北海道最北端に浮かぶ利尻島は、日本百名山の一つである秀峰・利尻山を中心に、青い海に囲まれた円形の島です。その周囲はわずか約60kmという小さな島ですが、サイクリストにとっては格別の魅力を持つ場所として知られています。全長24.9kmの自転車専用道路が整備され、青い海と雄大な利尻山の絶景を堪能しながら、離島ならではの特別な風景を体感できるのが最大の魅力です。
利尻島のサイクリングは、初心者から上級者まで、それぞれの体力や時間に合わせて楽しめるコース設定がされています。島一周の「利尻・彩くるロード」では、利尻山を中心に360度変化する景色を楽しめますし、海岸線沿いの「利尻島絶景ブルーライン」では、青い海と昆布干しの風景を眺めながら爽快に走ることができます。また、サイクリングロードと街並みを楽しむ「利尻富士グリーンライン」は、体力に自信がない方やファミリーにもおすすめです。
移り変わる四季の表情や、天候によって姿を変える利尻山の景観、道沿いに広がる昆布干しの風景、漁港の活気など、利尻島ならではの魅力が詰まったサイクリングの旅へ、ぜひ出かけてみましょう。

利尻島一周サイクリングのベストシーズンと所要時間はどれくらい?
利尻島でサイクリングを楽しむベストシーズンは、6月から9月です。この時期は気温が穏やかで、高山植物が花開き、ウニや昆布が旬を迎える観光のハイシーズンでもあります。特に7月から8月は天候が安定していることが多く、サイクリングに最適な時期と言えるでしょう。
島一周の「利尻・彩くるロード」を走る場合、全長約60kmのコースで、平均7〜8時間ほどかかります。ただし、これは休憩や観光スポットでの立ち寄り時間も含めた目安です。サイクリングに慣れた方なら4〜6時間程度でも可能ですが、島の魅力を十分に楽しむなら、余裕を持ったスケジュールを組むことをおすすめします。
時間配分の参考として、次のような目安があります:
- 出発時間:日が沈む前に帰るためには、遅くとも朝9時までに出発することをおすすめします
- ルート選択:時計回りか反時計回りかで迷ったら、時計回りがおすすめです。昼時に集落を通れるため、飲食店が閉まってしまう心配が少なく、また西側の海岸をラストに通るため、美しい夕日を眺めながらゴールできる可能性があります
- 天候確認:利尻島は天候が変わりやすいため、事前に天気予報をチェックしておくことが大切です
また、8月下旬には「利尻島一周ふれあいサイクリング」というイベントが開催されます。全国からサイクリング愛好家が集まるこのイベントでは、参加者全員で島一周に挑戦します。イベント参加者にはフェリーの自転車航送料金が片道無料になるという特典もあり、「利尻島サイクリングに興味はあるけど一歩踏み出せない」という方にはぴったりの機会です。
初心者でも楽しめる!利尻島のおすすめサイクリングコースは?
利尻島には難易度の異なる3つの主要なサイクリングコースがあり、初心者からベテランまで幅広いサイクリストが楽しめるようになっています。
1. 利尻富士グリーンライン(初級者向け)
サイクリングロードと鴛泊の町並みを楽しめる初心者向けコースです。比較的平坦で距離も短いため、体力に自信がない方やファミリーでも気軽に楽しめます。
- 総距離:約15km
- 所要時間:約1.5〜2時間(休憩含む)
- 見どころ:夕日ヶ丘展望台、ペシ岬、鴛泊港周辺
このコースでは、「恋する灯台」に認定された鴛泊灯台や、オレンジ色の夕焼けと礼文島のシルエットが美しい夕日ヶ丘展望台など、絶景ポイントをコンパクトに巡ることができます。
2. 利尻島絶景ブルーライン(中級者向け)
海岸沿いとサイクリングロードを組み合わせた、いいとこ取りの中級者向けコースです。利尻島をのんびり観光したい方におすすめです。
- 総距離:約30km
- 所要時間:約2.5〜3時間(休憩含む)
- 見どころ:湾内大橋、姫沼、富士野園地展望台
海岸線沿いでは漁風景や昆布干し作業などの島の日常風景を見ることができ、サイクリングロードでは利尻山と海のパノラマビューを楽しめます。特に湾内大橋からの360度の絶景は必見です。
3. 利尻・彩くるロード(上級者向け)
周囲約60kmの島を一周する上級者向けコースです。体力に自信のある方におすすめですが、計画的に進めれば初心者でも挑戦可能です。
- 総距離:約60km
- 所要時間:約7〜8時間(観光・休憩含む)
- 見どころ:オタトマリ沼、姫沼、仙法志御崎公園、麗峰湧水、北のいつくしま弁天宮、人面岩など
利尻山を中心に、島の名所を余すことなく回れるコースです。比較的大きな起伏は少ないものの、島の南側はアップダウンが増えるので注意が必要です。ただし、極端な急坂はないため、電動自転車やギア付き自転車を利用すれば、サイクリング初心者でも十分に楽しめます。
初めて利尻島を訪れるなら、自分の体力と相談して無理のないコースを選ぶことが大切です。また、いずれのコースを選ぶ場合も、事前にサイクリングマップを入手しておくと便利です。マップには立ち寄りスポットや空気入れの設置場所などの情報が記載されており、安全かつ快適にサイクリングを楽しむ助けになります。
利尻島サイクリングで見逃せない絶景スポットはどこ?
利尻島のサイクリングでは、島ならではの絶景が数多く点在しています。特に見逃せないスポットをご紹介します。
1. 湾内大橋
地上約60mの高さから鴛泊港や利尻山、礼文島までを一望できるサイクリングロード屈指の絶景ポイントです。鴛泊を出発してすぐに訪れる場所で、コース最大の上り坂となりますが、その景色は一見の価値があります。晴れた日には青い海に浮かぶ礼文島まではっきりと見えます。
2. 姫沼
スタートから約7kmほど進んだところにある小さな湖です。サイクリングロードからは少し離れていますが、寄り道してでも訪れる価値のある人気スポットです。小高い丘と原生林に囲まれた静かな湖で、条件に恵まれれば湖面に映る逆さ利尻山も見られます。周囲約800mの散策路が整備されているので、サイクリングの途中休憩にぴったりです。
3. オタトマリ沼
利尻島を代表する景観のひとつで、島で最も利尻山が美しく見える場所と言われています。アカエゾマツの原生林に囲まれた沼からは、急勾配の尾根が連なる利尻山のアルプスのような姿を眺めることができます。シーズン中は観光客で賑わう人気スポットで、沼の周辺には売店や飲食店も並んでいます。
4. 仙法志御崎公園
島の最南端に位置し、特に透明度の高い海と雄大な利尻山を望める景勝地です。溶岩流が固まってできたゴツゴツした奇岩・奇石が並び、ダイナミックな海岸線が特徴的です。夏場はアザラシが飼育されており、餌やり体験も楽しめます。
5. 麗峰湧水
利尻山に降った雨水や雪解け水が、自然のろ過装置である山を通って湧き出した天然水です。ミネラル豊富で非常に美味しい水として知られ、地元の人々も利用しています。道路沿いにあり、アクセスも良いため、サイクリング中の水分補給に最適です。持ち帰りも自由なので、ペットボトルを持参すると良いでしょう。
6. 北のいつくしま弁天宮
インスタ映えする写真スポットとして人気の場所です。青い海に朱色の祠が美しいコントラストを生み出しています。嵐にあった船乗りが、助けてくれた弁天様に感謝して建立したという由緒ある場所で、鳥居から小さな橋が海に浮かぶ岩に向かって架かっており、岩の上に弁天様を祀る祠があります。
7. 夕日ヶ丘展望台
西海岸に位置する展望台で、夕日の美しさで知られる絶景スポットです。自転車を置いて展望台へ登ると、切り立つ断崖と大海原が広がります。その名の通り夕日を眺めるのに最適で、鴛泊の町や礼文島まで360度のパノラマビューを楽しめます。時計回りでサイクリングをすれば、夕方にここを通ることができます。
これらのスポットは島一周コースで全て訪れることができますが、時間に余裕がない場合は、自分の興味に合わせて選ぶと良いでしょう。特に姫沼とペシ岬は、サイクリングとは別日に訪れることをおすすめします。姫沼はサイクリングロードから距離があり、かなりのヒルクライムが必要になるためです。また、ペシ岬は港や宿泊地の近くにあるため、夕日を待ちながら長時間滞在するのに適しています。
レンタサイクルはどこで借りられる?利尻島サイクリングの準備と注意点
利尻島でサイクリングを楽しむ際、自転車を持参しない方の多くがレンタサイクルを利用します。島内での主なレンタサイクル店と準備について解説します。
レンタサイクル店
利尻島で最も一般的なレンタサイクル店は以下の通りです:
- 雪国レンタル(鴛泊地区)
- 島の玄関口である鴛泊港のすぐ近くにあり、観光客向けにレンタルサービスを行っている主要な店舗です
- 電動自転車やクロスバイク、マウンテンバイクなどが揃っています
- 長時間のサイクリングの場合は、できるだけサドルがふかふかのものを選ぶと快適です
- 宿泊施設のレンタサービス
- 一部の宿泊施設では、宿泊者限定で自転車を貸し出しているところもあります
- 宿に予約する際に確認しておくと良いでしょう
レンタル料金の目安
- 一般自転車:1日 1,000円〜2,000円程度
- 電動自転車:1日 2,500円〜3,500円程度
- クロスバイク/マウンテンバイク:1日 2,000円〜3,000円程度
※料金や車種の詳細は各店舗により異なります。繁忙期は事前予約をおすすめします。
準備と注意点
利尻島でのサイクリングを快適に楽しむための準備と注意点をまとめました:
- 服装と装備
- レイヤリング:天候の変化に対応できるよう、重ね着ができる服装が理想的です
- 雨具:急な天候変化に備えて、コンパクトな雨具を持参しましょう
- サングラス・帽子:強い日差しから目や頭を守るために必須です
- グローブ:長時間のライドでは手のひらを保護するグローブがあると快適です
- 小型バッグ:貴重品や水分、軽食を入れるサイクリング用バッグがあると便利です
- 島一周の場合の注意点
- 朝早く出発:遅くとも9時までに出発することをおすすめします
- 時間配分:平均7〜8時間かかりますが、自信がない場合は多めに見積もっておきましょう
- 島内路線バス:自転車持ち込み可能なバスもありますが、本数は少ないため時刻表の確認が必要です
- 補給:島内には「セイコーマート」が3店舗ほどあり、ほぼ等間隔に配置されているので補給に困ることはありません
- 自販機:道中に自動販売機が点在しているので、水分補給の心配はあまりないでしょう
- 山岳天候の特性
- 利尻山の気象は変わりやすく、特に山頂周辺は雲がかかりやすい特性があります
- 天気予報をチェックし、安全を第一に考えましょう
- サイクリングマップの活用
- 島内の観光案内所や宿泊施設などでサイクリングマップが入手できます
- マップには立ち寄りスポットだけでなく、空気入れ設置場所などのお役立ち情報も記載されています
- スマートフォンのバッテリー切れに備えて、紙のマップも持っておくと安心です
- 自転車選びのポイント
- 島一周コースは比較的アップダウンが少ないですが、特に島の南側ではある程度のアップダウンがあります
- 初心者や体力に不安がある方は、電動自転車がおすすめです
- 変速機能がある自転車を選ぶことで、坂道も楽に走行できます
利尻島のサイクリングコースは、他の有名なサイクリングコースと比べても走りやすく、比較的初心者でも挑戦しやすいのが特徴です。ただし、自分の体力や経験と相談し、無理のない範囲で楽しむことが大切です。
利尻島サイクリング中の立ち寄りグルメスポットおすすめは?
利尻島一周サイクリングの大きな楽しみの一つが、島ならではのグルメです。サイクリング中に立ち寄りたいおすすめの飲食店をご紹介します。
1. 鬼脇地区「長生堂寺嶋菓子舗」
島の南部にある集落「鬼脇」にある明治時代創業の老舗和菓子店です。
- おすすめメニュー:
- 利尻プリン(メープル、ゴマ、くまざさ味の3種類):特にくまざさ味は、ざらざらした食感と抹茶のような風味が絶妙な一品です
- 利尻最中:あっさりとした甘さの白餡が特徴
- 利尻島:マカロン生地のお菓子
サイクリングの小休憩に、地元で愛される和洋菓子を味わうのはいかがでしょうか。
2. オタトマリ沼「利尻亀一」
オタトマリ沼の駐車場に並ぶ売店や飲食店の中でも特に人気の店です。
- おすすめメニュー:
- ウニ食べ比べ:エゾバフンウニとキタムラサキウニの2種類のウニを食べ比べられる貴重な体験ができます
- 三食丼:ホタテといくら、ウニの豪華な組み合わせが絶品
※ウニは漁の状況や数量により提供できない場合もありますので、訪問時期の確認が必要です。
3. 沓形地区「味楽」
マツコの知らない世界などメディアでも取り上げられた有名なラーメン店です。
- おすすめメニュー:
- 利尻ラーメン:利尻昆布のだしが効いた澄んだスープが特徴
- ウニラーメン:濃厚なウニの風味が楽しめる贅沢なラーメン
大人気店のため、特にお昼時や観光シーズンの休日は行列ができることがあります。開店前に訪れるか、時間に余裕を持って計画しましょう。
4. 沓形地区「島の駅利尻」内「自休自足 りしりに恋し店」
築130年以上の歴史がある建物を利用したギャラリー&カフェです。
- おすすめメニュー:
- 石焼きチーズカレー:アツアツの石焼き器で提供される特製カレー
- トマトリゾット:地元食材を使ったこだわりの一品
歴史ある建物でくつろぎながら、質の高い料理を楽しめます。
5. 鴛泊地区「磯やき亭」
フェリーターミナルの目の前にある便利な立地の海鮮料理店です。
- おすすめメニュー:
- 利尻海鮮ラーメン:利尻昆布やホタテなど島の海鮮が詰まったラーメン
- うに丼:新鮮なウニがたっぷり乗った丼
フェリーの出発前や到着後に立ち寄りやすい場所にあります。
6. 鴛泊地区「PORTO COFFEE」
鴛泊港フェリーターミナル前にあるこだわりのコーヒー店です。
- おすすめメニュー:
- スペシャルティコーヒー:利尻山の名水を100%使用したこだわりのコーヒー
- エシレバタークロワッサン:高級バターを使用した絶品クロワッサン
サイクリング後の一息つきたいときにぴったりです。
立ち寄り時の注意点
- 営業時間:島内の飲食店は比較的早い時間に閉店するところが多いので、特にランチは早めの計画を
- 季節限定メニュー:ウニなど海産物は漁の状況に左右されるため、提供されない場合もあります
- 閑散期の営業:観光オフシーズン(10月〜5月)は休業している店舗も多いので事前確認が必要
サイクリングの消費カロリーを美味しい島グルメで補給すれば、より充実した利尻島の旅になるでしょう。利尻昆布やウニなど、島の特産品を使った料理は、ここでしか味わえない貴重な体験です。
利尻島でのサイクリングは、雄大な自然、美しい景観、そして島ならではのグルメを堪能できる特別な体験です。初心者から経験者までそれぞれのレベルに合わせたコースがあり、島の魅力を存分に味わうことができます。
サイクリングの計画を立てる際は、自分の体力や経験に合わせたコース選びと、天候や季節も考慮した準備が大切です。また、余裕を持ったスケジュールを組み、島内の絶景スポットや飲食店に立ち寄りながら、ゆっくりと島の風景を楽しむことをおすすめします。
利尻島のサイクリングロードは、しまなみ海道と並び称されるほどの絶景を誇り、サイクリスト憧れの地となっています。ぜひ一度、日本最北の島で特別なサイクリング体験をしてみてはいかがでしょうか。
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