広島県呉市は、瀬戸内海の美しい景色と豊かな歴史文化を自転車で楽しめる、まさにサイクリストの楽園です。旧日本海軍の拠点として栄えた呉には、戦艦大和の建造地として知られる造船の歴史や、現在も活動する海上自衛隊の施設など、他では体験できない独特の魅力があります。
とりわけ注目すべきは、呉を起点とする「安芸灘とびしま海道」です。7つの島々を結ぶこの海の道は、しまなみ海道とは異なる穏やかで情緒あふれる風景を提供してくれます。また、市街地では大和ミュージアムやてつのくじら館といった海事関連の施設を巡りながら、平坦で走りやすい道のりを楽しむことができます。
呉のサイクリングの最大の魅力は、初心者から上級者まで幅広いレベルに対応したコースが豊富にあることです。海沿いの爽快な風景、歴史を感じる港町の情緒、そして瀬戸内海の島々を結ぶ橋梁の美しさ。これらすべてを自転車で味わえる呉は、まさに西日本屈指のサイクリングデスティネーションと言えるでしょう。

Q1: 呉で初心者におすすめのサイクリングコースはどこですか?
呉で初心者の方に最もおすすめしたいのは、呉市内ポタリングコースです。このコースは距離が10~20km程度と短く、ほぼ平坦な道のりで構成されているため、サイクリングに慣れていない方でも安心して楽しめます。
具体的なルートは、JR呉駅をスタート地点として、大和ミュージアム、てつのくじら館、アレイからすこじま、入船山記念館を巡るコースです。これらのスポットは比較的近い距離にあるため、無理のないペースで観光とサイクリングを両立できます。
特に安全面での配慮として、このコースは市街地を中心としているため、迷子になるリスクが低く、困った時にはすぐに助けを求められる環境が整っています。また、各観光施設には駐輪場が完備されており、自転車を安全に停めて見学することができます。
初心者の方が注意すべき点は、交通量の多い道路での走行です。特に国道185号線や蔵本通り周辺は車通りが多いため、歩道がある場合は歩道を利用し、車道を走る際は十分に注意を払いましょう。
さらに初心者向けの配慮として、休憩スポットの充実も魅力の一つです。大和ミュージアム内のカフェや、蔵本通り周辺の商店街では、いつでも水分補給や軽食を取ることができます。
もう一つの初心者向けコースとして、音戸の瀬戸周辺もおすすめです。呉市街から約10kmの距離にあり、平清盛ゆかりの歴史的な名勝地を訪れることができます。音戸大橋の美しい景観は、サイクリングの思い出に残る絶景スポットです。
Q2: とびしま海道サイクリングの魅力と注意点は何ですか?
とびしま海道の最大の魅力は、7つの島々を橋で結ぶ壮大なシーサイドライドにあります。愛媛県今治市の岡村島から広島県呉市まで約30kmの道のりは、「裏しまなみ」とも呼ばれ、しまなみ海道とは異なる静寂で風情ある景観が楽しめます。
景観の美しさでは、各島の海岸線はほぼ全てが海沿いを通っており、防波堤も低いため海を間近に感じながら走ることができます。特に大崎下島や上蒲刈島、下蒲刈島の南側ルートは開放的で、四国の山々まで見渡せる絶景が続きます。波音を聞きながらのサイクリングは、まさに非日常の体験となるでしょう。
橋梁の個性も見どころの一つです。安芸灘大橋、豊浜大橋、蒲刈大橋など、それぞれ異なるデザインの美しい橋が架かっており、しまなみ海道にはない独特の造形美を楽しむことができます。自転車・歩行者は全ての橋で通行料が無料という点も魅力的です。
歴史と文化の体験として、御手洗町並み保存地区では江戸時代の港町の面影を色濃く残した街並みを散策できます。また、映画『ドライブ・マイ・カー』や『東京家族』のロケ地としても知られ、「絵になる風景」が至る所に点在しています。
しかし、とびしま海道にはいくつかの注意点があります。まず補給ポイントの少なさが挙げられます。コンビニエンスストアがほぼ存在しないため、十分な水分と補給食を事前に準備することが必須です。
橋への登坂も課題の一つです。島と島を結ぶ橋は数十メートルの高さがあり、急な坂道を登る必要があります。電動アシスト自転車の利用や、十分な体力準備をおすすめします。
フェリーの時刻管理も重要な注意点です。今治から岡村島への移動、または呉からの帰路でフェリーを利用する場合、最終便に乗り遅れないよう余裕のあるスケジュールを組む必要があります。
自転車トラブル対応として、とびしま海道周辺には自転車修理店がないため、出発前の点検整備と、最低限の修理工具の携帯をおすすめします。
Q3: 呉のサイクリングで立ち寄りたい観光スポットはありますか?
呉のサイクリングでは、他では体験できない海事関連の特別な観光スポットを巡ることができます。これらの施設は呉の歴史と文化を深く理解できる貴重な場所です。
大和ミュージアム(呉市海事歴史科学館)は、呉サイクリングの絶対的なハイライトです。戦艦「大和」の10分の1スケールモデルは圧巻の迫力で、日本の造船技術の粋を間近で見ることができます。館内では呉の造船の歴史や科学技術の発展について学ぶことができ、サイクリングの知的な休憩スポットとしても最適です。
てつのくじら館(海上自衛隊呉史料館)では、実物の潜水艦「あきしお」の内部を見学できる世界でも珍しい体験ができます。全長76.2mの巨大潜水艦の艦内設備や、潜水中の環境を疑似体験することで、海上自衛隊の活動について理解を深めることができます。入場料が無料という点も魅力的です。
アレイからすこじまは、日本で唯一、潜水艦を間近で見ることができる公園です。現役の護衛艦や潜水艦が停泊している様子を見学でき、その迫力は圧倒的です。公園からの景色も美しく、サイクリングの休憩ポイントとしても人気があります。
入船山記念館は、旧呉鎮守府司令長官官舎を中心とした歴史公園で、明治時代の洋風建築の美しさを堪能できます。特に庭園の美しさは四季を通じて楽しめ、桜の季節には多くの観光客が訪れます。
とびしま海道方面では、御手洗町並み保存地区が必見スポットです。大崎下島にあるこの地区は、江戸時代から明治時代にかけての港町の町並みが完全に保存されており、重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。石畳の道や伝統的な商家建築は、まるでタイムスリップしたかのような感覚を与えてくれます。
音戸の瀬戸は、平清盛が夕日を招き返して一日で切り開いたという伝説で有名な名勝地です。現在は美しい赤いアーチ橋が架かり、瀬戸内海の青い海とのコントラストが絶景を生み出しています。春には約2000本の桜が咲き誇り、サイクリングと花見を同時に楽しめます。
県民の浜(上蒲刈島)は、日本の渚百選にも選ばれた美しいビーチで、透明度の高い海水と白い砂浜が魅力です。夏季には海水浴も楽しめ、サイクリングの疲れを癒す絶好のリフレッシュスポットとなっています。
Q4: 呉サイクリングでのレンタサイクルや交通アクセスはどうすればいいですか?
呉でのサイクリングを計画する際、レンタサイクルの選択肢は用途に応じて複数あります。最も便利なのは、とびしま海道レンタサイクルです。このサービスは事前予約制で、岡村港、大長港、小長港、県民の浜、下蒲刈コテージ梶ヶ浜、JR仁方駅の各ポイントで配車・乗捨てが可能です。
料金体系は車種によって異なり、電動アシスト付き自転車が8時間3,000円、クロスバイクや小径車が8時間2,000円、子供用自転車が8時間1,000円となっています。配車や乗捨てを依頼する場合は、1台につき1,000円の追加料金がかかります。例えば、岡村港で受け取りJR仁方駅で返却する場合、クロスバイクなら2,000円+1,000円+1,000円で合計4,000円となります。
しまなみレンタサイクルをとびしま海道で使用することも可能ですが、とびしま海道エリアはサポート外となるため、トラブル時の対応に注意が必要です。今治駅前サイクリングターミナルで借りて、とびしま海道を往復または部分的に楽しんで今治に戻るプランに適しています。
交通アクセスでは、電車利用の場合、JR呉線でJR呉駅まで直接アクセスできます。広島駅からは約45分、岩国駅からは約1時間30分の所要時間です。車でアクセスする場合は、山陽自動車道の呉ICから市街地まで約10分です。
今治~岡村島間のフェリーアクセスは、とびしま海道サイクリングの重要な要素です。現在、フェリー「せきぜん」と旅客船「とびしま」の全便で自転車積載が可能になっています。フェリーは車両も積載でき、旅客船「とびしま」は自転車専用スペースに最大10台まで積載可能です。
運行スケジュールは一日8便運行されており、朝は7:20発の旅客船「とびしま」から始まり、最終は19:00発となっています。帰りの最終便は岡村港18:05発ですが、この便は大三島の宗方港で乗り換えが必要で、通常より30分程度余計に時間がかかるため注意が必要です。
自転車積載料金は、乗船料金とは別に港の窓口で自転車チケットを購入する必要があります。料金は片道大人460円、自転車130円程度ですが、最新の料金は事前に確認することをおすすめします。
駐車場情報として、呉市街地には複数のコインパーキングがありますが、大和ミュージアム周辺は観光客が多いため、早めの到着をおすすめします。とびしま海道の起点となる川尻港周辺にも駐車場があり、車でアクセスしてからサイクリングを始めることも可能です。
持参すべき装備として、とびしま海道では自転車店がないため、最低限の修理工具(パンク修理キット、携帯ポンプ、マルチツール)の携帯をおすすめします。また、補給ポイントが少ないため、十分な水分と補給食の準備も必須です。
Q5: 呉サイクリング中に楽しめるグルメや休憩スポットは?
呉のサイクリングでは、この地域ならではの特色あるグルメを楽しむことができ、それがサイクリングの大きな魅力の一つとなっています。
呉海自カレーは、呉を代表するご当地グルメです。海上自衛隊呉基地に所属する各艦艇で実際に食べられているカレーを、呉市内の飲食店で味わうことができます。驚くほど種類が豊富で、各店舗が海上自衛隊の調理員から直接作り方を教わり、艦長の証明を受けた本格的なカレーです。サイクリングで消費したエネルギーを補給するのに最適な一品です。
フライケーキは呉のソウルフードとして地元民に愛され続けています。「福住」などの老舗店では、揚げたての甘いケーキを味わうことができ、サイクリング中の糖分補給と休憩に最適です。外はカリッと、中はふんわりとした食感は、一度食べたら忘れられない味です。
蔵本通り周辺の屋台街は、夜のサイクリング後の楽しみとして人気があります。夕方から夜にかけて多くの屋台が並び、ラーメンや海鮮焼き、地元の郷土料理を気軽に楽しむことができます。地元の人々との交流も楽しめる、呉ならではの体験です。
とびしま海道エリアでは、島ならではの特別なカフェが点在しています。岡村島の「まるせきカフェ」は、古民家を改装したおしゃれなカフェで、瀬戸内海を眺めながらゆったりとした時間を過ごせます。地元の食材を使ったメニューも人気で、サイクリングの疲れを癒す絶好のスポットです。
大崎下島の「潮待ち館」は、御手洗地区にある歴史ある建物を利用したカフェで、江戸時代の港町の雰囲気を感じながら休憩できます。また、「船宿cafe 若長」では、築200年以上の古民家で地元の海産物を使った軽食やコーヒーを楽しめます。
地元の特産品グルメとして、柑橘類を使ったスイーツや加工品も見逃せません。特に大崎下島で生産される「大崎下島みかん」は糖度が高く、みかんソフトクリームやみかんジュースとして味わうことができます。
休憩スポットとして、大和ミュージアム内のカフェは快適な環境でゆっくりと休憩できます。展示見学の合間に、戦艦大和を眺めながらコーヒーブレイクを楽しめる特別な体験ができます。
県民の浜のレストハウスでは、海を眺めながら瀬戸内海の新鮮な海の幸を使った定食や軽食を楽しめます。特に夏季には、サイクリングで火照った体を海風で冷ましながらの食事は格別です。
下蒲刈島の恵みの丘レストランは、地元の食材をふんだんに使ったランチが人気で、特に柑橘類を使ったメニューは他では味わえない地域ならではの味です。レストランからの眺望も素晴らしく、サイクリングの目的地としても価値があります。
コンビニエンスストア情報として、呉市街地には十分な数のコンビニがありますが、とびしま海道の島々にはほとんどありません。そのため、とびしま海道を走る際は、呉市街または今治で十分な補給を行っておくことが重要です。
地酒と特産品では、呉の地酒や瀬戸内海の海産物加工品も見逃せません。サイクリング後のお土産として、これらの地域特産品を購入することで、呉での思い出をより深いものにできるでしょう。
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