東京から約120kmの洋上に浮かぶ伊豆大島は、サイクリストにとって魅力的な楽園です。火山島ならではのダイナミックな地形、美しい海岸線、そして車の少ない道路環境が、サイクリングの聖地として人気を集めています。一周約46.6kmの島内には、初心者から上級者まで楽しめる多彩なコースが点在し、四季折々の自然の美しさを満喫できます。
伊豆大島は東京竹芝から高速ジェット船で約1時間45分、大型客船でも約8時間で到着できるアクセスの良さも魅力です。島内では「バームクーヘン」と呼ばれる地層切断面や、「裏砂漠」などの火山島ならではの絶景が広がっています。サイクリングを通して島の文化や歴史にも触れることができ、単なるスポーツ体験を超えた旅の思い出を作ることができるでしょう。

伊豆大島でのサイクリングはどんな魅力がある?
伊豆大島のサイクリングの最大の魅力は、その多様な地形と景観にあります。火山活動によって形成された島ならではのダイナミックな地形変化は、サイクリングに絶好のチャレンジと変化をもたらします。平坦な海岸沿いの道から、三原山へと続く本格的なヒルクライムまで、様々な難易度のコースが存在するため、初心者からベテランライダーまで、それぞれのレベルに合わせた楽しみ方ができます。
特に魅力的なのは、島の西側を走る「サンセットパームライン」です。その名の通り、夕暮れ時には美しい夕日と海岸線のコントラストが楽しめます。運が良ければ、富士山の姿も望むことができるでしょう。また、「地層切断面」と呼ばれる、過去2万年の噴火の歴史を物語る縞模様の断崖も必見です。地元では「バームクーヘン」の愛称で親しまれていて、自然が作り出した芸術作品のような美しさがあります。
さらに、伊豆大島の魅力は自然だけではありません。島内には新鮮な海産物を使った郷土料理や、明日葉などの島野菜を活かした料理を楽しめる飲食店が点在しています。サイクリングの合間に立ち寄る休憩ポイントとして、こうした島の食文化を味わえることも大きな魅力です。元町港近くの「べっこう寿司」は島の名物で、サイクリング後の疲れた体に栄養を補給するのにぴったりです。
また、伊豆大島は車の交通量が非常に少ないのも特徴です。都心のような車の多さやスピードを気にせず、安心してサイクリングを楽しむことができます。信号も少なく、自然の中を自由に走る爽快感は都会では味わえない特別な体験となるでしょう。
伊豆大島でのサイクリングは単なるスポーツではなく、火山の島が織りなす独特の景観、歴史、食文化を丸ごと体験する旅です。季節によっても景色が変わり、何度訪れても新しい発見があるのも魅力の一つです。特に春の椿の季節や、秋の澄んだ空気の中でのサイクリングは格別です。
初心者におすすめの伊豆大島サイクリングコースは?
伊豆大島は起伏に富んだ地形が特徴ですが、初心者でも安心して楽しめるコースも充実しています。特におすすめなのが「Aルート・初級:サンセットパームライン~空港周辺」です。このコースは元町港を起点に、美しい海岸線沿いの「サンセットパームライン」と大島空港周辺を走るルートで、高低差が少なく、道に迷いにくいため初心者に最適です。
このコースの距離は約12km、最大標高は47.8mほどで、想定時間は1.5〜3時間となっています。時間のアレンジもしやすいため、島滞在中に少し時間が空いたというときにも、このルートを元に走ってみるのがおすすめです。青い海と黒い溶岩が作る独特の海岸線は、写真撮影スポットとしても最高で、運が良ければ富士山も見ることができます。
もう一つ初心者におすすめなのが、「大島一周道路(西側)コース」です。大島一周道路の中でも、元町港から野田浜にかけての西側は比較的平坦で走りやすくなっています。初心者は一周道路の西側のみを往復するか、一部区間だけを走るなど、自分の体力に合わせてコースをアレンジできます。西側コースは海に面した開放的な道が続き、視界も良好なため、安心して走行できます。
初心者が伊豆大島でサイクリングを楽しむ際のポイントは、無理をせず、休憩をしっかり取りながら進むことです。特に夏場は暑さ対策が重要です。島内には休憩や給水ができるスポットが点在していますが、事前に位置を確認しておくと安心です。元町港周辺や大島公園などが主な休憩ポイントとなっています。
また、初心者の方は電動アシスト自転車のレンタルも検討してみてください。伊豆大島内のレンタサイクルショップでは、電動アシスト自転車も多く取り扱っています。特に「戸井商店」や「Volcanic Island」などは、女性や背の低い方でも乗りやすい電動アシスト小径自転車を完備しています。電動アシストがあれば、少しの坂道でも無理なく楽しむことができます。
初心者の方は特に天候に注意しましょう。伊豆大島は外洋に浮かぶ島のため、突然の天候変化や強風が発生することがあります。出発前に天気予報をチェックし、雨具や防寒着を持参するのが賢明です。また、帽子や日焼け止めなどの日差し対策も忘れずに行いましょう。
伊豆大島一周サイクリングのルートと見どころは?
伊豆大島一周サイクリング(通称:オオイチ)は、島の外周を一周する約46.6kmのルートで、サイクリスト憧れのコースです。このコースは高低差約500mのアップダウンがあり、特に東側は勾配のある上り坂が続く本格的なルートとなっています。経験者や体力に自信のあるサイクリストなら、日帰りでも十分に楽しめる距離ですが、見どころをゆっくり楽しみたい方は1泊2日での計画がおすすめです。
一周コースの主な見どころとしては、まず西側にある「サンセットパームライン」です。元町港から北上するこの海岸沿いのルートは、大島屈指の広い視界と火山島ならではのダイナミックな地形が特徴で、冬場の澄んだ日には富士山も望めます。坂が少なく、車や信号も少ないため、爽快な走りを楽しめるポイントです。
北側には岡田港があり、その先には泉津(せんず)という小さな集落が続きます。この付近の旧道には巨大なツバキの木々が茂り、まるで自然のトンネルのような神秘的な景観が広がっています。地元の方々に愛される「大宮神社」もこの近くにあり、「となりのトトロ」に出てきそうな苔と大木が印象的です。
東側に進むと、椿で有名な「大島公園」があります。ここは休憩や給水ポイントとしても重要で、特に椿の見頃(1月〜3月)は園内の椿園が見事です。公園を過ぎると本格的な上り坂が始まり、標高400m近くまで上ります。道中には「裏砂漠」の入り口もあり、ちょっと寄り道してみるのも面白いでしょう。自転車で奥まではいけませんが、入り口から見える風景だけでも独特の雰囲気を感じられます。
島の南側には「筆島」という海に突き出た高さ30mの岩があります。これは火口から流れ出たマグマの名残であり、絶好の写真スポットになっています。その先には情緒豊かな「波浮(はぶ)港」があり、伊豆大島一周の中間地点として休憩や宿泊に最適です。サイクリストに人気のゲストハウス「青とサイダー」などもあり、地元の方とのコミュニケーションを楽しめます。
島の西側に戻る道中には、伊豆大島最大の見どころである「地層切断面(バームクーヘン)」があります。過去2万年間に渡って繰り返された三原山の大噴火によってできた歴史の縮図で、美しいカーブと縞模様が特徴的です。全長約600mにわたって続くこの巨大な地層は、写真に収めたい絶景ポイントです。
一周コースを走破する際の注意点として、東側は補給スポットが少ないため、事前に飲み物や軽食を準備しておくことが重要です。また、天候によっては強風に見舞われることもあるため、無理せず安全に楽しむことを心がけましょう。一周にかかる時間は、休憩や写真撮影を含めて4〜6時間程度を目安にすると良いでしょう。
伊豆大島でレンタサイクルを借りるならどこがおすすめ?
伊豆大島では自転車を持ち込まなくても、島内の充実したレンタサイクルショップを利用することで気軽にサイクリングを楽しむことができます。主なレンタサイクルショップは元町港周辺に集中しており、それぞれ特色の異なる自転車を取り揃えています。ここでは、主要なレンタサイクルショップをご紹介します。
まず特におすすめなのが「戸井商店」です。ここでは高低差のある伊豆大島を走るのに最適な、Daytona PotteringBikeの電動アシスト小径自転車を7台完備しています。女性や背の低い方でも乗りやすい「DE-01」モデルも2台保有しているのが特徴です。貸出料金は1日3,000円(保険、貸出用ヘルメット付)となっており、電動アシスト自転車を使えば島内の起伏に富んだ地形でも無理なく観光を楽しむことができます。事前予約をしておくとスムーズです。
次に「レンタサイクルらんぶる」は、保有台数約150台と伊豆大島最大級のレンタサイクルショップです。クロスバイク、マウンテンバイク、シティバイクなど車種も豊富で、ブリヂストンサイクルなどの有名ブランドの自転車を中心に揃えています。シティサイクルは1日1,500円、マウンテンバイクは1日2,000円と、比較的リーズナブルな料金設定となっています。短時間のレンタルプランもあるため、船の時間までの短い滞在でも利用しやすいでしょう。
「みよし土産品店」は、島を熟知したスタッフが丁寧にルート解説をしてくれることで知られています。オプションで三原山スタートのプランもあり、初めて訪れる方にはありがたいサービスです。カゴ付きのシティサイクルと、フロントサスペンション付きのブリヂストンサイクルのマウンテンバイクを完備しており、料金は2時間1,000円から、当日返却で2,000円となっています。
宿泊施設を兼ねたレンタサイクルとしては「Volcanic Island」があります。元町港にほど近いゲストハウスながら、宿泊客以外の方でも、クロスバイクスタイルの電動アシスト自転車「ブリヂストンサイクル・RealStream」のレンタルが可能です。自転車工具等も無料で利用できるので安心して走行できます。電動アシスト自転車は1日3,000円、ママチャリは1日1,500円となっています。
また、「O.C.Aレンタサイクル」では、海外で数々のデザイン賞を受賞した電動アシスト自転車「BESV PSA-1」のレンタルを行っています。デザイン性に優れた自転車で島内を走りたい方におすすめです。
レンタサイクルを利用する際の注意点としては、特に繁忙期(ゴールデンウィークや夏休み)は事前予約が必須となることです。また、貸出場所はいずれも元町港周辺となるため、岡田港に到着した場合は大島バスなどを利用して元町港に移動する必要があります。帰りの船の出港港(元町港または岡田港)も考慮し、余裕を持ったスケジュールを立てることが大切です。
トラブル時のサポートについても各店舗に確認しておくと良いでしょう。多くのレンタサイクルショップでは、パンクなどのトラブル時の対応方法や連絡先を案内してくれます。島内は携帯電話の電波が届かないエリアもあるため、緊急連絡先のメモは必ず持っておきましょう。
伊豆大島サイクリングの注意点や準備すべきものは?
伊豆大島でサイクリングを楽しむ際には、島特有の環境に関する注意点や事前準備が必要です。ここでは、安全で充実したサイクリングを楽しむための重要なポイントをご紹介します。
まず重要なのは、天候への備えです。伊豆大島は外洋に浮かぶ島のため、本土とは異なる気象条件になることがあります。特に風が強かったり、急に天候が変わったりすることも珍しくありません。出発前に天気予報をチェックし、雨具やウインドブレーカーなどを必ず持参しましょう。また、夏場は強い日差しによる熱中症のリスクがあるため、日焼け止め、帽子、サングラス、十分な水分補給ができるボトルなども必須です。
次に、自転車の整備状況です。愛車を持ち込む場合は、事前に点検・整備を済ませておくことが大切です。特にブレーキの効き、タイヤの空気圧、チェーンの状態は必ずチェックしてください。島内には自転車専門店がないため、パンク修理キットやポンプ、六角レンチなどの基本的な工具は持参することをおすすめします。
島内には「自転車工具」マークのある場所でポンプや工具の貸し出しサービスを行っているスポットもありますが、自分に合った工具を持つことで安心して走行できます。「伊豆大島ジテンシャウォーキングMAP」には、これらのサポートスポットが記載されているので、事前にチェックしておくと良いでしょう。
補給についても計画が必要です。伊豆大島にはコンビニが無く、スーパーも元町港と波浮港周辺にあるのみです。特に東側や南側のルートでは、お店や自動販売機が少ない区間が続くので、十分な水分と食料を準備しておくことが重要です。竹芝客船ターミナルで事前に補給食を調達しておくのも一つの方法です。
また、伊豆大島の道路は車が少なく走りやすい反面、道が途中で細くなっていたり、アップダウンや先の見えないカーブも多いため、スピードの出し過ぎには充分注意が必要です。特に下り坂では制御できる速度を心がけ、対向車や歩行者にも注意して走行しましょう。
携帯電話については、島内には電波が届かないエリアもあるため、緊急時の対応を事前に考えておく必要があります。主要な道路沿いでは概ね通信可能ですが、山間部や一部の海岸線では圏外になることを想定しておきましょう。
船への自転車持ち込みについても事前確認が必要です。伊豆大島へ自転車を持ち込む場合は、基本的に「輪行袋」に入れることが求められます。特にジェット船では片道1,000円の持ち込み料がかかります(大型客船は輪行袋に入れれば無料)。輪行のサイズは「三辺合計が120cm、総重量20kg」以下が条件で、これを超える場合は大型客船での受託手荷物サービス(片道1,500円/台)を利用することになります。
最後に、往復の港についての注意点です。伊豆大島への船は、毎日の風向きや海上の状況により、島の北側の「岡田港」または島の西側の「元町港」のどちらかに着岸します。レンタサイクルを利用する場合、貸出拠点は元町港周辺にあるため、岡田港に到着した際は大島バス(入港に合わせた接続バス有り)などで元町港まで移動する必要があります。また、帰りの船がどちらの港から出るかも前もって確認し、余裕を持った行動計画を立てることが大切です。
これらの注意点を踏まえて事前準備をしっかり行えば、伊豆大島でのサイクリングは一生の思い出になる素晴らしい体験となるでしょう。島の雄大な自然と独特の文化を、自転車という最適な乗り物で満喫してください。
コメント