湿原の夢ロードは釧路阿寒間24.4キロの廃線跡サイクリングコース

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湿原の夢ロードは、釧路市昭和から阿寒町までを結ぶ全長24.4キロメートルのサイクリングコースです。正式名称は北海道道835号釧路阿寒自転車道線で、かつて石炭を運んでいた雄別鉄道の廃線跡を舗装し直して作られました。1978年の開通から40年以上、自転車と歩行者専用の道として釧路と阿寒を結んでいます。鉄道時代の緩やかな勾配とカーブがそのまま活かされているため、アップダウンが少なく、サイクリング初心者でも走りやすいのが特徴です。この記事では、コースの区間ごとの距離や休憩所、道中で立ち寄れる観光スポット、冬季閉鎖や野生動物との遭遇に関する注意点まで、実際に走る前に押さえておきたい情報をまとめました。

目次

湿原の夢ロードは雄別鉄道の廃線跡を舗装して1978年に生まれました

湿原の夢ロードの成り立ちを知るには、前身となった雄別鉄道の歴史を押さえておく必要があります。雄別鉄道は、釧路管内阿寒町にあった雄別炭山駅と釧路駅を結んでいた私鉄で、全長は約45キロメートルに及びました。石炭や原木、生活物資の貨物輸送に加えて、沿線住民のための旅客輸送も担う、地域にとって欠かせない鉄路だったといいます。

始まりは1923年1月17日、北海炭礦鉄道として本線が開業したことにさかのぼります。翌年には社名を雄別炭礦鉄道に改めました。沿線で採掘される石炭は良質な瀝青炭として知られ、釧路港からの積み出しを通じて全国に供給されていたそうです。最盛期の雄別炭鉱周辺には1万2千人ともいわれる住民が暮らし、選炭工場や商店街、学校、病院までが整った炭鉱町を形成していました。

しかし、エネルギー政策の転換や資源の枯渇を背景に、1970年2月28日、雄別炭礦は閉山を迎えます。炭鉱の稼働がなくなれば鉄道を維持する理由もなくなり、同年4月16日、雄別鉄道は全線が廃止されました。開業から半世紀に満たない歴史でした。

廃止によって、釧路市昭和から阿寒町にかけての線路跡が残されます。この約25キロメートルの用地を活用して整備されたのが、現在の釧路阿寒自転車道、通称湿原の夢ロードです。1978年に完成し、北海道を代表する大規模自転車道のひとつとして位置づけられています。廃線跡を利用したサイクリングロードは全国にいくつかありますが、湿原の夢ロードはその中でも走行距離が長く、釧路湿原という日本を代表する湿地帯の景観を存分に味わえる点で、他にはない個性を持っています。

コースは5区間・4つの休憩所に分かれ、走破には半日ほどかかります

湿原の夢ロードは、4つの休憩所を目安に、大きく5つの区間に分けて紹介されることが多いコースです。それぞれの区間の距離とおおよその所要時間は次の表のとおりです。

区間距離所要時間の目安
昭和休憩所〜鶴野休憩所約3.8キロメートル約21分
鶴野休憩所〜北斗休憩所約4.9キロメートル約27分
北斗休憩所〜山花休憩所約4.6キロメートル約25分
山花休憩所〜桜田休憩所約5.7キロメートル約31分
桜田休憩所〜終点(阿寒町)約5.4キロメートル約30分

釧路市街地に近い昭和休憩所からスタートすると、住宅地から徐々に郊外の風景へと移り変わっていきます。鶴野休憩所を過ぎたあたりから湿原らしい開けた景色が増え、鶴野駐車公園にはベンチやトイレ、水飲み場が整っているので休憩スポットとして利用しやすいでしょう。北斗休憩所にもトイレと休憩用のテーブルが設置されています。山花休憩所を過ぎると山花公園エリアに近づき、桜田休憩所を経て阿寒町の終点に至るという流れです。

全区間を通して走ると、休憩を挟みながらの走行でおよそ半日程度を要する計算になります。体力や天候、途中でどれだけ観光スポットに立ち寄るかによって所要時間は変わってくるため、時間に余裕を持った計画を立てておくのがよさそうです。距離が長いコースなので、一日で全区間を走破するだけでなく、区間を区切って何度かに分けて楽しむという選び方もあります。釧路市街地側から鶴野・北斗周辺までを走って湿原の景色を楽しむコースと、山花公園から阿寒町の道の駅までを走って動物園や温泉を楽しむコースとに分けて計画すれば、それぞれの区間の魅力をじっくり味わえるはずです。

4つの休憩所は、いずれも雄別鉄道時代に実在した停車場の跡地に設けられています。中でも山花休憩所の元となった山花駅は、木材の搬出を目的として開設された駅で、廃線となる1970年4月16日まで列車の行き違いを行う交換駅として機能していました。かつて貨物列車がここで行き違いをしていたことを思うと、現在の穏やかな休憩スポットの風景もまた違って見えてきます。鶴野休憩所を過ぎたあたりには、かつて雄別鉄道と、木材輸送を担っていた鶴井村営軌道が立体交差していた場所の名残も見られます。二つの鉄路が交わっていたという事実は、この一帯がいかに林業と鉱業で栄え、鉄道網が張り巡らされていたかを物語っています。

北斗休憩所手前の寄り道で釧路市湿原展望台の絶景に出会えます

コース中盤、北斗休憩所の手前からは、道道53号線たんちょう舞ロードを経由して釧路市湿原展望台へ立ち寄ることができます。釧路湿原の雄大な絶景を望める人気のビュースポットで、展望台の周囲には北斗展望台園地(サテライト展望台)へ続く約2.5キロメートルの遊歩道も整備されています。

湿原の夢ロード本体からは少し外れる寄り道になりますが、釧路湿原ならではのスケール感のある景色を求めるなら立ち寄っておきたいスポットです。運がよければ、湿原を歩くタンチョウの姿を目にすることもあるでしょう。なお、この一帯はヒグマの目撃情報が寄せられることもあるエリアなので、最新の注意情報を確認したうえで行動するのが安心です。実際に、釧路市湿原展望台の木道はヒグマの目撃情報を受けて一時閉鎖された事例もあります。

山花公園では動物園と温泉に立ち寄れます

コース後半に差しかかるあたりでは、山花公園のエリアに近づきます。山花公園は東京ドームおよそ120個分ともいわれる広大な敷地を持つ公園で、園内には釧路市動物園のほか、山花温泉リフレや釧路市ふれあいホースパークといった施設が集まっています。

釧路市動物園は国内最東端に位置する動物園として知られ、北海道内でも有数の広さを誇ります。サイクリングの途中に立ち寄って動物を眺めたり、園内をゆっくり散策したりするのもよい休憩の過ごし方です。長距離を走ったあとには、山花温泉リフレで汗を流すという選択肢もあります。

終点の道の駅阿寒丹頂の里は釧路空港から車で約30分です

コースの終点、阿寒町側の拠点として便利なのが道の駅阿寒丹頂の里です。国道240号、通称マリモ国道沿い、阿寒国立公園の入口に位置する道の駅で、釧路空港からは約20キロメートル、車でおよそ30分の距離にあります。

道の駅の周辺には、丹頂鶴の観察ができる釧路市阿寒国際ツルセンターのほか、テニスコートやキャンプ場、パークゴルフ場、サイクルパークなどのスポーツ施設が揃うあかんランド丹頂の里が広がっています。敷地内にはレンタルサイクルも用意されているので、サイクリングの拠点としても活用しやすいでしょう。

平成28年11月には、インフォメーションセンター丹頂の里(クレインズテラス)が新築移転オープンしました。地元の特産品を扱う売店やイートインコーナーも充実しています。また、赤いベレーという宿泊・日帰り入浴が可能な温泉施設もあり、美肌の湯として親しまれてきました。営業時間の目安は5月から9月が9時から18時、10月から4月が9時から17時です。訪問前に最新の営業情報を確認しておくと安心でしょう。長距離のサイクリングを終えたあとに、ここで食事や入浴を楽しみながら旅の疲れを癒やすというのもおすすめの過ごし方です。

湿原の夢ロードへは、釧路市街地側・阿寒町側のいずれからもアクセスできます。釧路市街地からであれば起点の昭和地区へ、阿寒町の道の駅を拠点にするのであれば終点付近からのアクセスとなります。釧路空港からは道の駅までおよそ20キロメートルという立地なので、レンタカーで釧路入りして阿寒側から走り始めるプランも組みやすいはずです。自転車を持参しない場合でも、道の駅の敷地内や地域のサイクリング拠点にレンタルサイクルが用意されていることがあります。訪問前に貸し出し状況や料金、営業時間を各施設に確認しておきましょう。片道25キロメートル前後というスケールの大きなコースなので、往復するか、片道だけ走って別の交通手段で戻るか、あらかじめ移動計画を立てておくことをおすすめします。

雄別炭鉱の選炭場跡は近代化産業遺産として今も保存されています

湿原の夢ロード自体は旧線路の跡地を舗装した自転車道なので、走行中に当時の鉄道施設そのものを目にする場面は限られます。しかし、この道の生い立ちを語るうえで欠かせないのが、終点よりさらに奥、かつての雄別炭山周辺に残る雄別炭鉱の産業遺産です。

雄別炭鉱は1919年から1970年までの約50年間にわたって操業した、釧路炭田を代表する大規模炭鉱のひとつでした。最盛期には1万2千人もの住民が暮らし、選炭工場や商店街、学校、病院まで揃う集落を形成していたといいます。閉山後は住民が次々と移転し、現在では無人地帯となりました。

選炭場の遺構をはじめとする炭鉱施設の跡は、2007年に経済産業省の近代化産業遺産に認定されており、今後もそのままの姿で保存されていく見通しです。煙突は高さ50.8メートルにおよび、1957年に完成したものだそうです。現地は私有地や危険箇所を含むため気軽に立ち入ることは推奨されませんが、湿原の夢ロードを走りながら、かつてこの道の下を石炭列車が行き交っていたことに思いを馳せてみるのも、このコースならではの楽しみ方といえるでしょう。

冬季は鶴野から阿寒までの約22キロメートルが12月中旬から4月中旬まで通行止めです

湿原の夢ロードを訪れる際にもっとも注意しておきたいのが、冬季の閉鎖です。北海道の厳しい冬の気候を踏まえ、鶴野から阿寒までの区間、約22キロメートルにわたって冬期は通行止めとなります。閉鎖期間の目安はおおむね12月中旬から翌年4月中旬までです。積雪や路面凍結によって自転車での通行が危険になるための措置で、冬季にこのコースを走ることはできません。サイクリングを計画するなら、雪解けが進んだ春以降から、初雪が降る前の秋ごろまでの時期を選ぶ必要があります。

また、冬季閉鎖とは別に、近年はヒグマの出没に関連した通行規制が実施されることもあります。実際に道道釧路阿寒自転車道線では、熊の出没を受けて区間限定の通行止めが発表された事例がありました。北海道東部は市街地に近いエリアでもヒグマの出没が報告される土地柄なので、訪問前には釧路総合振興局釧路建設管理部が公表している道路通行規制情報や、釧路市が発信するヒグマ出没情報を確認しておきたいところです。早朝や夕方など、野生動物の活動が活発になりやすい時間帯の走行には特に注意しましょう。

タンチョウやエゾシカに出会えますが、早朝と夕方は速度を落とす必要があります

湿原の夢ロードが多くの人を惹きつける理由のひとつが、都市部ではまず出会うことのない野生動物との遭遇です。コースが通り抜ける釧路湿原国立公園には、国の特別天然記念物であるタンチョウをはじめ、哺乳類39種類、鳥類約200種類、爬虫類5種類、両生類4種類が生息しているとされています。ペダルを漕ぎながら、湿原の中を歩くタンチョウの姿や、草地に佇むエゾシカを間近に見られることも珍しくありません。

一方で、野生動物との距離が近いということは、それだけ注意も必要になるということです。特にエゾシカは走行中の自転車道へ突然飛び出してくることがあり、視界が悪くなる早朝や夕方の時間帯は速度を落として走ることがすすめられています。先に触れたとおりヒグマの出没情報が発表されることもあるので、鈴やラジオなど音の出るものを携行する、単独行動を避けるといった備えも忘れないようにしたいものです。動物との遭遇はこのコースならではの魅力ですが、あくまで野生動物の生活圏を通らせてもらっているという意識を持って走ることが大切ではないでしょうか。

釧路湿原は1980年に日本で初めてラムサール条約に登録されました

湿原の夢ロードが縁取る釧路湿原は、面積約2万6000ヘクタールにおよぶ日本最大の湿原です。釧路市や釧路町、標茶町、鶴居村の4市町村に広がり、湿原の中を釧路川が大きく蛇行しながら流れています。1980年には日本で初めてラムサール条約に登録された湿地でもあり、中心部の7863ヘクタールがその登録区域にあたります。1987年には日本で28番目の国立公園として釧路湿原国立公園にも指定されました。

ラムサール条約は、国際的に重要な湿地を国際協力によって保全するための条約です。水鳥の生息地としてだけでなく、湿地そのものが持つ機能や資源、価値を将来にわたって維持していく狙いがあります。湿原の夢ロードを走っていると、そうした国際的な保全の対象になっている貴重な自然の縁を、自転車でなぞっていることに気づかされます。タンチョウが生息できる環境そのものが、条約によって守られてきた土地の上に成り立っているわけです。

実際に走った人からは平坦で走りやすいという声が寄せられています

湿原の夢ロードは、実際に走った人のブログや紀行文でもたびたび紹介されてきました。新釧路川や阿寒川に沿って続く区間は、かつての駅舎跡地が休憩所として整備されており、ありのままの原風景を走れる気持ちのよいサイクリングルートという声が寄せられています。道幅は自転車・歩行者専用道路として十分に確保されており、直線的でほぼ平坦な区間が多いため、重量のある自転車でも走破しやすいという評価がある一方、25キロメートル前後という距離そのものは短くありません。荷物の少ない軽装備での挑戦がすすめられています。

全国的な知名度という点でも、湿原の夢ロードは日本経済新聞系メディアのNIKKEIプラス1が特集したおすすめのサイクリングコースランキングで8位にランクインした実績があります。北海道内にとどまらず、全国のサイクリング愛好家の間でも一定の知名度と評価を得ているコースだといえそうです。

夏の釧路は平均気温20度前後で、レイヤリングした服装が向いています

北海道東部・釧路エリアの夏は、本州の蒸し暑さとは対照的に、平均気温がおよそ20度前後というすごしやすい気候です。真夏でも汗ばむような暑さになることは少なく、長距離のサイクリングでも比較的体力を消耗しにくいでしょう。ただし、海霧の影響で朝夕は肌寒く感じることもあるため、天候の変化に対応できるよう、脱ぎ着しやすい重ね着を意識した服装が向いています。

近年はペダルアシスト機能を備えたE-bikeで湿原エリアを走る楽しみ方も広がりつつあります。25キロメートル前後というスケールの大きなコースを、体力に自信がない人や家族連れでも無理なく楽しめる選択肢として、レンタル拠点でE-bikeの取り扱いがないか確認してみるのもよさそうです。いずれの場合も、飲料水、補給食、簡単な工具やパンク修理キットといった基本装備は準備しておきましょう。自動車の通行がない専用道路なので、家族連れでの利用や、初めて長距離サイクリングに挑戦する人にとっても安心感のあるコースになっています。

阿寒湖の紅葉は例年9月20日頃から色づき始めます

湿原の夢ロードの終点である阿寒町周辺は、阿寒国立公園の玄関口にあたります。体力と時間に余裕があれば、道の駅阿寒丹頂の里からさらに足を延ばして、阿寒湖畔まで観光の範囲を広げるのもよいでしょう。阿寒湖は周囲約26キロメートル、深い原生林に囲まれたカルデラ湖で、国の特別天然記念物マリモの生育地としても知られています。湖を巡る遊覧船では、マリモ展示観察センターや景勝地の滝口などを湖上から眺められます。

季節を秋に選べば、阿寒湖周辺の紅葉は道内でも早い時期から見頃を迎えます。標高の高いエリアから色づきが始まり、例年9月20日頃から色づき始めて10月初旬にピークを迎えるとされています。湿原の夢ロードで湿原の秋を楽しんだあと、阿寒湖畔で雄阿寒岳を彩る紅葉を眺めるという計画を立てれば、釧路と阿寒エリアの秋の魅力を一度に味わえるはずです。

湿原の夢ロードは、雄別鉄道の廃線跡を活用して1978年に生まれた、総延長24.4キロメートルの自転車道です。釧路市昭和から阿寒町までを結ぶこの道には、鉄道時代の緩やかな線形を活かした走りやすさと、釧路湿原ならではの自然景観、そして道中に点在する釧路市湿原展望台や山花公園、道の駅阿寒丹頂の里といった観光スポットが揃っています。終点の先には近代化産業遺産に認定された雄別炭鉱の遺構も残されており、炭鉱と鉄道の歴史をたどりながら走れるコースです。冬季閉鎖やヒグマ出没といった北海道ならではの注意点はありますが、雪解けから初秋にかけての時期を選んで訪れれば、自然と歴史とグルメと温泉を一度に楽しめる道として、多くのサイクリストや観光客に向いているコースだといえそうです。

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