北上花巻温泉自転車道は全長26.2km、桜と廃線跡とバラ園を巡る道

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北上市の桜の名所、北上展勝地から花巻市の花巻温泉まで、北上川に沿って北へ延びる自転車専用道路が北上花巻温泉自転車道です。正式名称は岩手県道501号北上花巻温泉自転車道線で、全長は26.2km、自動車と分離された専用区間で構成されているため、サイクリング初心者でも26kmという距離に挑戦しやすいコースになっています。桜の名所からバラ園、旧花巻電鉄の廃線跡、日帰り温泉まで、走る楽しさと観光の両方が詰まった岩手県内屈指のサイクリングロードといえるでしょう。ここではコースの成り立ちから区間ごとの見どころ、レンタサイクルの使い方、季節ごとの走りどころまで、実際に計画を立てる際に役立つ情報をまとめました。

目次

北上花巻温泉自転車道の距離は26.2km、高低差は89m

北上花巻温泉自転車道は、岩手県が管理する県道であり、道路法上は岩手県道501号北上花巻温泉自転車道線として位置づけられています。起点は北上市立花で、岩手県道14号一関北上線との交点にあたります。終点は花巻市湯本字中屋敷で、岩手県道37号花巻平泉線と交わる地点です。全線が開通したのは昭和50年、西暦でいえば1975年のことで、東北地方における自転車道整備の先駆けのひとつに数えられています。

コース全体の最大標高差は89m程度とされており、極端なアップダウンがあるわけではありません。ただし北上市側から花巻温泉側に向かうにつれて緩やかに標高が上がっていく地形のため、走る方向によって体感の負荷は変わってきます。北上展勝地から花巻温泉へ向かうルートはやや登り基調、逆に花巻温泉から北上展勝地へ向かうルートは下り基調で走りやすいと感じるサイクリストが多いようです。

走る方向で変わる体感の負荷

コースは大きく分けて、北上展勝地周辺の起点部、北上川左岸を遡る区間、花巻市街地に入る区間、旧花巻電鉄の廃線跡を通って花巻温泉へ向かう区間、そして花巻温泉の終点部という5つの区間で構成されています。前半の川沿い区間は平坦に近く、後半の廃線跡区間で緩やかな登りが続くという構成を頭に入れておくと、体力配分がしやすくなります。

旧花巻電鉄の廃線跡は1925年開業、1972年廃止の路線を活用

このコースの後半部分、花巻市街地から花巻温泉までの区間は、かつて実際に鉄道が走っていた線路跡を活用しています。花巻駅と花巻温泉駅を結んでいた花巻電鉄の鉄道線、通称花巻温泉線は、大正14年8月1日、西暦でいえば1925年に開業しました。西花巻と花巻温泉のあいだ約7.4kmを結んでいた路線で、途中には西花巻・花巻(電鉄花巻)・花巻グランド前・瀬川・北金矢・松山寺前・花巻温泉という駅が設けられていました。

市街地を走っていた軌道線、いわゆる路面電車区間は1969年に廃止され、続いて1972年2月16日には鉄道線区間も廃止となり、花巻電鉄の全路線がその歴史に幕を下ろしました。専用軌道として敷設されていた区間の多くが、廃止後にサイクリングロードへと生まれ変わっています。線路そのものは撤去されているものの、市街地の一部には当時のコンクリート製の橋脚が今も残されているといいます。

馬面電車デハ3形は材木町公園で保存中

花巻電鉄の車両のなかでも特に知られているのが、独特な前面形状から馬面電車の愛称で親しまれたデハ3形です。この車両はJR花巻駅に近い材木町公園内で、屋根付きの構造物と金網に囲まれた状態で保存されています。サイクリングの前後に花巻駅周辺へ立ち寄る機会があれば、あわせて見学してみると、今走っている道の歴史をより具体的にイメージできるはずです。

起点の北上展勝地は桜と歴史散策が同時に楽しめる

北上花巻温泉自転車道のスタート地点となる北上展勝地は、青森県弘前公園、秋田県角館とともにみちのく三大桜名所のひとつに数えられ、さくら名所100選にも選ばれている東北を代表する桜の名所です。北上川沿いに広がる展勝地公園は293haという広大な敷地を持ち、園内には約150種、1万本ともいわれる桜が植えられています。樹齢100年を超すソメイヨシノの並木が北上川沿いに約2kmにわたって続く光景は見応えがあり、川沿いの桜並木を高台から見渡せる陣ヶ丘も人気のスポットです。

さくらまつりは2026年4月10日から4月29日まで開催

例年、桜の見頃に合わせて北上展勝地さくらまつりが開催されます。2026年は4月10日の金曜日から4月29日の祝日まで、20日間にわたって行われました。満開の桜並木のなかを観光馬車が走り、夜間にはライトアップされた桜が北上川の川面に映し出される光景も楽しめる期間です。さくらまつり期間中には、珊瑚橋の下流に約150匹の鯉のぼりが掲揚されるイベントも行われ、桜と鯉のぼりを同時に楽しめる時期として人気を集めています。桜の季節に限らず、新緑や紅葉の季節もそれぞれ違った表情を見せてくれるため、季節を変えて何度も訪れる価値があるスポットです。

サトウハチロー記念館や北上市立博物館にも立ち寄れる

北上展勝地の敷地内やその周辺には、サイクリングの前後に立ち寄りたい文化施設がいくつも点在しています。童謡「ちいさい秋みつけた」の作詞で知られる詩人サトウハチローの疎開先が北上市であった縁から、直筆原稿や愛用品を展示するサトウハチロー記念館が建てられています。北上地域の歴史や民俗、自然に関する展示を行う北上市立博物館も見逃せません。江戸時代から昭和初期にかけての古民家を移築復元した野外博物館、みちのく民俗村もあり、茅葺き屋根の建物が立ち並ぶ様子は写真好きのサイクリストにとって魅力的な被写体になるでしょう。

北上展勝地へのアクセスは、電車の場合JR北上駅から徒歩約30分、またはタクシーで約10分、料金の目安は1500円程度です。桜の満開時期の土日には無料シャトルバスが運行されることもあります。車の場合は東北自動車道の北上江釣子ICまたは北上金ケ崎ICから約15分。JR北上駅から自転車道の起点までは2.3kmから2.5km程度とされており、駅からサイクリングを始める場合もそれほど距離はかかりません。

北上川沿いの区間から花巻市街地へ

北上展勝地を出発すると、コースはしばらく北上川の左岸に沿って北へ進みます。岩手県内でも屈指の一級河川である北上川の流れを間近に感じながら走れる、開放感のある区間です。基本的に平坦から緩やかな勾配で構成されているため、川風を受けながらペダルを漕ぎ進められます。季節によって表情を変える川辺の景色や遠くの山並み、田んぼの緑や稲穂の色づきなど、四季折々の岩手の自然を楽しめるのがこの区間ならではの魅力です。自転車専用道路のため自動車との接触を心配する必要は少ないものの、対向のサイクリストや歩行者との接触には注意しながら走行することが大切です。

北上川沿いの区間を抜けると、コースは花巻市街地へと入っていきます。花巻は宮沢賢治の生誕地として知られ、市内には賢治にまつわる文学碑や記念施設が点在しています。市街地区間では信号や交差点が増えるため、川沿いの区間とは違って周囲の交通状況への注意が必要です。一方で飲食店やコンビニエンスストアも多く、補給や休憩をとりやすいエリアでもあります。時間に余裕があれば、宮沢賢治記念館や宮沢賢治童話村など、賢治ゆかりのスポットに立ち寄ってみるのもおすすめです。

花巻電鉄廃線跡区間は登り基調の直線コース

花巻市街地を抜けた先、花巻温泉までの区間は、このコースのなかでも特に個性が際立つ区間です。廃線跡特有の特徴として、この区間は登り基調の緩やかな勾配がほぼ北北東方向へ一直線に続きます。かつて路面電車がこの勾配を登って花巻温泉へ向かっていたことを思うと、ペダルを漕ぎながら鉄道時代の歴史に思いを馳せられる、味わい深い区間といえるでしょう。

鉄道の廃線跡を活用したサイクリングロードは全国各地に存在しますが、その多くは緩やかなカーブや一定の勾配といった鉄道特有の線形をそのまま活かしているのが特徴です。北上花巻温泉自転車道のこの区間も例外ではなく、鉄道ファンとサイクリング愛好者の双方から支持を集めています。沿線には当時の面影を残す構造物や地名が今も残っている場所があり、花巻電鉄の痕跡を探しながら走るのも、このコースならではの楽しみ方です。

終点の花巻温泉ではバラ園と宮沢賢治設計の花壇が出迎える

26kmの道のりを走りきった先で迎えてくれるのが、岩手県を代表する温泉地のひとつ、花巻温泉です。シンボル的な存在といえるのが花巻温泉バラ園で、約6000株、450種類ものバラが植えられた広大な庭園です。開花期間は6月中旬から10月上旬にかけてで、7月下旬にあたる現在も見頃が続いています。このバラ園で品種改良され、新品種として認定されたバラもあるといい、バラ愛好家にとっても見応えのあるスポットです。

6000株450種のバラは季節によって入園料が変わる

バラの最盛期には花巻温泉バラ園まつりが開催されるほか、5月下旬から10月下旬にかけてはライトアップが行われるナイトローズガーデンも開催されています。日中とはまた違った雰囲気のなかでバラを楽しめるナイトイベントとして人気です。営業時間や入園料金は時期によって変わるため、訪問前に最新情報を確認しておくと安心です。目安は次の表のとおりです。

期間入園料金の目安
5月下旬〜7月上旬800円程度
7月上旬〜10月下旬500円程度
それ以外の時期無料開放

日中営業はおおむね8時から18時まで、ナイトローズガーデンは18時から20時30分までの営業時間となっています(いずれも例年5月下旬から9月上旬頃の目安)。

南斜花壇と日時計花壇に賢治の設計思想が残る

花巻温泉バラ園がひときわ特別なのは、園内の花壇そのものに宮沢賢治の設計が息づいている点です。1927年、花巻温泉遊園地の緑化にあたり、宮沢賢治が花壇のデザインを手がけることになりました。賢治は連日のように花巻温泉に通い、花壇の設計や庭造りの指導に情熱を注いだと伝えられています。

代表格が南斜花壇です。かつて賢治が設計した南斜花壇があった場所には、1958年に着工し1960年に開園した花巻温泉バラ園が広がっています。蔓草の茎を園路に、果実を小円形の花壇に見立てるという唐草模様を取り入れたデザインで、左右対称に構成されているのが特徴です。もうひとつの見どころが日時計花壇で、1927年当時は紅葉館の前庭に設けられていましたが、1976年に現在地へ移設されました。文字盤の数字を花で描いた異国風のデザインは、当時の姿のまま今も花巻温泉バラ園内で見られます。

そして何より、26kmを走り終えた体を癒してくれるのが花巻温泉の湯です。複数のホテルが立ち並び、それぞれ趣の異なる日帰り入浴を楽しめます。露天風呂やつぼ湯など施設ごとに特色ある温泉が用意されているため、好みに応じて選べます。花巻温泉へのアクセスは、車の場合花巻ICから約4km、時間にして約5分程度。電車の場合はJR新花巻駅またはJR花巻駅から無料送迎バスが運行されており、所要時間は約20分から30分です。

レンタサイクルは北上観光コンベンション協会で借りられる

自分の自転車を用意するのが難しい場合は、レンタサイクルの利用が便利です。北上観光コンベンション協会では、観光やサイクリング、買い物などさまざまな用途に対応できる自転車の貸し出しを行っています。営業時間は月・火・水・木・金曜日が9時から17時まで、日曜・土曜・祝日も営業しているとされており、平日休日を問わず利用しやすい体制です。輪行の準備をせずに気軽にサイクリングロードを楽しめるうえ、北上駅からのアクセスも良好なため、電車で北上市を訪れてそのままレンタサイクルでスタートする旅程も組みやすくなっています。事前に台数や車種、料金、返却場所などの詳細を確認しておくとスムーズです。

片道なら北上展勝地発、往復なら52kmが目安

北上展勝地から花巻温泉に向かうルートは緩やかな登り基調、花巻温泉から北上展勝地に向かうルートは下り基調になる傾向があります。体力に自信がない方や家族連れでのんびり走りたい方は、花巻温泉から北上展勝地方面へ向かうか、北上展勝地から花巻温泉まで走ってそこから電車やバスで戻る片道プランを検討するとよいでしょう。往復52kmを一日で走破するのは、サイクリング初心者にはやや距離があるため、体力や経験に応じて無理のない計画を立てることが大切です。

具体的なプラン例を挙げると、次の3パターンが考えられます。

プラン走行距離想定所要時間
日帰り片道プラン約26km半日〜1日
桜シーズン限定プラン約26km半日〜1日
往復健脚プラン約52km1日

日帰り片道プランは、JR北上駅からレンタサイクルを利用して北上展勝地周辺を散策したあと、自転車道を北上して花巻市街地を経由し、廃線跡区間を通って花巻温泉へ向かう行程です。バラ園を見学し、日帰り温泉で汗を流したあとは、JR新花巻駅または花巻駅まで無料送迎バスを利用し、電車で北上駅へ戻ります。桜シーズン限定プランは、4月のさくらまつり期間に合わせて満開の桜並木を楽しんでから花巻温泉方面へ走る行程です。往復健脚プランは、サイクリング経験者や体力に自信のある方向けに、北上展勝地から花巻温泉まで走り、そのまま同じ道を折り返すルートで、行きと帰りで異なる印象の景色を楽しめます。

桜は4月、紅葉は9月下旬から見頃を迎える

北上花巻温泉自転車道を走るのに適しているのは、春の4月から5月、そして秋の9月下旬から11月にかけてです。春は北上展勝地の桜が見頃を迎える時期で、川沿いの道を走りながらウグイスのさえずりが聞こえることもあります。気温も走行に適した涼しさで、長距離を走っても快適に感じられるでしょう。

秋は紅葉のシーズンで、岩手県内の紅葉は例年9月下旬から11月下旬にかけて見頃を迎えます。北上川沿いの木々や周辺の山々が色づく様子を眺めながらのサイクリングは、春とはまた違った趣があります。ただし秋は朝晩の冷え込みが強まる時期でもあり、山間部との寒暖差が大きくなるため、ウィンドブレーカーなどを携行しておくと安心です。夏場は北上展勝地から花巻温泉までの区間に日陰の少ない開けた道も多いため、こまめな水分補給と休憩を心がけたいところです。冬季は積雪や路面凍結のリスクがあるため、サイクリングにはあまり向きません。訪問のタイミングを選べるなら、春または秋に計画を立てるのがよさそうです。

自転車専用道路とはいえ、交差点部分では一般道と交差する箇所もあるため、交通標識や信号をしっかり確認しながら走行することが求められます。他のサイクリストや散歩、ジョギングをする歩行者とも道を共有することになるため、譲り合いの気持ちを持って走りたいところです。

持ち物の基本はヘルメットと飲料水

快適に走るための持ち物として、まず基本になるのがヘルメットです。自転車専用道路とはいえ転倒のリスクはゼロではないため、着用を心がけたいところです。次に飲料水で、特に夏場は想像以上に汗をかくため、多めに携行しておくと安心です。輪行で訪れる場合は、輪行袋や工具類、パンク修理キットも忘れずに準備しておきましょう。全長26kmという距離は、途中で自転車店を見つけるのが難しい区間もあるため、最低限のトラブル対応ができる装備があると心強いです。

服装は季節に応じたウェア選びが重要です。春や秋は朝晩と日中の気温差が大きいため、脱ぎ着しやすいウィンドブレーカーやアームカバーを用意しておくとよいでしょう。花巻温泉をゴールに設定するプランでは、日帰り入浴用のタオルや着替えを持参しておくと、温泉でしっかり汗を流してから帰路につけます。地図やナビゲーションはスマートフォンのサイクリングアプリやGPS機能を活用すると便利です。自転車道自体は一本道に近い構成のため道に迷う心配は少ないものの、市街地区間では分岐や信号も増えるため、事前にルートを確認しておくとスムーズに走行できます。

盛岡矢巾自転車道や遠野東和自転車道との違いは二つの観光拠点を結ぶ点

岩手県内には北上花巻温泉自転車道のほかにも、県が整備する大規模自転車道がいくつか存在します。代表的なものとして盛岡矢巾自転車道や遠野東和自転車道が挙げられ、いずれも自転車専用道路として整備されており、自動車の往来を気にせず走れる点が共通の魅力です。

そのなかでも北上花巻温泉自転車道は、桜の名所である北上展勝地と、バラ園や温泉が楽しめる花巻温泉という、観光地としての完成度が高い二つの拠点を結んでいる点が際立った特徴です。単純に走行を楽しむだけでなく、出発地と到着地それぞれで異なる魅力を味わえる点は、他の自転車道と比べても強みといえそうです。旧花巻電鉄の廃線跡を活用しているという歴史的な背景も、このコースならではの個性になっています。花巻市はわんこそばの発祥地としても知られており、サイクリングで消費したエネルギーを地元グルメで補給するのも旅の楽しみのひとつです。北上市側では鬼剣舞などの郷土芸能や、北上川流域ならではの食文化も魅力になっています。

岩手の自然と鉄道の歴史、そして温泉を一度に味わえるルートとして、北上花巻温泉自転車道は季節や体力、目的に応じてルートやプランをアレンジしながら楽しめるコースです。次の休日の計画に、この26kmのサイクリングロードを候補に入れてみてはどうでしょうか。

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