11月のビワイチ完全ガイド:服装と寒さ対策でメタセコイヤ並木を快適に走破する方法

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11月の琵琶湖一周、通称ビワイチは、サイクリストにとって特別な意味を持つ季節のライドです。秋の深まりとともに、琵琶湖周辺は色鮮やかな紅葉に包まれ、特に高島市マキノ町のメタセコイヤ並木は、レンガ色に染まった約2.4kmの並木道が、まるで異世界への入り口のような幻想的な景観を作り出します。11月中旬から下旬にかけて見頃を迎えるこの景色を求めて、多くのサイクリストが琵琶湖を訪れます。しかし、この美しい季節には、初心者が見落としがちな重要な課題が潜んでいます。それが「服装」と「寒さ対策」です。11月の琵琶湖周辺は、一日の中で気温が大きく変動し、早朝は5度から8度程度まで冷え込む一方、日中は14度から20度まで上昇することもあります。さらに、広大な湖面を渡る風は、体感温度を著しく低下させ、16時台には日が沈み始めることから、時間との戦いにもなります。これらの環境要因を理解せずにビワイチに挑むと、低体温症や体調不良といった深刻なリスクに直面する可能性があります。本記事では、11月のビワイチを安全かつ快適に完走するための服装選びと寒さ対策について、専門的な視点から詳しく解説していきます。

目次

11月のビワイチを取り巻く3つの環境要因

11月のビワイチを攻略するには、この時期特有の環境要因を正しく理解することが不可欠です。まず第一に挙げられるのが、気温の急激な変動です。滋賀県大津市のデータを見ると、11月の平均最高気温は月初で約20度ですが、月末には14度まで低下します。これは平均値であり、実際には早朝のスタート時点で5度から8度程度まで冷え込むことも珍しくありません。つまり、一日のライドの中で10度以上の寒暖差に晒されることになります。この寒暖差こそが、服装選びを難しくする最大の要因となっています。

第二の要因は、琵琶湖特有の風です。琵琶湖は日本最大の湖であり、その広大な湖面を渡る風は、特に遮蔽物のない湖岸線や琵琶湖大橋周辺で強く吹き付けます。ビワイチは一見すると平坦なコースに見えますが、実際には風の影響を強く受けるため、体力的にも精神的にも想像以上に過酷です。風によるウィンドチル効果により、気温が10度であっても、時速20kmで走行中に時速10kmの向かい風を受ければ、体感温度は氷点下近くまで下がることもあります。

第三の要因は、日没時刻の早さです。11月中旬の滋賀県では、日の入り時刻が16時55分頃となります。これは16時台後半にはすでに薄暗くなり始め、17時には完全な暗闇に包まれることを意味します。もし風や予期せぬトラブルで走行ペースが落ちた場合、暗闇と急激な気温低下という二重の困難に直面することになります。このため、日没時刻は絶対的なタイムリミットとして意識する必要があります。

服装戦略の核心:レイヤリングという科学的アプローチ

11月のビワイチにおける服装の基本原則は、レイヤリング(重ね着)です。一枚の厚手の防寒着では、気温変動に対応できません。スタート時の寒さに合わせて厚着をすると、日中の気温上昇で大量の汗をかき、その汗が夕方の冷え込みで体温を奪う「汗冷え」を引き起こします。レイヤリングとは、複数の衣服を重ね、状況に応じて脱ぎ着することで体温を一定に保つ科学的な方法です。

基本となるのは3層構造の考え方です。第1層は肌に直接触れるベースレイヤー(肌着)で、汗を素早く吸収し肌表面をドライに保つ役割を担います。第2層はミッドレイヤーと呼ばれる保温層で、長袖の防寒ジャージなどが該当します。この層は保温性と通気性を両立させることが重要です。第3層はアウターレイヤーで、風や雨から体を守る防風・防水機能を持つシェルジャケットやベストが該当します。

このレイヤリングシステムの最大の利点は、柔軟性にあります。気温や運動強度に応じて、一枚ずつ着脱することで、常に最適な体温を維持できます。例えば、早朝の寒い時間帯は3層すべてを着用し、日中の気温上昇に合わせてアウターレイヤーを脱ぎ、さらに暑くなればミッドレイヤーも調整するといった具合です。

上半身の服装:各レイヤーの選び方と機能

上半身のレイヤリングにおいて、最も重要なのがベースレイヤーの選択です。ベースレイヤーは汗冷え対策の要であり、素材選びが成否を分けます。絶対に避けるべき素材が綿(コットン)です。綿は吸湿性に優れますが、一度濡れると乾きにくく、水分を保持し続けるため、汗冷えを促進してしまいます。選ぶべきは、ポリエステルなどの化学繊維か、保温性と吸湿性を両立するメリノウールです。

近年注目されているのがメッシュ構造のベースレイヤーです。一見すると穴だらけで寒そうに見えますが、実際には優れた保温性を発揮します。その仕組みは、メッシュ構造が肌と上に着る衣類との間に空間を作り、汗を肌から素早く引き離して上のレイヤーに移行させることにあります。肌表面を常にドライに保つことで、体温で温められた空気の層が形成され、結果として高い保温性を実現するのです。長袖のサーマルタイプのベースレイヤーが基本ですが、メッシュベースレイヤーの上にもう一枚薄手のベースレイヤーを重ねる「ダブルベースレイヤー」方式も、汗の処理能力と保温性を両立させる高度な戦略として有効です。

ミッドレイヤーには、気温10度前後に対応した長袖ジャージを選びます。具体的には、裏地が薄く起毛した「サーマルジャージ」と呼ばれるカテゴリーの製品が最適です。このレイヤーの役割は、保温と通気のバランスを取ることです。防風性が高すぎるジャージを選ぶと、ベースレイヤーが吸い上げた汗が抜け出せず、ジャージの内側が結露して汗冷えの原因となってしまいます。適度な通気性を持ちながら保温できる素材を選ぶことが重要です。

アウターレイヤーは、琵琶湖特有の風から体温を守る盾の役割を果たします。完全防水のレインジャケットも選択肢の一つですが、11月のビワイチでは、前面が防風素材で背面が通気性の高い素材でできた「ウィンドブレークジャケット」や、袖のない「ジレ(ベスト)」がより適しています。その理由は、冷たい向かい風から体幹を完璧に守りつつ、熱がこもりやすい背中から効率よく汗を排出できるからです。完全防水のレインウェアは外部からの水の侵入を防ぐ反面、内部の汗も排出しにくく、汗冷えのリスクを高める可能性があります。

レイヤリングの柔軟性をさらに高めるアクセサリーとして、アームウォーマーも有効です。半袖ジャージにアームウォーマーを組み合わせることで、日中の気温上昇に対してアームウォーマーをずり下げるか取り外すだけで即座に対応できます。長袖サーマルジャージ一枚よりも、夏用半袖ジャージにアームウォーマーと防風ジレを組み合わせる方が、調整できる幅が格段に広く、寒暖差の激しいビワイチに適しています。

下半身の服装:ペダリング効率と保温の両立

下半身は、サイクリングにおいて常に熱を発生させ続けるエンジンです。しかし同時に、太ももの前面や膝は走行風に直接晒され、極度に冷えやすい部位でもあります。下半身の服装の基本は、気温10度前後に対応した裏起毛のサーマルビブタイツです。

ビブタイツを選ぶ際には、防風性能に注目します。冷えやすい太ももや膝の前面に防風素材を配置し、汗をかきやすい後面は通気性の高い起毛素材を採用したビブタイツが、琵琶湖の強風対策として非常に有効です。ウィンドブレーク素材のような「冷風を通さず暖かい」防風素材を前面に配置することで、向かい風による体温低下を防ぎながら、背面からは汗を効率よく排出できます。

下半身において見落とされがちなのが、お尻の汗冷えです。登坂時などに大量に汗をかくと、サドルと接するパッド(クッション部)が汗でびっしょりと濡れてしまいます。この濡れたパッドが休憩中や下り坂で冷やされると、股関節周辺から体温が奪われます。股関節周辺には体幹につながる太い血管が集中しており、ここを冷たいパッドで直接冷やし続けることは、非常に不快であるだけでなく、体幹の体温を直接奪い、低体温症のリスクファクターとなります。

対策は、吸湿速乾性が高い高品質なパッドを採用したビブタイツを選ぶことです。安価なインナーパンツや、密度が低く汗を保持しやすいスポンジのようなパッドは避けるべきです。お尻の汗冷えは想像以上に深刻な問題であり、快適性だけでなく安全性にも直結します。

末端部位の完全防備:手・足・頭の防寒対策

手や首、足先などの末端部位を守ることは、寒い季節のサイクリングにおいて極めて重要です。人体が寒さを感知すると、脳は生命維持を最優先し、末端への血流を減少させる血管収縮を起こします。これにより、手足は体の他のどの部分よりも急速に冷え、感覚を失っていきます。

手の防寒には、指先まで完全に覆うフルフィンガーグローブが必須です。指先がかじかんでブレーキやシフトの操作が鈍ることは、即座に事故につながる危険性があります。11月のビワイチのように気温が変動する環境下では、薄手の防風グローブと中厚手の保温グローブの中間、あるいは安全マージンを見て中厚手を選ぶのが賢明です。さらに、インナーグローブとの重ね着も有効な戦略です。スタート時の寒い時間帯はインナーとアウターの二重で、日中の暑い時間帯はアウターグローブを外してインナーグローブだけで対応するなど、状況に応じた微調整が可能になります。

足先の防寒は、サイクリングにおける最大の弱点です。足先は走行中に自ら熱を発生させることが少なく、ペダリング中もほぼ動かず、さらに真正面から風を受け続けるため、人体で最も冷えやすい部位です。気温5度に対応する冬用シューズカバーは、11月のビワイチにおいて定番アイテムとなります。ウィンドブレーク素材のような高い防風性を備えた製品を選びましょう。

さらに高度な防寒戦略として、シューズカバーとトゥーカバー(つま先だけのカバー)、ウィンターソックスを組み合わせる三重の防御があります。基本は5度対応のシューズカバーを装着し、特に寒さが厳しい日や寒さに弱い方は、シューズの中にトゥーカバーを装着し、さらにウィンターソックスを履くことで、最強の防寒対策となります。万が一、日没後も走行がずれ込む事態に備え、カイロポケット付きのプレミアムシューズカバーも強力な保険となります。

頭部と首からの熱損失も無視できません。夏場は快適なヘルメットの通気口(ベンチレーション)ですが、冬は冷たい風が直撃し、体温を奪う煙突と化します。ヘルメットの下に、薄手で防風性のあるインナーキャップ(サイクルキャップ)を被ることは必須です。首には体温調整に重要な太い頸動脈が通っており、ここを冷やすと体全体が効率よく冷えてしまいます。サイクリストはネックウォーマー(バフ)を使用します。これは防寒具としてだけでなく、上げ下げすることで体温調節のツールとしても機能します。

汗冷え対策:11月ビワイチ最大の敵

11月のビワイチにおいて、サイクリストが最も警戒すべきは寒さそのものではなく、自らが生み出す汗による汗冷えです。そのメカニズムはシンプルかつ致命的です。登坂区間や強風に向かってペダルを漕ぐ際、体温は急激に上昇し、体は冷却のために発汗します。汗によって肌着が湿り、休憩中や下り坂で高速の走行風に晒された瞬間、濡れた肌着の水分が気化します。この気化熱が、皮膚表面から爆発的に熱を奪い去るのです。

汗冷えは、高価な防寒ジャケットを内側から無力化する内なる敵です。サイクリングウェアにおける保温の鍵は、肌と衣服の間に空間を作り、その空気の層を体温で温めることにあります。しかし、ひとたび汗でこの空間が水で満たされると、事態は一変します。水の熱伝導率は空気の約20倍以上であり、濡れた肌着は保温層から熱伝導体へと変貌し、まるで冷たい鉄板を肌に押し当てているかのように体温を奪い去ります。

汗冷えを防ぐもう一つの重要な要素が、サイクリスト自身の走り方です。登り坂や風の強い区間で、必要以上に心拍数を上げてオーバーペースになり、無駄な汗をかくことを避けるペースマネジメントが重要です。11月のビワイチにおいては、汗をかきすぎることがリスクを負うことだという認識を持つことが、ウェアの性能を最大限に引き出す鍵となります。

動的な体温調節の実践テクニック

最高の装備を揃えただけでは、11月のビワイチは攻略できません。装備を適切に管理する技術が必要です。その中心となるのが、ジッパーの開閉です。ジッパーの開閉こそが、冬のライドにおいて最も多用し、かつ最も効果的な体温調節手段となります。

実践的な方法として、登り坂に差し掛かり、体が熱くなってきたと感じる前に、アウタージャケットのジッパーを下から開け、新鮮な空気を取り入れ、こもった汗を強制的に排出します。汗をかきそうだと体が感じたら、即座にペースを落とすか、ジッパーを開けるか、あるいはその両方を行う。この先読みの動的体温調節こそが、汗冷えを防ぐ唯一の鍵です。

アウターレイヤーやジレの着脱のタイミングも重要です。暑くなってから脱ぐのではなく、暑くなりそうだと感じたら脱ぐのが正解です。具体的には、登りが始まったら脱ぎ、逆に下り坂や強風区間に突入する前に着込むのです。すべての基本として、スタート時は少し肌寒いと感じる程度が正しい服装です。走り出せば5分で体は温まることを計算に入れなければなりません。スタート時に完璧に温かいと感じる服装は、15分後には暑すぎになり、汗冷えの第一歩を踏み出しているのです。

エネルギー補給と低体温症リスクの管理

11月のビワイチにおける寒さ対策は、服装だけで完結しません。エネルギー補給時間管理、そして生理的な変化への対応が、完走の可否、ひいては生命の安全を左右します。

ハンガーノック(エネルギー枯渇)は、冬のライディングにおいて夏場とは比較にならないほど危険です。寒い環境下では、体はペダリングのエネルギーに加えて、体温を維持するためにも余分にエネルギーを消費し続けます。つまり、サイクリストの体は、夏場よりも燃費が著しく悪い状態にあります。対策は、エナジージェル、スポーツようかん、バナナなどの補給食を携帯し、喉が渇く前、お腹が空く前に、機械的かつ定期的に糖質を補給し続けることです。

さらに深刻なのが低体温症です。これは汗冷えが進行し、体の深部体温が安全な範囲(35度以上)を維持できなくなった、生命に関わる状態です。初期症状として、手足が冷たくなり、寒さで震えます。この震えは、体が必死に熱を作ろうとしている重要なアラートです。危険な兆候は、震えが止まること、意識障害、歩行不能などです。体温が32度以下になると震えが消失しますが、これは体が熱産生を諦めた非常に危険なサインです。

もし仲間がこの状態に陥ったら、それは根性の問題ではなく医療的緊急事態です。即座にライドを中断し、風を避け、濡れた衣服はすべて脱がせます。着替えがなくとも、濡れたままにしておくのが最悪です。毛布や持っているすべての上着でくるみ、人肌程度のお湯(42度を超えると火傷の危険)を入れたペットボトル湯たんぽを、脇の下、股の付け根、首の回りといった血流の多い部位に当て、体幹から温めます。意識があり、むせないようであれば、カロリーのある飲み物を与えます。

ハンガーノックと低体温症は密接に結びついています。体が寒いと感じて震えが始まると、この震えは筋肉を細かく動かすことで熱を産生する最後の防衛手段ですが、同時に糖質を猛烈な勢いで消費します。ここで補給を怠り、体内の糖質が枯渇すると、ハンガーノック状態に陥ります。燃料を失った体は、熱産生の手段を失い、震えることすらできなくなり、低体温症の深みにはまっていくのです。つまり、補給食は空腹を満たすためではなく、生命維持燃料なのです。

日没時刻との戦い:タイムリミットの重要性

11月中旬の滋賀県では、日の入り時刻が16時55分頃となります。この時刻は、低体温症リスクと掛け算で考える必要があります。17時に走行している場合、周囲の気温は日中最高気温ではなく、夜間の最低気温(しばしば5度以下)に向かって急降下しています。

したがって、夜間走行用のライトは、万が一のためではなく、ほぼ必須の装備として携行しなければなりません。ビワイチの全行程(約150kmから200km)と、強風による遅延リスクを考えれば、計画通りに日没前に走り終えられるとは限らないからです。前照灯と尾灯の両方を準備し、電池の予備も携行することが推奨されます。暗闇の中での走行は、視界が悪くなるだけでなく、気温の急激な低下とも重なり、リスクが倍増します。

日没時刻を絶対的なタイムリミットとして意識し、逆算してスタート時刻を設定することが重要です。余裕を持った計画を立て、万が一のトラブルに備えて、最低でも1時間から2時間の余裕を見ておくことが賢明です。

ライド後のケアと体のリセット

見落とされがちな最後の寒さ対策が、ライド後の行動です。ライドを終えた直後、興奮冷めやらぬまま、汗で濡れたウェアを着たまま屋外で談笑していると、汗冷えが急速に進行し、風邪をひくなど体調を崩す原因となります。

バイクの洗車で汗や汚れをリセットすることが推奨されるように、サイクリストもまた、ライド終了後、間髪入れずに乾燥した衣服への着替えと温かい飲み物によって、濡れて冷えた体をリセットする儀式が必要です。着替えは速やかに行い、温かいシャワーや入浴で体を温め、冷えた筋肉をほぐします。温かい飲み物や食事で内側から体を温めることも重要です。

自転車の変化に気づくことで大きな事故を未然に防げるように、11月のビワイチにおいても、自分の体の変化(寒さ、震え、空腹)に誰よりも早く気づき、対策(ジッパー操作、補給)を先手で打つことが、この美しい季節のビワイチを最高の思い出として完走するための最大の秘訣です。

装備チェックリスト:万全の準備で臨む

11月のビワイチに必要な装備を改めて整理すると、上半身はメッシュまたはサーマルタイプの長袖ベースレイヤー、裏起毛の長袖サーマルジャージ、防風ジレまたはウィンドブレークジャケット、そしてアームウォーマーです。下半身は裏起毛のサーマルビブタイツ、できれば前面に防風素材を配置したタイプが理想的です。

末端部位の防寒として、フルフィンガーの防風グローブ(インナーグローブとの重ね着も検討)、5度対応の冬用シューズカバー(トゥーカバーやウィンターソックスとの併用も有効)、ヘルメット用インナーキャップ、そしてネックウォーマーを用意します。

補給食として、エナジージェル、スポーツようかん、バナナなど、素早くエネルギーに変わる糖質を豊富に携行します。水分補給用のボトルも忘れずに、できれば保温ボトルがあると冷たい飲み物で体を冷やすリスクを減らせます。

安全装備として、前照灯と尾灯、予備電池、そして万が一の低体温症対策としてエマージェンシーシートを携行することも検討に値します。スマートフォンは緊急連絡手段として必須ですが、寒さでバッテリーが消耗しやすいため、モバイルバッテリーも持参しましょう。

天候判断と当日の最終確認

11月のビワイチは、天候によって難易度が大きく変わります。出発前には必ず当日の天気予報を詳細に確認し、気温、風速、降水確率をチェックします。特に風速が10メートル毎秒を超える予報の場合は、ルート変更や中止も視野に入れるべきです。雨の予報がある場合は、完全防水のレインウェアを追加し、視界確保のためのアイウェアも準備します。

当日の朝、スタート地点で最終的な服装調整を行います。実際の気温を肌で感じ、レイヤリングの枚数を微調整します。少し肌寒いと感じる程度がちょうど良い状態です。暑すぎると感じる場合は、スタート前に一枚減らすことを検討しましょう。

ライド中は、常に自分の体の状態に注意を払います。寒気を感じたらすぐに一枚追加し、暑さを感じたら汗をかく前にジッパーを開けるか一枚脱ぎます。震えが始まったら、それは体が発する重要な警告サインです。すぐに休憩を取り、温かい飲み物と補給食を摂り、必要に応じて防寒対策を強化します。

経験者から学ぶ実践的なヒント

ビワイチを何度も経験しているサイクリストたちからは、いくつかの実践的なヒントが共有されています。まず、休憩のタイミングです。体が冷える前、疲れる前に、定期的に休憩を取ることが重要です。休憩時には濡れたウェアを着替える、または一枚追加するなど、体温管理を徹底します。立ち止まると急速に体が冷えるため、休憩は短めに、体を動かし続けることを意識します。

風向きの活用も重要なテクニックです。琵琶湖周辺では、時計回りと反時計回りでは風の影響が大きく変わります。当日の風向きを事前に確認し、できるだけ追い風を利用できるルートを選ぶことで、体力の消耗と風による体温低下を軽減できます。

仲間との走行も安全性を高めます。一人で走るよりも、複数人で走ることで、互いの体調変化に気づきやすくなります。低体温症の初期症状は、本人よりも周囲の方が先に気づくことが多いため、仲間同士で声を掛け合いながら走ることが推奨されます。また、トラブル時の対応も複数人の方が安全です。

地元の情報活用も有効です。琵琶湖周辺には多くのサイクリストが立ち寄るカフェやコンビニエンスストアがあります。事前にそれらの場所を確認し、休憩ポイントとして活用することで、温かい飲み物や補給食の調達、トイレ休憩、そして万が一の際の避難場所として利用できます。

医学的観点からの寒さ対策

医学的観点から見ると、11月のビワイチにおける寒さ対策は、体温調節機能の理解が基盤となります。人体は体温を一定に保つため、寒い環境では血管を収縮させて熱の放散を防ぎ、筋肉を震わせて熱を産生します。しかし、この体温調節機能には限界があり、特に末端部位は優先順位が低いため、真っ先に冷えます。

脱水症状も冬季に見落とされがちなリスクです。寒いと喉の渇きを感じにくくなりますが、実際には呼吸による水分蒸発や発汗により、体は確実に水分を失っています。脱水は血液の粘度を高め、循環機能を低下させ、結果として体温維持能力を損ないます。したがって、喉が渇いていなくても、定期的に水分補給を行うことが重要です。

カロリー消費も見逃せません。寒い環境下では、基礎代謝が上がり、体温維持のために通常よりも多くのカロリーを消費します。サイクリングという運動によるカロリー消費に加え、寒さによる追加のカロリー消費を見込んで、十分な補給食を携行する必要があります。特に糖質は、即座にエネルギーに変換されるため、こまめな補給が推奨されます。

装備の事前テストの重要性

11月のビワイチに臨む前に、装備の事前テストを行うことを強く推奨します。新しいウェアやグローブ、シューズカバーは、実際に使用してみないと、サイズ感や機能性が分かりません。本番前に、同じような気温条件下で短時間のライドを行い、装備の動作確認を行いましょう。

特にレイヤリングのバランスは、実際に走ってみないと適切かどうか判断できません。スタート時に少し肌寒いと感じる程度が適切と前述しましたが、これも個人差があります。自分の体質や発汗量、寒さへの耐性を理解し、最適なレイヤリングを見つけるには、事前の試走が不可欠です。

グローブの操作性も重要な確認ポイントです。厚手のグローブでブレーキやシフトレバーの操作がスムーズにできるか、ジッパーの開閉が容易にできるかを確認します。操作性が悪いグローブは、いざという時に危険を招きます。

シューズカバーのフィット感も事前に確認します。サイズが合わないと、走行中に脱げてしまったり、逆にきつすぎて足先の血行を妨げ、余計に冷えてしまったりします。実際に装着して数十キロ走り、問題がないことを確認しておきましょう。

琵琶湖の美しさを安全に楽しむために

11月の琵琶湖は、日本のサイクリングスポットの中でも特別な美しさを誇ります。メタセコイヤ並木の紅葉はもちろん、湖面に映る秋の空、冷たく澄んだ空気、そして静かな湖畔の風景は、この季節ならではの魅力です。長浜駅周辺の歴史的な観光スポットや、湖北エリアの文化財を巡るルートも、サイクリングの楽しみを倍増させます。

しかし、その美しさを心から楽しむためには、安全と快適さが大前提です。適切な服装と寒さ対策、十分な補給、そして時間管理を徹底することで、初めてこの絶景を存分に味わうことができます。寒さに震えながら、ただ完走することだけを目標にするのではなく、余裕を持って景色を楽しみ、写真を撮り、地元の食事を味わう。そんな充実したビワイチを実現するために、準備を怠らないことが大切です。

11月のビワイチは、気温の変動、琵琶湖特有の風、そして早い日没という3つの環境要因との戦いです。しかし、適切なベースレイヤー、効果的なレイヤリング、末端部位の完全防備、そして汗冷え対策という知識で武装すれば、これらの困難を克服できます。エネルギー補給を怠らず、体の変化に敏感になり、先手で対策を打つ。そして何より、無理をせず、自分の体力と経験に合わせたペースで走る。これらを守ることで、11月の琵琶湖が見せる最高の景色を、安全かつ快適に楽しむことができるのです。

冬の到来を前にした最後のご褒美ライド、11月のビワイチ。適切な準備と知識を持って臨めば、それは人生の中でも忘れられない、素晴らしいサイクリング体験となるでしょう。

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