和歌山県は、海、山、川が織りなす豊かな自然環境と歴史ある文化が融合した、サイクリング愛好家にとって理想的なエリアです。2025年現在、和歌山市は「自転車活用推進計画」を積極的に推進し、「サイクリング王国わかやま」の実現を目指しています。総延長約800kmに及ぶ「WAKAYAMA800」サイクリングロードが整備され、ブルーラインや案内看板の設置、サイクルステーションの充実など、サイクリストにとって快適な環境が整っています。紀伊半島の北西部に位置する和歌山市は、紀の川とその周辺の平坦な地形により、初心者からベテランまであらゆるレベルのサイクリストが楽しめる多彩なコースを提供しています。和歌山城の歴史的景観、紀の川の雄大な流れ、和歌浦の美しい海岸線など、四季折々の美しい景色を自転車で巡りながら、地域の魅力を存分に味わうことができるのが和歌山サイクリングの最大の特徴です。

和歌山の初心者向けサイクリングコースはどこがおすすめ?
和歌山市には、サイクリング初心者や家族連れでも安心して楽しめるコースが充実しています。最もおすすめなのは和歌山城と城下町散策コースです。市の中心部を巡る約5〜10kmの比較的短い距離で、交通量も少なく、紀州徳川家の居城である和歌山城を起点に、美しい紅葉渓庭園(西之丸庭園)、和歌山市立博物館、レトロな雰囲気が漂うぶらくり丁商店街などを巡ることができます。天守閣からの眺めは素晴らしく、城下町の面影を残す街並みを自転車でゆっくりと巡ることで、和歌山の歴史や文化を肌で感じられます。
次におすすめなのはマリーナシティと黒潮市場コースです。初心者やファミリー向けの平坦なコースで、約5〜15kmの距離を走行します。和歌山マリーナシティ内のポルトヨーロッパや黒潮市場、紀ノ国フルーツ村などを巡るリゾート感あふれるルートで、黒潮市場では新鮮な海産物を購入したり、迫力あるマグロの解体ショーを見学したりすることもできます。
四季の郷公園と周辺里山コースも初心者には最適です。市の北部に広がるのどかな田園風景の中を走るコースで、公園内には整備された散策路があります。道の駅や農産物直売所、BBQ施設なども充実しているため、サイクリングの合間に休憩したり、地元の食材を楽しんだりすることができます。
また、紀の川サイクリングロードの一部区間も初心者におすすめです。特に「紀の川河口〜粉河寺コース」は約30km、「粉河寺〜九度山コース」は約25kmと、初心者にぴったりの平坦なコースになっています。和歌山城や紀州東照宮などの歴史スポット、粉河寺の国宝の本堂、真田幸村ゆかりの地を巡ることができ、のどかな田園風景も楽しめます。
初心者向けコースを走行する際の注意点として、市街地では交通ルールを守り、歩行者に配慮することが大切です。夏場は日差しが強いので、帽子や日焼け止め、十分な水分補給を心がけましょう。
和歌山で絶景を楽しめる海沿いのサイクリングコースは?
和歌山市の海沿いサイクリングコースは、美しい海岸線の絶景を楽しめることが最大の魅力です。最も人気が高いのは和歌浦シーサイドコースで、風光明媚な和歌浦の海岸線を約15〜25kmかけて走行する初心者から中級者向けのコースです。
このコースの見どころは数多くあります。まず雑賀崎は「日本のアマルフィ」とも呼ばれる独特の漁港景観が魅力で、海に突き出た岬にある番所庭園からは絶景を眺めることができます。歴史的建造物では和歌浦天満宮や紀州東照宮があり、特に紀州東照宮は「関西の日光」とも呼ばれる豪華絢爛な社殿が特徴で、108段の石段(侍坂)も挑戦する価値があります。万葉集にも詠まれた景勝地である片男波公園では、広い砂浜が続き、潮風を感じながらのサイクリングが格別な心地よさをもたらしてくれます。
より冒険的なサイクリストには加太・友ヶ島汽船乗り場へのコースがおすすめです。和歌山市内から北上し、加太方面を目指す中級者向けコースで、途中で海沿いの景色や漁港の雰囲気を楽しめます。加太海水浴場や淡嶋神社、加太港などが主な見どころで、加太港からは友ヶ島への汽船が出ており、時間に余裕があれば島に渡って、アニメの舞台としても知られる深山第一砲台跡などを散策するのもおすすめです。
上級者には太平洋岸自転車道が最適です。和歌山県を代表する長距離サイクリングコースで、千葉県銚子市から和歌山市に至る全長1,487kmの自転車道の一部です。2021年5月31日にはナショナルサイクルルートに指定されており、和歌山県内の区間は311kmあります。白浜温泉や橋杭岩、円月島など、和歌山を代表する観光スポットを巡ることができ、特に千畳敷から見る夕日は絶景中の絶景です。
海沿いコース走行時の注意点として、海岸沿いの道はアップダウンがある箇所もあり、特に雑賀崎周辺は道が狭く坂が多いため、走行には注意が必要です。また、海からの強風が吹くこともあるので、風向きを確認しておくと良いでしょう。
紀の川サイクリングロードの魅力と走行時の注意点は?
紀の川サイクリングロードは和歌山市を代表するサイクリングコースの一つで、地元の人々から観光客まで幅広く愛されています。雄大な紀の川沿いを整備された専用道で快適に走行できる点が最大の魅力で、平坦な道が多く、初心者からベテランまで楽しめるのが特徴です。
和歌山市エリアでは、紀の国大橋のたもとにある和歌山市民スポーツ広場をスタート地点として、上流の岩出橋までの約28kmを走行します。ほぼ平坦で信号もなく、地元のランナーも利用する格好の練習コースとなっています。全線では和歌山市から橋本市まで約88kmの長さがあり、体力や時間に応じて距離を調整することができます。
紀の川サイクリングロードの見どころは、何と言っても季節によって表情を変える紀の川の景色です。広々とした紀の川河川敷ではピクニックや休憩を楽しめ、せせらぎ公園では季節の花々を観賞できます。紀の川は万葉集にも詠まれた歴史ある川で、サイクリングロード沿いには万葉歌碑が設置されている場所もあり、文学的な趣も感じられます。
上級者向けのオプションとして、和歌山市民スポーツ広場から道の駅「紀の川万葉の里」、道の駅「柿の里くどやま」を経てJR隅田駅までを往復するルートや、太平洋自転車道のゴール地点まで足を延ばすコースもあります。これらのルートでは、より長距離のサイクリングを楽しみたい方に最適です。
走行時の注意点がいくつかあります。まず、河川敷のため風が強い日があるので、特に向かい風の場合は体力の消耗が激しくなるため、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。日差しを遮るものがない区間も多いため、夏場は帽子や日焼け止めなどの日差し対策、そして水分補給が必須です。洪水時や大雨の後は通行できない場合があるので、天候には十分注意し、事前に状況を確認してから出発することが重要です。
なお、2025年4月5日には、紀の川エリアの協力グルメ店舗を巡りながらサイクリングを楽しむ「紀の川エリア桃源郷サイクリング2025」が開催される予定で、地域の魅力をより深く体験できるイベントも充実しています。
和歌山のサイクリング中に立ち寄りたいグルメスポットは?
和歌山市のサイクリングを楽しむ際、ぜひ立ち寄りたいグルメスポットが数多く点在しており、地域の味覚も楽しめるのがサイクリングの醍醐味の一つです。
和歌山城周辺エリアでは、和歌山ラーメンの名店井出商店が特におすすめです。こってりとした豚骨醤油スープが特徴で、サイクリングでのエネルギー補給に最適です。甘味処としては、和歌山銘菓「かげろう」の生バージョン「生かげろう」を楽しめる福菱 Kagerou Cafeがあり、サイクリングの疲れを癒してくれます。レトロな雰囲気の純喫茶リエールも、昔ながらの喫茶店の雰囲気を味わいたい方におすすめです。
和歌浦・雑賀崎エリアは新鮮な魚介類が豊富なエリアで、おっとっと広場(雑賀崎漁港)や和歌浦漁港おっとっと広場では、地元で獲れた魚介類の直売や、その場で調理した天ぷら、絶品のしらす丼などを味わえます。海を眺めながら食べる新鮮な海の幸は格別の美味しさです。
加太エリアでは、しらす丼やわさびスープが有名な満幸商店が行列ができる人気店として知られています。活魚料理いなさでは新鮮な海の幸を使った料理が楽しめ、加太は鯛の一本釣りでも有名なため、鯛料理を提供するお店も多くあります。
マリーナシティエリアの黒潮市場は一大グルメスポットとなっており、新鮮な海産物の購入、マグロの解体ショーの見学、海鮮バーベキューや海鮮丼などを楽しめます。家族連れのサイクリストには特に人気のスポットです。
紀の川サイクリングロード沿いでは、道の駅「紀の川万葉の里」で地元の新鮮な野菜や果物、特産品が手に入り、軽食コーナーもあります。和歌山は果物の産地としても有名で、季節によって様々な果物を楽しむことができるのも魅力の一つです。
四季の郷公園エリアの道の駅 四季の郷公園 FOOD HUNTER PARKでは、地元食材を使ったレストランやカフェ、パン屋などが入っており、自然の中でリラックスした食事を楽しめます。
グルメスポット訪問時の注意点として、人気店は混雑することがあるため、時間に余裕を持って訪れるか、オフピーク時を狙うと良いでしょう。自転車の駐輪場所を事前に確認し、水分補給とエネルギー補給のバランスを考えて塩分や糖分も適度に摂取することが大切です。
和歌山でサイクリストが利用できるサポート体制は?
和歌山県は、サイクリストが安心して快適にサイクリングを楽しめるよう、全国でも屈指の充実したサポート体制を整えています。この取り組みは「サイクリング王国わかやま」の実現を目指す県の方針に基づいており、2025年度末までを期間とする「第2次和歌山県自転車活用推進計画」によって推進されています。
サイクルステーションは、サイクリストが休憩や自転車のメンテナンスを行うことができる施設として、県内の民間店舗や公共施設が登録されています。2021年12月末時点で330件が登録されており、休憩スペース、トイレ、空気入れの貸し出しが必須サービスとして提供されています。これらの施設は、長距離サイクリング中の重要な拠点となっています。
サイクリストに優しい宿は、和歌山県と和歌山県観光連盟が認定する宿泊施設で、サイクリストが安心・快適に滞在できるよう4つの必須条件を満たしています。自転車を組み立てた状態で客室への持ち込みが可能、または施錠可能な場所での保管、スポーツバイク対応の空気入れと修理工具の貸し出し、手荷物の一時預かり、宅配便の受け取り・発送サービスが提供されています。さらに、洗濯機の貸し出しや自転車の洗浄スペース、周辺サイクリングロードの案内といった任意サービスを提供している施設もあり、2021年12月末時点で73件が認定されています。
レンタサイクルサービスも充実しており、和歌山市内各所で利用できるため、自転車を持っていない方でも気軽にサイクリングを楽しめます。中央卸売市場「わかやままるしぇ」やJR和歌山駅前の「わかちか広場」、わかやま歴史館などで利用可能です。一部のレンタサイクル店では、ヘルメットやウェアのレンタル、電動アシスト付き自転車の配送・乗り捨てサービスも提供されています。
サイクルトレインは、自転車をそのまま電車に乗せて移動できる列車で、輪行をしないサイクリストにとって非常に便利です。JR紀の国線では利用促進と観光客誘致のため積極的にPRが行われ、JR和歌山線では2025年3月16日から通年運行が開始されました。予約が必要で、日曜・祝日には朝から利用可能ですが、平日・土曜日は午前9時20分以降の電車に限られます。
また、サイクリングで疲れた体を癒すのに最適な温泉施設も充実しています。花山温泉 薬師の湯では珍しい茶褐色の炭酸泉を楽しめ、湯の峰温泉や川湯温泉など、世界遺産にも登録された温泉地もサイクリングルート周辺に点在しており、サイクリングの行程に合わせて立ち寄ることができます。
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