。
御手洗の古い街並みは江戸時代から続く街並みが保存されており、重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。歴史の見える丘公園からは、御手洗の町並み、みかん畑、潮待ちの港、しまなみ海道の島々、来島海峡大橋、四国の石鎚山系まで一望できる絶景が広がります。
愛媛県内の公式コースとして、今治・道後はまかぜ海道(66.8km)は愛媛県の代表的な観光スポットを一度に楽しめるコースで、比較的アップダウンが少なくブルーラインが引かれているため、初心者でも安心です。四国カルストは日本三大カルストの一つで、「天空の台地」を走破する上級者向けコースとして人気があります。
岡山県内の公式コースでは、倉敷・玉野シーサイドルートが江戸時代の面影が残る倉敷美観地区や瀬戸大橋を望む鷲羽山展望台など、景色、グルメ、歴史、アートを一度に満喫できる贅沢なコースとして注目されています。
これらのコースは、しまなみ海道とは異なる独自の魅力を持ち、サイクリストに多様な体験を提供しています。
Q3: 瀬戸内海サイクリングで利用できるレンタサイクルと手荷物輸送サービスは?
しまなみ海道のレンタサイクルは非常に充実しており、尾道港、瀬戸田観光案内所、サンセット、上浦、中央、今治駅などの主要ターミナルで利用できます。
車種と料金は以下の通りです:
- クロスバイク・シティサイクル: 3,000円/日
- 電動アシスト自転車: 4,000円/日
- E-bike: 8,000円/日
- タンデム自転車: 4,000円/日
- キッズバイク: 1,000円/日
ヘルメットは無料で貸し出され、E-bikeとタンデム自転車以外はどのターミナルでも乗り捨て可能です。これにより、片道サイクリングも気軽に楽しめます。
ゆめしま海道のレンタサイクルは、弓削島、生名島、岩城島、魚島の4ヶ所にターミナルがあります。E-BIKE(5,500円/日)のアシスト可能距離は約150kmと長く、長距離サイクリングにも対応できます。別ターミナルへの乗り捨ては1,100円/台で可能です。
とびしま海道のレンタサイクルは、梶ヶ浜本店と川尻駅前支店が主要拠点で、配車・乗り捨てサービスが特に充実しています。配車料金1,000円、乗り捨て料金1,000円で、岡村港や小長港、とびしま海道内の宿泊施設などへの配送が可能です。
手荷物輸送サービスとして、しまなみ海道では佐川急便による「しまなみ海道手ぶらサイクリング」が利用できます。尾道市と今治市の提携宿泊施設間で、スーツケースやカバンなどを当日中に配送してくれるため、身軽にサイクリングを楽しめます。朝に宿泊施設に荷物を預ければ、その日の夜には次の宿泊先に荷物が届きます。
これらのサービスにより、荷物を気にせず自由にルートを計画することが可能になり、サイクリングの行程が大幅に楽になります。特に複数日にわたるサイクリング旅行では、これらのサービスの活用が旅の満足度を大きく向上させます。
Q4: 瀬戸内海サイクリング中に立ち寄りたいおすすめスポットは?
絶景スポットとして、まず来島海峡大橋は外せません。全長4kmを超える三連吊橋で、橋上からの来島海峡の眺めは絶景です。海面からの高さがビルの21階分に相当し、まるで空を飛んでいるかのような感覚を味わえます。
多々羅大橋は世界最長の斜張橋として知られ、その壮大なスケールは圧巻です。特に夕暮れ時の眺めは息をのむ美しさで、瀬戸内海の多島美を一望できます。
舟折瀬戸展望台(伯方島)では、瀬戸内海の急流難所である舟折瀬戸の激流や、村上海賊の本拠地である能島城跡を望むことができ、歴史ロマンも感じられます。
歴史・文化施設では、大山祇神社(大三島)が必見です。しまなみ海道最大の島・大三島に鎮座する日本総鎮守の神社で、樹齢2600年の大楠は圧巻です。その周囲を願い事をしながら息を止めて3周すると願いが叶うという言い伝えがあります。境内には国宝・重要文化財の武具が多数収蔵されており、日本の歴史に触れることができます。
耕三寺(生口島)は「西の日光」とも称される極彩色の寺院で、その壮麗な建築美は一見の価値があります。平山郁夫美術館も同じ生口島にあり、瀬戸内海の風景を描いた作品が多く展示されています。
グルメスポットとして、道の駅よしうみいきいき館(大島)は新鮮な魚介を選んで自分で焼く七輪バーベキューが人気です。お刺身御膳など、瀬戸内の海の幸を存分に堪能できます。
生口島ではレモン鍋が名物で、レモンの産地として有名な島ならではの味覚です。鯛などの魚介とレモンの酸味が絶妙に調和し、さっぱりとした味わいがサイクリングで疲れた体に染み渡ります。同じく生口島のジェラートは、島のみかんやイチゴを使った絶品で、サイクリング中の休憩にぴったりです。
御手洗の古い街並み(大崎下島)では、江戸時代から続く古い街並みが保存されており、船宿カフェ若長やティーコージーなど、歴史ある建物を活用したカフェでのんびり過ごすことができます。
book cafe okappa(佐島)は保育所を改装したレトロなカフェで、島野菜をトッピングしたチキンカレーや島柑橘を使ったドリンクが人気です。
これらのスポットは、単なる通過点ではなく、瀬戸内海の文化や歴史、自然の恵みを五感で感じられる貴重な体験の場となっています。
Q5: 瀬戸内海サイクリングを安全に楽しむための注意点と準備は?
基本的な交通ルールとして、自転車は道路交通法上「軽車両」であることを認識し、車道の左側を一列で走行することが重要です。2023年4月1日より、全ての年齢層の自転車利用者に対してヘルメットの着用が努力義務となりました。死亡事故の多くは頭部損傷が致命傷となるため、SGマークなどの安全性を示すマークの付いたヘルメットを正しく着用しましょう。
広島県では自転車保険への加入が義務化されています。万が一の事故で相手に怪我を負わせた場合、高額な損害賠償責任を負う可能性があるため、必ず加入してください。TSマークなど、保険が付帯される点検・整備制度もあります。
各コース固有の注意点として、しまなみ海道では海峡部の強風に注意が必要です。特に多々羅大橋などでは強風に煽られやすく、橋の上では横風に注意し、安全な速度で走行することが重要です。新尾道大橋には自転車歩行者道がないため、渡船を利用しましょう。
ゆめしま海道は交通量が圧倒的に少なく、信号もトンネルも一つもないため、比較的安全に走行できます。とびしま海道では、風速15m以上の場合、橋が通行止めになる可能性があるため、天候情報の確認が重要です。
事前準備として、「ブタはしゃべる」という覚え方で乗車前の安全点検を行いましょう:
- ブ:ブレーキは前後ともよく利くか
- タ:タイヤの空気は入っているか
- ハ:ハンドルは曲がっていないか
- シャ:車体(サドル、フレーム)は曲がっていないか、チェーンはゆるんでいないか
- ベル:ベルはよく鳴るか、壊れていないか
緊急時の連絡先として、救急(119番)、警察(110番)を把握しておきましょう。ゆめしま海道など、電波状況によっては他府県に繋がる可能性があるため、その場合は「上島消防」に転送してもらうよう伝える必要があります。道路緊急ダイヤル(#9910)は、しまなみ海道上での故障車両、落下物、事故、道路損傷などを発見した場合に24時間無料で利用できます。
持参すべき装備として、工具、携帯ポンプ、予備チューブなどのパンク修理キットは必須です。パンク等のトラブルは基本的に個人によるセルフリペアが原則とされているためです。
携帯電話・イヤホン使用の禁止、飲酒運転・二人乗り・並進の禁止など、基本的な交通ルールの遵守と、見通しの悪い交差点での一時停止・安全確認を徹底することで、安全で楽しいサイクリングを実現できます。
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