夏井川渓谷のサイクリングコースは、福島県いわき市北部を流れる夏井川中流域の渓谷を自転車で巡る人気ルートです。中・上級者向けの本格周回コース「夏井川渓谷チャレンジコース」(総距離63.9キロメートル)から、磐越東線を活用した初心者向けの輪行ルート、家族で楽しめる夏井川サイクリング公園まで、目的やレベルに応じた多彩なコースが整備されています。春のアカヤシオ、夏の新緑、秋の紅葉、冬の雪景色と四季折々の渓谷美を体感できる夏井川渓谷は、海岸線を走る「いわき七浜海道」との組み合わせで「山と海」を1〜2日で味わえる東北屈指のサイクリング聖地として注目を集めています。本記事では、夏井川渓谷サイクリングコースの詳細、四季の見どころ、アクセス、装備、宿泊情報、毎年開催される大規模イベント「ツール・ド・いわき」まで、これから訪れる方が知っておきたい情報を網羅的にご紹介します。

夏井川渓谷サイクリングコースとは?基本情報を解説
夏井川渓谷サイクリングコースとは、福島県いわき市西部の夏井川渓谷一帯を自転車で巡るルート群の総称です。中心となるのはJR磐越東線の川前駅から小川郷駅にかけて並走する全長約16キロメートルの渓谷で、阿武隈山系の花崗岩が夏井川によって長い年月をかけて浸食されてできた壮大な地形が広がっています。
この一帯は昭和28年(1953年)に「夏井川渓谷県立自然公園」に指定された、福島県を代表する景勝地です。両岸から迫り出すように連なる巨大な奇岩と断崖絶壁の隙間を、清冽な渓流が白い水煙をあげて流れ落ちる光景は、まるで一幅の日本画のような美しさがあります。
サイクリストにとっての夏井川渓谷の魅力は、単に景観の美しさだけにとどまりません。いわき市が自転車を活用した観光振興に力を入れており、渓谷沿いのチャレンジコース、海沿いの「いわき七浜海道」、河川沿いの自転車道、市内9か所のサイクルステーションなど、ライダーを支える環境が体系的に整備されている点が大きな特徴です。
夏井川渓谷の主な見どころ
渓谷内で特に有名な見どころが「籠場の滝」と「錦展望台」です。籠場の滝は落差約6メートルの直瀑で、両岸の岩壁が水をせき止めるように迫る光景は圧巻のスケール感を誇ります。錦展望台は渓谷を見下ろす高台にある展望スポットで、秋の紅葉シーズンにはモミジやカエデの鮮やかな赤や黄に染まる絶景を楽しめます。
また、磐越東線の江田駅から沢沿いに少し入った先には、「背戸峨廊(せとがろう)」と呼ばれる支流の小渓谷が広がっています。「背戸」は隠れた場所、「峨廊」は美しい岩壁を意味するとされ、サイクリングの休憩ポイントや立ち寄りスポットとして人気を集めています。
夏井川渓谷チャレンジコースの詳細|中上級者向け63.9km周回ルート
夏井川渓谷チャレンジコースとは、いわき市中心部をスタート・ゴール地点とする総距離63.9キロメートルの本格的な周回サイクリングルートです。サイクリングアプリ「ツール・ド・ニッポン」のコースとして登録されており、ロードバイクやスポーツバイクで挑むライダーたちに親しまれています。
コースの主要スペックは、以下の表にまとめたとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| スタート・ゴール地点 | 福島県いわき市平字田町(いわき市中心部近く) |
| 総距離 | 63.9キロメートル |
| 獲得標高 | 916メートル |
| 平均勾配 | 14.3パーセント |
| 完走目安時間 | 約6時間(平均時速15キロメートル想定) |
| コース形態 | 1周(スタート地点に戻る周回コース) |
このコースは、いわき市の中心部をスタートし、夏井川に沿って渓谷方向へと向かっていきます。途中、いわき市内の名所である諏訪神社を経由しながら徐々に標高を上げていき、夏井川渓谷の入口付近に到達すると川沿いに奇岩や断崖が次々と現れる絶景区間に突入します。
獲得標高が916メートルに達するアップダウンの多いコースであるため、サイクリング初心者よりも中・上級者向けと位置付けられています。ただし、その分だけ完走時の達成感は大きく、渓谷の壮大な景色と相まって忘れがたいライド体験となります。コースの動画はいわき市の自転車情報サイト「NOZZOいわき(のっぞいわき)」に掲載されており、事前に雰囲気を確認することが可能です。
初心者向け|磐越東線輪行サイクリングコース
夏井川渓谷のサイクリングで近年特に注目を集めているのが、JR磐越東線を利用した「輪行(りんこう)」を活用したコースです。輪行とは、自転車を専用の袋(輪行袋)に収納して電車に持ち込む旅行スタイルのことで、長距離移動や山間部の坂道を楽にする方法として自転車愛好家の間で広く普及しています。
川前駅から赤井駅へ|下り基調の23kmコース
磐越東線を使った夏井川渓谷の輪行サイクリングの定番ルートは、川前駅から赤井駅までの約23キロメートル区間です。スタート地点となる川前駅の標高は約200メートル、ゴールの赤井駅はほぼ海抜0メートル付近であり、基本的に下り基調のライドを楽しめます。
ライドのプロセスは、いわき駅または赤井駅から磐越東線に乗車して川前駅まで輪行し、川前駅から自転車を組み立てて下り基調のルートを走り、いわき市街地のゴールへと戻るという流れです。前半は山間の渓谷美を楽しむダウンヒル区間、後半は平坦な市街地となるため、体力的な負担が少なく初心者でも挑戦しやすいコースとなっています。
川前駅はローカル色豊かな小さな駅で、ホームから駅舎まで線路を渡る必要があるなど、昔ながらの鉄道の雰囲気が残されています。磐越東線は混雑が少ないローカル線のため輪行袋を持ち込みやすい一方、列車の本数が少ないので事前の時刻表確認が欠かせません。
いわき市の自転車文化発信・交流拠点「NORERU?」では、磐越東線を使った輪行サイクリングの体験イベントが実施されており、初めて輪行に挑戦する方向けのサポートも行われています。
家族で楽しめる夏井川サイクリング公園|下流域の親子向け施設
夏井川サイクリング公園とは、夏井川の下流域に整備された家族連れや初心者向けのサイクリング施設です。本格的なチャレンジコースとは別に、レクリエーション目的での自転車利用に適した環境が用意されています。
施設の概要は、以下の表のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在地 | 福島県いわき市平下大越字北萱野72-1 |
| 主要コース | 一周約1.5キロメートルのサイクリングロード |
| 併設施設 | ターゲットバードゴルフ場、多目的広場 |
| サイクル設備 | サイクルラック、ルートマップ、トイレ |
| 位置付け | いわき七浜海道の主要休憩所 |
この公園の大きな特徴は、太平洋に面した開放的な立地にあることです。海を眺めながらサイクリングができる環境は、大人にも子供にも喜ばれます。また、「いわき七浜海道」の主要な休憩所にも指定されており、ルートマップやサイクルラック(自転車の駐輪スタンド)、トイレなどの設備が整っています。
レクリエーション的な利用を主眼に置いた施設であるため、本格的なスポーツライドを求める方よりも、ファミリー層や観光でいわきを訪れた方が気軽に立ち寄れる場所として機能しています。
いわき市自転車道(新川・夏井川ルート)も活用しよう
いわき市自転車道(新川・夏井川ルート)とは、市内を流れる新川と夏井川に沿って設けられた自転車専用の走行空間です。所在地は福島県いわき市内(973-8403エリア付近)で、幹線道路を避けつつ比較的安全に走行できるルートとして知られています。
このルートは完全に独立したサイクリングロードではなく、河川沿いの市道や一般道を活用した走行空間ですが、地面に自転車マークや進行方向を示す案内が設けられているため、初めて訪れる方でもルートを迷わずにたどることができます。夏井川サイクリング公園と夏井川渓谷エリアを結ぶ縦断ルートとしての役割も果たしており、市街地側から渓谷を目指すサイクリストに広く利用されています。
いわき七浜海道との組み合わせコース|山と海を1〜2日で
夏井川渓谷のサイクリングを楽しんだ後、または前のウォームアップとして人気の組み合わせが「いわき七浜海道」です。いわき七浜海道は、いわき市の海岸線に沿って整備された復興サイクリングロードで、勿来の関公園から久之浜防災緑地までの総延長約53キロメートルに及ぶルートとなっています。
このルートは、東日本大震災の復興事業として整備された防潮堤や既存の国道・県道・市道を活用し、自転車走行空間として整備されました。海沿いの平坦な道が続くため、起伏の多い夏井川渓谷チャレンジコースとは対照的な、爽快なフラットライドを満喫できます。
いわき七浜海道のサイクルステーション7か所
いわき七浜海道沿いには、サイクリストの休憩や補給を支える7か所のサイクルステーションが配置されています。
| サイクルステーション | 立地 |
|---|---|
| NORERU? | いわき自転車文化発信・交流拠点 |
| 新舞子サイクルステーション | 新舞子ハイツ内 |
| 浜風きらら サイクルステーション | 浜風きらら |
| 道の駅よつくら港 サイクルステーション | 道の駅よつくら港 |
| アクアマリンパーク サイクルステーション | 小名浜美食ホテル内 |
| 湯本駅前 サイクルステーション | 湯本駅前 |
| 勿来の関 サイクルステーション | 交流スペースなっくる内 |
これらのサイクルステーションでは休憩・トイレの利用のほか、一部ではレンタサイクルのサービスも提供されており、自転車を持参しなくてもサイクリングを楽しめる点は観光客にとって大きなメリットといえます。夏井川渓谷チャレンジコース(山コース)といわき七浜海道(海コース)を1〜2日かけて組み合わせる旅程は、いわき市のサイクリング観光の定番プランとして定着しつつあります。
夏井川渓谷サイクリングの四季ごとの見どころ
夏井川渓谷のサイクリングは、シーズンによってまったく異なる景色が楽しめる点が大きな魅力です。春夏秋冬それぞれの特徴と見頃の時期を、以下にご紹介します。
春(4月上旬〜中旬)|アカヤシオが岩壁を彩る
春のハイライトは、何といっても「アカヤシオ(岩ツツジ)」の開花です。アカヤシオはツツジ科の落葉低木で、夏井川渓谷では籠場の滝周辺や錦展望台周辺の岩場に群生しています。鮮やかなピンク色の花が岩壁を彩り、渓谷に春の訪れを告げる光景は息をのむ美しさです。
例年の見頃は4月上旬から中旬ごろで、この時期にはJR磐越東線が渓谷区間で徐行運転を行い、車窓から一面のアカヤシオを楽しむことができます。自転車でのライドと電車からの眺めを組み合わせる楽しみ方もおすすめです。
夏(6月〜8月)|新緑と渓谷の涼
夏は新緑が目に鮮やかな季節です。渓谷を覆うように広がる緑の木々が清涼な日陰をつくり、川面に反射する光がキラキラと輝きます。気温が高い日でも渓谷沿いは比較的涼しく、快適にサイクリングを楽しめる環境が整っています。夏の盛りには渓谷内のキャンプ場が開設され、サイクリングとキャンプを組み合わせた旅も可能です。
秋(10月下旬〜11月下旬)|紅葉が渓谷を錦に染める
夏井川渓谷が最も多くの観光客を集めるのが、秋の紅葉シーズンです。ヤマモミジ、イロハカエデ、ハウチワカエデなど多彩な樹木が赤や黄、オレンジに色づき、渓谷全体が錦の絵巻のような景観を呈します。例年の色づきは10月下旬ごろから始まり、見頃のピークは11月上旬から中旬にかけて訪れます。
特に錦展望台からの眺めは格別で、見渡す限りの紅葉の海が広がります。この時期はアクセス道路が混雑するため、自転車での来訪が渋滞を避ける賢い選択肢として注目されており、サイクリストにとっては絶好のシーズンといえます。
冬(12月〜2月)|静かな白銀の世界
冬は渓谷が雪や氷に覆われ、静かな白の世界が広がります。凍りついた滝や霧氷が幻想的な景観をつくり出しますが、路面凍結の危険があるため、この季節の渓谷内サイクリングは上級者向けです。遠目に雪景色の渓谷を眺めながら市街地側を走るコースであれば、冬でも楽しめる場合があります。
立ち寄りスポット|背戸峨廊と草野心平記念文学館
夏井川渓谷サイクリングをさらに豊かにする立ち寄りスポットとして、自然系の「背戸峨廊」と文化系の「草野心平記念文学館」の二か所が特におすすめです。
背戸峨廊(せとがろう)|江田駅近くの隠れた渓谷
背戸峨廊は、磐越東線の江田駅から沢沿いに少し入った場所に広がる秘境的な小渓谷です。「隠れた場所の美しい岩壁」という名前のとおり、遊歩道に沿って大小さまざまな滝や淵、奇岩が次々と現れます。
鎖やはしごが設置された急所もありますが、無理なく歩けるよう整備されており、約4時間弱のハイキングコースとして楽しめます。サイクリングで訪れた際には自転車を駐輪してハイキングに切り替えるという二刀流の楽しみ方も可能です。なお、入山にあたっては事前にいわき市役所のウェブサイトで最新の規制情報を確認することが推奨されます。
草野心平記念文学館|詩人ゆかりの文化スポット
夏井川渓谷サイクリングのルート沿いには、いわき市出身の詩人・草野心平(1903〜1988年)を記念した「草野心平記念文学館」もあります。草野心平はカエルをモチーフにした詩で広く知られる詩人で、故郷・いわき市の自然、特に夏井川渓谷の景観から多くのインスピレーションを得ていたとされています。
サイクリングの途中に文学館へ立ち寄り、詩人が愛した渓谷の景色を追体験する楽しみ方は、夏井川渓谷ならではの文化的体験といえます。
夏井川渓谷へのアクセス方法|車と電車
夏井川渓谷へのアクセスは、車と電車の2通りが基本です。
車でのアクセス
常磐自動車道「いわき中央インターチェンジ」から県道41号線を経由し、約30分で渓谷エリアに到達します。マイカーで訪れる場合、専用の大型駐車場はないため、「夏井川渓谷キャンプ場駐車場」または「背戸峨廊入口脇駐車場」を利用することになります。錦展望台には専用駐車場が設けられています。
秋の紅葉シーズンは特に道路が混雑するため、早朝の来訪または自転車・公共交通機関の利用が推奨されます。
電車でのアクセス
JR常磐線「いわき駅」でJR磐越東線に乗り換え、川前駅または江田駅で下車するルートが基本です。いわき駅から川前駅までの所要時間は約40〜50分で、輪行サイクリングの際もこの経路を使います。磐越東線は本数が少ないため、事前の時刻表確認が重要なポイントです。
サイクリスト向けの準備と注意点
夏井川渓谷でサイクリングを楽しむためには、事前の準備が成功のカギを握ります。装備、服装、通信環境、安全面の4つの観点から確認しておきましょう。
装備については、渓谷エリアのアクセス道路がアップダウンの多い山間部であるため、ロードバイクやクロスバイクなどのスポーツ自転車が快適です。タイヤの空気圧を適正に管理し、パンク修理キットを携行することが望ましく、ヘルメットの着用は必須です。
服装と携行品については、夏でも渓谷内は気温が低い場合があるため、ウィンドブレーカーや薄手の長袖を持参すると安心です。秋のシーズンは朝晩の気温差が大きいため、重ね着できる服装が便利です。水分補給用の飲料とエネルギー補給用の行動食も必須で、渓谷エリアにはコンビニエンスストアや飲食店が少ないことから、いわき市街地での事前補充をお勧めします。
電子機器と通信環境については、渓谷の山間部ではスマートフォンの電波状況が不安定になることがあるため、事前のオフラインマップ保存または紙地図の持参が安心材料となります。
安全面では、渓谷沿いの道路は道幅が狭く、観光シーズンには自動車との行き違いに注意が必要です。特に紅葉シーズンの週末は観光客の車が多いため、交通ルールを守り、余裕をもったペースで走ることが大切です。渓谷内の崖下や水辺には危険を伴う場所もあるため、遊歩道や展望台以外のエリアへの無断立ち入りは避けてください。
サイクリスト向け宿泊・キャンプ情報
夏井川渓谷でサイクリングを満喫した後の宿泊や、連泊プランの拠点となる施設を3か所ご紹介します。
夏井川渓谷キャンプ場|無料で利用できる公営キャンプ場
夏井川渓谷内の磐越東線・江田駅近くにある「夏井川渓谷キャンプ場」は、予約不要・無料で利用できる公営キャンプ場です。多目的トイレ(水洗トイレ)や炊事場が備わっており、テントスペースは約30張り分が確保されています。電源はなく、利用時間は常時開放の先着順となります。
夏井川のせせらぎを聞きながら就寝し、翌朝に清々しい渓谷の空気の中を自転車で走り出す体験は、日常生活では味わえない格別の魅力があります。ただし、設備が限られているため、食料・飲料水・燃料はいわき市街地で事前に調達しておくことが必要です。
玉山鉱泉|キャンプ場から約11.6kmの秘湯
夏井川渓谷周辺の温泉では「玉山鉱泉」が代表的です。キャンプ場から約11.6キロメートルの距離にある秘湯で、宿は3軒のみという静かな環境が魅力です。混雑が少なく源泉かけ流しを楽しめる隠れた名湯として知られており、渓谷サイクリングで汗を流した後の宿泊先として最適な選択肢のひとつとなります。
いわき湯本温泉|大型温泉地で宿の選択肢が豊富
いわき市内で最も規模が大きい温泉地が、いわき湯本温泉です。常磐自動車道のいわき湯本インターチェンジから近く、スパリゾートハワイアンズの拠点としても知られています。いわき七浜海道のサイクルステーションが近くに置かれているため、海岸沿いサイクリングとの組み合わせプランに適しています。宿泊施設は大型旅館からビジネスホテルまで幅広く、予算や旅行スタイルに合わせて選べる柔軟性が魅力です。
いわき市のサイクリング支援体制|9か所のサイクルステーション
いわき市は自転車観光の振興に積極的に取り組んでおり、市内には9か所のサイクルステーション(市内サイクルステーション)が整備されています。各ステーションでは、自転車のレンタル、空気補充や簡単な修理工具の貸し出し、コース地図やパンフレットの配布、休憩スペースやバイクラックの提供といったサービスが用意されています。一部のステーションでは更衣室・シャワー施設も利用できます。
市の自転車情報サイト「NOZZOいわき(のっぞいわき)」では、いわき市内のサイクリングコースや観光スポット、サイクルステーションの情報が一元的に提供されています。夏井川渓谷チャレンジコースの動画も掲載されており、コースの雰囲気を事前に確認できる点はサイクリストにとって心強いサポートです。
また、いわき市は将来的なオフロードサイクル施設の整備も検討しており、「いわき市オフロードサイクル施設整備基本計画」に基づき、マウンテンバイク用コース、キッズコース、スキルアップエリアなどの新規施設整備を進める方針を打ち出しています。
ツール・ド・いわき|年次サイクリングイベントの魅力
いわき市では毎年、大規模なサイクリングイベント「ツール・ド・いわき」が開催されています。いわき七浜海道を中心に、浜通りの美しい海岸線や里山を走るこのイベントは、市内外から多くのサイクリストが参加する人気イベントとして定着しています。
直近で開催された2025年大会は、2025年11月2日にアクアマリンパーク(小名浜)をメイン会場として実施されました。コース構成と参加費用は、以下の表のとおりです。
| コース | 距離 | 対象 | 参加費用 |
|---|---|---|---|
| ロングコース | 約113キロメートル | 中・上級者(いわき市・広野町・楢葉町を巡る) | 8,000円 |
| ミドルコース | 約77キロメートル | 中級者(いわき市内を走行) | 6,000円 |
| ショートコース | 約30キロメートル | 初心者・ファミリー | 4,000円(小学生2,000円) |
| 復興サイクルトレインコース | 約73キロメートル | JR泉駅から大野駅まで列車移動後、大熊町・富岡町・広野町・いわき市を縦走 | ― |
ツール・ド・いわきの特色のひとつが、エイドステーションでの地元グルメです。地元の特産品や郷土料理が振る舞われ、疲れた体を癒やしながら地域の食文化も楽しめる点が好評を博しました。過去の大会では、ワンダーファームのトマトフライ、楢葉町のマミィすいとん、道の駅よつくら港のほっき飯、いわき新舞子ハイツのあんこう汁、ENAバーガー、小名浜漁連婦人会のつみれ汁などが提供されました。
また、磐越東線を活用した「復興サイクルトレインコース」は、輪行を手軽に体験できる特別コースとして人気を集めました。JR東日本が企画する「サイクルトレイン」で電車内に自転車を持ち込み、列車から降りて自転車で浜通りの復興の歩みを感じながら走るという、輪行とサイクリングイベントを組み合わせた珍しい体験ができる点が魅力です。
福島県サイクリングモデルルートとの連携
いわき市の夏井川渓谷サイクリングは、福島県全体のサイクリングモデルルートの一部としても位置付けられています。福島県は2022年以降、県内各地のサイクリングルートを体系的に整備・PRする取り組みを進めており、浜通り沿いの「ふくしま浜通りサイクルルート」の主要スポットとして夏井川渓谷が含まれています。
福島県のサイクリングマップ(「サイクルマップ」としてPDF形式で提供)には、夏井川渓谷を経由するルートが掲載されており、県内各地のサイクリングコースを一覧で確認することができます。観光庁が推進する「ジャパンエコトラック」にも夏井川渓谷周辺のルートが登録されており、エコツーリズムの観点からも注目を集めています。
夏井川渓谷を拠点として、浜通りの各地を自転車でつなぐ旅も可能です。いわき市から北上すれば、東日本大震災の被害を受けた地域の復興の歩みを感じながら走る「復興サイクリング」として双葉郡方面へ足を伸ばすことができ、南方向には茨城県日立市方面へと続く海岸線ルートが広がります。
周辺の観光スポットと地元グルメ
夏井川渓谷サイクリングの拠点となるいわき市内には、多彩な観光スポットや飲食店が充実しています。
スパリゾートハワイアンズは、いわき湯本温泉エリアにある大型温泉テーマパークで、常夏のプールやフラダンスショーを楽しめます。サイクリング後の疲れを癒やす施設として最適で、いわき七浜海道のサイクルステーションが近くに設置されているため、サイクリングとの組み合わせコースとして人気を集めています。
アクアマリンふくしまは、小名浜港に隣接する水族館で、三陸の海や世界の海の生き物を展示する施設です。いわき七浜海道のルート沿いに位置するため、サイクリングの立ち寄りスポットとして多くのライダーが訪れています。
石炭・化石館ほるるは、いわき市の炭坑の歴史や化石を展示する資料館で、市の産業遺産を学べるスポットです。市内サイクリングコースの途中に組み込むことが可能です。
地元グルメの観点では、いわき市は太平洋に面した漁港を持ち、新鮮な海の幸が豊富にそろいます。特に小名浜漁港周辺にはシーフードレストランが集まっており、サイクリングのゴール後に立ち寄るのに最適な環境です。いわき市の名物料理として知られるメヒカリ(アオメエソ)の唐揚げは、地元の食堂や居酒屋で味わうことができます。
夏井川渓谷サイクリングについてよくある疑問
夏井川渓谷サイクリングを計画する方からよく寄せられる疑問に、以下でお答えします。
初心者でも夏井川渓谷サイクリングは楽しめるかという疑問については、磐越東線の輪行を活用した川前駅から赤井駅までの約23キロメートルのルートが特におすすめです。下り基調のコースで体力的な負担が少ないため、サイクリング経験が浅い方でも比較的安心して挑戦できます。家族連れには夏井川サイクリング公園の一周約1.5キロメートルのコースが最適です。
紅葉のベストシーズンはいつかという疑問については、例年10月下旬から11月下旬が紅葉シーズンで、見頃のピークは11月上旬から中旬にかけて訪れます。錦展望台からの眺めが特に評価されており、この時期はアクセス道路が混雑するため自転車での来訪が渋滞回避の有効な手段となります。
レンタサイクルは利用可能かという疑問については、いわき市内9か所のサイクルステーションのうち一部でレンタサイクルが提供されているほか、いわき七浜海道沿いの7か所のサイクルステーションでも一部でレンタル可能です。自転車を持参しない観光客でもサイクリングを楽しめる環境が整えられています。
まとめ|夏井川渓谷サイクリングコースは東北屈指のライドスポット
夏井川渓谷のサイクリングコースは、豊かな自然と迫力ある渓谷美、そして体系的に整備されたサイクリング環境が三位一体となった、東北屈指のライドスポットです。本格周回ルート「夏井川渓谷チャレンジコース」(63.9キロメートル)、初心者向けの磐越東線輪行コース(約23キロメートル)、家族向けの夏井川サイクリング公園(一周約1.5キロメートル)と、レベルや目的に応じた多彩な選択肢が用意されており、輪行を活用すれば体力面の障壁も大きく下げることができます。
春のアカヤシオ、夏の新緑、秋の紅葉、冬の雪景色と、どのシーズンに訪れても独自の美しさを発揮するこの渓谷は、一度の訪問では飽き足らず、季節を変えて何度も訪れたくなる魅力にあふれています。海岸線を走る「いわき七浜海道」と組み合わせれば、1〜2日で「山と海」の両方を堪能できる贅沢な旅程も組めます。
いわき市の自転車情報サイト「NOZZOいわき」やツール・ド・ニッポンに登録されたコース情報を活用しながら、自分のペースと体力に合ったコース選びをして、夏井川渓谷サイクリングを存分にお楽しみください。なお、渓谷へ向かう際には道路状況や施設の営業状況が変わることがあるため、最新情報の事前確認をお忘れなく。特に秋の紅葉シーズンは大変混雑するため、平日の早朝訪問や自転車でのアクセスが渋滞回避に大きく役立ちます。








