三重にあるK3こと松阪伊勢サイクリングロードで田園風景を走る

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三重県の松阪市と伊勢市を結ぶ自転車道は、サイクリストの間で通称K3と呼ばれています。正式名称は松阪伊勢サイクリングロード(三重県道777号松阪伊勢自転車道線)で、全長は資料によって41.2キロメートルとも37.8キロメートルとも記載されており、統一された数字はまだありません。海沿いの開放的な景色と、明和町から伊勢市にかけて広がる田園風景の両方を一度に楽しめる点が、このコースの大きな特徴です。この記事では、K3ことこの自転車道のルートや距離をめぐる実情、沿線に広がる田園風景と歴史スポットの見どころ、そして走行時に押さえておきたい注意点を、できるだけ具体的にまとめました。三重で自転車旅を計画している人はもちろん、伊勢神宮参拝とサイクリングを組み合わせたい人にも参考になるはずです。

目次

松阪伊勢サイクリングロードは通称K3、正式名称は三重県道777号

松阪伊勢サイクリングロードという名称よりも、サイクリストのあいだではK3という通称のほうが通りがよいかもしれません。正式名称は三重県道777号松阪伊勢自転車道線で、松阪市京町を起点に伊勢市本町までを結ぶ計画で整備が進められてきました。この自転車道は、四全総(第四次全国総合開発計画)に基づく「三重サンベルトゾーン構想」の一環として計画された大規模自転車道のひとつです。斎宮跡、大淀の海辺、田丸城跡といった沿線の名所を結ぶ、全長37.8キロメートルの自転車道として構想され、平成6年(1994年)に着工、平成14年(2002年)の完成を目標としていたとされています。ところが2006年8月時点でも工事は完了しておらず、その後も全線が専用道として開通することのないまま、現在に至っています。

全長は41.2キロと37.8キロの二説があり、専用道は6.8キロにとどまる

三重県の令和5年時点の統計では、路線全体としての総延長は41.2キロメートルとされています。ただし、このうち自転車・歩行者専用道として実際に整備されているのはおよそ6.8キロメートルほどにすぎません。残りの区間は、国道42号、三重県道705号大淀東黒部松阪線、三重県道60号伊勢松阪線、三重県道530号田丸駅斎明寺線、三重県道37号鳥羽松阪線といった既存の道路と重複・共用する形になっており、歩道を利用する区間や、そもそも整備が及んでいない区間も少なくありません。K3を走るというのは、きれいに舗装された専用サイクリングロードをひたすら快走する体験というよりは、断片的に残る専用道をつなぎながら、一般道や生活道路、時には砂利道までも織り交ぜて走破する体験に近いといえます。起点にも終点にも案内標識はほとんど見当たりません。初めて走る人にとっては道に迷いやすいコースであることは間違いなさそうです。もっとも、正解のルートが一本道として決まっているわけではなく、その日の気分や体力、興味に応じてルートをアレンジしながら走れる自由度の高さは、このコースの隠れた魅力ともいえるでしょう。

ルートは松阪駅から伊勢市駅まで海側と内陸をつなぐ

松阪伊勢サイクリングロードのルートは、おおむね次のような流れをたどります。起点はJR紀勢本線・近鉄山田線の松阪駅前です。名古屋から特急でおよそ1時間強、大阪方面からは特急でおよそ2時間強でアクセスでき、多くのサイクリストがここをスタート地点に選んでいます。松阪駅を出発すると、まずは松阪市街地を抜けて海側へと向かい、伊勢湾沿いを北上したのち、内陸に転じて明和町の斎宮跡や田丸城跡を経由し、旧熊野街道をたどりながら伊勢市本町、伊勢市駅前へとゴールする、というのがおおまかな行程です。

松阪市街地は御城番屋敷と松坂城跡の江戸情緒が残る

松阪市の中心部には、江戸時代に「日本一の商人の町」とも呼ばれた松阪商人の面影を残す商家の町並みが残っており、松坂城跡(松阪公園)や御城番屋敷といった歴史スポットも点在しています。御城番屋敷は、紀州藩士たちが松阪城の警護のために移り住んだ江戸時代の武家屋敷で、全国的にも珍しい規模の長屋形式の武家住宅が現存し、国の重要文化財に指定されています。石畳の道の両側に槇(まき)の生垣が続く景観は、松阪城の石垣を背景にすると江戸時代の風情が感じられると評判です。石畳は凹凸があってロードバイクでは走りにくいため、この区間だけは押し歩きで景観をじっくり味わうサイクリストも多いようです。松阪駅前ではレンタサイクルも利用できるため、自走前後にこうした松阪の町並みを歩いて(あるいは押し歩きで)巡ってみるのもよいでしょう。

海沿い区間は松名瀬海水浴場と大淀西海岸が見どころ

市街地を抜けると、コースは伊勢湾沿いへと近づいていきます。海の上に浮かぶような展望台を経て、松名瀬海水浴場に至る区間は、このコースの中でも海の開放感を味わえる貴重な区間です。松名瀬海水浴場は伊勢湾に面した遠浅で波の穏やかなビーチで、夏場は海水浴客で賑わいます。トイレやシャワー(有料)、無料の駐車場約600台分も備えられており、休憩スポットとしても使いやすいスポットです。海沿いから少し北上すると、大淀(おおよど)西海岸のキャンプ場の方面に至ります。このエリアには「大淀西海岸ムーンビーチキャンプ場」や「大淀ふれあいキャンプ場」があり、松阪市と伊勢市のちょうど中間、伊勢志摩国立公園の玄関口に位置しています。手入れの行き届いた芝生と松林に囲まれた広々とした敷地からは伊勢湾を一望でき、白砂青松の海岸をプライベートビーチのような気分で楽しめます。海水浴や釣り、潮干狩りができるほか、キャンプ場周辺では電動ファットバイクや1日レンタサイクル(E-BIKE)も利用できるため、サイクリングの休憩ポイントとしてはもちろん、日没前後に立ち寄れば伊勢湾に沈む夕日を眺められるスポットとしてもおすすめです。

明和町から伊勢市の内陸区間は平坦な田園地帯が続く

このコースの大きな特徴のひとつは、海沿いの開放感のある景色から一転して、内陸部では見渡す限りの田園風景が広がるという、景色の振れ幅の大きさにあります。明和町から伊勢市にかけての内陸区間は、住宅地とともに水田が広がる典型的な三重の農村風景で、春から夏にかけては早苗が風にそよぐ様子、秋には黄金色に色づいた稲穂が一面に広がる様子を眺めながらペダルを漕ぐことができます。海沿いの区間ではロードバイクらしいスピード感のある走りを楽しめる一方、田園地帯に入ると信号も少なく、車の通行量も限られた、風の音と鳥の声だけが聞こえてくるような静かな道が続きます。田んぼのあぜ道のような細い農道や、地元の人しか使わないような生活道路を通ることもあり、都市部のサイクリングロードでは味わえない、のどかで素朴な空気感が魅力です。斎宮跡周辺は特に平坦な地形が広がっており、古代の宮殿があったとされる広大な史跡と、その外側に広がる現代の水田とが混じり合う独特の景観を見ることができます。三重県特有の穏やかな気候もあって、田園風景の中を走るサイクリングは、真夏や真冬を避ければ快適に走れるでしょう。特に稲刈りの終わった晩秋、刈田の匂いを感じながら走る区間や、田植えの終わった初夏、水を張った田んぼが空を映す水鏡の景色を楽しめる区間は、写真好きのサイクリストにも人気が高いようです。

斎宮跡は137.1ヘクタールの規模を持つ古代の宮殿跡

斎宮跡は、古代から中世にかけて、伊勢神宮に仕える皇女「斎王(さいおう)」が暮らした宮殿とその関連施設(斎宮寮)の跡地です。斎王制度はおよそ660年間にわたって続いたとされ、遺跡の広さは137.1ヘクタールにも及ぶ、国内でも屈指の規模を誇る古代遺跡です。2011年には、日本最古とされる「いろは歌」がひらがなで書かれた土器がこの地で発見され、話題を呼びました。現在の斎宮跡には、平安時代の建物を復元した史跡や、歴史体験ができる施設が整備されており、十二単(じゅうにひとえ)や小忌衣(おみごろも)といった装束を試着できる体験コーナーもあります。斎宮跡歴史ロマン広場や、いつきのみや歴史体験館、さいくう平安の杜(もり)などの見どころが点在しており、サイクリングの休憩がてら立ち寄るのに適したスポットです。いつきのみや歴史体験館では、専門スタッフのサポートのもとで本格的な十二単や直衣(のうし)を試着する体験(大人12,500円、子ども8,750円、税込。平日は20パーセント割引)が毎日行われているほか、天皇や斎王の乗り物であった葱華輦(そうかれん)に乗ったり、盤双六(ばんすごろく)や貝覆い(かいおおい)といった古代の遊びに挑戦したりすることもできます。サイクリングウェア姿のままふらりと立ち寄って、平安時代の宮廷文化に触れられるのも、このコースならではの体験でしょう。明和町では、砂浜や田んぼのあぜ道でも走行できる電動のファットバイクのレンタルサービスも用意されており、斎宮駅の近くには通常タイプのレンタサイクルもあります。松阪伊勢サイクリングロードを自前のロードバイクで走る場合はもちろん、手ぶらで訪れてレンタサイクルで斎宮跡周辺だけをのんびり回る、という楽しみ方も可能です。

田丸城跡と旧熊野街道は南北朝から江戸期の歴史をたどる

斎宮跡を過ぎると、コースはさらに南下し、田丸城跡へと至ります。田丸城跡は伊勢市と松阪市のあいだに位置する明和町にあり、南北朝時代に北畠親房・顕信父子が築いたとされる城の跡です。江戸時代には紀州藩の支城として機能した歴史を持ち、現在は石垣や堀の一部が残り、桜の名所としても知られています。天守台からの眺めや、周囲を取り囲む水堀の風情を楽しむことができるでしょう。田丸城跡を過ぎたのち、コースは旧熊野街道をたどって伊勢市方面へと向かいます。熊野街道は、伊勢神宮から熊野三山へと続く古くからの参詣道で、宿場町の面影を残す町並みが部分的に残っている区間もあります。江戸時代、伊勢参りを終えた旅人がそのまま熊野を目指して歩いたとされるこの街道を、自転車でゆっくりとたどるのも、歴史好きのサイクリストには乙な楽しみ方かもしれません。

走行時は標識の少なさと路面状況の変化に注意が必要

松阪伊勢サイクリングロードは案内標識がほとんど整備されていないため、初めて走る場合はGPSアプリやサイクルコンピューターの利用がほぼ必須になります。地図上ではつながっているように見えても、実際には歩道の段差が多い区間、交通量の多い国道・県道との共用区間、ロードバイクでは走行が厳しい砂利道の区間などが混在しており、コンディションは決して一定ではありません。専用道として整備された区間も、開通から年数が経過していることもあり、路面が荒れている箇所があります。案内が乏しいこともあって利用者自体が少なく、全線を走破しようとしても道に迷ってしまう人が多いとされています。実際にコース全体を走ったサイクリストのレポートでも、走行距離が29キロメートルほどで終了した例が報告されており、必ずしも公称の41.2キロメートル全線を走りきることを前提にしなくてもよいコースだといえます。そのため、初めてこのコースに挑戦する場合は、あらかじめ地図アプリでルートを作成しておく、あるいは松阪駅から明和町・斎宮跡までの区間、斎宮跡から伊勢市駅までの区間、といった具合に、走りやすい区間を区切って計画するのがおすすめです。太めのタイヤを履いたグラベルロードやクロスバイクであれば、砂利道の区間もある程度は快適にこなせますが、細いタイヤのロードバイクの場合は、無理をせず迂回することも検討したいところです。

松阪牛グルメは老舗の牛銀とまるよしが代表格

松阪伊勢サイクリングロードの起点である松阪市は、松阪牛の産地として知られています。市内には松阪牛を使った洋食店やステーキ店、精肉店が数多く軒を連ねており、サイクリング前後に松阪牛グルメを味わうのは、このコースを走る大きな楽しみのひとつです。老舗の洋食屋「牛銀」では松阪牛のステーキやカツレツ、デミグラスソースをかけたビーフカツ丼が名物として知られています。創業50年を超える「松阪まるよし」ではサーロインやヒレなど部位を選べるステーキのほか、すき焼きやしゃぶしゃぶも楽しめます。もう少し軽く楽しみたい場合は、竹輝銅庵(ちっきどうあん)の「松牛焼」がおすすめです。松阪牛の形をした大判焼き風の和菓子で、もちもちとした生地とほんのり甘い餡が特徴の、走りながらでも立ち寄りやすいスイーツになっています。明和町エリアでは、斎宮跡周辺のカフェや、地元産の食材を使った飲食店で休憩を取ることができます。

ゴールの伊勢神宮は外宮から内宮まで自転車で20分から30分

田丸城跡から旧熊野街道をたどって伊勢市街地に入ると、いよいよゴールの伊勢市駅は近づいてきます。せっかく伊勢まで自転車で走ってきたのであれば、そのまま伊勢神宮へ足を延ばさない手はありません。伊勢市駅からは自転車でおよそ5分ほどで、豊受大御神(とようけのおおみかみ)を祀る外宮(げくう)に到着します。外宮の参拝には30分コースと60分コースのモデルコースが用意されており、時間に応じて回り方を選べます。外宮から内宮(ないくう)までは、自転車でおよそ20分から30分ほどの距離です。内宮は天照坐皇大御神(あまてらしますすめおおみかみ)を祀る、伊勢神宮の中心的な存在で、内宮の参拝にも60分コース・90分コースが用意されています。内宮のそばには、門前町として栄えた「おはらい町」「おかげ横丁」が広がっており、赤福をはじめとする伊勢名物や伊勢うどんの店、土産物店が軒を連ねています。おはらい町・おかげ横丁の名物といえば、江戸時代から続く老舗「赤福」の赤福餅でしょう。北海道産の小豆を使った餡と国産もち米の餅を組み合わせたシンプルながら上品な味わいの和菓子で、餡の筋目は五十鈴川の流れを、お餅は川底の小石を表現しているとされています。もうひとつの伊勢名物である伊勢うどんは、極太でコシの少ない麺に、天然出汁を使った甘めのたまり醤油ダレを絡めて食べる、伊勢参りの旅人が手早く食事を済ませられるよう工夫されたとされる郷土料理です。おかげ横丁には、江戸から明治にかけての伊勢路の代表的な建物を再現・移築した約2700坪の敷地に、50を超える店舗が軒を連ねており、伊勢うどんや赤福以外にも、三重県各地の郷土料理や伝統工芸品を扱う店が並んでいます。松阪から続いた田園と歴史の道のりの締めくくりとして、参拝と食べ歩きでゆっくり疲れを癒やすのに最適なゴールだといえるでしょう。伊勢市駅前では電動アシスト自転車のレンタルサービスもあるため、輪行で訪れて手ぶらで神宮巡りをする、という楽しみ方もできます。

パールロードとサニーロードとの違いは獲得標高の少なさ

三重県には、松阪伊勢サイクリングロード以外にも、鳥羽市と志摩市を結ぶ「パールロード」や、玉城町・度会町・南伊勢町の3町をつなぐ「サニーロード」など、人気のサイクリングルートがいくつも存在します。パールロードは全長23.8キロメートルのドライブウェイで、日本の道100選にも選ばれた鳥羽湾の多島海を望む絶景路として知られていますが、獲得標高が1,000メートルを超える区間もあるアップダウンの激しいコースで、どちらかといえば健脚向けです。サニーロードの度会町コースは全長約20キロメートルで、山と海の両方を楽しめる初級・中級者向けのルートとして紹介されています。これらの海沿い・山沿いのコースと比べると、松阪伊勢サイクリングロードの内陸区間、特に明和町から伊勢市にかけての区間は、獲得標高がほとんどなく平坦であることが際立った特徴です。三つのコースの違いを整理すると、次のようになります。

コース名全長主な特徴向いているレベル
松阪伊勢サイクリングロード(K3)41.2km(37.8kmとする資料も)海沿いと田園地帯を横断、史跡が多い初心者から中級者(道迷いに注意)
パールロード23.8km鳥羽湾の多島海を望む絶景路、獲得標高1,000m超健脚向け
サニーロード(度会町コース)約20km山と海の両方を楽しめる初級・中級者向け

絶景のアップダウンを楽しみたいならパールロードやサニーロード、のんびりとした田園風景と歴史遺跡をマイペースに巡りたいなら松阪伊勢サイクリングロードというように、その日の体力や気分に応じてコースを使い分けるのも、三重県でサイクリングを楽しむひとつの方法でしょう。

太平洋岸自転車道は三重県内だけで約300キロにおよぶ

三重県の伊勢志摩エリアから熊野灘沿岸にかけては、国が指定する「ナショナルサイクルルート」のひとつである太平洋岸自転車道が通っています。鳥羽市・伊勢市・志摩市・玉城町・度会町・大紀町・南伊勢町・紀宝町の8市町が連携する形で、鳥羽港から紀宝町の新熊野大橋までを結ぶ、三重県内だけでおよそ300キロメートルにおよぶルートで、海沿いを走る約120キロメートルの「海コース」と、山側を走る約80キロメートルの「山コース」で構成されているそうです。松阪伊勢サイクリングロードとは異なる路線ではあるものの、伊勢志摩エリアが自転車観光に力を入れていることの表れとして、あわせて知っておくと三重でのサイクリング計画がより立てやすくなるはずです。

アクセスは名古屋から近鉄特急で1時間強、レンタサイクルは4時間400円から

起点となる松阪駅へは、JR紀勢本線・近鉄山田線が乗り入れており、名古屋方面からは近鉄特急でおよそ1時間強、大阪方面からは近鉄特急でおよそ2時間強でアクセスできます。ゴール地点となる伊勢市駅、あるいは近鉄・JRの伊勢市駅・宇治山田駅からも、それぞれ名古屋・大阪方面への特急が発着しているため、松阪から伊勢まで片道で走り、帰りは輪行袋を使って電車で戻る、という使い方がしやすいのもこのコースの利点です。自前の自転車を持っていない場合でも、松阪駅前の松阪駅観光情報センターでレンタサイクルを利用できます。料金と貸出時間は次の通りです。

種別料金貸出時間
普通自転車4時間まで400円午前9時から午後5時半まで
電動アシスト車4時間まで500円(超過分は1時間ごとに100円加算)午前9時から午後5時半まで

台数には限りがあり予約は受け付けていないため、利用したい場合は早めの時間に立ち寄るのが安心です。伊勢市側でも伊勢市観光協会がレンタサイクルを提供しているほか、斎宮駅周辺や明和町でもレンタサイクルサービスを利用できます。特に明和町の電動ファットバイクレンタルは、砂浜や田んぼのあぜ道といった、通常の自転車では走りにくい路面にも対応しているため、田園風景をより気軽に楽しみたい人には向いているでしょう。

走りやすい季節は田植え前後の5月と稲刈り後の10月から11月

三重県中部は比較的温暖な気候ですが、真夏の炎天下での長距離走行は熱中症のリスクが高く、こまめな休憩と水分補給が欠かせません。海沿いの区間は日差しを遮るものが少ないため、日焼け対策も忘れずに用意しておきたいところです。逆に、田植え前後の初夏(5月頃)や、稲刈りが終わった晩秋(10月から11月頃)は、田園風景が最も美しく見える時期で、気候的にも走りやすいといえます。冬場は伊勢湾からの海風が冷たく感じられる区間もあるため、内陸の田園地帯を走る際との気温差を見越して、脱ぎ着しやすいウィンドブレーカーを用意しておくと快適に走れます。梅雨の時期は、専用道以外の区間で水はけの悪い箇所や、砂利道がぬかるむ箇所も出てくるため、天候によっては無理をせず、松阪市街地や斎宮跡周辺だけを回るショートプランに切り替える判断も大切でしょう。

案内標識が乏しいコースであることから、スマートフォン用のモバイルバッテリーやサイクルコンピューター、紙の地図など、複数の手段でルートを確認できるようにしておくと安心です。また、専用道以外の区間では一般車両と道を共有する場面も多いため、ヘルメットの着用や、フロント・リアのライト、反射材の準備など、基本的な安全装備は必ず整えておきたいところです。砂利道やダートを含む区間もあるため、できればグラベル対応のタイヤやクロスバイクでの走行が安心ですが、ロードバイクで挑戦する場合は、荒れた区間を事前に把握し、必要に応じて迂回するルートも用意しておくとよいでしょう。そのほかの持ち物としては、パンク修理用のパッチやタイヤレバー、携帯ポンプまたはCO2ボンベ、予備チューブは忘れると帰れなくなる装備として必ず携行しておきたいところです。片道41.2キロメートル(実質的にはそれより短い距離になることが多いものの)を走りきる行程になるため、2時間を超える走行になる場合はエネルギー補給用の補給食も忘れずに用意し、休憩と水分補給をこまめに取りながら進みたいところです。松阪駅から出発して伊勢市駅・宇治山田駅にゴールする片道ルートを組む場合は、自転車を分解して専用の袋に収める輪行で電車に乗って戻ることになるため、あらかじめ輪行袋の使い方に慣れておくと当日も安心です。

1日で走る場合は午前に海側、午後に内陸というプランが標準

最後に、松阪伊勢サイクリングロードを1日で走破する場合のおおまかなプラン例を紹介します。あくまで目安であり、休憩や観光の時間、体力、当日のコースの状態によって大きく前後する点には留意してください。朝、松阪駅を出発したら、まずは御城番屋敷や松坂城跡など松阪市街地を軽く見て回り、松阪牛グルメを味わうなら朝から昼にかけて洋食屋や精肉店に立ち寄っておくのもよいでしょう。市街地を抜けたら海側の展望台、松名瀬海水浴場を経由し、大淀西海岸のキャンプ場エリアで一度小休憩を取ります。ここまでで午前中いっぱいから昼過ぎにかけての行程になることが多いようです。

午後は内陸へ針路を変え、明和町役場周辺を通過して斎宮跡へ向かいます。歴史好きであれば、いつきのみや歴史体験館での装束体験や、斎宮跡歴史ロマン広場の散策に1時間ほど確保しておくと満足度が高いでしょう。そこから田丸城跡、旧熊野街道をたどって伊勢市街地へ入り、夕方前後に外宮・内宮へお参りし、おかげ横丁で赤福や伊勢うどんを味わってゴール、というのが標準的な1日の流れになります。走行そのものに要する時間はコース取りにもよりますが数時間程度で、そこに観光や食事、休憩の時間を加えると、まる1日をかけてゆったり楽しむ行程になるイメージです。体力や時間に自信がない場合は、松阪から斎宮跡までの前半、斎宮跡から伊勢までの後半、というように2日に分けて走るプランも十分に成立します。

標識の少なさが生む自由度こそK3こと松阪伊勢サイクリングロードの持ち味

松阪伊勢サイクリングロード、通称K3は、完璧に整備された観光用サイクリングロードとは言い難いコースです。標識は乏しく、路面状況もまちまちで、公式に示された41.2キロメートルという距離を、迷わずに一本道として走りきるのは簡単ではありません。しかし、その未完成さこそが、このコースならではの魅力を生み出している面もあります。

海沿いの開放的な景色、明和町・斎宮跡周辺に広がる古代の史跡と現代の田園風景が同居する独特の景観、田丸城跡や旧熊野街道といった歴史の痕跡、そして松阪牛をはじめとする沿線グルメ。これらを、地図アプリを頼りに自分でルートを組み立てながらたどっていく体験は、決められたコースをただなぞるだけのサイクリングとは一味違う達成感をもたらしてくれるでしょう。三重県で自転車旅を計画している人、特に伊勢神宮参拝と組み合わせてサイクリングを楽しみたい人、あるいは田園風景の中をのんびり走りたい人にとって、松阪伊勢サイクリングロードは、ややクセはあるものの、一度は挑戦してみる価値のあるコースだといえます。パールロードやサニーロードのようなダイナミックな絶景コースが景色を見せるサイクリングだとすれば、松阪伊勢サイクリングロードは、古代から続く歴史の積み重なりと、変わらぬ農村の暮らしを、自分のペースでたどっていくサイクリングだといえるかもしれません。

走る前には、最新の道路状況や区間ごとのルートについて、地元の観光協会や自転車道関連のサイトで最新情報を確認しておくことをおすすめします。案内標識が少なく、路面状況も一定しないコースだからこそ、事前の下調べと余裕のあるスケジュールが、快適な自転車旅の鍵を握っています。松阪の商人町から、海辺の展望台、田園に囲まれた斎宮跡、そして伊勢神宮へ。松阪牛と伊勢うどん、赤福という三重を代表するグルメに挟まれたこの道のりは、走り終えたあとにきっと、三重県の素顔を教えてくれるはずです。

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