京都府全域を舞台にした壮大なサイクリングチャレンジ、京都一周サイクルスタンプラリー 鬼の京都 コースは、単なるスタンプラリーの枠を超えた、歴史と伝説を体感する究極の旅です。総走行距離777km、総獲得標高7500mという驚異的な数字が示すように、このコースは日本最強の鬼とされる酒呑童子の足跡を辿りながら、京都の隠された歴史の真実へと迫る冒険でもあります。参加費は無料で、数ヶ月にわたる期間中に自分のペースで挑戦できるため、初心者から上級者まで幅広いサイクリストが楽しめる設計になっています。GPSアプリを使って京都府内に点在する鬼伝承スポットを巡るこの旅は、京都ジャーナリズム歴史文化研究所代表であり世界鬼学会副会長でもある歴史作家・丘眞奈美氏が監修した深いストーリーに基づいており、サイクリストは酒呑童子や茨木童子、橋姫といった鬼たちと共に、華やかな都に潜む闇や、鬼にならざるを得なかった人々の悲しみを知ることになります。

京都一周サイクルスタンプラリー 鬼の京都 コースの基本情報
京都一周サイクルスタンプラリー 鬼の京都 コースは、京都府が誇る壮大なサイクリングイベントです。2023年版では9月1日から12月17日までの長期間にわたって開催され、参加者は自分のスケジュールに合わせて好きな時に、好きな順番で、全42箇所の鬼伝承スポットを巡ることができました。2022年版では12箇所のチェックポイントが設定されており、年によってルートやスポット数が変更されることもあります。
このイベントの最大の特徴は、その圧倒的なアクセシビリティと極めて高い難易度が両立している点です。参加費は完全無料であり、専用のGPS機能付きアプリ(TraVeloなど)をスマートフォンにダウンロードするだけで誰でも参加できます。タイムを競うレースではないため、777kmを一気に走破する猛者もいれば、週末ごとにエリアを分割して攻略するサイクリストもいます。E-バイクの使用も認められており、体力に自信がない方でも自動車や鉄道を使った輪行と組み合わせることで、鬼の聖地へとアプローチすることが可能です。
物語の核心:なぜ今「鬼」なのか
このイベントには、単なる観光スポット巡り以上の深い意味が込められています。物語の中心にあるのは、日本最強の鬼・酒呑童子と彼の仲間たちです。鬼の聖地である大江山を走るサイクリストの気配を感じて現代に目覚めた酒呑童子と茨木童子は、かつての友に会うために大江山を下り、京都各地を巡り始めます。2025-2026年版の最新ストーリーでは、さらに橋姫も仲間に加わり、鬼・仏・海・茶の4つの道を走って京都の様々な場所を訪れる新たな展開が用意されています。
参加者は、この物語の主人公としてペダルを回しながら、様々な鬼との出会いを通じて、華やかな都の表の顔だけでなく、その裏側に潜む闇や、鬼にならざるを得なかった人間の悲しみを知ることになります。歴史は勝者によって書かれるものであり、鬼退治の物語も都の論理を正当化するために作られた側面が強いという視点を持つことで、歴史の真実により深く迫ることができるのです。
都の境界から始まる冥界への旅:京都市・乙訓エリア
京都一周サイクルスタンプラリー 鬼の京都 コースの旅は、意外にも鬼の本拠地である大江山からではなく、雅やかな都の境界線から始まります。京都という都市は、光り輝く平安京の表の顔と、そのすぐ隣に冥界が口を開ける裏の顔を併せ持つ特異な場所です。
六道珍皇寺:現世と冥界の接点
ライドの起点として最初に訪れるべき場所が、京都市東山区にある六道珍皇寺です。清水寺や祇園の観光客で賑わう大通りから一歩路地に入ると、空気がひやりと変わるのを感じます。ここは現世と冥界の接点である六道の辻と呼ばれる場所であり、平安時代の官僚でありながら夜な夜な冥界に通い閻魔大王に仕えていたという伝説を持つ小野篁にまつわる冥途通いの井戸と黄泉がえりの井戸が現存しています。
なぜサイクリストがライドの最初にここを訪れるのか。それは、この鬼の京都チャレンジが、小野篁のようにこの世とあの世の境界線を曖昧にし、鬼たちが生きた闇の世界、そして歴史の裏側へと足を踏み入れるための儀式であることを象徴しているからです。ライドのスタート前やゴール後には、周辺にあるコーヒー&らうんじ 紅ゆきや、大和大路通四条下ルに位置するCafe OPALなどのカフェで、これからの旅路に思いを馳せる静かな時間を過ごすのも良いでしょう。
首塚大明神:酒呑童子の無念の終焉地
次に向かうべきは、京都市と亀岡市の境に位置する老ノ坂峠です。ここはかつての都の防衛線であり、現代ではヒルクライムに挑むサイクリストたちの息遣いが響く難所となっています。この峠には、酒呑童子伝説のクライマックスに直結する衝撃的な伝説が残る首塚大明神が鎮座しています。
大江山で源頼光に神便鬼毒酒で油断させられ首をはねられた酒呑童子の首は、胴体を求めて怒り狂いながら京の都を目指して大江山から飛翔しましたが、ついにこの老ノ坂峠で力尽きて落ちたとされています。このコース設計は実に巧みで、通常の物語が発端からクライマックス、結末へと進むのに対し、この鬼の京都ライドは都の境界である六道珍皇寺と、物語の結末である首塚大明神という、鬼の死からスタートする構造になっています。
参加者はまず酒呑童子の無念の死に直面し、「なぜ彼はこれほど無惨に殺されねばならなかったのか」という巨大な問いを抱きながら、その謎を解き明かすためにペダルを回して鬼の生の地である大江山へと向かうことになります。これはミステリー小説における結末から始まる物語のような、巧みな叙述トリックと言えるでしょう。2022年版のイベントでは、この首塚大明神の最寄りの鬼カード配布スポットが現代的なサンガスタジアム by KYOCERAであり、古代の鬼の怨念が眠る地のチェックポイントが現代スポーツの聖地となっている強烈なコントラストが、現代の京都を走る面白さを物語っています。
日本の原風景が残る森の京都:美山・京丹波エリア
都の境界に別れを告げてペダルを北西へ進めると、風景は一変します。日本の原風景が今なお色濃く残る森の京都エリア、すなわち南丹市美山町や京丹波町へと足を踏み入れることになります。
かやぶきの里と清流の癒し
目の前に広がるのは、茅葺き屋根の家々が連なるかやぶきの里の景観です。清流・由良川のせせらぎを聞きながら、静かで起伏の少ないサイクリングロードを走る時間は、まさに至福のひとときと言えます。このエリアのチェックポイントとして外せないのが、道の駅 美山ふれあい広場です。ここは単なる休憩所ではなく、人気のサイクリングイベントである美山サイクルグリーンツアーの拠点でもあり、多くのサイクリストが集う聖地となっています。
2022年版では、この道の駅が八坂神社のカード配布スポットとなっていました。ライドの補給拠点としても完璧で、美山牛乳をふんだんに使った濃厚なソフトクリームや、近隣のカフェ美卵で味わう平飼い卵の卵かけご飯は、疲れたサイクリストの身体を内側から癒してくれます。
精神的な浄化のプロセス
この森の京都エリアは、物理的な移動であると同時に、精神的な浄化のプロセスでもあります。都会的な価値観、すなわち鬼を絶対的な悪として討伐した都の論理を、この大自然の中で一度洗い流し、感覚を研ぎ澄ませることができます。それは、この先に待つ鬼の聖地である大江山で、鬼の真実と向き合うための重要な準備期間となるのです。
この丹波エリアはサイクリングに非常に力を入れており、鬼の京都とは別に、ツール・ド×京都丹波というスタンプラリーも同時期に開催されていることがあります。サンガスタジアムや府立丹波自然運動公園を発着点とした、30km、50km、85km、110km、140kmの全5ルートが設定された本格的なサイクルルートで、鬼の京都の長大なルートに挑む前のトレーニングとして、あるいは初心者向けのE-バイクライドイベントで足慣らしをするのも賢明な選択でしょう。
最大の試練:鬼の聖地・大江山
森の京都エリアを抜けると、ついに京都一周サイクルスタンプラリー 鬼の京都 コースの核心部、福知山市大江町にそびえる酒呑童子の本拠地、大江山へと至ります。ここは777kmのチャレンジにおける最大の難所であり、同時にこの旅における最大の目的地です。
圧倒的な激坂との対峙
麓から見上げる大江山の威容は、それ自体がひとつの鬼のようです。サイクリストの視点から、この挑戦の過酷さを見てみましょう。府道16号線を使った大宮峠は、まさに恐るべし峠と評されています。瞬間最大勾配は25パーセントに達し、12から14パーセント程度の勾配が長い距離にわたって続くため、普段なら十分に激坂と感じる7から8パーセントの勾配がメッチャ楽チンに思えるほどの、圧倒的な斜度が待ち受けています。
このコース設定こそが、鬼の京都の本質です。サイクリストは、奇しくも平安時代に酒呑童子討伐に向かった源頼光の一行が体験したであろう鬼の岩屋へ至る困難を、現代において自らの肉体(ペダルを漕ぐ脚)で追体験することになります。7500mという総獲得標高の多くは、この聖地への巡礼のために捧げられるのです。この苦行こそが、伝説とシンクロするための儀式にほかなりません。
日本の鬼の交流博物館:伝説の総本山
その激坂を制した者だけが、たどり着くことができる場所があります。それが鬼伝説の総本山、日本の鬼の交流博物館です。駐車場で訪問者を迎えるのは、高さ5メートル、重さ10トンにもなる巨大な鬼瓦、平成の大鬼です。その迫力に圧倒されながら館内へ入ると、そこはまさに鬼の万華鏡が広がっています。
館内には、酒呑童子伝説、麻呂子親王の三鬼退治伝説、土蜘蛛伝説という大江山に伝わる3つの鬼伝説を紹介する資料をはじめ、全国各地の鬼瓦、伝統芸能の鬼の面、さらには世界の鬼面など、約600点の鬼関連資料が所狭しと展示されています。東大寺、東寺、唐招提寺といった名だたる寺院の鬼瓦のレプリカもあり、その造形の違いを間近で比べることができます。
歴史の再解釈:鬼とは何者だったのか
ここでサイクリストは、京都市内でインプットされた鬼イコール絶対悪という単純な図式が、ガラガラと崩れ去るのを感じます。酒呑童子は平安時代、確かに王権に背き都から姫君たちをさらっていたと記録されていますが、それはあくまで都(勝者)側から見た一方的な視点ではないでしょうか。イベントのストーリーが示唆する鬼にならなければならなかった人間の悲しみとは、一体何だったのでしょうか。
酒呑童子の物語が現在知られる形で成立したのは、南北朝時代の絵巻や室町時代の謡曲「大江山」を経て、江戸初期の御伽草子が刊行されてからであり、時代と共に作られていった側面が強いのです。彼らは朝廷の支配にまつろわぬ者であり、あるいは都の繁栄の影で虐げられた人々であったのかもしれません。2022年版のイベントでは、この博物館が鬼飛岩(のぞき岩)・鬼の足跡という、まさに鬼の痕跡とされるスポットのチェックポイントとなっていました。
元伊勢三社:聖地の二面性
さらに大江山の奥深くには、元伊勢三社(元伊勢内宮皇大神社、元伊勢外宮豊受大神社、天岩戸神社)が鎮座しています。ここは伊勢神宮の神々(天照大神、豊受大神)が現在の伊勢市に遷座する前に祀られていたとされる、極めて神聖な場所です。
この事実は強烈な問いを突きつけます。皇室の祖神であり日本の最高神である天照大神の聖地と、その朝廷(一条天皇)によって討伐された鬼の聖地が、なぜ同じ山に同居しているのでしょうか。これは大江山が古来より、中央の王権(ヤマト)と、この地に根付く土着の力(まつろわぬ者イコール鬼)が激しくせめぎ合う、強烈な信仰のフロンティア(最前線)であったことを示しています。
大江山の激坂を登り切った後の補給は、まさに死活問題です。食堂 大江山の温かいそばで冷えた体を温めるのも良いですし、大江山グリーンロッジが提供する名物鬼喰うバーガーで、文字通り鬼を喰らいエネルギーに変えるのも一興でしょう。
絶景のご褒美:海の京都エリア
大江山という最大の試練を乗り越えたサイクリストには、これ以上ないご褒美が待っています。美しい日本海が眼前に広がる、海の京都エリアを巡る絶景ライドです。
丹後半島一周(タンイチ)のハイライト
ここからは、多くのサイクリストが憧れる丹後半島一周(タンイチ)のハイライト区間となります。猛暑の中での丹後半島一周でも、素晴らしい景色と美味しいかき氷やアイスを満喫できるという魅力があります。青い海と空の間を駆け抜ける爽快感、日本三景である天橋立の荘厳な松並木、そしてまるで時が止まったかのような伊根の舟屋の幻想的な風景は、大江山で酷使した脚の痛みを忘れさせるほどの力を持っています。まさにグルメライドの名にふさわしく、海の幸の宝庫でもあります。
伝説の多層性を巡るチェックポイント
しかし、この海の京都エリアのチェックポイント群は、単なる絶景スポットではありません。ここにもまた、監修者の巧みな歴史的意図が隠されています。2022年版のルートを例に、その道のりを辿ってみましょう。
まず宮津市にある道の駅 海の京都宮津を目指します。ここでチェックインの対象となるのは保昌塚(ほうしょうづか)で、これは酒呑童子退治のメンバーであった藤原保昌の墓とされる場所です。大江山で鬼(討伐された側)の視点を学んだ直後に、今度は討伐隊(討伐した側)の墓を訪れることになります。このコースは参加者に一方的な感情移入を許さず、鬼の悲しみと討伐者の功績、その両方を巡礼させることで、物語の多層性を強制的に体験させるのです。
次にペダルを進め、伊根町へ向かいます。道の駅 舟屋の里伊根でチェックインするスポットは、宇良(うら)神社です。ここは何と浦島太郎伝説発祥の地とされる神社です。さらに丹後半島を北上し、道の駅 てんきてんき丹後では、巨大な一枚岩である立岩(たていわ)が対象となります。京丹後市網野町では道の駅 丹後王国「食のみやこ」を拠点に網野兆子山古墳(あみのちょうしやまこふん)へ、久美浜町では道の駅 くみはまSANKAIKANで神谷太刀宮神社(こうやたちのみやじんじゃ)のスタンプを得ることができます。
歴史の重層性を感じる
一見、鬼とは無関係に見える浦島太郎や古墳が、なぜ鬼の京都のルートに含まれているのでしょうか。それこそが、この旅の核心に迫るヒントです。酒呑童子の鬼伝説は、丹後半島に古くから存在する多様な神話・伝説(浦島伝説のような海人族の信仰、兆子山古墳のような古代豪族の文化)の上に、後世(南北朝から室町時代)になってから塗り重ねられた物語である可能性を、このコース設定は示唆しています。
サイクリストは、鬼の伝説を追ううちに、知らず知らず、その下敷きとなったより古く、より豊かな土地の記憶そのものに触れることになります。舞鶴市の道の駅 舞鶴港とれとれセンター(青葉山のチェックポイント)で新鮮な海の幸を味わいながら、この土地の歴史の重層性に思いを馳せたいものです。
静謐なる終章:お茶の京都エリア
777kmの壮大な旅も、いよいよ最終盤です。荒々しい大江山と雄大な日本海を経て、サイクリストは京都府の南部、お茶の京都と呼ばれる南山城エリアへと入ります。
茶畑に囲まれた瞑想のライド
風景は再び一変します。これまでのドラマチックな景観とは対照的に、美しく手入れされた茶畑の景観がどこまでも穏やかに広がっています。もちろん、このお茶の京都エリアや、そこへ至る京丹波町などにも、鬼伝説が数多く残るスポットは設定されています。2022年版では、京田辺市の岩屋山千手寺や、京丹波町の道の駅 瑞穂の里さらびきなどが、その最後のチェックポイントとなっていました。
内省と消化のための時間
なぜこのライドの最後に茶のエリアが設定されているのでしょうか。茶は古来より静謐や精神統一(禅)の象徴でした。大江山で鬼という存在の激情と悲哀に触れ、海の京都で多様な神話の積層に触れたサイクリストが、最後にこの静かな茶畑の中を走ります。それは自らが体験してきたすべてを内省し、消化するための瞑想(メディテーション)の時間として、このコースが設計されているからに他なりません。
完走の先に待つもの:真実の探求
そしてついにその瞬間が訪れます。総走行距離777km、全42箇所(または12箇所)のチェックポイントの踏破です。スマートフォンのアプリが長かった旅の終わりと完全制覇(コンプリート)を告げます。オリジナル完走証や記念品(2022年版ではオリジナル完走証とご利益グッズ)を手にする瞬間の達成感は、何物にも代えがたいでしょう。
歴史の再解釈という旅の本質
しかし、私たちが手にしたのは完走証だけではありません。この京都一周サイクルスタンプラリー 鬼の京都 コースは、サイクリングというスポーツの形を借りた壮大な歴史の再解釈の旅でした。
私たちが追い求めた鬼の正体は、単なる悪の象徴としての鬼ではありませんでした。それは都の繁栄の影で鬼にならなければならなかった人間の悲しみそのものであり、王権に敗れた土着の神々であり、社会から疎外された人々であり、あるいは源頼光のような武士階級の台頭を正当化するために創られた物語の主人公であったのかもしれません。
鬼退治の真実とは
2022年版のイベントが謳っていたキャッチコピー、鬼退治の真実を明かせ。その真実とは、歴史とは勝者によって書かれるものであり、鬼退治という物語は都の論理を正当化するためのものであったという、ひとつの解釈です。
この777kmのライドを終えたサイクリストは、もはや単なる鬼退治の物語を鵜呑みにすることはないでしょう。自らの脚で777kmを走り、聖地である大江山の激坂に苦しみ、博物館で学び、海の美しさに触れた者は、鬼と人間の両方の視点をその身に宿す、この土地の真の理解者となっているはずです。
今後の開催情報と参加方法
京都一周サイクルスタンプラリー 鬼の京都 コースは、2025年も11月15日からの開催が予定されています。最新の情報を公式サイトで確認し、今度はあなたがペダルを回して鬼に会いに行く番です。現代に目覚めた酒呑童子、茨木童子、そして橋姫が、あなたの挑戦を待っています。
参加方法は非常にシンプルです。専用のGPSアプリをスマートフォンにダウンロードし、イベント期間中に京都府内の指定されたチェックポイントを巡るだけです。ペース配分は完全に自由で、一日で複数のスポットを巡ることも、週末ごとに少しずつ進めることも可能です。E-バイクの使用も認められているため、体力面で不安がある方でも挑戦できます。
準備と装備
このチャレンジに挑むにあたって、いくつかの準備が必要です。まず、777kmという長距離を走るための体力作りは欠かせません。森の京都エリアで開催されるツール・ド×京都丹波のような短距離のサイクリングイベントで足慣らしをするのも良い方法です。また、大江山のような激坂に対応できるギア比の自転車を準備することも重要です。瞬間最大勾配25パーセントという過酷な斜度に対応するためには、適切な装備が必要不可欠です。
補給食や水分補給の計画も立てておきましょう。道の駅が各エリアに点在しているため、それらを上手に活用することで、地域の美味しい食べ物を楽しみながらライドを続けることができます。美山ふれあい広場のソフトクリーム、大江山グリーンロッジの鬼喰うバーガー、舞鶴港とれとれセンターの海の幸など、各地の名物を味わうのもこのイベントの大きな楽しみです。
四季折々の魅力
京都一周サイクルスタンプラリー 鬼の京都 コースは、開催期間が数ヶ月にわたるため、季節の移り変わりを楽しむこともできます。秋の紅葉シーズンであれば、茶畑や山々が美しく色づく景色の中を走ることができますし、初冬であれば澄んだ空気の中で日本海の絶景を堪能できます。訪れる時期によって全く異なる表情を見せる京都の自然を、自転車という身体性の高い移動手段で体感できるのは、このイベントならではの魅力です。
地域との交流と文化体験
京都一周サイクルスタンプラリー 鬼の京都 コースのもうひとつの魅力は、地域との深い交流ができる点です。各チェックポイントには道の駅や神社仏閣、博物館などが設定されており、それぞれの場所で地域の文化や歴史に触れることができます。
地域の人々とのふれあい
道の駅では地元の農産物や特産品を購入できるだけでなく、地域の人々と会話を楽しむこともできます。美山町のかやぶきの里では、伝統的な建築様式の中で暮らす人々の生活を垣間見ることができますし、伊根町の舟屋では、海と共に生きる独特の文化に触れることができます。こうした交流を通じて、京都という場所が持つ多様性と奥深さをより深く理解することができるのです。
博物館や神社での学び
日本の鬼の交流博物館では、鬼という存在についての学術的な知識を得ることができます。約600点もの展示資料を通じて、鬼が日本文化の中でどのような役割を果たしてきたのか、時代と共にどのように変化してきたのかを学ぶことができます。また、各地の神社では、その土地に根付く信仰や伝説について深く知ることができます。元伊勢三社のような歴史的に重要な場所では、日本の神道の成り立ちについても考察を深めることができるでしょう。
サイクリングイベントとしての価値
京都一周サイクルスタンプラリー 鬼の京都 コースは、サイクリングイベントとしても非常に高い価値を持っています。総走行距離777km、総獲得標高7500mという数字は、日本国内のサイクリングイベントの中でもトップクラスの規模です。
多様なルート設定
このコースの素晴らしい点は、様々な地形を体験できることです。平坦な茶畑のエリア、起伏のある森の京都、過酷な激坂の大江山、そして海岸線を走る爽快な丹後半島一周と、バラエティに富んだルートが用意されています。初心者から上級者まで、自分のレベルに合わせてエリアを選択できるため、段階的にスキルアップしながら楽しむことができます。
トレーニング効果
特に大江山の激坂は、本格的なヒルクライムのトレーニングとして最適です。瞬間最大勾配25パーセント、12から14パーセントの勾配が長距離続くという過酷な条件は、確実に脚力を向上させてくれます。この大江山を制覇できれば、他のどんな峠にも挑戦できる自信がつくでしょう。また、777kmという長距離を完走することで、持久力や精神力も大幅に鍛えられます。
安全性への配慮
このイベントは期間型であるため、天候や体調に合わせて無理なく計画を立てることができます。タイムを競うレースではないため、自分のペースでゆっくりと景色を楽しみながら走ることができますし、疲れたら休憩を取ることも自由です。また、E-バイクの使用が認められているため、体力に不安がある方でも安心して参加できます。輪行を活用すれば、難しいエリアは電車で移動して、走りやすいエリアだけを自転車で楽しむという選択肢もあります。
京都の新たな魅力の発見
京都一周サイクルスタンプラリー 鬼の京都 コースに参加することで、従来の京都観光では得られない新たな魅力を発見することができます。多くの人が京都と聞いて思い浮かべるのは、金閣寺や清水寺などの有名な観光地ですが、このイベントで巡るのは、そうした表の京都ではなく、裏の京都、奥の京都です。
知られざる京都の姿
六道珍皇寺の冥途通いの井戸、老ノ坂峠の首塚大明神、大江山の鬼伝説、丹後半島の多様な神話など、このコースで出会うのは、ガイドブックにはあまり載っていない深い歴史を持つスポットばかりです。これらの場所は、華やかな平安京の裏側にあった闇や、中央権力と地方の対立、支配される側の悲しみといった、歴史の裏面を伝えています。
身体で感じる歴史
自転車で走るという行為は、バスや車での移動とは全く異なる体験をもたらします。激坂を登る苦しみ、風を切って走る爽快感、景色の移り変わりを肌で感じる喜びなど、身体性の高い移動手段だからこそ、その土地の地形や気候、歴史を深く理解することができます。平安時代に酒呑童子討伐に向かった源頼光の一行が体験した困難を、現代において自らの脚で追体験することで、伝説がただの物語ではなく、リアルな歴史の記憶として心に刻まれるのです。
完走後の充実感と達成感
京都一周サイクルスタンプラリー 鬼の京都 コースを完走した時、あなたは単なる完走証以上のものを手にしているはずです。それは、京都という土地への深い理解であり、鬼という存在についての新たな視点であり、そして777kmを走り切った自分自身への誇りです。
物語の主人公としての体験
このイベントの素晴らしい点は、参加者自身が物語の主人公になれることです。酒呑童子、茨木童子、橋姫といった鬼たちと共に、鬼・仏・海・茶の4つの道を巡る冒険の主人公として、あなたは歴史の真実を探す旅に出ます。各チェックポイントで出会う伝説や神話は、単なる観光情報ではなく、あなた自身の物語を構成する重要なエピソードとなります。
価値観の変化
多くの参加者が、このイベントを通じて価値観の変化を経験します。鬼イコール悪という単純な図式が崩れ、歴史は勝者によって書かれるものであり、その裏側には別の真実があるかもしれないという視点を得ることができます。鬼にならざるを得なかった人々の悲しみに思いを馳せることで、現代社会における疎外や差別といった問題についても、より深く考えるきっかけになるかもしれません。
まとめ:ペダルを回して真実を探す旅へ
京都一周サイクルスタンプラリー 鬼の京都 コースは、総走行距離777km、総獲得標高7500mという数字が示す通り、決して簡単な挑戦ではありません。しかし、その困難を乗り越えた先には、他では得られない貴重な体験と深い学びが待っています。
都の境界である六道珍皇寺から始まり、酒呑童子の無念の終焉地である首塚大明神、日本の原風景が残る森の京都、最大の試練である大江山、絶景のご褒美である海の京都、そして静謐なる終章であるお茶の京都まで、各エリアは単なる地理的な区分ではなく、物語を構成する重要な章として設計されています。
参加費無料、期間型イベント、E-バイク使用可という高いアクセシビリティと、極めて高い難易度が両立しているこのイベントは、初心者から上級者まで、すべてのサイクリストに門戸を開いています。あなたのレベルに合わせて、一気に777kmを走破することも、週末ごとに少しずつ進めることも可能です。
2025年も11月15日からの開催が予定されている京都一周サイクルスタンプラリー 鬼の京都 コース。現代に目覚めた酒呑童子、茨木童子、橋姫と共に、ペダルを回して鬼の真実を探す壮大な旅に、あなたも挑戦してみませんか。その先に待つのは、完走証だけではなく、京都という土地への深い理解と、自分自身の成長という、かけがえのない宝物です。









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