十勝千年の森は、北海道十勝地方の清水町にある庭園で、日高山脈を望む立地から、サイクリングやヒルクライムで十勝を巡る旅の拠点としても親しまれています。園内そのものはサイクリング専用コースを備えた施設ではありませんが、周辺には十勝サイクルウィークやかみふらの十勝岳ヒルクライムなど、道内有数のイベントとコースが広がっています。清水町から新得町方面へ足を延ばせば、狩勝峠を越える本格的なヒルクライムにも挑戦できます。
この記事では、十勝千年の森という庭園そのものの魅力から、十勝地方全体のサイクリング環境、周辺のヒルクライムスポット、そして安全に走るための注意点まで、旅の計画に必要な情報をまとめました。庭園散策とサイクリング、どちらも十勝ならではの楽しみ方として組み合わせられます。

十勝千年の森は清水町羽帯地区にある入園料1200円の庭園です
十勝千年の森は、北海道上川郡清水町羽帯南10線に位置し、JR十勝清水駅から車でおよそ15分の距離にあります。入園料は一般・大人(高校生以上)が1,200円、小中学生(学生証提示)が600円で、小学生未満は無料です。障がい者手帳を持つ方は1,000円(小中学生500円)、15名以上の団体は大人1,000円・小中学生500円となっています。
開園期間は例年4月下旬から10月中旬までで、冬季は閉園します。営業時間は時期によって変わり、4月19日から6月30日は9時30分から17時まで、7月1日から8月31日は9時から17時まで、9月1日から10月13日は9時30分から16時までです。最終入園はいずれも閉園の30分前までとなるため、サイクリングやヒルクライムで体を動かした日に立ち寄る場合は、時間に余裕を持って向かうのがよいでしょう。園内には180台分の無料駐車場も用意されています。
十勝千年の森は1990年の土地取得から2008年開業まで20年近くかけて作られました
十勝千年の森の構想が生まれたのは1987年です。十勝毎日新聞社社長だった林光繁氏が、カーボンオフセットを目的としながら「新聞読者の癒しになる場所を作りたい」という思いから庭園開発を着想したのが始まりとされています。1990年に清水町羽帯地区の約400ヘクタールの土地を取得し、2003年から整備を本格化させ、2008年7月に開業しました。
千年後の子どもたちに残す森というコンセプトのもと、環境保全と地域文化の発信を理念に据えて作られた経緯があります。長い年月をかけて育てられてきた庭園だからこそ、他の観光庭園とは違うスケール感を持っているのだと思います。
アース・ガーデンとメドウ・ガーデンから日高山脈を一望できます
十勝千年の森の庭園は、イギリスのガーデンデザイナーであるダン・ピアソン氏が手がけました。園内には大きく4つのガーデンがあり、それぞれ異なるテーマで構成されています。
代表格が「アース・ガーデン(大地の庭)」です。地形そのものを造形として扱い、大地のうねりを表現した空間デザインになっています。もうひとつが「メドウ・ガーデン(野の花の庭)」で、北海道の野に自生する草花をモチーフにした庭園です。メドウガーデンの奥には日高山脈が控えていて、野の花畑から山並みへと続く景観は、この庭園ならではの見どころだと言えます。
園内には「フォレストガーデン」というエリアもあり、川のせせらぎや鳥のさえずりを聞きながら森を歩けます。芝生の丘が広がるアースガーデンからは日高山脈の稜線を一望でき、「森」「庭」「農」「アート」「食」という5つの要素で人と自然が触れ合えることをコンセプトに掲げています。世界の庭園ランキングで高く評価されたこともあり、園内にはアート作品も点在しています。
十勝千年の森は「なつぞら」の舞台でもある十勝エリアの一角です
十勝・帯広エリアは、NHKの連続テレビ小説「なつぞら」の舞台としても知られています。近隣の十勝牧場に伸びる白樺並木など、日高山脈を背景にした北海道らしい景観を楽しめるスポットが点在しており、十勝千年の森を訪れる際にこうした周辺の観光地と組み合わせて日帰りや一泊二日の旅程を組む人も多いようです。
園内には庭園散策の合間に立ち寄れるカフェもあります。キッチンガーデンやメドウガーデンを望む開放的なカフェのほか、テラス席を備えた「カフェ・ラウラウ」では庭を眺めながら十勝のチーズ料理を味わえます。体験型のプログラムとしては、セグウェイツアー(9,800円、所要時間約2時間、前日17時までに要予約)や、座学とチーズ作り体験、焼いたピザまで楽しめる「十勝ナチュラルチーズ作り体験工房」(大人3,800円、子ども2,400円、ゴールデンウイークや8月などの期間限定)があります。サイクリングやヒルクライムで体を動かしたあとに、こうした体験で十勝の食と文化に触れるのも良い組み合わせです。
十勝平野は信号の少ない直線道路がロングライドに向いています
十勝地方は、北海道の中でも特にサイクリング環境が整っているエリアです。広大な十勝平野には信号の少ない直線道路が続き、畑作地帯を貫く道路網はロードバイクでの長距離走行に向いています。
その中心的な存在が「十勝サイクルネットワーク」で、十勝地方全体をフィールドにサイクリング環境の整備と情報発信を行っている団体です。センチュリーラン十勝大会などのイベント開催や、地域内のルート情報提供を通じて、十勝を自転車で旅する目的地として押し上げてきました。帯広市も「とかちおすすめサイクリングルート」として十勝川沿線コースなど複数のモデルコースを公式サイトで紹介しています。十勝川沿いのコースは高低差が少なく、初心者でも安心して走れる内容です。
十勝サイクルウィーク2025は9月20日から28日に開催され900人超が参加しました
十勝地方のサイクリング文化を象徴するイベントが「十勝サイクルウィーク」です。2025年は9月20日(土)から9月28日(日)までの1週間にわたって開催され、管内外から900人を超える参加者が集まりました。
初心者から本格的な挑戦者まで参加できる多彩なプログラムが特徴で、牧場でのジェラート体験ライド、早朝の帯広空港滑走路を走るライド、自分のペースで巡る帯広周遊ライド、夜のヒルクライムに挑む「ナイトヒルクライムアドベンチャー」、未舗装路のグラベルコースなど内容は多岐にわたります。2025年の開催では新たに「ジェラートライド」や「デジタルスタンプラリー」も加わりました。清水町もこのイベントに関わる自治体のひとつで、十勝千年の森を含む清水町エリアも一大サイクリングイベントの舞台の一角を担っています。
かみふらの十勝岳ヒルクライムは標高差1050mの北海道最大級コースです
十勝地方は平坦な牧草地帯のイメージが強いものの、道内屈指のヒルクライムスポットも抱えています。その代表格が「かみふらの十勝岳ヒルクライム大会」です。開催地は空知郡上富良野町の日の出公園特設会場で、十勝地方そのものではなく上川・空知エリアに近い立地ですが、十勝岳を舞台にした北海道内最大級のヒルクライムレースとして知られています。コース距離は20.0キロメートル、標高差はパレード走行を含めて1050メートルに及び、国立公園内の山岳景観を望みながら走る、上級者にも手応えのあるコースです。2026年の第10回大会は9月5日(土)に開催されました。
もうひとつ知られる舞台が「幌鹿峠」です。糠平湖をスタート地点とし、標高差は約514メートル、最大斜度は約12パーセントに達する、ヒルクライム愛好者向けの本格的なコースとして紹介されています。平地のロングライドとは違う達成感を求めるサイクリストにとって、大きな魅力になっているようです。
狩勝峠は清水町と新得町の境にある峠道です
清水町と新得町の境界に位置する狩勝峠は、古くから北海道の交通の要衝として知られる峠で、日高山脈と大雪山系のあいだを抜けるルートです。星野リゾートトマムでは、狩勝峠を下る春季のマウンテンバイクツアー「のんびりMTB」も企画されており、峠道を自転車で楽しむ文化が周辺エリアにも根付きつつあるようです。
ただし、狩勝峠そのものを対象にした具体的なロードバイク向けヒルクライムコースの標高差や斜度データについては、今回の調査では確認できませんでした。実際に走行を計画する場合は、事前に十勝総合振興局や地元の観光協会、十勝サイクルネットワークに最新の道路状況や交通量を問い合わせることをおすすめします。
レンタサイクルとベストシーズンは4月下旬から11月上旬に重なります
ロードバイクを持ち込まずに十勝でサイクリングを楽しみたい場合は、レンタサイクルという方法もあります。JR帯広駅のバスターミナル内にある「エコバスセンターりくる」では、4月下旬から11月上旬の期間、折りたたみ自転車や電動アシスト自転車などを1時間100円からレンタルできます。この営業期間が示す通り、十勝地方でのサイクリングのベストシーズンはおおむね4月下旬から11月上旬です。十勝千年の森の開園期間(4月下旬から10月中旬)ともほぼ重なっているため、庭園散策とサイクリングを同時に楽しむなら、この期間内での訪問が効率的です。
夏場は日中の気温が上がりますが、本州のような蒸し暑さは少なく、朝晩は冷え込むこともあるため、レイヤリングできるウェアを準備しておくと安心です。9月から10月は紅葉のシーズンとも重なり、庭園とサイクリングコースの両方で秋らしい彩りを楽しめます。
十勝平野のサイクリングコース沿いには六花亭や十勝ヒルズが並びます
十勝地方のサイクリングルートの魅力は、走る楽しさだけでなく道中のグルメスポットや観光施設の充実度にもあります。代表的な立ち寄りスポットとして、「道の駅 ガーデンスパ十勝川温泉」、丘の上に広がる観光農園「十勝ヒルズ」、ばん馬による競馬「ばんえい十勝」、菓子メーカーの「六花亭」や「柳月」などが挙げられます。これらは十勝平野を縦断する定番サイクリングコース沿いに点在し、走りながら十勝の食文化や農業景観を味わえる構成になっています。
十勝千年の森を拠点にすると、こうした帯広市街地寄りのスポットまでは距離があるため、一日で全て回るのは難しいかもしれません。清水町から新得町、帯広市方面へと足を延ばす複数日のツアーを計画すれば、庭園体験と平野部のグルメライドを組み合わせた旅程を組み立てられます。
三国峠越えのグラベルライドは国内屈指の評価を得ています
近年、十勝地方はグラベルライド(未舗装路を走るサイクリングスタイル)のフィールドとしても評価を高めています。国内外のサイクリストが、十勝の農道や林道の路面と景観をグラベルバイクでの走行に適していると評価し、動画共有サイトなどで紹介する例も増えています。
ルート例としては、芽室公園を起点に狩勝峠方面を経由し、サホロリゾート方面へ抜けるコースが、トカプチ400の紹介ルートとして知られています。道中には牧場でのシープドッグショーが見られる牧場もあり、峠越えの走りごたえと牧歌的な風景の両方を楽しめる構成です。北海道の国道の中で最も標高の高い峠として知られる三国峠も、広域のサイクリングルートの一部として紹介されることがあります。冷涼な気候、まっすぐ伸びる道、山岳ルート、海岸線ルートまで、十勝は多様な地形をひとつのエリアで楽しめる場所です。
北海道ガーデン街道9つのうち5つが十勝エリアに集まっています
十勝千年の森は、「北海道ガーデン街道」と呼ばれる広域周遊ルートの一角でもあります。北海道ガーデン街道は、大雪・富良野・十勝の三エリアを結ぶ全長約250キロメートルの街道沿いに点在する、北海道を代表する9つのガーデンの総称です。
このうち十勝エリアには5つのガーデンが集まっています。清水町の十勝千年の森のほか、帯広市の真鍋庭園、幕別町の十勝ヒルズ、帯広市の紫竹ガーデン、中札内村の六花の森です。六花の森は六花亭が運営するガーデンで、10万平方メートルの敷地に四季折々の山野草が咲いています。これらは車での周遊が一般的ですが、ロードバイクで移動しながら複数の庭園を訪ね歩く楽しみ方も可能です。ガーデン間の距離は短くないため、複数日の旅程を組み、体力と相談しながら巡ることをおすすめします。
十勝千年の森は庭園散策とサイクリングの休憩拠点として使うのが現実的です
十勝千年の森そのものについて、園内にサイクリングコースやマウンテンバイク専用コースがあるかという問いへの答えは、今回の調査では確認できませんでした。近隣には十勝ネイチャーセンターが主催するマウンテンバイクツアーなど、自然の中でバイクを楽しむプログラムがあり、十勝千年の森を拠点にしつつ周辺の自然フィールドでアクティビティを組み合わせるのが現実的な選択肢になります。
具体的なプランとしては、午前中に十勝千年の森へロードバイクを積んで訪れ、庭園散策や写真撮影で日高山脈の景観を楽しんだあと、周辺の平坦な道をサイクリングで巡る流れが考えられます。清水町周辺は畑作地帯が広がり、信号の少ない道路で十勝らしいライドを楽しめます。脚力に余裕があれば狩勝峠方面へ足を延ばし、峠道でのヒルクライムに挑戦する組み合わせも可能です。峠道は交通量や路面状況が変わりやすいため、走行前に最新の道路情報を確認しておくことが大切です。十勝千年の森自体は庭園鑑賞を主目的とした施設なので、園内でロードバイク走行やヒルクライムトレーニングを直接行う場所ではありません。走ったあとに庭園でゆったり過ごし、チーズ作り体験やセグウェイツアーで違う角度から十勝の自然を味わう一日も贅沢だと思います。
サホロリゾートホテルは狩勝峠3合目にある宿泊拠点です
十勝千年の森を拠点に複数日の旅程を組む場合、宿泊先の選択肢のひとつが「十勝サホロリゾートホテル」です。道東最大級のスノーリゾートとしても知られるこの施設は、狩勝高原の中腹に位置し、道東自動車道トマムICから車で約30分、国道38号経由で狩勝峠3合目(帯広側)にアクセスする立地です。森に抱かれた落ち着いた雰囲気のリゾートホテルとして紹介されています。
清水町の十勝千年の森から新得町方面、狩勝峠に向かうルート上にあるため、峠越えのヒルクライムに挑戦する拠点として、あるいは庭園散策とサイクリングを楽しんだあとの宿泊先として組み込みやすい立地です。夏季はゴルフやアクティビティ、冬季はスキーリゾートとして通年で機能しており、季節を問わず十勝・狩勝エリアの拠点として使えます。
ヒグマ対策はクマ鈴とスプレーと強力ライトの三点が基本です
十勝千年の森周辺や狩勝峠のような山間部・林道をサイクリングやヒルクライムで走る際、本州のサイクリングとは異なる注意点として、ヒグマへの備えが挙げられます。人通りの少ない林道では、見通しの悪いカーブなどで自転車が不意に接近すると、熊と至近距離で遭遇する危険があるとされています。
対策としては、ヘルメットやハンドル、サドルバッグに取り付けられる金属製のクマ鈴を装着し、振動でしっかり音が鳴るタイプを選ぶこと、通常の自転車用ベルより大きな音が出るロード用ベルを併用すること、クマ撃退スプレーをトップチューブやステム周辺のホルスターに装着しておくことが挙げられます。早朝や夕方の薄暗い時間帯に走行する場合は、300ルーメン以上の強力なヘッドライトで視界を確保し、人の存在をアピールすることも有効です。山菜採りのシーズンにあたる5月や、冬眠前の過食期にあたる10月頃は熊の活動が活発になりやすいため、林道の走行を避けることが推奨されています。狩勝峠方面など人里離れたルートへ足を延ばす場合は、出発前に自治体や観光協会が発信する熊の出没情報を確認しておくべきです。
サイクルステーション11か所とナショナルサイクルルート指定が受け入れ環境を支えています
十勝地方は、サイクリストを迎える受け入れ体制の整備も進んでいます。地域内には自転車の空気入れや工具、休憩スペースを備えた「サイクルステーション」が11か所、見どころとなる「サイクルスポット」が8か所あり、走行中のトラブルや休憩に対応できる環境が整っています。自転車に優しい宿泊施設として、十勝南端にはバイクや自転車で北海道を旅する人向けのサービスを提供するゲストハウス民宿「セキレイ舘」もあります。
こうした取り組みが評価され、十勝地方を代表するロングライドルート「トカプチ400」は、国が指定する「ナショナルサイクルルート」のひとつに選ばれています。ナショナルサイクルルートは、走行環境、受け入れ環境、情報発信に優れたルートに与えられる指定で、十勝が国内でも屈指のサイクルツーリズム先進地域であることを表しています。詳しいサイクルステーションや宿泊施設の情報は、「とかちサイクルマップ」で確認できます。
清水町の牛とろ丼とにんにく料理は旅の締めくくりにふさわしい一皿です
十勝千年の森が位置する清水町は、ブランド牛を使ったご当地グルメでも知られています。代表的な料理が「牛とろ丼」と「十勝清水牛玉ステーキ丼」で、牛とろ丼は全国丼グランプリでの受賞歴があり、牛玉ステーキ丼は北海道新ご当地グルメグランプリを受賞しました。乳製品も町の重要な特産品で、バターやヨーグルト、チーズといった濃厚な乳製品のほか、希少なブラウンスイス牛の乳を使ったプレミアムアイスクリームも作られています。高いたんぱく質を含みながらすっきりとした後味が特徴とされ、サイクリングやヒルクライムで消費したエネルギーを補給するご褒美にもなりそうです。
清水町はにんにくの出荷量が北海道で最も多い町でもあり、にんにくを使った焼肉料理などを楽しめる地元のイベントも開かれています。十勝千年の森での庭園散策やサイクリングのあとには、こうした清水町ならではのグルメを味わい、旅を締めくくるのもおすすめです。
十勝千年の森は、日高山脈を望むロケーションに広がる庭園そのものが目的地になる場所です。そこに十勝サイクルネットワークが積み上げてきたサイクリング環境、かみふらの十勝岳ヒルクライムや幌鹿峠、狩勝峠といったヒルクライムの舞台を組み合わせると、旅の設計に幅が生まれます。庭園でのひととき、平野を駆け抜けるロングライド、峠道でのヒルクライム。この3つを組み合わせれば、北海道十勝ならではの旅になるはずです。訪問計画にあたっては、開園期間や天候、道路状況、イベントの開催時期を事前に確認し、ヒグマ対策も含めて無理のない旅程を組み立ててください。








