鳥取県中部の湯梨浜町にある東郷湖では、湖を一周する「トゴイチ」というサイクリングコースが整備されています。距離は約12キロメートルで、自転車なら1時間ほどで一周できます。コース沿いにははわい温泉と東郷温泉があり、走ったあとに温泉で疲れを癒やせるのが、このエリアならではの楽しみ方です。
東郷湖は海水と淡水が混じり合う汽水湖で、湖底や湖岸から温泉が湧き出すという珍しい地形を持っています。この記事では、トゴイチのコース内容やレンタサイクルの料金、湖畔の見どころ、はわい温泉・東郷温泉の泉質、名物グルメ、宿泊先の選び方まで、湯梨浜町を訪れる前に知っておきたい情報をまとめました。サイクリング初心者の方にも、温泉旅を目的に訪れる方にも役立つ内容になっています。

東郷湖のトゴイチは12キロを1時間で回れる汽水湖コース
トゴイチは「東郷湖一周」を略した呼び名で、湯梨浜町観光協会が案内しているサイクリング企画です。湖畔に整備された遊歩道兼サイクリングロードを走り、東郷湖をぐるりと一周します。距離は約12キロメートル、所要時間は自転車でおよそ1時間が目安です。
コースの大部分はアップダウンの少ない湖畔沿いのフラットな道です。そのため、普段あまり自転車に乗らない方や、久しぶりにサイクリングをするという方でも挑戦しやすいコースになっています。家族連れやカップル、友人同士のグループ旅行など、幅広い層に向いているといえるでしょう。
観光協会は、コース上に点在するフォトスポットを巡りながらオリジナルステッカーを集めるという楽しみ方も提案しています。景色を眺めるだけでなく、湖を一周する達成感とちょっとしたゲーム感覚が組み合わさっているのが特徴です。集めたステッカーは旅の記念として持ち帰れるので、子ども連れの家族にも喜ばれています。
湯梨浜町では、宿泊とセットにしたトゴイチのプランや、湖畔散策とレンタサイクルを組み合わせた滞在プランも用意されています。日帰りのアクティビティとしてだけでなく、はわい温泉や東郷温泉での宿泊とあわせて一泊二日でじっくり楽しむ旅の形も提案されており、これが湯梨浜町観光の柱のひとつになっています。
レンタサイクル料金は電動アシストで4時間1000円から
自転車を持参しなくても、現地でレンタサイクルを借りればすぐにトゴイチを楽しめます。用意されているのは、電動アシスト自転車と、多段変速のシティサイクルの2種類です。料金の目安は次の表のとおりです。
| 自転車の種類 | 4時間利用 | 終日利用 |
|---|---|---|
| 電動アシスト自転車 | 1000円 | 2000円 |
| シティサイクル(変速機付き) | 300円 | 500円 |
坂道や長距離移動でも体力の消耗を抑えたい方には電動アシスト自転車が向いています。燕趙園など少し離れたスポットまで足を延ばしたい場合にも安心です。一方、コースの大半はフラットな道なので、通常のシティサイクルでも十分に一周を楽しめます。いずれのプランも、レンタル料金には保険が含まれているとされています。
貸出と返却の受付時間は午前9時から午後5時まで、最終受付は午後4時までとなっているケースが多いようです。湖を一周してじっくり観光するなら、午前中の早い時間帯に借り始めるのがおすすめです。貸出・返却ステーションは湯梨浜町観光協会の窓口のほか、東郷湖周辺の複数のホテルや宿泊施設にも設置されており、借りた場所と異なる場所での返却に対応しているステーションもあります。宿泊先のホテルで自転車を借りて出発し、一周後に別のステーションへ返却するといった使い方もできるため、旅程に合わせて事前に返却場所を確認しておくと安心です。
コース沿いの見どころは燕趙園や倭文神社など5カ所
トゴイチのコースには、出発地点としてよく案内される「ハワイ夢広場」をはじめ、いくつもの立ち寄りスポットが点在しています。ハワイ夢広場は、はわい温泉エリアの湖畔にある広場で、東郷湖を望む休憩スポットとしてサイクリングの起点や中間地点に利用されることが多い場所です。
コース沿いには「倭文神社」があります。古くからこの地域に鎮座する神社で、地域の歴史と信仰を今に伝えています。サイクリングの途中で立ち寄り、静かな境内で一息つくのもよい過ごし方です。
「出雲山展望台」は、出雲山の高台から東郷湖とその周辺の景色を一望できるスポットです。湖の全体像や周囲の山並みを眺めるのに向いており、少し足を延ばせば湖を上から見下ろす眺望を楽しめます。「あやめ池公園」では、季節の花や水辺の風景を楽しみながらサイクリングの合間に休憩できます。
コース上でもとりわけ存在感のあるランドマークが「中国庭園 燕趙園」です。鳥取県と中国河北省との友好のシンボルとして建設された、日本最大級ともいわれる本格的な中国庭園で、歴代の中国皇帝が親しんだ皇家園林方式をそのまま再現しています。東郷湖や周囲の山々を借景として取り込みながら、庭園を一周する中に28の景観が配置されており、建物内部には皇帝を象徴する五本爪の龍をはじめとした2000以上の彩色画が施されています。園内では中国雑伎ショーが毎日開催されており、団体による雑伎や柔術、輪くぐりといった伝統芸術を間近で鑑賞できます。
営業時間は午前9時から午後5時まで、最終入園は午後4時30分です。入園料金は大人500円、子供200円が案内されています。アクセスの目安は、鳥取砂丘から車で約50分、倉吉市の白壁土蔵群から約20分、三朝温泉から約15分です。湖畔にはこのほか「布袋の湯足湯」という無料の足湯スポットもあり、サイクリングで火照った足を温泉でクールダウンしながら癒やせます。
はわい温泉と東郷温泉は塩化物・硫酸塩泉で疲労回復に向く
東郷湖サイクリングと切り離せないのが、湖畔に広がるはわい温泉と東郷温泉です。この地域の温泉は東郷湖の池岸や池底から湧き出すという珍しい成り立ちを持ち、湖の景観と一体になった温泉地として知られています。
はわい温泉の泉質は塩化物・硫酸塩泉です。効能としてはリウマチ、婦人病、神経痛、関節痛などが挙げられており、湯上がりに肌がしっとりする湯としても親しまれています。東郷温泉も同じく塩化物・硫酸塩泉に分類され、効能としては神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺などが案内されています。サイクリングで自転車を漕いだあとの脚の疲れや、肩や腰のこわばりを癒やすのに向いた泉質といえるでしょう。
塩化物泉は塩分を含む温泉で、肌の表面に塩の膜を作ることで保温効果が高く、湯冷めしにくいという特徴があります。硫酸塩泉もあわせて含むため、湯治文化とも縁の深い泉質とされています。サイクリングで火照った体を、こうした泉質の温泉でじっくり休ませるのが、東郷湖エリアならではの旅の締めくくり方です。
なお、ラジウム温泉は塩化物泉や硫酸塩泉とは異なる分類の温泉です。はわい温泉と東郷温泉がラジウム泉であるという確かな情報は見当たらないため、泉質の詳細を知りたい場合は宿泊施設や観光協会の最新情報を確認するとよいでしょう。
東郷湖畔のご当地グルメは鬼しじみと牛骨ラーメン
サイクリングの楽しみのひとつが、道中で味わうご当地グルメです。東郷湖周辺には、はわい温泉と東郷温泉でしか味わえない名物料理がいくつもあります。
代表格は東郷湖産のシジミで、通称「鬼しじみ」と呼ばれています。大粒で肉厚なのが特徴で、東郷湖漁業協同組合では資源保護のために漁獲量や大きさ、漁場の制限を行いながら質の高いシジミを守っています。はわい温泉街の居酒屋には、店主自らが東郷湖まで出向いて水揚げした鬼しじみを使う店もあり、しじみ汁や酒蒸し、佃煮などさまざまな調理法でその旨みを味わえます。
湖畔のカフェでは、東郷湖のしじみを使ったパスタや、生ハムを合わせたガレット、ボリュームのあるバーガーなど、洋風にアレンジされたランチメニューも提供されています。サイクリングの途中でこうしたカフェに立ち寄り、湖を眺めながら食事を楽しむのも、トゴイチならではの過ごし方です。
鳥取県中部の名物として知られる牛骨ラーメンも、湯梨浜町周辺で味わえるグルメのひとつです。牛の骨を長時間煮込んだ独特の風味のスープは、他の地域ではなかなか味わえないご当地の味です。サイクリングで小腹が空いたときや、一周を終えたあとの食事として立ち寄る旅行者も多いようです。湖畔には足湯めぐりを楽しんでもらう目的で作られた、地元食材を使ったアイスクリームも並んでおり、自転車を漕いで火照った体を足湯とアイスで内外から冷やすのも、この地域らしい休憩の仕方です。
宿泊するなら望湖楼など日帰り入浴可能な旅館が便利
東郷湖の西側に広がるのがはわい温泉、南側に広がるのが東郷温泉です。両温泉地にはそれぞれ複数の旅館があり、サイクリングの拠点として宿泊するのはもちろん、日帰り入浴だけを利用することもできます。
はわい温泉の代表的な旅館には、東郷湖を一望できる湖上露天風呂が自慢の「望湖楼」、屋上に展望露天風呂を備えた「ゆの宿彩香」、東郷湖の真ん中に浮かぶ千年島に建つ一軒宿「千年亭」、そして「羽衣」などがあります。それぞれの旅館が趣向を凝らした湯船を用意しており、同じ温泉地でも宿によって景色や入浴体験が異なるのが魅力です。
日帰り入浴については、はわい温泉で7つの旅館、東郷温泉で3つの旅館が対応しているとされています。貸切風呂や露天風呂を目当てに日帰りで訪れる観光客も多く、サイクリングで一周したあとに汗を流してさっぱりしたいという場合にも便利です。東郷温泉エリアの「龍鳳閣」は、10種類の浴槽と2種類のサウナ、露天風呂に加えて全長27メートルのウォータースライダー付きプールまで備えた温泉保養施設で、家族連れにも人気があります。
宿泊施設や日帰り入浴の営業時間・料金は時期によって変わることがあるため、はわい温泉・東郷温泉旅館組合や湯梨浜町観光協会の公式サイトで最新情報を確認してから訪れることをおすすめします。
水郷祭の花火は湖上から約1000発
東郷湖周辺で毎年多くの人が集まるのが、夏の風物詩「水郷祭」です。約400年前、羽衣石城の落城を偲んで始まったとされる歴史ある行事で、落城を悼む「浪人おどり」と呼ばれる伝統の踊りや、灯籠流し、神輿の渡御など、地域の歴史と信仰が反映された内容になっています。
祭りのクライマックスは、湖上から打ち上げられる花火です。約1000発の花火が夜空と東郷湖の湖面を同時に彩る湖上大花火は、山陰地方でも屈指の規模とされ、多くの観光客と地元の人々が湖畔に集まります。会場の東郷湖畔公園には最大2万人規模の観覧客が訪れるとされ、入場は無料です。最寄り駅はJR松崎駅で、公共交通機関でのアクセスもできます。
開催時期にあわせて訪れれば、日中はトゴイチで湖畔を巡り、夜は水郷祭の花火を鑑賞するという一日の過ごし方も可能です。開催日程は年によって異なるため、訪問前に湯梨浜町観光協会の最新情報を確認しておくとよいでしょう。
東郷湖羽合臨海公園はテニスコートなど多目的施設も充実
トゴイチのコースの多くは、東郷湖羽合臨海公園として整備された区域を通っています。この公園は、日本海と東郷湖を取り巻く自然景観と、はわい温泉・東郷温泉という2つの温泉郷を併せ持つ、広大な都市公園です。
公園は藤津・南谷・浅津を含む北エリア、長和田・引地を含む南エリア、宇野・はわい長瀬を含む日本海エリアに分かれており、それぞれ異なる特色を持っています。サイクリングロードだけでなく、体育館とトレーニングルームを備えたスポーツセンター、8面のオムニテニスコート、ゲートボール場、屋根付きの多目的広場などが整備されています。さらに細かく見ると、ゲートボールコートは合計14面、グラウンドゴルフコートは3か所、多目的広場は4か所あるほか、ローラースケート場やカヌーの艇庫、アーチェリー場まで揃っており、サイクリング以外のスポーツも幅広く楽しめる公園になっています。
先述のあやめ池公園もこの東郷湖羽合臨海公園の一部で、あやめ池を彩る花ショウブをはじめとした季節の花々が訪れる人の目を楽しませてくれます。出発地点として紹介されることの多いハワイ夢広場も、この公園内に位置する施設のひとつです。湖と日本海という二つの水辺の景観、そして温泉という湯梨浜町ならではの資源を生かしながら、観光とスポーツ、憩いの場としての機能を兼ね備えた公園といえます。
湯梨浜町では、こうした自然環境を生かした東郷湖活性化プロジェクトも進められています。湖と共生するまちづくりの一環として、観光振興や環境保全の取り組みが続けられており、今後も新たなアクティビティが加わる可能性があります。サイクリング以外の楽しみ方についても、訪問前に最新情報をチェックしておくとよいでしょう。
湖一周サイクリングは全国的にも広がっている観光の形
湖を一周するサイクリングは、東郷湖のトゴイチに限った楽しみ方ではありません。国も自転車を使った観光を後押ししており、しまなみ海道のサイクリングロードが世界的な評価を受けたことをきっかけに、同じような取り組みが全国各地に広がってきました。
代表例が、滋賀県の琵琶湖を一周する「ビワイチ」です。体験者数は2015年の約5万2000人から2019年には約10万9000人まで増え、この年の経済効果は約14.7億円にのぼったとされています。山梨県の山中湖でも、湖畔をほぼ一周できるサイクリングロードが整備されており、湖畔の涼しい風と緑に囲まれた景色を楽しめる場所として案内されています。
こうした湖一周のサイクリングには、混雑を避けながら観光できる、環境や地域への負荷を抑えられる、あまり知られていない地方の観光資源を見つけるきっかけになるといった利点があります。東郷湖のトゴイチも、こうした全国的な流れの中にある湖畔サイクリングのひとつです。ビワイチのような大規模なコースと比べると距離は短く、1時間程度で気軽に一周できる点が、東郷湖ならではの手軽さといえるでしょう。走ったあとにそのまま温泉へ立ち寄れるという組み合わせは、他の湖一周コースにはあまり見られない、湯梨浜町らしい特徴です。
アクセスと訪問時の注意点
湯梨浜町は鳥取県中部に位置し、鳥取市や倉吉市、三朝温泉といった周辺の観光地からもアクセスしやすい立地です。東郷湖はこれらのエリアの中間に近い位置にあり、鳥取砂丘や三朝温泉、倉吉の白壁土蔵群とあわせて周遊する旅程にも組み込みやすくなっています。
サイクリングを楽しむ際は、季節に応じた動きやすい服装に加えて、日差し対策の帽子やサングラス、飲み物を用意しておくと安心です。夏場は日差しが強いため、こまめな休憩と水分補給を心がけたいところです。湖畔には日陰になる休憩スポットや足湯も点在しているので、無理のないペースで一周することをおすすめします。
東郷湖は汽水湖であることから、湖面には季節や天候によってさまざまな表情が現れます。朝夕の光の加減で湖面が輝く様子や、冬場に飛来する白鳥の姿など、写真に収めたくなる場面にも出会いやすい湖です。サイクリングの途中で気に入った景色があれば、こまめに自転車を停めて撮影を楽しむのも、このコースの過ごし方のひとつです。
湯梨浜町の気候は年間を通じて温和で、年平均気温はおよそ13度前後、年間降水量はおよそ2200ミリと案内されています。降水量がもっとも少ないのは4月ごろで、もっとも多いのは9月ごろとされているため、雨の少ない時期を選んでサイクリングの計画を立てたい方は、この傾向を参考にするとよいでしょう。日本海側の海水温は8月ごろに26度台まで上がり、3月ごろに11度台まで下がるとされており、湖の水辺の空気も季節によって大きく変わります。夏場は湖面を渡る風が心地よく、冬場は空気が澄んで湖と山並みの輪郭がくっきりと見えるなど、訪れる季節によって異なるトゴイチの表情を楽しめます。
東郷湖のトゴイチは、周囲約12キロメートルの汽水湖を約1時間で一周できる、初心者にもやさしいコースです。倭文神社や出雲山展望台、あやめ池公園、燕趙園など見どころが数多く点在しており、サイクリングだけにとどまらない観光の楽しみが詰まっています。電動アシスト自転車やシティサイクルのレンタサイクルが用意されているため、自転車を持たない旅行者でも気軽に挑戦できます。走ったあとにはわい温泉や東郷温泉でじっくり疲れを癒やす。この組み合わせが、東郷湖・湯梨浜町エリアの旅の醍醐味です。シジミをはじめとした湖の恵み、四季折々の自然、そして温泉と観光スポットが一体となった東郷湖周辺は、日帰りでも一泊二日でも、自分たちのペースで楽しめるサイクリングエリアです。次の休みの計画を立てる際には、東郷湖のトゴイチを候補のひとつに加えてみるのもよいでしょう。








