おおすみサイクリングコースとは、鹿児島県大隅半島の公式観光サイト「オスミツキ大隅国」(おおすみ観光未来会議)が整備・紹介する複数のサイクリングルートの総称です。雄大な活火山・桜島を間近に望む錦江湾沿いの海岸線から、本土最南端の佐多岬へと続く絶景ロード、廃線跡をたどる歴史ルートまで、初心者から上級者まで楽しめる多彩なコースが用意されています。大隅半島はいま「九州のサイクリングの聖地」として急速に注目を集めるエリアであり、桜島を眺めながら走る体験は他では味わえない唯一無二の魅力を持っています。
本記事では、おおすみサイクリングコースの全体像から、約36kmの桜島一周ルート、佐多岬を目指すロングライド、レンタサイクル情報、毎年秋に開催される「ツール・ド・おおすみ」大会の詳細まで、大隅半島でサイクリングを楽しむために必要な情報を網羅的に解説します。これから初めて大隅半島を訪れる方も、すでに何度も走り込んだリピーターの方も、次のライド計画に役立つ実用的な情報をまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください。

おおすみサイクリングコースとは|大隅半島の公式ルート
おおすみサイクリングコースとは、鹿児島県大隅半島の観光サイト「オスミツキ大隅国」(おおすみ観光未来会議)が公式に整備・紹介しているサイクリングコースの総称です。海岸線の絶景ルートから内陸の歴史・文化スポットを巡るルートまで、複数のコースが半島全体に張り巡らされています。
このコース群の最大の特徴は、桜島・錦江湾・霧島連山といった鹿児島を代表する絶景を、走りながら多角的に楽しめる点にあります。鹿児島市内からフェリーで大隅半島に上陸し、南下するほどに原色鮮やかな風景が広がり、車での旅では見過ごしてしまう景観をじっくりと味わえます。
道の駅や観光施設などの補給・休憩ポイントが要所に配置されているうえ、自転車競技が盛んな鹿屋市を中心にサイクリストに優しいインフラが整備されていることも見逃せない魅力です。半島の東は志布志湾、西は錦江湾(鹿児島湾)に面しており、両側の海を眺めながら走れる地理的な恵みが、このコースの個性を形作っています。
大隅半島の代表的なサイクリングルート4種類
おおすみサイクリングコースには、目的や体力レベルに応じて選べる代表的なルートが複数あります。それぞれの特徴を理解しておくことで、自分に合ったライドプランを組み立てやすくなります。
錦江湾岸コース|桜島を望む西海岸ルート
錦江湾岸コースは、桜島を常に右手または正面に見ながら走れる絶景ルートです。垂水市の道の駅「たるみずはまびら」を起点に、国道220号線を海沿いに南下するのが代表的な走り方となります。
道の駅たるみずはまびらは、錦江湾に面した立地で、レストラン・カフェ・物産館が充実しているほか、桜島と開聞岳が同時に望める展望スポットとしても人気です。かけ流しの足湯が用意されており、レストランからは気まぐれに姿を見せるイルカの群れを眺められることもあります。長距離ライドの出発前後の休憩拠点として理想的な施設です。
南下を続けると、旧小学校を改装したユニークな宿泊施設「ユクサおおすみ海の学校」が現れます。サイクリストの宿泊にも対応しており、錦江湾と桜島の絶景を堪能できる立地が支持を集めています。さらに進むと根占地区に入り、本土最南端の道の駅として知られる「道の駅根占Marina」に到着します。施設内のトイレはウォッシュレット完備で、長距離ライドの補給ポイントとして快適に利用できます。
佐多岬コース|本土最南端を目指す絶景ルート
佐多岬コースは、大隅半島南部の南大隅町を経由し、本土最南端の佐多岬を目指すルートです。アップダウンが多く体力的な難易度は高めですが、南国の原生植物が茂る独特の自然景観と、日本の果てに辿り着く達成感は他では味わえない格別なものです。
ルート沿いには「台場公園」「立神公園」などの景勝地が点在し、コバルトブルーの海と奇岩が織りなす絶景が広がります。途中の「北緯31度線モニュメント」は高さ4.7m・幅5m・奥行き3mの記念碑で、正面には「31°LINE SATA」「本土最南端 佐多岬」の文字と北緯31度線が引かれた世界地図が刻まれており、旅のランドマークとして記念撮影に最適なスポットです。
佐多岬そのものは駐車場から展望台まで遊歩道を歩いて向かう構造となっており、展望台からは晴れた日には屋久島や種子島、さらに沖縄の与論島まで望めることもあります。本土最南端という地理的な意味と、亜熱帯の原生林に囲まれた独特の雰囲気が、ライドの記憶を強く印象づけてくれます。
鉄道記念コース|廃線跡と歴史を巡るルート
大隅半島にはかつて国鉄大隅線が走っていましたが、1987年に廃線となりました。鉄道記念コースは、その廃線跡や当時の駅を記念公園として活用したスポットを巡るルートです。
「新城鉄道記念公園」「大隅松山駅鉄道記念公園」「鹿屋市鉄道記念館」「旧大隅野里駅」「旧高須駅」などが点在しており、大隅の鉄道史に触れながら走る歴史ロマンあふれるコースとなっています。鹿屋市鉄道記念館には実際に走っていた車両も展示されており、鉄道ファンにも人気の高いスポットです。海沿いの絶景ライドとは異なる、ノスタルジックな旅情を味わいたい方におすすめできます。
錦江湾奥・桜島一周広域ルート
垂水市・霧島市・姶良市・鹿児島市の4市にまたがる広域ルートで、錦江湾の奥を一周しながら桜島も周回するという大規模なコースです。さまざまな角度から錦江湾と桜島を眺められ、鹿児島を代表する絶景をたっぷりと楽しめる上級者向けのロングライドコースに位置づけられます。
桜島一周サイクリング完全ガイド|距離・時間・見どころ
桜島一周は、大隅半島サイクリングの中でも最も人気が高い定番ルートです。日本を代表する活火山の外周を自転車で走る体験は、他では味わえない感動を旅人にもたらしてくれます。
桜島一周の基本情報
桜島一周の距離は約36kmです。所要時間は一般的なサイクリングペースで3〜4時間程度ですが、各観光スポットでの見学や休憩を含めると5時間程度を見込んでおくとよいでしょう。獲得標高は比較的少なく道路も整備されているため、初心者でも挑戦しやすいコースとして親しまれています。
鹿児島市内からのアクセスは非常に良好で、鹿児島港から桜島港まで24時間運航しているフェリーで約15分です。料金は大人160円という手頃さで、自転車の持ち込みも可能となっています。このアクセスのしやすさが、桜島サイクリングの裾野を広げている大きな要因です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 一周距離 | 約36km |
| 所要時間 | 3〜4時間(観光込みで5時間程度) |
| 推奨レベル | 初心者から可能 |
| アクセス | 鹿児島港から桜島港までフェリー約15分 |
| フェリー料金 | 大人160円(自転車持込可) |
桜島一周コースの見どころスポット
桜島港を出発して時計回りに一周する場合、火山の歴史を物語る印象的なスポットが次々と現れます。
「有村溶岩展望所」は、1946年の昭和大噴火で流出した溶岩原の上に設置された展望所で、大迫力の溶岩地帯と桜島の火口を間近に感じられる場所です。溶岩の上を歩く遊歩道も整備されており、地球の息吹を肌で感じられる体験ができます。
「烏島展望所」は、かつて存在した烏島という島が1914年の大正大噴火の溶岩に飲み込まれて消滅した跡地に作られた展望所です。噴火のすさまじい力を実感できる歴史的なスポットとして、訪れる人に深い印象を残します。
桜島サイクリングの中でも特に有名なのが「黒神埋没鳥居」です。もともと高さ3mあった鳥居が、1914年の大正大噴火の際に噴出した火山灰と軽石によって、笠木(最上部の横木)だけを残してほぼ完全に埋没してしまいました。噴火の脅威を後世に伝えるため、現在もそのままの状態で保存されており、桜島の火山活動の凄まじさを物語る貴重な遺構となっています。
「赤水展望広場」からは、錦江湾越しに鹿児島市街地と薩摩半島を望むことができ、桜島を含めた360度のパノラマが楽しめます。作家・林芙美子の文学碑が設置されており、文学ファンにも注目されるスポットです。海岸線に自生する亜熱帯性樹木のアコウが群生する「藤野アコウ群」では、南国らしい独特の景観を堪能できます。
桜島サイクリングの注意点
桜島はいまも活発に活動している活火山です。サイクリング中に火山灰が降ることがあるため、サングラスと帽子は必ず持参してください。海沿いを走るコースのため日差しも強く、日焼け止めと水分補給も欠かせない要素となります。
天候の急変にも注意が必要で、噴火警戒レベルの情報は事前に確認しておくことをおすすめします。火山ガスの影響を受ける場合もあるため、マスクや口元を覆うバフ(ネックゲイター)があると安心です。
レンタサイクル情報|桜島・大隅半島で借りられる店舗
自前の自転車がなくても、桜島と大隅半島ではレンタサイクルのサービスが充実しているため気軽にライドを楽しめます。
桜島港フェリーターミナルのすぐ前にある「桜島レンタカー・レンタサイクル」では、一般的なシティサイクルを1時間300円という手頃な料金で借りられます。営業時間は8時から日没までで、フェリーを降りてすぐに自転車を借りられる利便性の高さが大きな魅力です。観光メインで桜島一周を楽しみたい方に向いています。
本格的なライドを志向する方には、桜島ビジターセンターのレンタサイクルがおすすめです。スポーツタイプのサイクルを3時間2,500円から借りられ、以降は1時間ごとに500円が追加される料金体系です。営業時間は9時から17時までで、本格的なロードバイクライドの準備が整います。
フェリーターミナル近くには「サイクルポート(桜島桟橋)」も整備されており、自転車の駐輪やメンテナンスに対応しているため、ライド中のトラブル時にも心強い存在となっています。
主要な道の駅と補給ポイント
長距離サイクリングにおいて、補給ポイントの把握は安全で快適なライドの鍵を握る要素です。大隅半島には複数の道の駅が点在しており、サイクリストの強い味方となっています。
| 道の駅 | 所在地 | 特徴 |
|---|---|---|
| 道の駅たるみずはまびら | 垂水市 | 錦江湾と桜島の絶景、足湯あり |
| 道の駅錦江にしきの里 | 南大隅町 | 錦江湾沿い、地元農産物が豊富 |
| 道の駅根占Marina | 南大隅町 | 本土最南端の道の駅、ウォッシュレット完備 |
| 道の駅おおすみ弥五郎伝説の里 | 曽於市 | 内陸部、地元伝説関連の施設 |
道の駅たるみずはまびらは、錦江湾と桜島の絶景を望む人気スポットで、レストラン・カフェ・物産館が揃い、かけ流しの足湯も完備しています。長距離ライドの疲れを癒すのに最適な拠点です。道の駅錦江にしきの里は錦江湾沿いに位置し、地元の新鮮な農産物や特産品が手に入り、絶景を眺めながらゆっくり休憩できる場所となっています。
道の駅根占Marinaは、本土最南端の道の駅として知られ、佐多岬コースを走る際の重要な補給ポイントです。施設内のトイレはウォッシュレット完備で清潔感があり、快適に利用できます。内陸部の道の駅おおすみ弥五郎伝説の里では、地元伝説に関連した施設や地域食材を使ったグルメを楽しめます。
これらの道の駅以外にもコンビニエンスストアやスーパーマーケット、地元の食堂などが点在しているため、基本的には補給に困ることは少ないでしょう。ただし南大隅町の南端に近づくにつれて施設は少なくなるため、佐多岬コースを走る際は余裕を持った補給計画を立てることが重要となります。
ツール・ド・おおすみサイクリング大会|順位を競わない歴史ある参加型イベント
ツール・ド・おおすみサイクリング大会は、2001年に第1回が開催されて以来、毎年秋に鹿屋市を中心に開催されている歴史あるサイクリングイベントです。もともとは海上自衛隊鹿屋航空基地で行われる「エアーメモリアルinかのや」のスポーツイベントの一つとして始まり、現在では鹿屋市を中心に大隅半島全域を活用する大規模なイベントへと成長しました。
この大会の最大の特徴は「完走することを目的とし、順位をつけない」というスタイルです。タイムを競うレースではなく、大隅半島の自然や景観を楽しみながら走ることに重点が置かれており、子どもから高齢者まで、それぞれのレベルに応じて楽しめる構成となっています。
直近の第25回大会は、令和7年(2025年)11月8日・9日に開催されました。8日にはサイクルロゲイニング(鹿屋の戦跡巡りコース)、9日にはAコース・Bコース・Cコースの複数のコースが設定され、スタート・フィニッシュ地点は串良ふれあいセンターと農畜産物直売所「どっ菜市場」が使われました。
サイクルロゲイニングとは、制限時間内に地図に示されたチェックポイントをできるだけ多く回り、獲得ポイントを競う競技形式のイベントです。鹿屋の戦跡を巡るコースは、自転車競技としての楽しみと地域の歴史を学ぶ機会を組み合わせたユニークな企画として高く評価されました。
大会は地元住民・行政・企業が一体となって運営されており、大隅半島の魅力を全国に発信する重要なイベントとして定着しています。サポートには地元ボランティアが多数参加し、参加者を温かくもてなすホスピタリティも大きな評価を得ています。
鹿児島市内から大隅半島・桜島へのアクセス方法
鹿児島市内から大隅半島へアクセスする方法は、主に陸路とフェリーの2つに分かれます。
陸路の場合、鹿児島市内から国道10号線を経由して大隅半島の北側(霧島・姶良方面)にアクセスし、そこから南下するルートとなります。ただし市街地からの距離があるため、サイクリストが自走でアクセスするには体力的な負担が大きい点に注意が必要です。
フェリーを利用する場合、鹿児島港から「垂水港フェリー」を利用すれば垂水市へ直接アクセスできます。鹿児島港から垂水港までは約35分で到着し、自転車の持ち込みも可能です。このルートが大隅半島サイクリングのスタートポイントとして最も便利で、多くのサイクリストに選ばれています。桜島へのアクセスは前述の通り、鹿児島港から桜島港まで24時間運航のフェリーで約15分です。
大隅半島内の公共交通機関は路線バスが中心ですが、本数は少なく、自転車をそのまま乗せることが難しい場合もあります。長距離コースを走る際はゴール地点に車を置いておく方法や、タクシーの活用など、事前の計画が必要です。鹿屋市などには自転車を積載できるタクシーや、サイクリスト向けのサービスを提供する宿泊施設もあるため、活用するとライドの自由度が高まります。
おおすみサイクリングのおすすめ季節と気候
大隅半島のサイクリングを楽しむのに最適な季節は、春(3月〜5月)と秋(10月〜11月)です。
春は気候が温暖で新緑が美しく、菜の花や桜なども楽しめる季節です。特に3月下旬から4月上旬は桜の季節で、サイクリングルート沿いの桜並木も見事な景観を見せてくれます。ただし春は桜島の降灰も多い時期のため、サングラス等の準備を忘れないようにしてください。
秋は台風シーズンが終わり、気候が安定して走りやすくなります。11月ごろは紅葉こそ少ないものの、空気が澄んで遠くまで見渡せることが多く、桜島や錦江湾の絶景を最もクリアに楽しめる季節です。ツール・ド・おおすみが毎年秋に開催されるのも、こうした気候条件が背景にあります。
夏(7月〜9月)は気温が高く日差しも強いため、早朝からのライドが推奨されます。日焼け対策と水分補給が特に重要となり、台風の発生も多い時期のため天候情報の確認は必須です。冬(12月〜2月)は気温が下がるものの、九州南部のため積雪は少なく、晴れた日は比較的快適に走ることができます。観光客も少ないため、閑静な大隅半島を独占できる贅沢なシーズンとも言えます。
大隅半島のグルメ情報|サイクリング後のご褒美
サイクリング中のお楽しみの一つが、地元グルメとの出会いです。大隅半島には魅力的な食材と料理が豊富に揃っています。
大隅半島は「黒豚」「黒牛」「黒鶏(地鶏)」「黒酢」の「四黒」が有名で、特に鹿屋市は鹿児島黒牛・黒豚の産地として広く知られています。サイクリング後のご褒美として、地元の焼肉店や食堂で味わう黒牛・黒豚料理は格別の満足感をもたらしてくれます。
錦江湾では新鮮な魚介類が豊富に水揚げされ、海岸沿いの食堂では地魚の定食や丼を楽しめます。道の駅たるみずはまびらのレストランでは、錦江湾を眺めながら地元の海の幸を堪能できる贅沢な時間が過ごせます。志布志市では志布志湾で獲れた新鮮な魚介類が特産品として知られており、地元でも評価が高い食材として親しまれています。
鹿屋市では農畜産物直売所「どっ菜市場」が人気で、地元の新鮮野菜やフルーツ、加工品が揃っています。サイクリングの補給食として最適な地元産の食材を手に入れたい方は、ぜひ立ち寄りたいスポットです。
立ち寄りたい注目スポット|菅原神社(荒平天神)
大隅半島のサイクリングコース沿いには、ユニークな絶景スポットが数多く存在します。中でも特に注目したいのが、垂水市に位置する「菅原神社(荒平天神)」です。
菅原神社は学問の神様・菅原道真公を祀る神社で、その立地が非常に特殊な点で知られています。砂浜の砂州の上に鳥居が立ち、その先の海に突き出た岩山の頂上に本殿があるという独特の構造です。大潮の満潮時には参道となる砂州が海に沈み、岩山の本殿だけが海の中に浮かぶような神秘的な光景が現れます。
この幻想的な風景から「大隅の天空の鳥居」「海に浮かぶ天神様」として注目を集め、近年SNSでも話題となっています。合格祈願に訪れる受験生や絶景を求める観光客が多く、大隅半島サイクリングコースの人気立ち寄りスポットの一つとなっています。本殿へは急な岩場をロープを頼りに登る必要があり、スリルも楽しめる点もこのスポットの個性です。サイクリング中に干潮時刻を調べて立ち寄ることで、砂州を歩いて本殿まで参拝する体験は忘れられない思い出となるでしょう。
鹿屋市と自転車競技の歴史|サイクリングの聖地と呼ばれる理由
大隅半島の中心都市・鹿屋市は、日本国内でも有数の「自転車競技の聖地」として知られています。その背景には、鹿屋体育大学の存在があります。
鹿屋体育大学は、日本で唯一の国立体育大学として1981年に鹿屋市に開学しました。大学内の自転車競技部は1995年に創設され、男子25名・女子5名の合計30名ほどが所属し、鹿屋市内のサイクリング施設と大隅半島の公道を練習の場として活用しています。大隅半島の起伏に富んだ地形と整備された道路環境は競技者の育成に最適であり、多くの国際大会出場選手を輩出してきました。
また、鹿屋市を拠点とするプロサイクリングチーム「シエル・ブルー鹿屋(Ciel Bleu Kanoya)」は、国内の実業団サイクリングチームの中でも実力のあるチームとして知られています。このチームの活動も、大隅半島がサイクリストの聖地として認知される一因となりました。ツール・ド・おおすみの参加者も年々増加しており、大隅半島は観光サイクリストだけでなく本格的なロードレーサーにとっても魅力的な地域として確固たる地位を築いています。
鹿屋航空基地史料館とJAXA内之浦宇宙空間観測所
大隅半島のサイクリングコースには、自然の絶景だけでなく深い歴史と科学技術を持つスポットも含まれています。
「海上自衛隊鹿屋航空基地史料館」は、サイクリング途中に立ち寄れる歴史的に重要な施設です。鹿屋航空基地は第二次世界大戦中に特攻隊の出撃基地として使用された場所であり、「零戦(ゼロ戦)」の格納庫跡や戦前の司令部建物など、当時の遺構が現在も残っています。1993年7月に開設された史料館には、旧海軍航空部隊の歴史と戦後の海上自衛隊航空部隊の歩みが展示されており、特攻戦死者217名の遺影と50件の遺書・関連資料が保存・公開されています。
鹿屋市内には大隅の戦跡が各地に残っており、サイクルロゲイニング「鹿屋の戦跡巡り」コースでは自転車で巡りながら地域の歴史に触れることができます。ツール・ド・おおすみの1日目に設定されているこのコースは、単なるサイクリングイベントを超えた歴史学習の機会としても高く評価されました。
肝付町に位置するJAXA(宇宙航空研究開発機構)の「内之浦宇宙空間観測所」は、日本の宇宙開発の歴史を刻んできた場所で、大型ロケットを発射するための設備が今も稼働しています。一般公開日には施設内を見学でき、ロケット発射台や観測設備などを間近で見学できます。大隅半島の山間に突如現れる宇宙開発施設は独特の景観を作り出しており、「秘密基地感」満点のスポットとしてバイクツーリングやサイクリングの立ち寄りスポットとして人気を集めています。内之浦へのルートはアップダウンが多く体力的な難易度は高めですが、その分だけ達成感も大きく、ロケット発射台を背景に記念撮影する一枚は忘れられない思い出になるでしょう。
サイクリングをより楽しむための装備とアドバイス
大隅半島のサイクリングは、選ぶコースによって難易度が大きく異なります。桜島一周の約36kmであればシティサイクルでも楽しめますが、佐多岬コースやロングライドコースにはアップダウンが多いため、ギア付きのスポーツサイクルが推奨されます。
ヘルメットは安全のために必ず着用してください。火山灰対策としてサングラスと口元を覆えるバフ(ネックゲイター)があると安心です。荷物はバックパックよりもサドルバッグやパニアバッグに分散させると、長距離走行時の疲労軽減に効果的となります。パンク修理キットと携帯ポンプは必携で、桜島や半島南部の山間部では自転車店が見当たらない場合もあるため、基本的なメンテナンス技術と修理道具は忘れずに持参してください。
宿泊については、大隅半島にはサイクリストを歓迎する宿泊施設が増えています。「ユクサおおすみ海の学校」は旧小学校を改装したユニークな宿泊施設で、錦江湾と桜島の絶景を楽しみながら宿泊できます。自転車の持ち込みや洗車スペースにも対応しており、サイクリストに人気の宿となっています。鹿屋市内には一般的なビジネスホテルや旅館が複数あり、長距離ライドの拠点として利用できます。自転車を安全に保管できる施設を事前に確認しておくことをおすすめします。
安全面では、大隅半島の道路は幹線道路と細い農道が混在しています。交通量の多い幹線道路を走る際は、後方からの車両に注意してください。特に大型トラックが多い区間ではできるだけ路肩に寄って走行することが重要です。桜島では噴火警戒レベルの変化により特定のエリアへの立ち入りが制限される場合があるため、出発前に最新の噴火情報と警戒レベルを必ず確認してください。鹿児島地方気象台やNHKのウェブサイトなどで最新情報が入手できます。
おおすみサイクリングコースについてよくある疑問
大隅半島でサイクリングを計画する方からよく寄せられる疑問について、本記事の内容を踏まえてお答えします。
初心者でも桜島一周は可能かという疑問については、桜島一周は距離約36km・獲得標高は比較的少なく、道路も整備されているため初心者でも挑戦しやすいコースです。シティサイクルでも楽しめる難易度設定となっています。レンタサイクルはどこで借りられるかという点については、桜島港フェリーターミナル前の「桜島レンタカー・レンタサイクル」が1時間300円、桜島ビジターセンターのスポーツタイプが3時間2,500円から利用可能です。
佐多岬まで自転車で行けるかという疑問については、南大隅町を経由するルートでアクセス可能ですが、アップダウンが多いため体力的な難易度は高めです。本土最南端という地理的な意味と亜熱帯の原生林に囲まれた独特の雰囲気を求める方には、挑戦する価値の高いコースとなっています。鹿児島市内から大隅半島へのアクセスについては、鹿児島港から垂水港まで約35分のフェリーが最も便利で、自転車の持ち込みにも対応しています。
まとめ|大隅半島サイクリングの魅力を全身で感じよう
鹿児島県大隅半島は、雄大な活火山・桜島を間近に望みながら走る絶景の海岸線、本土最南端・佐多岬へと続くダイナミックなロングライドコース、地元の歴史と文化が薫るルート、そして充実した道の駅・補給ポイントと、サイクリストにとって理想的な環境が整った地域です。
おおすみサイクリングコースは、そうした大隅半島の魅力を存分に引き出すべく整備された公式コースの総称であり、初心者から上級者まで幅広いサイクリストが楽しめる多様なルートが用意されています。毎年秋に開催されるツール・ド・おおすみサイクリング大会は、順位を競わない参加型イベントとして地元に根付いており、地域全体でサイクリストを歓迎する大隅半島の「サイクリングの聖地」としての姿勢を体現する存在となっています。
桜島一周の約36kmという手軽なコースから、佐多岬を目指す本格的なロングライドまで、大隅半島はあなたの次の目的地として理想的な選択肢になるはずです。潮風を感じながら、桜島の雄姿を眺めながら、大隅半島の大自然を全身で感じるサイクリングの旅に、ぜひ出かけてみてください。








