秋の絶景を走る!甲信越の紅葉サイクリングコースと見頃時期を徹底解説

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秋の甲信越地方は、サイクリング愛好家にとって特別な季節を迎えます。山梨、長野、新潟の三県にまたがるこのエリアでは、紅葉の見頃時期を狙ったサイクリングコースが数多く存在し、それぞれが独自の魅力を放っています。澄み渡る秋空の下、ペダルを漕ぐたびに色づいた木々のトンネルを抜け、眼下に広がる紅葉の絨毯を眺めながら走る体験は、まさに五感すべてを刺激する贅沢な時間といえるでしょう。甲信越のサイクリングコースは、標高差が大きいことから紅葉の見頃時期が場所によって異なり、10月上旬の高地から11月下旬の渓谷部まで、長期間にわたって秋の彩りを楽しむことができます。山梨県では富士山を望む湖畔ルートや深い渓谷美、長野県では雄大なアルプスを背景にした高原の草紅葉、新潟県では日本海へと続く丘陵地帯の錦秋と、それぞれの県が持つ地形的特徴が紅葉サイクリングの多様性を生み出しています。本記事では、甲信越地方における紅葉シーズンのサイクリングコースについて、各ルートの特徴から見頃の時期、走行難易度、さらには装備のポイントまでを詳しく解説していきます。

目次

甲信越エリアにおける紅葉サイクリングの魅力とは

甲信越地方が紅葉サイクリングの名所として知られるようになった背景には、地形的な多様性があります。日本アルプスをはじめとする標高2000メートル級の山岳地帯から、富士五湖のような湖畔エリア、さらには魚沼平野のような盆地まで、変化に富んだ地形が存在します。この標高差が、紅葉の見頃時期を地域ごとに分散させ、サイクリストに長期間にわたって紅葉狩りの機会を提供しているのです。

特筆すべきは、甲信越のサイクリングコースが持つアクセスの良さです。首都圏から新幹線や特急列車で2時間程度という距離にありながら、本格的な山岳サイクリングが楽しめる環境は、他の地域では得難いものです。輪行(自転車を分解して公共交通機関で運ぶ方法)を活用すれば、週末の日帰りでも十分に満喫できるコースが豊富に揃っています。

また、近年の傾向として、気候変動による紅葉時期の変化も無視できません。2024年の甲信越地方では、例年と比べて紅葉の見頃が平年並みから、場所によってはやや遅めとなる傾向が見られました。特に長野県の一部地域では、平年より10日以上遅れるケースもあり、従来のガイドブックだけに頼った計画では、最盛期を逃してしまうリスクがあることが明らかになりました。このため、最新の紅葉情報を出発直前まで確認し、柔軟に行程を調整できる計画性が、現代のサイクリストには求められています。

高標高エリアでは、見頃の遅れが冬の到来と重なることで、気温の急激な低下や突然の降雪、道路の冬季閉鎖といったリスクも高まります。実際、ビーナスラインのような高地ルートでは、11月に入ると気温が氷点下になることも珍しくなく、魚沼スカイラインは例年11月中旬に冬季閉鎖されます。こうした環境変化を踏まえ、防寒対策道路状況の事前確認は、安全なサイクリングを実現するための必須条件となっています。

山梨県:富士と渓谷が織りなす紅葉サイクリングの聖地

山梨県は、霊峰富士の雄大な姿深く刻まれた渓谷美が共存する、サイクリストにとって特別な場所です。紅葉シーズンには、これらの景観要素が赤や黄、橙の鮮やかな色彩と融合し、他では見られない絶景を生み出します。

昇仙峡:渓谷美と紅葉が調和する平日限定の特等席

国の特別名勝にも指定される昇仙峡は、日本を代表する渓谷美と紅葉の名所です。サイクリストにとって、この場所が持つ最大の価値は、平日に限り一般車両の通行が制限される遊歩道を走行できる点にあります。

昇仙峡へのアプローチには、主に二つのルートが考えられます。一つはJR甲府駅を起点とする約34キロメートル、獲得標高820メートルの周回コースで、武田信玄公を祀る武田神社への立ち寄りも可能です。もう一つはJR竜王駅を起点とする約36キロメートルのルートで、駅前ロータリーが広く輪行の準備がしやすいという実用的な利点があります。

このコースの真髄は、5月1日から11月30日までの期間における交通規制にあります。土日祝日には一般車両の通行が禁止されますが、平日は自転車の通行が許可されています。この規制により、多くの観光客で賑わう人気の景勝地が、平日にはサイクリストのために開かれた静謐な空間へと変貌します。歴史ある長潭橋や、天を突くような主峰・覚円峰、落差30メートルの迫力ある仙娥滝といった絶景を、交通のストレスなく心ゆくまで堪能できる環境は、まさに贅沢の極みといえるでしょう。

昇仙峡の紅葉見頃は、例年10月下旬から11月下旬までと、標高差があるために比較的長い期間楽しむことができます。渓谷の上部から徐々に色づき始め、下流域へと紅葉前線が降りてくる様子は、何度訪れても新鮮な驚きを与えてくれます。

ライドの締めくくりには、山梨名物のほうとうを味わうのが定番です。地元で愛される店では、野菜たっぷりの温かい麺が、サイクリングで冷えた体を芯から温めてくれます。また、滝上エリアの茶屋で提供される「食べる水晶玉」は、見た目も涼やかなこの地ならではの甘味として、多くのサイクリストに親しまれています。

富士五湖周遊:水鏡に映る紅葉と霊峰の饗宴

富士山を様々な角度から望むことができる富士五湖エリアは、秋には特別な美しさを見せます。湖面に映る逆さ富士と紅葉のコントラストは、この地域でしか味わえない贅沢な景観です。

河口湖では、湖の北岸を走るルートが「もみじ回廊」として知られ、燃えるようなカエデの木々が富士山を縁取る絶景が続きます。紅葉シーズンには大変な混雑に見舞われますが、自転車であれば渋滞を横目に、気に入った場所で自由に停車して写真撮影が可能です。自動車では決して味わえない、時間を自由にコントロールできる贅沢さが、サイクリングの最大の利点といえるでしょう。河口湖の紅葉見頃は、例年11月上旬から中旬にかけてです。

山中湖では、湖をほぼ一周する約14キロメートルの整備されたサイクリングロードが魅力です。旭日丘湖畔緑地公園の紅葉トンネルや、逆さ富士とダイヤモンド富士の撮影スポットとして名高い長池親水公園など、見どころが豊富に点在します。山中湖の紅葉見頃時期は、10月末から11月中旬です。

富士五湖すべてを巡る通称「フジイチ」は、多くのサイクリストが憧れる壮大なチャレンジです。しかし、「湖畔巡り」という言葉の響きから平坦なコースを想像してはいけません。このコースの実態は、距離約110キロメートルから140キロメートル、獲得標高1600メートルを超える本格的な山岳ライドです。籠坂峠のような長く続く登りも含まれ、各種サイクリングアプリやイベントでは高難易度に設定されています。これは湖畔を巡るというよりも、「湖のそばを通過する山岳コース」と認識するのが正確でしょう。挑戦するには十分なトレーニングと適切な補給計画、そして信頼できる機材が不可欠であり、1泊2日で計画するのも賢明な選択肢です。

フルーツライン:甲府盆地を見下ろす収穫の季節

笛吹市から山梨市へと、甲府盆地の北斜面に広がる果樹園地帯を駆け抜けるフルーツラインは、春の桃源郷のイメージが強いルートですが、秋にも独特の魅力があります。距離40.4キロメートル、獲得標高524メートルの、適度なアップダウンが心地よいコースです。

秋のフルーツラインでは、収穫期を迎えた果樹園の活気と、周囲の山々の紅葉、そして甲府盆地と富士山を一望するパノラマが同時に楽しめます。見頃は10月下旬から11月中旬で、ブドウや柿の収穫風景と紅葉が織りなす、実りの秋ならではの風景が広がります。道中には農産物直売所も点在し、新鮮な果物を補給食として調達できるのも、このルートならではの楽しみです。

長野県:アルプスの絶景と高原が織りなす黄金の世界

長野県は、雄大な日本アルプスと広大な高原が特徴的な、サイクリストにとっての聖地です。標高の高さゆえに、他の地域とは異なる独特の紅葉景観を生み出します。

ビーナスライン:天空へと続くサイクリストの聖地

サイクリストの間で「聖地」とも称されるビーナスラインは、秋には最高の舞台となります。茅野駅を起点とし、美ヶ原高原美術館を目指すこのルートは、片道約60キロメートル、獲得標高2000メートルを超える超級山岳コースです。

走行は大きく三つの区間に分けられます。第1区間の茅野から白樺湖までは、序盤から約15キロメートルにわたり平均勾配5パーセントから8パーセントの本格的な登りが続きます。第2区間の白樺湖から霧ヶ峰までが、このルートのハイライトです。白樺湖と八ヶ岳連峰の雄大な景色が広がる「黄金区間」と呼ばれ、約9キロメートル、平均勾配約4パーセントとやや緩やかになり、景色を堪能する余裕が生まれます。最終区間の霧ヶ峰から美ヶ原までは最後の試練で、美ヶ原へ向かう約4キロメートルは平均勾配9パーセント、つづら折りの急坂が容赦なく続きます。

ビーナスラインの紅葉の特色は、カエデやモミジといった木々の紅葉だけではありません。高原一帯を覆い尽くすススキや笹が黄金色に輝く「草紅葉」が、他では見られない広大で開放的な景観を創り出します。木々の紅葉の見頃は10月中旬から下旬で、草紅葉はそれよりやや遅れて10月下旬から11月上旬が最盛期となります。

ビーナスラインのサイクリングは、単なる日帰りライドではなく、綿密な計画を要する「遠征」と心得るべきです。輪行で茅野駅を起点とする場合、往復すれば距離は約120キロメートル、獲得標高は3000メートルを超えます。標高2000メートル近い高地では天候が急変しやすく、気温も大きく低下します。登りで汗だくになった体が、下りでは一気に冷え切ってしまうため、十分な補給食と水分はもちろん、たとえ麓が暖かくても、下りのための防風ジャケットやグローブ、ウォーマー類を必ず携行することが安全確保の要となります。

北アルプス山麓:七色大カエデを求める湖畔の旅

より穏やかながらも、北アルプスの雄大さを感じられるのが、南小谷駅から安曇野ちひろ公園を目指すルートです。約66キロメートルの片道ルートで、獲得標高は820メートルです。

風光明媚なJR大糸線に沿って走り、青木湖、中綱湖、木崎湖からなる仁科三湖の脇を抜けていきます。湖面に映る北アルプスの山々と紅葉のコントラストは、まさに絵画のような美しさです。

このルートの最終目的地は、標高1000メートルの大峰高原に佇む樹齢250年超の「七色大カエデ」です。その名の通り、緑から橙、そして赤へと、一枚の葉が七色に変化していく様は圧巻の一言です。訪れる時期によって異なる表情を見せてくれるため、何度足を運んでも新たな発見があります。見頃は10月中旬から11月上旬で、ルート全体としては激坂はなく、中級者であれば北アルプスの絶景を楽しみながら快適に走破できるでしょう。

高山村・松川渓谷:E-BIKEで探る秘境の紅葉

急峻な地形が多い長野県では、E-BIKE(電動アシスト付きスポーツ自転車)がサイクリングの可能性を大きく広げています。その恩恵を最も受けられるのが、高山村エリアです。

小布施の町から、紅葉の名所として名高い松川渓谷へと分け入るこのコースは、雷滝までで獲得標高870メートルに達する厳しい登りです。この急峻な地形は、通常であれば健脚なサイクリスト以外を寄せ付けません。しかし、E-BIKEの登場がこの常識を覆しました。

紅葉シーズン(10月下旬から11月上旬)には深刻な交通渋滞と駐車場不足に悩まされるこのエリアを、E-BIKEは渋滞知らずで、かつ体力的な負担なく楽しむことを可能にしました。これは単なる利便性の向上ではなく、上質な旅行体験を得るための戦略的な選択といえます。車では見過ごしてしまう風景をじっくりと味わい、自然と一体になる感覚は、E-BIKEならではのものです。

主な見どころは、秋色の木々に映える朱色の「高井橋」で、絶好の写真スポットとなっています。その先には山田温泉、そして裏側からも滝を見ることができる豪快な「雷滝」が待っています。滝の裏側から紅葉を眺める体験は、他では得難い特別な思い出となるでしょう。

新潟県:錦秋のダムとスカイライン、日本海への道

新潟県は、米どころ・酒どころとして知られる一方で、山間部には壮大な紅葉サイクリングコースが隠されています。ダム湖や丘陵地帯の尾根を走るルートは、独特の景観美を提供してくれます。

魚沼スカイライン:雲上を走る稜線の紅葉回廊

魚沼地方は良質な米と日本酒で有名ですが、その丘陵地帯の尾根を縫うように走る魚沼スカイラインは、秋にこそ真価を発揮するサイクリングコースです。

JR六日町駅を起点とする約65キロメートル、獲得標高1065メートルの走りごたえのある周回コースです。魚沼丘陵の尾根沿いを走るため、視界を遮るものがなく、越後三山や魚沼盆地の田園風景を360度のパノラマで一望できます。

紅葉はカエデ、ブナ、ナラなどが中心で、見頃は10月中旬から11月上旬です。特に寒暖差の激しい秋の早朝には、眼下に広がる幻想的な「雲海」に出会えるチャンスもあります。ルート上には魚沼展望台や十日町展望台など、絶景を堪能するためのスポットが複数設けられており、走行を中断して景色に浸る時間も計画に組み込みたいところです。

ただし、魚沼スカイラインは例年11月中旬に冬季閉鎖されるため、紅葉の見頃後半を狙う場合は、道路状況を事前に確認することが不可欠です。美しい紅葉を求めて訪れたのに道路が閉鎖されていた、という事態を避けるためにも、出発前の情報収集は怠らないようにしましょう。

厳しいライドの後には、魚沼の食文化を堪能したいものです。六日町駅周辺には、郷土料理を提供する店や、地元の新鮮な食材を炉端焼きで味わえる名店があり、サイクリストの空腹と心を満たしてくれます。魚沼産コシヒカリの新米が出回る時期でもあり、おにぎりや定食で味わう新米の美味しさは格別です。

三条・下田郷:ダム湖に映る逆さ紅葉の絶景

ものづくりの町として知られる三条市の奥座敷、下田郷エリアは、ダムと紅葉が織りなすユニークな景観が魅力です。中級者から上級者向けに40キロメートルと80キロメートルのコースが設定されており、走りごたえのあるヒルクライムが楽しめます。

景色の良い「やまなみロード」を経由し、ダムへと向かうこのルートの最大の魅力は、巨大な人工構造物であるダムと、儚く美しい自然の紅葉との対比にあります。

大谷ダムは、ロックフィル式のダムで、ダム湖である「ひめさゆり湖」の湖面に映る「逆さ紅葉」は息をのむほどの美しさです。風のない日には、湖面が完璧な鏡となり、上下対称の紅葉景観が現出します。見頃は例年10月下旬頃です。

笠堀ダムは、ニホンカモシカの保護区でもある豊かな自然の中に佇むダムです。黄金色に染まった山々が湖面に映り込み、壮大な景観を創り出します。見頃は10月下旬から11月上旬です。

このコースは、単に自然の中を走るだけでなく、土木技術の結晶と自然美が融合したダイナミックな風景を求める、写真好きなサイクリストに特におすすめです。「逆さ紅葉」という明確な撮影目標があることも、このライドのモチベーションを高めてくれるでしょう。

紅葉サイクリングを成功させる装備と情報戦略

甲信越地方での秋の紅葉サイクリングを安全かつ快適に楽しむためには、適切な装備と情報収集が不可欠です。特に標高の高いエリアを走る場合、平地とは全く異なる環境条件に対応する必要があります。

秋のレイヤリング:快適性と安全性の要

秋のサイクリングは、一年で最も気温の変化が激しい季節です。朝は10度近くまで冷え込む一方、日中は20度を超えることも珍しくありません。さらに、標高が100メートル上がるごとに気温は約0.6度下がり、下り坂では強烈な風が体温を奪います。この変化にいかに対応するかが、快適性と安全性を左右します。

ベースレイヤーは、肌に直接触れる層で、汗を素早く吸収・発散させる機能が最も重要です。汗で濡れたままになると体温を急激に奪う「汗冷え」の原因となるため、綿素材は絶対に避け、ポリエステルやメリノウールといった高機能素材を選びましょう。

ミッドレイヤーは、基本となる半袖のサイクルジャージです。秋は半袖ジャージを基本とし、気温に応じてアームウォーマーやレッグウォーマーで調整するのが賢明です。

フレキシブルレイヤーは、秋の快適性を生む核心部です。着脱が容易なアームウォーマーとレッグウォーマーを活用します。日中の気温上昇にあわせてこれらを取り外し、ジャージのポケットに収納することで、手軽に体温調節が可能です。

アウターレイヤーとして、軽量でコンパクトに収納できる防風ジャケット(ウィンドブレーカー)は必須装備です。特に長い下り坂では、これが体温低下を防ぐ生命線となります。

最大の注意点は、下りの危険性です。サイクリングウェアの選択で最も重要なのは、登りのためではなく下りのためです。登りでは体から大量の熱が発生し汗をかきますが、頂上で足を止めると体温は急速に下がり始めます。濡れたウェアのまま下り坂に突入すると、強烈な走行風によって一気に体温を奪われ、低体温症のリスクさえ生じます。頂上に着いたら下り始める前に必ずウィンドブレーカーを羽織り、グローブを装着する、この一連の動作を習慣づけることが、快適さを超えた安全対策として極めて重要です。

アクセスとレンタルサイクル:手ぶらでも本格ライド

輪行アクセスの拠点となる主要駅は、山梨県では甲府駅と竜王駅、長野県では茅野駅、新潟県では六日町駅です。これらの駅から、紹介したサイクリングコースへのアクセスが可能です。

近年、各地でレンタルサイクルの整備が進んでおり、手ぶらでも本格的なサイクリングが楽しめます。河口湖周辺では通常自転車からクロスバイク、E-BIKEまで選択肢が豊富で、料金は1日1500円から4000円程度が目安です。

長野県の茅野・白樺湖・高山村エリアでは、山岳地帯という特性からE-BIKEのレンタルが充実しています。茅野駅では1時間800円(1日上限3000円)、高山村では2時間1000円から利用可能です。

新潟県の南魚沼では、六日町駅や浦佐駅などでE-BIKEレンタルサービス「里山ミニクル」が展開されています。これらのサービスを活用すれば、輪行の手間なく、現地で気軽に紅葉サイクリングを楽しむことができます。

信頼できる情報源:公式サイクルツーリズムサイト

計画の最終段階で必ず確認したいのが、各県が運営する公式のサイクルツーリズムサイトです。これらのサイトは、モデルルートの詳細なマップ、サイクリストに優しい宿の情報、最新のイベント情報などを提供しており、旅をより豊かで安全なものにするための強力なツールとなります。

山梨県では「サイクル王国やまなし」、長野県では「NAGANO CYCLING」と「Japan Alps Cycling」、新潟県では「にいがたサイクリング旅」が、それぞれ公式ポータルサイトとして運営されています。これらのサイトでは、最新の紅葉情報や道路状況も随時更新されるため、出発直前の確認が推奨されます。

また、天気予報も重要な情報源です。特に標高の高いエリアでは、平地と山岳部で天候が大きく異なることがあります。登山向けの山岳天気予報サイトを活用し、風速や気温の予測も確認しておくと、より正確な装備準備ができます。

甲信越地方の紅葉見頃カレンダーと計画のポイント

甲信越地方の紅葉サイクリングを最大限に楽しむためには、各エリアの見頃時期を把握し、戦略的に計画を立てることが重要です。

10月上旬から中旬は、標高の高いエリアが最盛期を迎えます。ビーナスラインの草紅葉や、北アルプス山麓の七色大カエデなどが、この時期に色づき始めます。ただし、高地では気温が低く、防寒対策が特に重要になります。

10月中旬から下旬は、中標高エリアが見頃を迎えます。魚沼スカイラインや高山村・松川渓谷など、標高1000メートル前後のエリアが最も美しい時期です。気温も比較的穏やかで、サイクリングに適した条件が整いやすい時期といえます。

10月下旬から11月中旬は、山梨県の河口湖や山中湖、昇仙峡といった比較的標高の低いエリアが見頃を迎えます。この時期は天候も安定しやすく、初心者でも安心して紅葉サイクリングを楽しめます。

11月中旬以降は、昇仙峡の下流部や三条・下田郷のダム湖周辺など、限られたエリアで紅葉が楽しめます。ただし、高標高エリアでは既に冬季閉鎖が始まっているため、事前の道路状況確認が必須です。

計画のポイントとしては、複数の候補日を確保することが推奨されます。気候変動の影響で紅葉時期が変動しやすくなっているため、出発の1週間前まで最新情報を確認し、必要に応じて日程を調整できる柔軟性が成功の鍵となります。

また、平日の選択も戦略的に重要です。昇仙峡のように平日限定で特別なルートを走れる場所もあれば、河口湖のように週末の混雑を避けることで快適性が大きく向上する場所もあります。可能であれば平日に休暇を取得し、静かな紅葉サイクリングを楽しむことをおすすめします。

地域の食と文化:サイクリングをより豊かにする要素

甲信越の紅葉サイクリングの魅力は、景色だけではありません。各地域の食文化や歴史的背景を知ることで、ライド体験はより深みを増します。

山梨県では、ほうとうが代表的な郷土料理です。太い平打ち麺を野菜と味噌で煮込んだこの料理は、サイクリングで疲れた体を芯から温めてくれます。武田信玄の時代から食べられていたとされ、歴史的な背景も興味深いものがあります。

長野県では、そばが欠かせません。特に新そばの季節と紅葉時期が重なる秋は、挽きたて・打ちたて・茹でたての「三たてそば」を味わう絶好の機会です。信州そばの名店は、サイクリングルート沿いにも多く点在しています。

新潟県では、魚沼産コシヒカリをはじめとする米文化が根付いています。10月から11月は新米の季節でもあり、おにぎりや定食で味わう新米の美味しさは格別です。また、日本酒の名産地でもあり、ライド後の入浴と地酒の組み合わせは、至福のひとときを提供してくれます。

これらの食文化を楽しむためにも、ライド計画には十分な時間的余裕を持たせることが推奨されます。急いで走り抜けるのではなく、地域の食や文化に触れる時間を確保することで、サイクリングツーリズムとしての満足度が飛躍的に高まります。

安全に紅葉サイクリングを楽しむための心構え

最後に、安全に紅葉サイクリングを楽しむための心構えについて触れておきます。美しい景色に心を奪われがちですが、安全があってこその楽しみです。

まず、自分の体力とスキルに見合ったコース選択が基本です。獲得標高や距離だけでなく、路面状況や交通量なども考慮に入れましょう。初めて訪れるエリアでは、控えめな計画から始めることが賢明です。

次に、緊急時の対応準備も重要です。携帯電話の充電を満タンにしておくのはもちろん、山間部では電波が届かない場所もあることを念頭に置きましょう。パンク修理キットや携帯工具、予備のチューブなど、基本的な機材トラブルに対応できる装備を携行します。

また、単独行動のリスクも理解しておくべきです。可能であれば複数人でのライドが推奨されますが、単独で走る場合は、行程を家族や友人に伝えておくことが重要です。

気象条件の急変にも注意が必要です。特に山岳部では天候が急変しやすく、晴れていたかと思えば突然の雨や霧に見舞われることもあります。防水装備やライト類は、天候にかかわらず携行しましょう。

落ち葉による滑走リスクも見落としてはいけません。美しい紅葉の季節は、同時に路面に落ち葉が堆積する季節でもあります。特にコーナリングや下り坂では、濡れた落ち葉でタイヤが滑りやすくなります。スピードを控えめにし、慎重な走行を心がけましょう。

まとめ:甲信越の紅葉サイクリングで忘れられない秋を

甲信越地方の紅葉サイクリングコースは、それぞれが独自の魅力を持ち、サイクリストに多様な体験を提供してくれます。山梨県の富士山と渓谷美、長野県のアルプスと高原の雄大さ、新潟県のダム湖と丘陵地帯の景観、これらすべてが秋には特別な彩りを纏います。

紅葉の見頃時期は地域や標高によって異なり、10月上旬から11月下旬まで、長期間にわたって楽しむことができます。この特性を活かし、シーズンを通じて異なるコースを巡ることで、甲信越の多様な秋の表情を味わうことができるでしょう。

成功の鍵は、適切な情報収集と柔軟な計画性、そして安全を最優先にした装備準備です。最新の紅葉情報や道路状況を確認し、気候変動による見頃時期の変化にも対応できる柔軟性を持つこと。そして、レイヤリングによる体温調節と、下り坂での防寒対策を怠らないこと。これらを実践することで、快適で安全な紅葉サイクリングが実現します。

ペダルを漕ぎ、風を感じ、目の前に広がる錦秋の絶景に息をのむ、そんな忘れられない秋の一日を、甲信越の紅葉サイクリングコースで体験してみてください。自転車だからこそ味わえる、自然との一体感と達成感が、きっとあなたを待っています。

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