石垣島を自転車で巡るサイクリングでは、コース中盤に位置する川平湾が屈指の絶景ポイントです。島の海岸線に沿って一周すると総距離は約120キロから140キロにおよび、休憩を含めておよそ5時間半から7時間の本格的なロングライドとなります。エメラルドグリーンの海と白い砂浜、亜熱帯の原生林が広がる石垣島は、車では気づけない集落の匂いや坂の先の展望を、自転車だからこそ味わえる場所です。この記事では、一周コースの距離感やアップダウンの実態から、川平湾の見どころ、周辺のカフェやレンタサイクル選び、熱中症対策やベストシーズンまで、実際にコースを組む際に役立つ情報をまとめます。

石垣島一周コースの距離は約120キロ、信号なし区間は100キロ超え
石垣島の海岸線はおよそ139.22キロメートルあります。理論上は健脚のロードバイク乗りなら一日で一周できる大きさですが、実際に走ったサイクリストの記録では、距離120キロのコースのうち信号なし区間が104キロにおよんだといいます。海沿いの道自体は平坦な区間が多いものの、島全体では30メートルから50メートル程度のアップダウンが複数箇所に点在しており、地図で見る印象より脚にきます。とくに北部の平久保崎方面と、川平湾から屋良部半島にかけての区間は起伏が続くため、脚力に自信がない人はここでペースを落とす前提でスケジュールを組んでおきたいところです。
石垣島は平坦な楽園ではなく、絶景の分だけ体力を要求してくる島です。観光目的でサイクリングを楽しみたいなら、無理に一日で一周せず、島を東西南北で分けて二日がかりで巡るプランのほうが現実的でしょう。川平湾を含む西部エリアと、玉取崎や平久保崎を含む北部・東部エリアを別の日に分けると、絶景ポイントでの滞在時間も自然に確保できます。
初心者は市街地から川平湾まで片道25キロのコースから
石垣島サイクリングが初めてなら、まず市街地から川平湾へ向かう約25キロの海沿いコースを走ってみるのがおすすめです。市街地から名蔵湾方面にかけてはアップダウンが少なく、島の空気をつかむにはちょうどよい距離感になります。夕方の時間帯に走れば、海に沈む夕日を眺めながらのライドになることもあり、写真を撮りたい人にとっても好条件がそろいます。
このコースに慣れてきたら、次は市街地から平久保崎灯台を目指す約50キロから60キロのコースに挑戦する流れが定番です。北へ向かうこのルートでは玉取崎展望台を経由することが多く、市街地からの所要時間はおよそ2時間が目安になります。玉取崎展望台からは太平洋側と東シナ海側の両方を見渡せ、川平湾とはまた違う雄大さのある景色が広がります。さらに脚力に余裕があれば、川平湾から屋良部半島を回るルートを14キロほど追加する手もあります。アップダウンは増えますが、他の観光客があまり訪れない静かな絶景に出会える可能性が高く、屋良部半島側から眺める川平湾は展望台からの定番アングルとはひと味違う写りになります。
川平湾へは「新城幸也ロード」の往復36.3キロコースが目安
石垣市出身のプロロードレーサー、新城幸也選手の功績を讃えて石垣市が整備したサイクリングロードが「新城幸也ロード」です。新城選手は日本人で初めて三大グランツール(ツール・ド・フランス、ジロ・デ・イタリア、ブエルタ・ア・エスパーニャ)すべてを完走し、オリンピックにも三度出場しています。
このロードは発着地点を舟蔵公園とし、名蔵湾を目指す往復27.5キロ、川平湾を目指す往復36.3キロ、崎枝半島までを含み北部方面を除く一周76.3キロ、そして島全体を巡る最長121.7キロの一周コースまで、体力に応じて選べる仕組みになっています。川平湾を目的地にするなら往復36.3キロのコースが目安で、初心者から中級者まで挑戦しやすい距離です。コースの大部分に信号機がないため、信号待ちのストレスなく走り続けられるのも特徴です。地元主催のサイクリングイベントでは46キロ・73キロ・100キロといった複数距離のコースが用意され、最長コースには10箇所以上のエイドステーションが設けられています。石垣島でコースを組む際は、こうした公式ロードの距離設定を土台にすると計画が立てやすくなります。
石垣市はサイクルツーリズムを自転車活用推進計画の重点施策に位置づけ
新城幸也ロードのような公式コースが整備された背景には、石垣市の政策があります。石垣市は自転車活用推進法に基づき、2024年3月に石垣市自転車活用推進計画を策定しました。計画期間は2024年度から2031年度までの8年間で、サイクルツーリズムはこの計画の重点施策の一つに位置づけられています。あわせて石垣市は「石垣サイクルツーリズム」の特設サイトを開設し、コース情報やイベント情報を一元的に発信する体制を整えました。八重山地域では、こうした自治体主導の取り組みと並行して、民間のサイクリングツアー会社によるガイド付きツアーも広がっています。石垣島北部の放牧地をマウンテンバイクで巡るツアーなど、道路を走る一周コースとは違った角度で島の自然を楽しめる選択肢も増えており、サイクリング目的で石垣島を訪れる旅行者の受け皿は年々広がっています。
川平湾はミシュラン三つ星、9つの無人島を望む展望が見どころ
川平湾(かびらわん)は石垣島北西部にあり、ミシュラン・グリーンガイド・ジャポンで三つ星に認定された景勝地です。川平公園内の展望台からは、白い砂浜とコバルトブルーからエメラルドグリーンへ変化する海面、原生林が生い茂る大小9つの無人島が織りなす景色を一望できます。海の色は太陽の角度や潮の満ち引き、天候によって表情を変えるため、同じ時間に訪れても前回とまったく同じ景色にはなりません。
アクセス面では、南ぬ島石垣空港から川平湾の展望台までは車でおよそ35分です。県道79号線沿いの高台にあり、駐車スペースも十分に確保されています。サイクリングでこの県道を走る場合、市街地からのんびり走っても2時間前後で到着できるため、午前中に出発すれば昼過ぎには川平湾でゆったり過ごす時間を確保できます。展望台周辺には売店や飲食店も点在しており、長距離ライドの休憩ポイントとしても機能します。
グラスボートは所要約30分、9時から17時まで15分間隔で運航
川平湾は潮の流れが速く遊泳が禁止されているため、海に入って楽しむ一般的なビーチとは性質が異なります。その代わりに定番になっているのがグラスボートです。底が透明なボートに乗れば、熱帯魚やカラフルなサンゴ礁を間近に観察できます。乗船時間は約30分で、朝9時から夕方17時まで15分から20分間隔で運航している会社が多く、長時間待たされることは少なめです。運がよければウミガメやクマノミとの遭遇も期待できます。湾の周辺には複数のグラスボート運航会社が並んでおり、料金やサービス内容は各社で違うため、事前にウェブサイトで比較しておくと当日の動きがスムーズになります。サイクリングの途中で自転車を停め、湾の美しさを海上からも眺めるプランを組み込む価値は十分にあります。
川平湾までの道中では名蔵湾のマングローブと野鳥観察も楽しめる
川平湾を目的地とするコースでは、道中に立ち寄りたいスポットも少なくありません。市街地から川平湾へ向かう海沿いの道では、名蔵湾を望むポイントが複数あります。名蔵湾と名蔵アンパルは2005年にラムサール条約に登録された日本最南端のラムサール条約湿地で、約62ヘクタールのマングローブ林と約20ヘクタールの干潟、湿地草原が一体になった環境です。市街地から車でおよそ20分の距離にあり、サイクリングコースの序盤に位置します。
名蔵湾周辺では、オヒルギ、メヒルギ、ヤエヤマヒルギ、マヤプシキ、ヒルギダマシ、ヒルギモドキという、日本に自生する6種類のマングローブ植物すべてを観察できます。名蔵アンパルは沖縄県内でも最多種の野鳥が訪れる探鳥地として知られ、約200種の野鳥が記録されており、渡り鳥の重要な中継地・越冬地にもなっています。時間に余裕があれば自転車を停め、景色や野鳥をゆっくり観察するのもよいでしょう。夕暮れ時には、一本マングローブと呼ばれる名物の木を夕日が照らす光景も名所として知られています。
川平湾からさらに足を延ばせる屋良部半島には、屋良部岳をはじめ起伏に富んだ地形が広がっています。半島を一周するルートはアップダウンが多いものの、標高の高い場所からは川平湾を一望できるビュースポットが点在しています。体力と時間に余裕があれば、挑戦する価値のあるルートです。
北部まで走るなら玉取崎展望台と平久保崎灯台がセット
北部方面まで足を延ばすなら、玉取崎展望台と平久保崎灯台は外せません。玉取崎展望台は駐車場やトイレが完備され、遊歩道のアップダウンもほとんどないバリアフリーな展望台で、丘の上から東西両方の海を一望できる撮影スポットとして人気があります。さらに北上した先にある平久保崎灯台は石垣島最北端に位置し、「恋する灯台」としても認定されています。灯台からは青い海と緑のコントラストが美しい景色が広がり、晴れた日には遠く多良間島を望むこともできるといいます。灯台までの道中には米原のヤエヤマヤシ群落や吹通川のヒルギ群落など、亜熱帯特有の自然を感じられるスポットも点在しています。
平久保崎灯台と玉取崎展望台は車でおよそ30分から40分の距離にあり、自転車では体力に応じてさらに時間がかかる前提でスケジュールを組む必要があります。市街地からの距離もあるため、日帰りで川平湾と平久保崎の両方を巡るなら早朝出発がほぼ必須になるでしょう。
川平湾周辺のカフェは川平公園展望台から徒歩3分の店が便利
長時間のサイクリングでは、絶景だけでなく休憩や食事のスポットも重要になります。川平公園展望台から徒歩3分ほどの場所には、真珠養殖店に併設されたカフェがあり、川平湾の海と於茂登連山の緑を眺めながら八重山そばやタコライス、トロピカルフルーツを使ったデザートを味わえます。展望台からのアクセスがよいため、自転車を停めてすぐに立ち寄れるのも利点です。
川平湾近くの高台には、パッションフルーツ農園に併設されたカフェもあり、景色を眺めながらランチセットを楽しめます。サイクリングで汗をかいた体を休めながら、地元産フルーツのドリンクやスイーツで糖分と水分を補給するのにも向いています。テイクアウトのドリンクを扱う店舗も多く、島の南部方面へ移動する際にドリンクを片手にライドを続けるサイクリストの姿もよく見られます。川平湾エリアで休む際は、こうしたカフェをうまく使って無理のないペースを保ちたいところです。
電動アシスト自転車は1時間500円から、アップダウンの多い島には向いている
石垣島でサイクリングを楽しむ場合、多くの旅行者はレンタサイクルを利用します。島内にはマウンテンバイクタイプ、シティサイクルタイプ、電動アシスト付き自転車(Eバイク)を扱う店舗が複数あります。石垣島はアップダウンが多い地形のため、体力に自信がない人や長距離を走る予定がある人には電動アシスト付き自転車が向いています。
料金相場としては、電動アシスト自転車が1時間あたり500円程度から、1日利用で3,000円前後というプランを提供する店舗が見られます。多くのレンタサイクル店ではホテルや空港、港など指定した場所への配達・回収サービスにも対応しており、荷物が多い旅行者でも身軽に借りられます。ヤマハ製の電動アシスト自転車を採用し、シティタイプやマウンテンバイクタイプ、子ども乗せタイプまで幅広く扱う専門店もあり、家族連れからロングライド志向のサイクリストまで対応しています。電動アシスト自転車はペダルを漕ぐ力そのものを補助する仕組みで、原付のように電力だけで走るわけではありませんが、坂道でも普通の自転車より楽に漕げます。搭載されるバッテリーはリチウムイオン電池が主流で、容量によって航続距離はおよそ30キロから100キロまで幅があります。石垣島一周は120キロを超えるため、長距離コースに挑戦する場合はレンタル時にバッテリー容量と充電・交換の可否を確認しておくと安心です。走行予定のコースの距離とアップダウンの度合いを踏まえて、通常の自転車にするか電動アシストにするかを事前に決めておくとよいでしょう。とくに川平湾から市街地への帰路は体力を消耗した状態での走行になるため、電動アシストの有無で快適さがかなり変わってきます。
紫外線が強い島では日焼け対策と塩分補給が必須
石垣島は亜熱帯海洋性気候に属し、年平均気温は24.5度、もっとも寒い1月でも平均気温が18.9度と、年間を通じて温暖です。紫外線の強さは本土とは比較になりません。真夏の日差しは強烈で湿度も高いため、対策を怠ると日焼けによる肌へのダメージが本土の何倍にもなるといわれています。サイクリング中の装備としては、日焼け止めをこまめに塗り直すことに加え、帽子やサングラス、UVカット機能のあるラッシュガードや長袖のインナーシャツ、ラッシュタイツなどで肌の露出を抑える服装が推奨されています。
熱中症対策としては、こまめな水分と塩分の補給が欠かせません。環境省のガイドラインでは、暑い時期の運動時に1リットルの水に1グラムから2グラム程度の食塩を溶かした水分の補給が推奨されており、激しい運動をともなう場面では30分に1回以上の休憩が望ましいとされています。大容量のボトルや凍らせたペットボトルを携行し、通気性と速乾性に優れたウェアを選ぶのが基本です。氷をビニール袋に入れてウェアのポケットに入れておくと、およそ2時間は冷却効果が持続し、体温上昇を抑える助けになるという声もあります。冷却シートやボディシートを合わせて持参すれば、休憩時にさらに体を冷やせます。
見落としがちな注意点として、補給ポイントの少なさが挙げられます。石垣市街地を離れると、コンビニエンスストアや自動販売機の数が極端に少なくなるエリアが多くなります。川平湾や平久保崎方面など人の少ないエリアへ向かう前には、十分な量の飲料水と塩分補給用のタブレットや軽食を用意しておくことが大切です。
ベストシーズンは7月から8月、台風シーズンの9月は要注意
石垣島でサイクリングを楽しむベストシーズンとしては、海の美しさが際立つ7月から8月が挙げられることが多いです。この時期は日差しが強い分、川平湾のエメラルドグリーンの海がもっとも鮮やかに輝くとされ、写真撮影を目的とするサイクリストにも人気の時期です。
一方で、8月から9月にかけては台風の接近・上陸リスクが高まります。石垣島を含む八重山諸島は台風の通り道になりやすく、強風や大雨で予定していたサイクリングが中止や変更になるケースも珍しくありません。旅行の計画を立てる際は、事前に台風情報をこまめに確認し、天候次第では無理をせず予定を変える柔軟さを持っておいたほうがよいでしょう。真夏を避けて春先や秋口に訪れれば、比較的過ごしやすい気温の中でサイクリングを楽しめるという声もあり、暑さが苦手な人はこうした時期を検討するのも一つの選択肢です。
信号が少ない分、路肩の狭さと下り坂のスピードに注意
石垣島一周サイクリングは信号の少ない道が多く走りやすい一方で、車道の路肩が狭い区間や見通しの悪いカーブも点在します。レンタカーやバス、観光バスなど交通量が多い時間帯もあるため、ヘルメットの着用や反射材を用いたウェアやグッズの活用など、基本的な安全対策は怠らないほうがよいでしょう。早朝や夕方は薄暗く視認性が下がるため、ライトの携行も忘れずに準備しておきたいところです。
アップダウンの多い地形のため、下り坂ではスピードの出しすぎにも注意が必要です。慣れない路面状況やカーブの先の見通しの悪さから、事故につながるケースも報告されています。無理のないペース配分を心がけ、体力に自信がない場合は電動アシスト自転車を選ぶか、コースの一部を車やバスで移動するプランに切り替える判断も大切です。
石垣島のサイクリングコースは、川平湾をはじめとする絶景ポイントを巡れる魅力的なロングライドコースです。全長約120キロから140キロの一周コースは信号の少ない快適な道が続く一方、アップダウンの多さや強い日差し、補給ポイントの少なさといった攻略すべき要素も多くあります。初心者はまず市街地から川平湾までの約25キロコースで島の空気を味わい、慣れてきたら北部の玉取崎・平久保崎方面へとステップアップしていくのがよいでしょう。川平湾は展望台からの眺めはもちろん、グラスボートでの海上散策も含めて一日たっぷり楽しめる目的地です。電動アシスト付きレンタサイクルを活用し、日焼けと熱中症の対策を整えたうえで、石垣島の風景を自転車で巡る計画を立ててみてください。台風シーズンを避けたタイミングを選べば、より落ち着いて絶景ライドを楽しめます。








