静岡県の中東遠エリアには、掛川城を起点として御前崎の岬を巡り、浜岡砂丘まで走り抜けるサイクリングコースがあります。中東遠サイクリングルートと呼ばれるこの道のりは、片道およそ23キロメートルのあいだに、日本100名城のひとつである掛川城の歴史と、駿河湾を望む茶畑の景色、太平洋側最大級とされる砂丘の風景を一度に味わえるルートです。大井川と天竜川に挟まれた中東遠地域は森町・袋井市・磐田市・御前崎市・菊川市・掛川市の五市一町からなり、海も山も茶畑も揃った土地でありながら大都市圏ほど交通量が多くありません。そのぶん自転車でのんびり走りやすく、ロードバイクの経験者から電動アシスト自転車を選ぶ人まで、幅広い層が自分のペースで楽しめる懐の深さがあります。この記事では、掛川城の見どころから御前崎・浜岡砂丘までの道のり、アクセスや走る際の注意点まで、実際にルートを走ってみたい人に向けて具体的にまとめました。

中東遠サイクリングルートは掛川城から御前崎経由で片道23キロ
中東遠サイクリングルートは、地域団体のゆるゆる遠州サイクルツーリズムが整備と発信を続けている、中東遠エリアの基幹ルートです。大井川と天竜川という二つの大河に挟まれた遠州地方には、里山の風景、茶畑が広がる台地、天竜川や菊川の河川敷、駿河湾から遠州灘へと続く海岸線まで、コンパクトなエリアの中に多彩な景色が詰まっています。
ルートは磐田市の天竜川河川敷を基点にする北部・南部ルート、袋井市の遠州三山を巡るコース、掛川市の里山と天竜浜名湖鉄道に並走するコース、菊川市の河川敷コース、そして御前崎方面へ向かうコースなど、いくつもの地域別コースで構成されています。御前崎方面のコースは、駿河湾を望む牧之原台地を抜けて菊川沿いの田園風景を通り、掛川の城下町へ向かう、あるいはその逆順で走る道として位置づけられており、歴史と自然と海の景観を一日で楽しめる点が最大の特徴です。平坦基調の区間が多い一方で牧之原台地への上り坂などほどよいアップダウンもあり、初心者から経験者まで自分の体力に合わせて走れます。
起点となる掛川城は木造復元天守と重要文化財の御殿を両方見られる
中東遠サイクリングルートの象徴的な起点が、掛川市の中心部にそびえる掛川城です。掛川城は室町時代に今川氏の家臣である朝比奈氏によって築かれたと伝えられ、戦国時代には山内一豊が城主を務めました。優美な外観から東海の名城と称され、江戸時代を通じて掛川藩の政治の中心として栄えましたが、1854年の安政東海地震で天守をはじめとする建物の大半が損壊し、その後長らく再建されないままでした。市民の熱意により1994年、日本で初めての本格木造復元天守として蘇っています。
現在の天守は、山内一豊がのちに移った高知城と同じ様式だったという記録をもとに再建された、望楼型三層四階の建物です。白漆喰の外壁と黒塗りの廻縁・高欄のコントラストが美しく、最上階からは掛川の城下町を見渡せるほか、天気の良い日には富士山まで見えることがあります。天守に続く形で1995年に再建された大手門は、入母屋造り本瓦葺きの本格的な楼門造りで、棟上には鯱瓦が飾られています。
さらに見逃せないのが、国の重要文化財に指定されている二の丸御殿です。二条城などと並んで全国でも数少ない、完全な形で残る御殿建築の遺構であり、藩の政庁として実際に使われていた書院造の内部を見学できます。木造復元の天守と現存する御殿建築を同じ城内で見比べられるのは掛川城ならではで、日本100名城のひとつ、静岡県三名城のひとつにも数えられているだけあって、歴史好きのサイクリストにとっても訪れる価値の高いスポットです。
掛川駅から出発する場合、無料レンタサイクルは2026年3月に終了済み
サイクリングの拠点として便利なのが、東海道新幹線も停車するJR掛川駅です。掛川駅南口の構内には掛川観光協会のビジターセンター旅のスイッチがあり、観光案内や地図の入手ができるほか、レンタサイクルの受付窓口としても利用されています。営業時間は9時から17時、定休日は木曜日と夏季・年末年始とされているため、利用を考えている場合は事前に確認しておくと安心です。
これまで掛川駅北駐輪場や大手門駐車場で行われていた無料レンタサイクルの貸し出しは、2026年3月27日をもって終了しました。マイバイクを持たずに走りたい場合は、観光協会のビジターセンターに問い合わせて、現在利用できるレンタサイクルの有無や条件を確認することをおすすめします。輪行袋を使ってマイバイクを新幹線や在来線で運んでくる方法も、掛川駅なら選択肢に入れやすいでしょう。
掛川城から見て北側には、掛川市から浜松市天竜区の新所原駅まで39の駅を結ぶローカル線、天竜浜名湖鉄道が走っています。天浜線沿線の5つの駅ではレンタサイクルが営業しており、普段は徒歩ではなかなか行けない里山エリアまで行動範囲を広げられるのも中東遠エリアの強みです。掛川から御前崎方面へ向かうコースとは別に、掛川から天竜二俣駅までの塩の道をたどるコースも整備されているので、興味に応じて走る方向を選べます。
掛川城から御前崎までは静岡県道37号線沿いに南下
掛川城・掛川駅を出発して御前崎・浜岡砂丘方面を目指す場合、片道の距離はおよそ23キロメートルです。平坦な道が多く、ゆっくり走っても1時間半程度で到達できる、日帰りにちょうど良い距離感になっています。
ルートの目安としては、掛川駅や菊川駅から御前埼灯台へ抜ける最短ルートが、ほぼ静岡県道37号線に沿って伸びています。掛川の市街地を抜けると視界が開け、駿河湾を望む牧之原台地の広大な茶園地帯に入ります。牧之原台地は日本有数の茶産地で、なだらかな丘陵に整然と広がる茶畑の緑は、中東遠エリアを象徴する風景のひとつです。台地を抜けたあとは田園風景の広がる菊川沿いを進み、御前崎の中心市街地を経て浜岡砂丘までほぼ直進する形で走ることができます。菊川は矢田部橋から河口の潮騒橋まで、ほぼ全区間の堤防が舗装されているため、初心者でも走りやすい区間です。
このルートは全体として大きなアップダウンが少なく、牧之原台地への上り坂を除けば比較的平坦な区間が多いのが特徴です。ただし海に近づくにつれて風の影響を受けやすくなるので、後述する風向きの確認は必ず事前にしておいてください。
御前崎ケープパークと御前埼灯台は明治7年点灯の現役灯台
牧之原台地と菊川沿いの田園風景を抜けた先に待っているのが、駿河湾と遠州灘に挟まれた岬、御前崎です。先端に位置する御前崎ケープパークは、海と大地の調和をテーマに整備された公園で、四季折々の草花が楽しめるほか、園内には地球が丸く見えるん台、夕日と風が見えるん台という名前の展望台があります。展望台からは海を180度近く見渡せて、太陽の光と潮風を全身で感じられる開放的な場所です。園内には海沿いの高台をめぐる1.5キロメートルほどのハイキングコースも整備されているので、自転車を降りて少し歩いてみるのもおすすめです。
ケープパークから歩いて10分ほどの場所には御前埼灯台が立っています。1874年に点灯を開始した歴史ある灯台で、日本の灯台50選に選ばれているほか、保存状態の良い灯台としてAランクの保存灯台にも指定されています。内部の階段を上って灯台の頂上まで行くこともでき、そこからは駿河湾越しに富士山を望める日もあり、御前崎観光のハイライトのひとつになっています。サイクリングの休憩がてら立ち寄り、太平洋と駿河湾の両方を見渡せる場所で一息つくのも、このルートならではの楽しみ方です。
浜岡砂丘は太平洋側最大級、桜並木と風車が海岸線に並ぶ
御前崎の中心市街地から西へ進むと、太平洋側最大級の規模とされる砂丘地帯、浜岡砂丘にたどり着きます。浜岡砂丘は、天竜川から流れ出た土砂が沿岸の潮流に乗って運ばれ、地元で遠州の空っ風と呼ばれる強い西風によって内陸側に吹き寄せられることで形成された地形です。夏には海水浴や砂浜の散策でにぎわい、冬には強い季節風が作る風紋と呼ばれる幾何学模様を観察できるなど、季節ごとに違う表情を見せます。
砂丘の入り口から東西600メートルほどにわたっては、太平洋岸自転車道の両側に桜並木が植えられており、開花の時期には市民や観光客でにぎわいます。桜のシーズンに合わせて訪れれば、砂丘と海と桜という組み合わせを一度に楽しめるサイクリングになるでしょう。周辺には風力発電用の風車が多数立ち並んでおり、風車と海と砂丘を同時に見渡せる景観は国内でも珍しい組み合わせとして知られ、写真撮影のスポットとしても人気です。
遠州の空っ風は向かい風だと体力を消耗するので風向き確認が必須
浜岡砂丘の周辺は、前述の遠州の空っ風に代表されるように風が非常に強いエリアです。追い風であれば軽快に走れますが、向かい風になると体力を大きく消耗します。訪れる前には天気予報で当日の風向きを確認しておくことを強くおすすめします。特に長い直線区間を走る際には風の抵抗が体感的な疲労に直結しやすいので、無理のないペース配分を心がけましょう。
太平洋岸自転車道は銚子から和歌山まで続くナショナルサイクルルート
御前崎から浜岡砂丘にかけての海沿いのルートは、国が推進するナショナルサイクルルートのひとつ、太平洋岸自転車道の一部にも位置づけられています。太平洋岸自転車道は千葉県銚子市を起点に神奈川県、静岡県、愛知県、三重県を経て和歌山県和歌山市に至る、総延長およそ1,400キロメートルの自転車道で、2021年5月にナショナルサイクルルートとして正式に指定されました。
静岡県内には静岡清水自転車道、静岡御前崎自転車道、浜松御前崎自転車道という区間名称が設定されており、御前崎から浜岡砂丘にかけてのエリアもこのネットワークに含まれます。区間によっては、かつて走っていた静岡鉄道駿遠線の廃線跡を活用した自転車・歩行者専用道として整備されているところもあり、幹線道路の交通量を気にせず走れる区間が確保されているのは安心材料です。工事などで一時的に通行止めとなる区間が生じることもあるため、出発前には静岡県道路交通規制情報システムなどで最新の状況を確認しておくと当日慌てずに済みます。
天浜線レンタサイクルと輪行を組み合わせれば片道だけ走れる
中東遠サイクリングルートを走る際には、天竜浜名湖鉄道の存在も心強い味方になります。天浜線は掛川駅から新所原駅までを結ぶローカル線で、沿線の5つの駅ではレンタサイクルサービスが提供されています。行きは自転車で走り、帰りは輪行袋に自転車を収めて電車で戻る、あるいはその逆といった組み合わせも可能で、体力やその日の天候・風向きに応じて柔軟にプランを調整できます。浜岡砂丘周辺は特に強風になりやすいエリアなので、帰路が向かい風になりそうな場合は無理をせず最寄り駅から輪行で帰るという判断も、楽しく走り切るための選択肢のひとつです。
ゆるゆる遠州ガイドライドは掛川市役所発着の一日イベント
中東遠エリアでは、地元のサイクリストが企画するゆるゆる遠州ガイドライドという催しも継続的に開催されています。掛川市役所を集合場所に、森町から御前崎市まで広がる中東遠エリアを舞台に、複数のコースからロコサイクリストの案内でツーリングを楽しめるイベントで、受付・開会式のあと朝から出発し、午後には各コースがゴールする一日がかりの企画です。地元を走り慣れたガイドと一緒に走ることで、初めて中東遠エリアを訪れる人でも安心してルートの魅力を味わえます。開催時期やコース内容は年によって変わるため、参加を考える場合は主催団体のゆるゆる遠州サイクルツーリズムの情報を事前にチェックしておくとよいでしょう。単独でルートを走る自信がない人や、地元ならではのおすすめスポットを知りたい人にとって、こうしたガイド付きイベントへの参加は中東遠サイクリングルートを楽しむひとつの入り口になります。
モデルコースは往復46キロ、体力次第で片道プランへの切り替えも
初めて中東遠サイクリングルートに挑戦する場合は、掛川駅・掛川城を出発点として牧之原台地の茶畑、菊川沿いの田園風景を経て御前崎ケープパーク・御前埼灯台へ、そこから浜岡砂丘まで足を延ばす片道23キロメートル前後のコースが基本形です。距離感をまとめると次のようになります。
| コース | 片道距離 | 往復距離 | 所要時間の目安 |
|---|---|---|---|
| 掛川城〜御前崎ケープパーク〜浜岡砂丘 | 約23km | 約46km | 片道1時間30分程度 |
| 掛川城見学中心の短縮プラン | ケープパーク往復に短縮 | ルート次第 | 半日程度 |
| 天浜線・輪行併用プラン | 片道のみ | 復路は電車 | 体力に応じて調整 |
往復すればおよそ46キロメートルの走行距離になりますが、帰路の体力やその日の風向きに応じて、天浜線のレンタサイクルや輪行を利用して片道だけを走るプランに切り替える柔軟さも大切です。もう少し距離を伸ばしたい場合は、掛川市内で天浜線に並走する里山コースや、小笠山・遠州横須賀の街並みを巡るコースを組み合わせることもできますし、観光メインでゆったり楽しみたい場合は掛川城の見学に時間をかけたうえで、御前崎ケープパークまでの往復に絞った短めのプランにするのもよいでしょう。
走る際の注意点は風・日差し・路面・装備の4点
中東遠サイクリングルートを気持ちよく走るために、押さえておきたいポイントがいくつかあります。
まずは風です。特に浜岡砂丘から御前崎にかけての海沿いエリアは、遠州の空っ風と呼ばれる強い西風が吹きやすい土地です。追い風であれば快適に走れますが、向かい風になると想像以上に体力を消耗するため、出発前には必ず当日の風向きと風速を天気予報で確認し、無理のないコース取りとペース配分を心がけましょう。
次に日差しと熱中症対策です。牧之原台地から御前崎・浜岡砂丘にかけての区間は遮るもののない直線的な道が多く、夏場は強い日差しを長時間浴び続けることになります。帽子やサングラス、日焼け止めといった紫外線対策に加え、こまめな水分補給を意識してください。
三つ目は路面と交通状況です。太平洋岸自転車道の一部区間には廃線跡を利用した自転車・歩行者専用道もありますが、区間によっては一般道と共用する部分もあります。工事による通行止めが発生することもあるため、出発前に最新の道路交通情報を確認しておくと安心です。
四つ目は装備です。パンクなどのトラブルに備えて、予備チューブや携帯ポンプ、簡易工具を持参しておくと安心です。海沿いを走る区間があるため、天候が急変した際に備えて軽量なウインドブレーカーやレインウェアを携行しておくこともおすすめします。
ベストシーズンは桜が咲く春と富士山が見える秋
中東遠サイクリングルートは一年を通して走れるコースですが、特におすすめなのは茶畑の新緑と桜並木を同時に楽しめる春と、空気が澄んで富士山が見えやすく涼しい気候で長距離向きの秋です。夏と冬にもそれぞれの見どころがあり、季節ごとに違う魅力があります。
| 季節 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 春 | 牧之原台地の茶畑が新緑に、浜岡砂丘入り口の桜並木も見頃 | 花見時期は混雑しやすい |
| 夏 | 風がやや穏やかで浜岡砂丘での海水浴も楽しめる | 熱中症対策が必須 |
| 秋 | 空気が澄み富士山が見えやすい、長距離向き | 台風シーズンは天候確認を |
| 冬 | 風紋が見られるなど独特の景観 | 遠州の空っ風が最も強い時期 |
いずれのシーズンでも、出発前の天気予報チェックを習慣にしておくことが快適なサイクリングにつながります。
遠州三山めぐりと組み合わせれば一泊二日の周遊も可能
中東遠サイクリングルートの魅力は、掛川から御前崎・浜岡砂丘へ向かう一本のコースだけにとどまりません。中東遠エリアには、隣接する袋井市を舞台にした遠州三山めぐりという人気のサイクリングコースもあり、体力や日程に余裕がある場合はこれらを組み合わせて周遊するプランも検討する価値があります。
遠州三山とは、袋井市内に点在する萬松山可睡斎、油山寺、法多山尊永寺という三つの名刹の総称です。袋井駅を起点にまず可睡斎へ向かい、続いて油山寺、南下して法多山へと巡るコースが地元の観光協会によって整備されており、可睡斎から油山寺にかけての区間は県水辺百選に選ばれた千鳥ヶ谷池や、遠州はぐまの群生が見られる中峰山展望台など自然の見どころも豊富です。夏には遠州三山風鈴まつり、秋には紅葉シーズンの境内風景が楽しめるなど、四季を通じて違う魅力を持つコースとして親しまれています。
掛川城下町から御前崎・浜岡砂丘へと向かう海側のルートと、袋井市の遠州三山を巡る里山側のルートを組み合わせれば、一泊二日程度の行程で中東遠エリアの海・里・歴史という三つの魅力をより深く味わえます。天浜線のレンタサイクルや輪行サービスを活用しながら、その日のコンディションや興味に合わせて柔軟にルートを組み立てられるのも、このルート全体の懐の深さです。
車で行くなら掛川大手門駐車場、収容台数は約200台
輪行や現地レンタサイクルではなく、車にマイバイクを積んで掛川まで移動し、そこから走り始めたいという人も多いでしょう。掛川城のすぐそばには掛川大手門駐車場があり、収容台数は約200台と、団体でのサイクリングやイベント参加時にも利用しやすい規模です。料金は30分100円、24時間の最大料金は1000円に設定されている一般的な機械式駐車場で、24時間年中無休で利用できます。過去には期間限定で最大2時間無料となる社会実験が実施されたこともありますが、常時無料ではないため、最新の料金体系は掛川市の公式情報で確認しておくと安心です。
車のトランクやルーフキャリアに自転車を積んで掛川まで来る場合、大手門駐車場に車を停め、そこから組み立てた自転車で掛川城を見学したのち、御前崎・浜岡砂丘方面へ出発するというプランが組み立てやすいでしょう。走り終えたあとに同じ駐車場へ戻ってくる周回コースになるため、車移動と組み合わせる場合の起点・終点として使い勝手の良い立地です。
磐田市方面は天竜川左岸歩行者自転車道で北部・南部ルートに接続
中東遠サイクリングルートは、掛川から御前崎・浜岡砂丘へ向かう海側のコースだけでなく、天竜川沿いを走る磐田市方面のコースとも接続しています。磐田市内には天竜川左岸歩行者自転車道が整備されており、上流の磐田市寺谷地区から下流の掛塚地区まで、およそ12キロメートルにわたって走ることができます。沿道には公園やサッカー場、野球場といったスポーツ施設が点在し、それぞれに駐車場も用意されているため、天竜川沿いを走るサイクリングの拠点としても利用しやすいエリアです。
磐田市では、天竜川の河川敷を基点に磐田原台地の茶畑や豊岡地域の柿畑といった緑あふれる風景を楽しめる北部ルートと、竜洋・福田地域の海の恵みや市街地に残る文化遺産を巡る南部ルートの二つが用意されています。掛川・御前崎方面のコースとあわせて天竜川沿いの磐田市方面へも足を延ばせば、中東遠エリアが持つ山・里・川・海という多彩な地形をより広く体感できるでしょう。体力と日程に余裕があれば、掛川を拠点にこれらのコースを組み合わせた周遊プランを検討してみるのもおすすめです。
掛川の深蒸し茶と御前崎のカツオが道中のご当地グルメ
中東遠サイクリングルートの楽しみは景色や歴史だけではありません。走った先々で出会えるご当地グルメも、このルートの大きな魅力のひとつです。
出発地点となる掛川は、日本有数の深蒸し茶の産地です。掛川で作られるお茶は、通常の煎茶よりも蒸し時間を2倍から3倍ほど長くした深蒸し煎茶が主流で、たっぷりと陽射しを浴びた肉厚の茶葉を深く蒸すことで、濃厚で甘みのある味わいに仕上がります。掛川の深蒸し茶は全国茶品評会で、最も優れた産地に贈られる産地賞を全国最多となる回数受賞しています。掛川城下町エリアには掛川茶を味わえる茶店や甘味処が点在しているため、サイクリング前のひと休みに立ち寄り、深蒸し茶の香りと味わいを楽しんでから出発するのもおすすめです。あわせて、クラウンメロンをはじめとする掛川メロンや、それを使ったスイーツも地元の名物として親しまれています。
一方でゴール地点となる御前崎は、黒潮が近くを通る好漁場に恵まれ、周年を通じてカツオの水揚げがある港町です。春は初鰹、秋は戻り鰹と、季節によって違う表情のカツオを味わえるのが御前崎ならではの魅力で、御前崎漁港周辺の飲食店では鮮度の良い生カツオを使った刺身定食や海鮮丼が人気メニューとして提供されています。長い距離を走り終えたあとにこうしたカツオ料理を味わえば、サイクリングの満足感もひとしおです。御前崎ケープパークや御前埼灯台の周辺にも飲食店が点在しているため、灯台見学と合わせてランチ休憩の計画を立てておくとよいでしょう。
持ち物は補給食と輪行袋、パンク修理キットを忘れずに
最後に、出発前に確認しておきたい持ち物を整理しておきます。飲料水や補給食は、牧之原台地から御前崎・浜岡砂丘にかけて商店の少ない区間があることを踏まえ、多めに用意しておくと安心です。日差しの強い季節には帽子・サングラス・日焼け止めなどの紫外線対策を、風の強い海沿い区間に備えては軽量なウインドブレーカーを携行しましょう。パンク修理用の予備チューブや携帯ポンプ、簡易工具といった基本的なメンテナンス用品も忘れずに準備してください。輪行を予定している場合は輪行袋を、レンタサイクルを利用する場合は当日利用可能な台数や受付時間を事前に観光協会などへ確認しておくと、当日の行程をスムーズに進められます。
中東遠サイクリングルートは、掛川城の歴史、牧之原台地の茶畑、御前崎の灯台と海、浜岡砂丘の砂丘と風車という、性格の違う景色を片道23キロメートルの中に凝縮したコースです。平坦基調の道が多く初心者でも挑戦しやすい一方、海沿いエリア特有の強い風という条件があるため、出発前の風向きチェックは欠かせません。天浜線のレンタサイクルや輪行サービスをうまく組み合わせれば、体力やその日のコンディションに応じて柔軟にコースを調整できます。天候の良い日、そして追い風になりやすい日を選んで、掛川城から御前崎・浜岡砂丘へと続くこのルートを走ってみてください。








