由良川沿いを走るサイクリングは、京都府福知山市を拠点に整備された「京都『ゆラリー』サイクリングロード」が中心になります。福知山から舞鶴、綾部を経て福知山へ戻る周回ルートは総距離およそ98キロメートルで、路面のブルーライン標示とサポートステーションのおかげで、土地勘のないサイクリストでも走りやすく設計されています。この記事では、福知山エリアのモデルコースやレンタサイクルの料金、天橋立や舞鶴まで足を延ばすルート、綾部の里山風景、そして走行に適した季節までをまとめました。

由良川ゆラリーサイクリングロードは中丹地域を結ぶ約100キロのルート
京都『ゆラリー』サイクリングロードは、京都府中丹広域振興局が整備を進める広域サイクリングルートです。「ゆラリー」という名称は由良川とサイクリングを組み合わせた愛称で、福知山市、綾部市、舞鶴市の三市を由良川沿いに結んでいます。総延長は約100キロメートルにおよび、路面にはブルーラインによるコース標示があるため、初めて走る人でも進行方向を見失いにくくなっています。
区間内には空気入れや工具を借りられるサポートステーションが複数箇所設けられており、パンクや空気圧不足といった走行中のトラブルにも対応しやすい環境です。スマートフォン向けの専用アプリでは、GPS機能を使って現在地を地図上で確認しながら走れます。京都府はこの取り組みを「スポーツ・トレイル推進事業」の一環と位置づけ、カヌーや登山とあわせて由良川流域の自然を楽しんでもらうことを目指しています。全国のサイクリストが安心して中丹地域を走れるよう、標示とサポート体制の両面から基盤を整えてきた成果が、このゆラリーロードだと言えます。
福知山城下町の由良川治水は明智光秀の丹波平定に由来する
由良川サイクリングの土台には、戦国時代の治水事業があります。天正年間、丹波を平定した明智光秀は、大きくU字形に蛇行していた由良川の流れを直線化し、堤防を築造しました。この工事によって城下町の氾濫被害が大きく減り、大手橋と小田縁橋の周辺には由良川舟運を支える十数か所の船着場が設けられ、商業の拠点として栄えました。今のサイクリングロードとして使われている堤防道路は、この光秀の治水の延長線上にあります。
福知山城は天正7年ごろ、光秀が丹波平定の拠点として築いたとされる平山城です。由良川とその支流である法川を天然の堀として活用しており、当時としては先進的な縄張りだったと伝えられています。三層四階の天守閣は昭和61年に復元され、現在は資料館として丹波の歴史を紹介しています。城とあわせて象徴的なのが、由良川に架かる音無瀬橋です。全長478メートルの白いアーチ橋で、福知山十景のひとつに選ばれています。橋を渡るときはアーチの下を駆け抜ける爽快感があり、橋の上からは福知山城と川の流れを一望できるため、写真を撮る人も少なくありません。
周回コースは福知山発着で全長およそ98キロになる
ゆラリーサイクリングロードの周回コースは、福知山を起点に由良川を下って日本海方面へ向かい、舞鶴で赤レンガ倉庫群や海上自衛隊基地周辺を走ったあと、峠を越えて綾部へ抜け、由良川沿いに福知山へ戻る構成です。総距離はおよそ98キロメートルで、一日で走り切るにはある程度の体力と時間が必要になります。
福知山から舞鶴へ向かう前半は、比較的平坦な河川敷や堤防道路が中心です。由良川の流れは穏やかで、春は新緑、夏は川遊びの様子、秋は紅葉、冬は澄んだ空気の中の山並みと、季節ごとに違う表情を見せてくれます。舞鶴から綾部へ抜ける区間には峠越えの坂道があり、ロードバイクに慣れた人やヒルクライムを好む人にとっては歯応えのある難所です。海側から一気に標高を上げていく道のりは体力を使いますが、登り切った先の眺めはコース全体の中でも印象に残る場面のひとつです。
福知山観光案内所のレンタサイクルは2時間500円から利用できる
福知山でサイクリングを始めるなら、JR福知山駅北口にある福知山観光案内所のレンタサイクルが便利です。通常タイプは4台、電動アシストタイプは6台用意されており、料金は次のとおりです。
| 自転車の種類 | 台数 | 最初の2時間 | 以降1時間ごと |
|---|---|---|---|
| 通常タイプ | 4台 | 500円 | 100円 |
| 電動アシストタイプ | 6台 | 600円(65歳以上500円) | 200円(65歳以上100円) |
電動アシストタイプを選べば、峠越えの区間や長距離のロングライドでも体力の消耗を抑えられます。由良川沿いの周回コースに初めて挑戦する人や、体力に自信のない人には特におすすめです。貸出と返却はいずれも福知山観光案内所で行うのが基本なので、明智光秀ゆかりの史跡を巡って同じ場所に戻ってくるショートコースであれば、レンタサイクルだけで十分に楽しめます。天橋立まで足を延ばす長距離コースの場合は、後述するガイド付きツアーを利用するか、自分のロードバイクやクロスバイクを持ち込むサイクリストが多いようです。
由良川ダウンリバーのガイドツアーは福知山駅から天橋立元伊勢籠神社まで走る
福知山駅を出発し、由良川沿いを下るように走って日本三景のひとつである天橋立を目指し、さらに元伊勢籠神社まで足を延ばすガイド付きツアーもあります。「由良川ダウンリバー、天橋立元伊勢籠神社サイクリング」という名称で提供されており、料金はランチとスイーツを含めて1万7000円程度、春と秋の平日を中心に催行されています。ガイドによる走行技術のアドバイスやメカニカルサポート、保険も含まれているため、長距離のロードバイクに不慣れな人でも参加しやすい内容です。
天橋立到着後は松並木を抜けるサイクリングを楽しみ、帰路は京都丹後鉄道を利用して自転車ごと輪行で戻るスタイルが取られています。元伊勢籠神社は、伊勢神宮に祀られる天照大神が現在の伊勢に鎮座する前に一時的にまつられていたとされることから「元伊勢」と呼ばれる神社で、丹後国一宮としての格式を持ちます。天橋立は宮津湾を南北に横切る約3.6キロメートルの砂州に、およそ8000本の松が茂る景観が特徴で、松並木の中を自転車で走れる区間もあります。天橋立周辺にはレンタサイクル店が複数あり、割安なサイクルチケットも用意されているため、由良川方面から自走してきた人が現地で自転車を借り替えるという楽しみ方もできます。
天橋立から丹後半島一周のたんいちへ距離を延ばせる
体力と時間に余裕があれば、天橋立を起点に丹後半島を一周する「たんいち」と呼ばれるロングコースに挑戦することもできます。丹後半島は海岸線の景色が続くエリアで、伊根の舟屋や京丹後の温泉、地元産の果物を使ったスイーツも楽しめます。近年はロードバイクと同じフレームやパーツを採用したスポーツタイプの電動アシスト自転車、いわゆるe-BIKEのレンタルやガイドツアーが充実してきており、坂道の多い半島一周コースでも、体力に自信のない人が走りきれる環境が整いつつあります。由良川を下って天橋立に到達したあと、さらに丹後半島の景色を求めて足を延ばすという楽しみ方も選べます。
綾部エリアはあやべグンゼスクエアの産業遺産と里山風景が見どころ
由良川が福知山へ向かう途中で通過する綾部市は、田園風景と里山が今も残るエリアです。市内には「あやべグンゼスクエア」という都市交流拠点があり、あやべ特産館、グンゼ博物苑、綾部バラ園の3施設で構成されています。グンゼ株式会社発祥の地である綾部には、近代蚕糸産業の資料を保存するグンゼ記念館が隣接し、周辺には大正時代の社屋や街並みが残っています。由良川沿いのルートから少し寄り道をして、この近代化産業遺産に触れてみるのも綾部区間ならではの楽しみ方です。
綾部市はサイクリングだけでなく、由良川本流や支流でのカヤック、シデ山でのトレッキング、キャンプ場でのホタル観賞や星空観察など、由良川の自然を生かしたアウトドア体験が盛んな地域でもあります。田園風景を駆け抜ける里山サイクリングと産業遺産や自然体験を組み合わせれば、単なる移動としてのサイクリングにとどまらない旅になります。
舞鶴エリアは赤れんがパークのe-BIKEレンタルで巡りやすい
ゆラリーサイクリングコースの周回ルートでは、舞鶴市内で赤レンガ倉庫群や海上自衛隊の基地周辺を走ります。舞鶴赤レンガ倉庫群は、明治から大正期にかけて旧海軍の兵器や物資の倉庫として建設された煉瓦造りの建築群で、重要文化財に指定されている棟もあります。舞鶴湾沿いの道路からは海上自衛隊の艦艇を間近に眺められる区間もあり、由良川の穏やかな川風景から一転して開放感のある景色が広がります。
舞鶴赤れんがパークでは、電動アシスト自転車のレンタサイクルも用意されています。2号棟の市政記念館1階で受け付けており、利用時間は午前9時から午後4時30分まで、最終受付は午後3時です。料金は1日2000円で、返却時に返金されるデポジット1000円が必要になります。身分証の提示が必須で、高齢者や小学生未満の子どもは利用できないという条件もあるため、事前に確認しておくと安心です。この自転車を使えば、赤レンガ倉庫群から舞鶴引揚記念館、舞鶴港とれとれセンターまで、坂道の多い地形でも無理なく巡れます。舞鶴引揚記念館は戦後のシベリアなどからの引き揚げの歴史を伝える資料館で、所蔵資料の一部はユネスコの「世界の記憶」に登録されています。海軍ゆかりのまちとして知られる舞鶴では、牡蠣やカニに加えて、旧海軍のレシピを再現した海軍カレーもご当地グルメとして親しまれています。
京都丹波サイクルルートは由良川の源流部を走る
由良川は南丹市美山町の山間部を源流としているため、上流にあたる亀岡市、南丹市、京丹波町のエリアには「京都丹波サイクルルート」という別のルートも整備されています。サンガスタジアム by KYOCERAを起点とする5つのコースで構成されており、茅葺き民家が点在する山里の風景や、桂川と由良川の源流となる山々、温泉、ダム、歴史的な史跡を巡ることができます。由良川本流沿いのゆラリーコースとあわせて源流部も走れば、由良川という一本の川が生まれてから日本海に注ぐまでの流れを、自転車を通じて体感できます。
国土交通省のナショナルサイクルルート制度が河川サイクリングの追い風になっている
由良川のような河川沿いのサイクリングロード整備は、日本全体のサイクルツーリズム振興の流れの中にあります。国土交通省は自転車活用推進法に基づき、地方創生とインバウンド誘致に自転車を活用する「ナショナルサイクルルート制度」を創設しました。2021年5月には第2次自転車活用推進計画が閣議決定され、サイクルツーリズムの推進による観光立国の実現が政策の柱のひとつに掲げられています。
同じように河川を軸に整備された事例としては、霞ヶ浦と筑波山を中心とする「りんりんロード」があります。総距離約180キロメートルのこのロードはナショナルサイクルルートに指定されており、ルート沿いに数百か所のサポート拠点が置かれています。由良川のゆラリーサイクリングロードも、路面のブルーライン標示とサポートステーションという同じ発想の整備を、中丹地域という限られたエリアで実現した取り組みだと捉えられます。地元住民の理解やインバウンド向けガイド人材の確保が全国的な課題とされる中、由良川流域でも観光案内所のレンタサイクルやガイド付きツアーといった受け入れ体制が少しずつ整えられてきました。
国土交通省が公開している資料によると、河川沿いのサイクリングロードでは路面表示や案内看板を設置し、走行中のサイクリストを誘導しながら周遊ルートを案内する整備が各地で進められています。たとえば福井県では九頭竜川や日野川、足羽川沿いのルート上に案内標識や路面標示を設けて、点在する観光地を結ぶ自転車道として再構築が図られました。電動アシスト自転車の普及状況を踏まえて、坂道の勾配や自転車が通行できる幅を見直す検討も各地で行われています。由良川のゆラリーサイクリングロードで電動アシスト自転車のレンタルが用意され、峠越え区間でも走りやすいように配慮されているのは、こうした全国的な取り組みと同じ方向性だと言えます。
由良川は天然遡上の鮎が9割を占める清流
由良川は鮎の名産地としても知られ、遡上する鮎の9割以上が天然遡上という、全国的にも貴重な清流です。春になると若狭湾から天然の鮎が由良川を遡り、友釣りや素掛けといった伝統的な漁法での釣りが楽しめます。川漁師が網で獲った鮎をその日のうちに発送する取り組みも行われています。由良川漁業協同組合は鮎のほか天然うなぎやすっぽん、川エビなども扱っており、京都府内で天然鮎の買い取りから加工、販売までを手がける数少ない漁協のひとつです。塩焼きにした天然鮎は、サイクリングの途中で立ち寄る食事処のメニューに並んでいることも多く、由良川流域ならではの味覚として味わう価値があります。
福知山ではスイーツも見逃せません。地元で採れる栗や大豆を使った福知山スイーツは観光客からの支持が高く、由良川沿いを走ったあとに栗を使ったモンブランやどら焼きで休憩を取るサイクリストも多いです。福知山駅から近い福知堂ビルの1階には印鑑店に併設されたカフェコーナーがあり、レンタサイクルの受付とあわせて栗スイーツを味わえます。福知山東部の由良川水系沿いには、渓谷を眺めながら走り、古民家を改装した施設「ふるま家」で日帰り温泉に立ち寄るコースもあります。長距離を走ったあとに温泉で汗を流し、古民家の空間で休憩できるのは、由良川流域らしい過ごし方です。
走行に適した季節は新緑の春と空気の澄む秋
由良川沿いの堤防道路や河川敷は、車の往来が少ない区間がある一方で、生活道路と共用している部分や、増水時に冠水しやすい低地部分もあります。台風シーズンや梅雨の増水後は、河川敷の道が通行止めになっていたり、路面に土砂や流木が残っていたりすることがあるため、出発前に道路状況と天候を確認しておく必要があります。
季節でいえば、新緑がまぶしい4月から5月、空気が澄んで山並みまで見渡せる10月から11月が、由良川サイクリングには向いています。夏は日差しが強く気温も上がるので、こまめな水分補給が欠かせません。冬は積雪や路面凍結の可能性があるエリアもあるため、天橋立方面や峠区間を含む長距離コースに挑戦する場合は、最新の気象情報を確認してから出発したほうがよいでしょう。
98キロメートルというロングディスタンスの周回コースを、初心者がいきなり走りきるのは簡単ではありません。まずは福知山市街地から由良川沿いを往復する数キロから十数キロ程度のショートコースで足慣らしをし、慣れてきたら綾部方面や舞鶴方面へ少しずつ距離を延ばしていく進め方が現実的です。ブルーラインの路面標示とサポートステーションが整っているため、初めての土地でも取り組みやすいコースだと言えます。
アクセスは京都市内からJR特急で福知山駅まで約1時間
由良川サイクリングコースの起点となる福知山市へは、京都市内からJR山陰本線の特急列車でおよそ1時間です。京都縦貫自動車道の福知山インターチェンジからも近く、自家用車に自転車を積んで訪れる人もいます。舞鶴方面へはJR舞鶴線や京都丹後鉄道が使え、天橋立方面へも京都丹後鉄道でアクセスできるため、輪行袋を使って電車と自走を組み合わせたルートを組みやすい地域です。
輪行とは、自転車を専用の袋に収めて電車やバスに持ち込む移動方法です。目的地の近くまで電車で移動し、走りたい区間だけを自走して、帰りも電車で戻れるので、98キロメートルの周回コースを全区間自走する体力に自信がない人でも、区間を区切って由良川サイクリングを楽しめます。京都丹後鉄道など公共交通機関を利用する際は、手回り品としての持ち込みルールが定められているため、事前に各社のホームページで確認しておくと安心です。ホイールをクイックリリース方式で固定できる自転車であれば輪行袋への収納もしやすく、天橋立から丹鉄で福知山方面へ戻るようなルート設計とも相性がよい方法です。
由良川サイクリングコースは、福知山城下町の歴史から由良川の穏やかな流れ、峠越えの先に広がる舞鶴の海、天橋立や元伊勢籠神社まで、変化に富んだ景観を一本の川がつないでいます。福知山観光案内所のレンタサイクルを使った気軽な史跡巡りから、ガイド付きツアーでの天橋立往復、上級者向けの峠越えを含む周回コースまで、体力やレベルに応じて選べる幅の広さが、このコースの持ち味です。京都府北部を訪れる際は、由良川沿いのサイクリングコースで、川と海と歴史がつながる景観を自分のペダルでたどってみてください。








