萩・津和野・益田を結ぶサイクリングコースとは、山口県萩市から島根県津和野町・益田市へと続く山陰街道沿いの広域自転車ルートです。古来より人々が行き交った山陰街道を、現代のサイクリストが日本海と中国山地の景観を眺めながらたどることができる魅力的なコースとなっています。三つの城下町を結ぶ全長およそ100〜140kmのルートは、世界遺産・幕末維新の史跡・清流・里山風景が凝縮されており、歴史と自然を同時に味わえる旅として人気を集めています。
本記事では、萩・津和野・益田の三つの街を結ぶサイクリングコースと、その背景となる山陰街道の歴史を、初心者から上級者まで参考になる視点でわかりやすく解説します。コースの特徴、各市町のレンタサイクル事情、見どころ、ベストシーズン、モデルコースまで、この地域での自転車旅に必要な情報を網羅した内容です。

山陰街道とは何か─古代から続く日本海沿いの幹線道路
山陰街道とは、京から丹波を経て山陰地方を西へと伸び、最終的に周防国の小郡(現在の山口市)で西国街道に合流する古道です。日本海沿岸を西へつなぐ重要な道路網の一つとして、古代から人や物資の往来を支えてきました。
歴史的には、山陽道が「大路」と位置づけられたのに対し、山陰道は「小路」とされ、相対的に重視されてこなかった経緯があります。その理由として、日本海沿いの道は風雪が厳しく、山道や難所が多かったことが挙げられます。発展が遅れた一方で、その結果として自然の景観が手つかずのまま残ったため、現代のサイクリストにとってはかえって素朴な美しさを楽しめるルートになりました。
現在の国道9号線は近世の山陰街道にほぼ沿って整備されており、自転車の旅でもメインルートの一つとなっています。とくに益田市内には旧山陰道がよく保存された区間が現存しており、那賀郡に接する土田から美濃郡の中心部・益田市街までの間には、鎌手峠越・鹿田峠越・峠山越といった峠越え区間が残っています。
歴史の道百選に選ばれた益田の旧山陰道
益田市内の近世山陰道のうち、遺存状態の良い6区間・約7.0キロメートルは、文化庁が選定する「歴史の道百選」に選ばれています。なかでも浜田藩と津和野藩が接した扇原関門跡には、両藩の境界を示す境界石が現在も残っており、当時の藩境を物語る貴重な史跡として知られています。
また、この地域に関連する歴史的な道として「石見銀山街道」も注目されます。島根県大田市の石見銀山から産出された銀を各地の港へ運ぶために使われた街道で、幕末まで馬300頭と400人という大輸送隊が3泊4日の行程で銀を運んでいたと伝えられています。現代ではこの「銀の道」も自転車ツーリングのルートとして再評価されています。
萩市─世界遺産の城下町をサイクリングで巡る
萩市は、幕末・明治維新において歴史の表舞台となった長州藩の城下町です。現在も江戸時代からほぼそのままの町割が残り、碁盤の目のように整然と延びる街路は城下町特有の趣を今に伝えています。萩の旧城下町は世界遺産「明治日本の産業革命遺産」にも登録されており、国内外から多くの観光客が訪れる人気スポットです。
萩市内の道幅は狭いものの、地形はほぼ平坦であるため、小回りの利く自転車での観光が特に推奨されています。市内には複数の観光スポットを効率よく巡れるサイクリングコースが整備されており、サイクリング初心者でも安心して楽しめる環境です。
萩でサイクリングで訪れたい主な見どころ
萩城跡指月公園は、日本海に突き出した指月山の麓に築かれた萩城の跡地です。毛利氏の居城として長く機能しましたが、明治維新後に廃城となり、現在は石垣と天守台が残る公園として整備されています。桜の名所としても知られ、サイクリングの起点として最適な場所です。
松下村塾は、吉田松陰が主宰した私塾で、伊藤博文・山縣有朋・高杉晋作・木戸孝允など、後に明治維新を担う多くの志士たちを輩出した歴史的建物です。2015年に世界遺産に登録されており、日本近代史を語る上で欠かせない場所となっています。
萩・明倫学舎は、藩校・明倫館の跡地に整備された観光拠点で、明治時代に建設されたレンガ造りの校舎が現存しています。観光情報の発信基地としても機能しており、サイクリングの出発点として最適です。
菊ヶ浜は萩城跡の北側に広がる白砂の海岸で、北長門海岸国定公園内に位置しています。夕日の美しさは格別で、日本海の雄大な景観を眺めながらのサイクリングを楽しめる絶景スポットです。高杉晋作・木戸孝允の旧宅も近くにあり、幕末の志士たちが生まれ育った町家が今も残る路地を自転車でゆっくり走ることができます。
萩市のレンタサイクル情報
萩市のレンタサイクルは市内各所で利用可能で、萩城跡・指月公園をはじめとする複数の拠点で自転車を借りることができます。スマイル貸自転車などでは24〜26インチの扱いやすい自転車を用意しており、ヘルメットのレンタルや乗車前の安全点検も行っています。
萩市はサイクリングマップも作成しており、城下町の主要スポットを効率よく巡る推奨ルートが複数掲載されています。代表的な半日コースは約9kmで、JR東萩駅を起点に松本川沿いを南下し、萩・明倫学舎を経由して萩城跡指月公園に至るルートです。半日でも萩の魅力をしっかり堪能できる手頃な距離設定となっています。
津和野町─山陰の小京都をのんびり走る魅力
津和野町は、山口県との県境にほど近い島根県西部に位置する城下町で、「山陰の小京都」と呼ばれる情緒豊かな町です。江戸時代初期に形成された城下町の町並みが今もほぼそのままの状態で保存されており、石畳の通り、細い路地、かつての藩校跡や家老の屋敷など、歴史的な建造物が数多く残っています。
津和野は萩と同じく旅の拠点として人気が高く、JR山口線を使えば萩からのアクセスもよいため、サイクリストにとって周遊しやすいエリアとなっています。坂の多い地形ですが、近年は電動アシスト自転車の整備が進んでおり、体力に自信がない方でも楽に巡れる環境が整いました。
津和野で訪れたい主要スポット
太鼓谷稲成神社は、日本五大稲荷の一つに数えられる神社で、津和野のシンボル的存在です。約1000本の朱色の鳥居が連なる「千本鳥居」は圧倒的な迫力と美しさを誇り、フォトスポットとしても人気を集めています。急坂を自転車で上った先に広がるこの光景は、サイクリストたちが訪れる定番スポットになっています。
殿町通りは津和野の中心部を貫く目抜き通りで、明治から大正にかけての史跡が並びます。通り沿いの小川にはハート模様が見えるほどの大きな鯉が泳いでおり、地元の人々に大切に育てられている光景は津和野ならではの風物詩です。津和野カトリック教会(乙女峠マリア聖堂)は、長崎から送られた潜伏キリシタンの殉教地として知られる津和野に建つ西洋ゴシック建築の教会で、城下町の景観に溶け込む独特の雰囲気を醸し出しています。
森鷗外記念館は、近代文学の大家・森鷗外の生家に隣接して建てられた記念館で、鷗外の生涯と作品を紹介しています。安野光雅美術館では津和野出身の水彩画家・安野光雅の作品を展示しており、やわらかな色彩と繊細な線で描かれた絵本や風景画がサイクリングの疲れを癒してくれます。
津和野のレンタサイクル事情
津和野ではレンタサイクルが充実しています。JR津和野駅前にある「かまい商店」では100台もの自転車を用意しており、手荷物の無料預かりサービスも提供しています。2025年には電動アシスト自転車のレンタルも本格化し、坂の多い津和野の街を楽に走れる環境が整いました。さらにシェアサイクル「COGICOGI(コギコギ)」も津和野で利用でき、選択肢が広がっています。
津和野はJR山口線沿線にあり、萩から山を越えて津和野に至るサイクリングルートは、阿武川の上流部を遡りながら長門峡の美しい渓谷(重塀岩や龍宮淵など)を眺めつつ峠を越えるコースです。距離はやや長く、上り基調が続くため体力が必要となりますが、美しい緑と山、渓流と田んぼ、ちょっとした峠の景色が楽しめる、達成感の大きいルートとして知られています。
益田市─雪舟の里と清流高津川を自転車で堪能
益田市は、自然景観と歴史的・文化的資産が豊かに共存する島根県西部の中心都市です。室町時代に活躍した水墨画の大家・雪舟がこの地に縁深く、雪舟が作庭したとされる日本庭園が市内に2か所現存していることで知られています。また、万葉集で著名な歌人・柿本人麻呂を祀る高津柿本神社の本社もここ益田にあります。
益田市は近年「自転車のまち益田」として積極的なまちづくりを推進しており、住民と観光客の誰もが自転車を利用しやすい環境の整備に力を入れています。全国レベルの自転車競技大会が開催されるなど、スポーツサイクリングの拠点としての位置づけも強まっています。
益田市の3つのサイクリングコース
益田市のサイクリングコースは初心者からベテランまで多彩で、目的や体力に合わせて選択できます。下記の表は主要3コースの比較です。
| コース名 | 距離 | 獲得標高 | 対象レベル |
|---|---|---|---|
| 中世益田満喫コース | 16.8km | 61m | 初心者・ファミリー |
| 高津川源流ライドコース | 137.1km | 2,049m | 中上級者 |
| 広域コース | 約101km | 標高差あり | 中上級者 |
中世益田満喫コースは比較的穏やかなコースで、市内の歴史的な観光スポットを中心に巡るルートです。雪舟が作庭した庭園で知られる「医光寺」「萬福寺」、全国に広がる柿本神社の本社「高津柿本神社」、益田氏の館跡や七尾城跡など、中世の歴史を物語る場所を自転車でゆっくり訪ねることができます。
高津川源流ライドコースは、国土交通省の水質調査で「清流日本一」に輝いたこともある美しい高津川の源流を目指す本格的なコースで、スタート・ゴールは萩・石見空港です。河口から水源地までの全長81kmの川沿いを走るこのルートは、益田市の大自然を全身で感じられるダイナミックな体験を提供します。約101kmの広域コースは、海も山も川も楽しめる益田市全体を走るルートで、標高差もあり達成感のある挑戦的な内容となっています。
益田市のレンタサイクルとサポート体制
益田市観光協会のレンタサイクルは市内で利用可能で、料金は普通自転車が3時間まで550円、電動アシスト自転車が3時間まで770円という手頃な価格設定です。サイクリング中は手荷物の預かりも550円で利用できます。
益田市では「サイクリストサポート企業」制度を設け、市内の協力店舗がパンク修理や空気入れ、休憩スペースの提供など、サイクリストに向けたサービスを提供しています。市が積極的に自転車まちづくりを推進しているため、ルート案内や施設の整備も着実に進んでいます。
萩・津和野・益田を結ぶ広域サイクリングルート
この三つの個性的な街を結ぶ広域サイクリングルートとして、最も注目されているのが「岩国錦帯橋空港〜萩・石見空港」間を自転車でつなぐ約130kmのルートです。このコースは岩国市・益田市・吉賀町・津和野町の4市町をまたぎ、錦川と高津川という二本の清流沿いを走る雄大な行程となっています。
前半は緩やかな上り基調が続きますが、水源公園からは下り基調に転じ、川沿いをスピード感をもって走ることができます。道中には道の駅や滝など自然や文化を体験できる観光スポットが点在しており、適度に休憩をとりながら楽しめます。
より具体的に各区間を見ると、萩市を起点に阿武川を上流へ向かい、長門峡の渓谷美を楽しみながら津和野町へ抜けるコースが人気です。萩から津和野までは山間部を越える峠道を含む上り基調のルートで走り応えがある一方、中国山地の豊かな森と渓流景観が楽しめます。津和野から益田へは国道9号線(山陰街道沿い)を北西に進む形で、比較的走りやすい平坦区間が多くなります。高津川の清流と石見地方の里山風景を楽しみながら、益田市内へと到着するルートです。
全行程を通しで走る場合の総距離は概ね100〜140km程度となり、標高差も含めると1〜2日以上かけて走るのが一般的です。体力や時間に合わせて各区間を個別に楽しむことも可能で、萩・石見空港をベースにサイクルツアーに参加するという選択肢もあります。
サイクリングのベストシーズンと注意点
この地域でサイクリングを楽しむ最適な季節は、春(3〜5月)と秋(9〜11月)です。春は桜の名所である萩城跡指月公園の花見サイクリングや、山間部の新緑が美しい時期です。津和野の町は春の光に照らされた石畳が美しく、特に桜の季節には多くのサイクリストが訪れます。
秋は紅葉シーズンで、高津川源流周辺の山々が色づく様子は格別です。長門峡も紅葉の名所として知られており、渓流と紅葉が織りなす風景の中を走るサイクリングは格別の体験となります。夏は山間部では比較的涼しく走れますが、日本海側の海岸沿いは日差しが強いため、熱中症対策が必須です。冬は山間部を中心に積雪があり、峠越えルートは通行が困難になる場合があります。
サイクリング時の注意点としては、この地域の道路は一般的な公道であり交通量に注意が必要であることが挙げられます。とくに国道9号線などの幹線道路では、大型車両の通行にも配慮が求められます。山間部の峠越えでは急勾配区間があるため、電動アシスト自転車の利用や、無理のないペース配分が重要です。
各市町のレンタサイクルは事前予約が安心で、繁忙期(ゴールデンウィーク、お盆、紅葉シーズン)は早めの予約が推奨されます。日本海沿岸は風が強い日もあるため天候確認は必須で、山間部では携帯電話の電波が届きにくいエリアもあるため、地図や情報は事前にダウンロードしておくと安心です。
吉田松陰と松下村塾─萩が育てた明治維新の人材
萩市でのサイクリングで特に深く知っておきたいのが、松下村塾の歴史です。松下村塾は吉田松陰(1830〜1859年)が主宰した私塾で、天保元年(1830)に萩藩士杉百合之助の次男として生まれた松陰は、6歳の時に叔父・吉田大助の養子となり家督を継ぎました。
嘉永6年(1853)に浦賀へ来航したペリーの黒船艦隊を目の当たりにした松陰は大きな衝撃を受け、翌年にはペリーの艦船に乗り込んでアメリカへの渡航を直訴するも拒絶されました。安政2年(1855)に獄を出て杉家宅での幽閉中に家族や近隣の子弟たちへ講義を始めた松陰は、やがて杉家の庭先の小屋を改装して塾舎とします。これが現在も松陰神社境内に保存される松下村塾です。
松陰の教育方針は階級や身分を問わない開放的なもので、議論を重視した教育によって多くの逸材が育ちました。高杉晋作・伊藤博文・山縣有朋・久坂玄瑞・木戸孝允など、後の明治維新と日本近代化を担う人材が次々と輩出されています。松下村塾は2015年に「明治日本の産業革命遺産」の構成資産として世界遺産に登録され、現在も松陰神社の境内に当時の姿をとどめています。
サイクリングで松陰神社を訪れた際には、境内にある「吉田松陰歴史館」も合わせて見学することがお勧めです。松陰の短くも波乱に満ちた生涯が20の場面に分けられた蝋人形で再現されており、日本近代史の重要な一ページをわかりやすく体感できます(営業時間9:00〜17:00、一般500円)。
益田INAKAライドと地域の自転車イベント
益田エリアでは毎年9月初旬に「益田INAKAライド」が開催されています。「信号がほぼゼロの田舎道100km」をキャッチフレーズとし、萩・石見空港の現役滑走路を実際に走れるという全国でも珍しい体験が人気を呼んでいます。
このイベントは4km・25km・60km・100km・135km・160kmといった多彩なコース設定があり、初心者のファミリーから上級ロードレーサーまで幅広い参加者が楽しめる設計となっています。日本海の海岸線から中国山地の匹見峡まで、益田の多彩な地形をダイナミックに体験できるイベントとして、県内外のサイクリストから注目を集めています。
島根県内では「しまねサイクリングNavi」が各種サイクリングイベントの情報をまとめて提供しており、初心者向けの体験ツーリングからハードなロングライドイベントまで、年間を通じてさまざまな企画が行われています。萩・石見空港を発着点とするサイクルツアーも複数設定されており、飛行機で現地へアクセスしてそのままサイクリングを楽しめる利便性の高い旅のスタイルが定着してきています。
この地域ならではの食と文化の楽しみ方
サイクリングの楽しみは走ることだけではなく、萩・津和野・益田には地域ならではのグルメや文化体験も豊富に用意されています。萩市では日本海の新鮮な海の幸が自慢で、甘鯛(ぐじ)や萩焼でいただく料理が旅のアクセントになります。萩焼は素朴で温かみのある陶器として全国的に有名で、城下町の窯元巡りをサイクリングに組み込む旅人も多く見られます。
津和野では津和野名物の「源氏巻」(あんこ入りの焼き菓子)が有名で、津和野の銘酒や地元の山菜料理なども楽しめます。津和野の町家には趣のある宿も点在しており、走り疲れた体を癒してくれる宿泊環境が整っています。益田市では高津川で採れる清流の鮎(アユ)が名物で、夏から秋にかけては鮎料理を提供する店が多く見られます。雪舟の庭園を見学した後に地元のカフェや食事処でひと休みするのも、サイクリング旅ならではの贅沢な過ごし方です。
石見神楽も忘れてはなりません。島根県西部(石見地方)に伝わる伝統芸能である石見神楽は、豪快で華やかな衣装と力強い舞が特徴で、益田市内をはじめ地域各所で定期的に上演されています。サイクリング旅の締めくくりに石見神楽を鑑賞することで、この地方の文化をより深く体験できます。
萩・津和野・益田を巡る1泊2日モデルコース
萩・津和野・益田を自転車で楽しむ旅は、体力や日数によってさまざまなスタイルで計画できます。ここでは中級者向けの1泊2日モデルコースをご紹介します。
1日目は萩市内サイクリング(約15〜20km)からスタートします。東萩駅でレンタサイクルを借り、まず萩城跡指月公園と菊ヶ浜の海岸沿いを走って日本海の爽快感を味わいます。その後、城下町の路地に入り込み、木戸孝允旧宅・高杉晋作旧宅などの幕末志士ゆかりのスポットを巡ります。午後は松陰神社・松下村塾・吉田松陰歴史館を見学し、明治維新への理解を深めます。夕方は菊ヶ浜の夕日を眺めながら萩市内に宿泊するのが理想的です。
2日目は萩から益田または津和野への移動(約50〜80km)が中心となります。翌朝早めに出発し、高津川沿いの爽やかな道を南東方向へ走り益田市へ向かうルート(約55km)が定番です。あるいは、体力に自信がある方は山間部を越えて津和野方面へ向かうルートも選択可能です。益田では「中世益田満喫コース」の一部を走り、医光寺・萬福寺の雪舟庭園や高津柿本神社を見学します。萩・石見空港から帰途に就くことで、空路利用者にも利便性の高い旅のコースが完成します。
初心者には日帰り・津和野集中コースがお勧めです。JR津和野駅に到着後、駅前のかまい商店でレンタサイクルを借りて市内を90分〜2時間で一周するコースです。太鼓谷稲成神社への坂道を上って千本鳥居を体験し、殿町通りで鯉が泳ぐ水路沿いを流し、津和野カトリック教会と森鷗外記念館を訪ねるシンプルながら内容充実の行程です。電動アシスト自転車を選べば坂道もさほど苦にならず、観光初心者にも安心して楽しめます。
萩・津和野・益田へのアクセス方法
各市町へのアクセスは下表のとおりです。
| 目的地 | 鉄道 | 空路・車 |
|---|---|---|
| 萩市 | JR山陰本線「東萩駅」「萩駅」 | 萩・石見空港から車またはバスで約1時間 |
| 津和野町 | JR山口線「津和野駅」 | 中国自動車道「六日市IC」から国道187号経由で約30分 |
| 益田市 | JR山陰本線「益田駅」 | 萩・石見空港(ANA便就航)/浜田自動車道「浜田IC」から国道9号経由で約40分 |
益田と津和野の間はJR山口線または一般道で移動でき、距離は約35kmです。萩と益田の間はJR山陰本線で約60km(東萩〜益田間)となっています。サイクリング旅では、これらの区間を自転車で走りながら、必要に応じて電車を組み合わせる「サイクルトレイン」的な利用もお勧めです。
萩・石見空港はサイクリストにとって便利な拠点で、ANAが就航しており、羽田や大阪方面からのアクセスが可能です。輪行袋に自転車を収納して飛行機に持ち込めるため、自分の自転車を持参するサイクリストにも対応しています。
まとめ─山陰街道の旅を自転車で堪能する
萩・津和野・益田を結ぶ山陰街道沿いのサイクリングは、単なるスポーツの域を超えた深みのある旅です。幕末の志士たちが歩いた城下町、「山陰の小京都」と呼ばれる情緒あふれる町並み、雪舟の足跡が残る歴史と文化の街。これらの場所を自転車でゆっくり結ぶことで、観光バスや電車では味わえない風景の移ろいや、地域の人々との偶然の出会い、土地の空気感を肌で感じることができます。
清流・高津川の流れに沿ってペダルを漕ぎ、山陰の豊かな自然と歴史が重なる景色の中を走る体験は、日本のサイクリストにとって忘れられない一ページとなるでしょう。近年ではサイクリスト向けのインフラ整備も急速に進んでおり、初めてこの地を訪れる方でも安心して旅を楽しめる環境が整ってきています。
この地域は萩・益田・津和野の三市町が「萩・益田・津和野圏域広域連携観光交流推進協議会」を構成し、連携した観光振興に取り組んでいます。自転車を軸に三地域をつなぐ観光ルートの整備は、地域の活性化や移住促進にも貢献しており、単なる旅行スポットにとどまらない暮らしの魅力も発信しています。
萩が育んだ近代日本の夜明けの精神、津和野が守り続ける城下町の静謐な美、益田が誇る清流と中世文化の薫り。これら三つのまちを自転車でゆっくりと結ぶ旅は、現代の忙しい日常から一歩離れ、日本の歴史と自然と人の温かさを全身で受け取れる、かけがえのない経験となるはずです。山陰街道を風を切りながら走り、歴史の重みと大自然の美しさをたっぷりと堪能してください。








