宮城県道227号仙台亘理自転車道線は、仙台市宮城野区の岩切から阿武隈川の河口近くにある亘理町まで、太平洋沿岸を縦断する自転車・歩行者専用道路です。総延長は約43kmで、宮城県内に整備されたサイクリングロードとしては最長の規模を誇ります。仙台駅から数駅の岩切駅を起点に、車道をほとんど気にせず亘理駅まで走り抜けられる点が、このコースの一番の価値だといえます。七北田川沿いの土手道から貞山運河のほとり、そして太平洋を望む防潮堤沿いへと、走るごとに景色が入れ替わっていきます。加えて、震災復興の歩みそのものを映す道でもあり、はらこ飯やいちごといった沿線グルメまで楽しめる、宮城のロングライドを代表するルートです。

総延長43kmは資料によって43.7kmとも記載される
仙台亘理自転車道の距離は、資料によって「約43km」とするものと「43.7km」とするものがあり、区間の取り方で数字に幅が出ています。どちらの数値を採用するにしても、日帰りで走り切るにはそれなりの体力と時間配分が必要なロングディスタンスであることに変わりはありません。起点は仙台市宮城野区の岩切大橋付近で、七北田川の右岸堤防に沿って東へ進み、河口付近で進路を南へ変えます。そこから先はおおむね太平洋の海岸線に沿って南下し、亘理郡亘理町、阿武隈川の河口付近で終点を迎えます。
太平洋沿岸区間は東日本大震災の津波被害から2019年までに復旧
この道を語るうえで欠かせないのが、東日本大震災との関わりです。太平洋沿いを走る区間は、2011年3月の震災で発生した津波によって堤防や路面そのものが流失し、長らく通行できない状態が続きました。宮城県は堤防の再建と合わせて自転車道の復旧工事を進め、仙台市内の区間については2019年までにおおむね再舗装が完了し、一本のサイクリングロードとして通しで走れるようになりました。
復旧は一度に完了したわけではなく、区間ごとに段階を踏んで進みました。名取市内の高砂橋から閖上大橋にかけての区間は2019年6月に開通し、仙台市内から名取市方面へつながる区間が大きく前進しています。震災遺構や防潮堤沿いを走りながら目にする景色は、単なる観光資源であると同時に、震災の記憶を伝える場でもあります。写真を撮る際やコースの案内表示を読む際には、この背景を意識しておきたいところです。
コースは七北田川・貞山運河・太平洋沿岸の3区間で構成される
地形の特徴から見ていくと、仙台亘理自転車道はおおむね3つの区間に分けて捉えられます。区間ごとの特徴を整理すると、次のようになります。
| 区間 | 主なエリア | 特徴 |
|---|---|---|
| 七北田川区間 | 岩切〜蒲生 | 川沿いの土手道で見通しがよく、序盤からペースを作りやすい |
| 貞山運河区間 | 蒲生〜荒浜〜名取・岩沼 | 江戸時代からの運河沿いを走る、静かで趣のある区間 |
| 太平洋沿岸・阿武隈川区間 | 岩沼〜亘理 | 防潮堤沿いのオープンな景観と震災伝承施設が続く終盤区間 |
七北田川区間では、川が仙台平野に入り河口へ近づくあたりに蒲生干潟が広がります。多くの渡り鳥が飛来する自然豊かなエリアで、序盤のハイライトのひとつです。貞山運河区間は、江戸時代から明治時代にかけて整備された運河のほとりを走る区間で、水面を眺めながらのんびり進めます。太平洋沿岸・阿武隈川区間に入ると、道はより海に近づき、震災遺構の旧荒浜小学校や復興のシンボルである千年希望の丘が点在するようになります。さらに南下すると阿武隈川が近づき、河口部の景観を楽しみながら亘理町側の終点へたどり着きます。
なお、太平洋沿岸区間の一部は、環境省が設定した「みちのく潮風トレイル」のルートとも重なっています。青森県八戸市から福島県相馬市までの4県29市町村を結ぶ、全長1,000キロを超える徒歩旅行者向けのロングトレイルで、名取市の閖上地区には拠点となる名取トレイルセンターが置かれています。自転車で走っていても、トレイルを歩く旅行者とすれ違う場面があるはずです。
起点の岩切には国史跡の岩切城跡が残る
仙台市宮城野区にあるJR岩切駅周辺が実質的なスタート地点です。駅前には比較的広いスペースがあり、輪行(自転車を分解・袋詰めして電車で運ぶこと)に不慣れな人でも作業がしやすいと紹介されています。仙台駅からJR東北本線・利府線で数駅というアクセスの良さも魅力のひとつです。
岩切の地名は、この地に築かれた岩切城の歴史と結びついています。岩切城は仙台市宮城野区岩切から利府町にまたがる丘陵に築かれた大規模な山城で、中心部は東西約600メートル、南北約650メートルにおよび、国の史跡に指定されています。標高約106メートルの最高所からは七北田川流域の平野を一望でき、鎌倉時代には奥州藤原氏滅亡後にこの地の留守職に任じられた伊沢家景(留守氏)が拠点を構え、七北田川の水運を活かした東北地方の要衝として栄えました。現在は杉林や雑木林に囲まれ、堀や土塁の跡が残る史跡公園として整備されており、桜の名所としても知られています。サイクリングの本編に入る前に、こうした歴史に触れてみるのもよいでしょう。
蒲生干潟ではコアジサシが2016年以降に営巣を再開
七北田川の河口に広がる蒲生干潟には、シギやチドリ、コクガンなど多くの渡り鳥が飛来します。貝類やカニといった底生生物の宝庫でもあり、都市部に近いながらも豊かな生態系を維持してきたエリアです。東日本大震災の津波によって地形や環境は大きく変化し、一時は生態系への深刻な影響が懸念されました。それでも砂浜の回復とともに干潟の環境は少しずつ戻り、コクガンなどの渡り鳥が再び観測されるようになっています。
絶滅危惧種に指定されているコアジサシは、1990年を最後に営巣が途絶えていましたが、2016年以降は飛来・営巣・ふ化・巣立ちが確認されるようになりました。蒲生干潟自然再生協議会など地域住民やNPO、専門家が連携した保全活動が続けられており、繁殖期には立ち入りに配慮を促す看板が設置されるなど、自然保護と利用を両立させる取り組みが進んでいます。今では静かなバードウォッチングスポットとして親しまれています。
貞山運河は総延長46.4kmの日本最長の運河
貞山運河は江戸時代に開削された木曳堀を起源とし、明治期に貞山運河・東名運河・北上運河として整備された、総延長46.4キロメートルにおよぶ日本最長の運河です。かつては阿武隈川河口から松島湾・塩釜湾方面までを結ぶ舟運ルートとして機能していました。「貞山」という名称は、この運河の礎を築いたとされる仙台藩祖・伊達政宗の法名にちなんで、明治時代に名付けられています。
多賀城市域を通る蒲生から塩釜湾にかけての区間はかつて「御舟入堀」とも呼ばれ、江戸時代の万治年間から寛文年間にかけて段階的に掘り進められました。この運河が完成したことで、仙台藩領北部の物資を陸路に頼らず仙台城下まで運べるようになり、藩の経済を支える大動脈としての役割を果たしてきました。水路沿いをのんびり走れるこの区間は、仙台亘理自転車道の中でも落ち着いた雰囲気を味わえる一角です。
震災遺構仙台市立荒浜小学校は27時間で全員救出
仙台市若林区荒浜地区にある震災遺構、仙台市立荒浜小学校は、津波の被害をそのままの姿で伝える施設です。東日本大震災の際、この校舎には児童や教職員、周辺住民など320人が避難し、一時は屋上で孤立状態となりましたが、地震発生から27時間後に全員が無事救出されました。
館内は、津波によって損傷した姿をそのまま保存・展示している1階から2階部分と、被害を受けなかった4階の展示室とに分かれています。4階では被災当日の様子を伝える映像や、震災前の地区の姿、避難所生活の様子などがパネルや資料で紹介されています。中でも、地震発生から避難者全員の救出までの27時間を消防ヘリの映像やインタビューでまとめた約17分の記録映像は、見ておきたいコンテンツのひとつです。屋上に上がれば、津波で大きく姿を変えた荒浜地区の現在の風景と、被災前の写真を見比べることもできます。海岸に近いコース沿いに位置しているため、立ち寄るサイクリストは少なくありません。
千年希望の丘は震災がれき57万4千トンを盛土に活用
岩沼市の沿岸部に整備された千年希望の丘は、復興のシンボルとなる公園群です。市内で発生した震災がれきの約9割にあたる、およそ57万4千トンを盛土の材料としてリサイクルし、避難の丘と防災林を兼ねた6つの公園を南北約10kmにわたって配置しています。慰霊、震災の記憶の伝承、防災教育という3つの役割を担う場所で、交流センターでは写真やパネル展示、映像上映も行われています。
交流センターではレンタサイクルも利用できるため、千年希望の丘一帯や、石造りの倉庫が震災遺構として残る二の倉公園、岩沼羊たちの村などを自転車で巡ることも可能です。仙台空港からも約800メートルの距離にあり、空路で訪れる場合の立ち寄りやすさも備えています。
深沼海岸は仙台市中心部から東へ約10kmの景勝地
荒浜地区の南に位置する深沼海岸は、仙台市中心部から東へ約10キロメートルの距離にあり、古くから仙台市民に親しまれてきた海岸です。詩人・島崎藤村の詩「潮音」の舞台になったとも伝えられる、風光明媚な海岸線として知られています。震災による被害を経て、現在は美しい砂浜が広がる姿を取り戻しており、コースの中盤で潮風とともに開放的な太平洋の眺めを楽しめる区間のひとつです。
閖上地区は震災前に約5,500人が暮らした港町
名取市の沿岸部に位置する閖上は、江戸時代には仙台藩直轄の港町として栄えた歴史あるエリアです。震災前にはおよそ5,500人が暮らす漁師町でしたが、津波によって壊滅的な被害を受けました。現在は「閖上さいかい市場」をはじめとする商業施設が整備され、朝市や海鮮グルメを目当てに多くの観光客が訪れるエリアとして復興を遂げています。前述のみちのく潮風トレイルの名取トレイルセンターもこの近くにあり、コースの中間地点における休憩・補給ポイントとして立ち寄る価値のある場所です。
阿武隈川河口は岩沼市と亘理町の境界に位置する
コース終盤、岩沼市と亘理町の境界付近では、阿武隈川が太平洋に注ぐ様子を間近に眺められます。阿武隈川は福島県から宮城県にかけて流れる東北有数の大河川で、この河口部の景観は、ロングライドの疲れを癒やしてくれる終盤のハイライトです。43kmという距離を走ってきた実感を、この大河川の広がりとともに味わえる場所だといえます。
終点亘理町は伊達成実が44年治めた城下町
亘理町は「東北の湘南」とも呼ばれる温暖な気候の町で、東北一のいちご産地としても知られています。町内には鳥の海と呼ばれる、太平洋に面した汽水湖(海水と淡水が混ざり合う湖)があり、渡り鳥や海鳥たちの生息地として、また漁港や海水浴場が隣接する景勝地として親しまれています。
終点となる亘理町は、江戸時代に伊達政宗の重臣であった伊達成実が治めた城下町を起源としています。成実は慶長7年(1602年)に亘理に入り初代亘理領主となって以来、35歳から79歳で没するまでの44年間にわたってこの地を治め、亘理要害と呼ばれた城郭の改修や城下の整備、治水・新田開発・塩田開発などを通じて、今日の亘理町の基礎を築いた人物とされています。以後、成実の子孫は亘理伊達家として明治維新まで代々この地を治めました。現在、かつての本丸跡には成実を祀る亘理神社が建立され、本丸南側の内堀跡は旧舘公園として整備されています。自転車道のゴール後に、こうした城下町としての歴史に触れる散策を組み合わせるのもよいでしょう。
その鳥の海のほとりにあるのが「わたり温泉 鳥の海」です。弱アルカリ性の天然温泉を備えた日帰り入浴・宿泊施設で、東には太平洋、牡鹿半島や金華山を望み、西には蔵王連峰を望むことができる立地です。震災の影響で一時休業していましたが、2018年4月にリニューアルオープンしました。最上階となる5階には展望風呂が設けられており、牡鹿半島・金華山と太平洋を望む檜の露天風呂(東の湯)と、鳥の海と蔵王連峰を望む岩風呂(西の湯)が男女日替わりで利用できる構成です。レストランでは仙台・秋保温泉のホテル佐勘出身のシェフが手がける、地元市場から仕入れた旬の食材を使った料理や、ボリューム満点の丼ものなどが味わえます。43kmを走り切ったあとに立ち寄るご褒美の場所として、覚えておいて損はありません。
アクセスは岩切駅と亘理駅の輪行が基本ルート
仙台方面から向かう場合、起点の岩切へはJR東北本線・利府線の岩切駅が最寄りです。仙台駅からは数駅程度で到着でき、駅前スペースにも余裕があるため、輪行袋を使って自転車を運んできた場合の組み立て・分解もしやすい環境が整っています。
終点側の亘理町へは、JR常磐線の亘理駅が最寄り駅です。仙台方面からサイクリングで亘理まで走り切ったあと、亘理駅から輪行で仙台方面へ戻るのが定番のルート取りです。逆に亘理駅からスタートし、岩切・仙台方面へ向けて北上するプランも組めます。
コース全体が自転車・歩行者専用道として整備されているため、走行中に自動車と混在する場面は基本的に多くありません。ただし、コースが県道など一般道路と交差・並走する箇所もあり、たとえば県道8号線の橋は交通量が多いうえに道幅が狭いため、無理に車道を走らず歩道を徐行しながら渡ることがすすめられています。また名取川から七北田川にかけての区間は防潮堤沿いの道が続き、路面が舗装路とは限らない箇所もありますが、その分視界の開けた海辺のサイクリングを楽しめる区間でもあります。
レンタサイクルは亘理駅の「ワチャリ」が3時間500円から
現地でレンタサイクルを利用したい場合、亘理町観光協会がJR亘理駅で運営する「ワチャリ」というサービスがあります。料金体系や車種は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 車種 | 電動アシスト付きシティタイプ8台、ミニベロタイプ2台 |
| 料金 | 3時間500円から、宿泊を伴う利用で2,000円程度のプランあり |
| 営業時間 | 7時から19時まで、年中無休 |
| 延長料金 | 超過1時間あたり200円 |
| 申し込み場所 | 亘理駅西側の自転車等駐車場、管理人室 |
岩沼市側では、千年希望の丘交流センターでもレンタサイクルの貸し出しが行われており、周辺の公園群や震災遺構を自転車で巡れます。仙台市内から自走せず、現地までは電車で移動し、部分的にレンタサイクルで走るというプランを組むことも可能です。
はらこ飯は亘理町荒浜と岩沼市新浜地区が発祥
亘理町周辺は食の魅力も豊富なエリアです。特に有名なのが「はらこ飯」で、鮭の身とイクラを煮汁で炊き込んだご飯は、宮城県の郷土料理として広く知られています。ホッキ貝を使った「ほっき飯」や、複数の魚介を盛り込んだ三色丼なども、比較的手ごろな価格で味わえるご当地グルメです。
はらこ飯の発祥は、亘理町荒浜と、阿武隈川を挟んで対岸に位置する岩沼市新浜地区にあるとされています。亘理町は古くから鮭の水揚げで知られる漁師町で、江戸時代には阿武隈川に遡上してくる鮭を地引網で獲る漁が盛んに行われていました。「はらこ」とはこの地方でイクラを指す言葉で、鮭の腹にある子、つまり「腹子」に由来するといわれています。仙台藩主・伊達政宗が荒浜の運河工事を視察した際、地元の漁師が振る舞ったのが始まりという逸話も伝わっており、もともとは阿武隈川の恵みを活かした漁師飯として親しまれてきた料理です。自転車道の終点付近を流れる阿武隈川と切り離せない、土地の歴史が詰まった一品といえます。
いちごは東北一の生産地、旬は12月から翌年5月
亘理町は温暖な気候から「東北の湘南」とも呼ばれ、いちご栽培に適した土地として知られています。東北一のいちご生産地とされ、収穫されたいちごの多くは「仙台いちご」として出荷されています。栽培されている品種は「とちおとめ」や「もういっこ」などが中心で、「いちごランド こうちゃん園」をはじめ、いちご狩りをゆっくり楽しめる観光農園が町内に点在しています。シーズンはおおむね12月から翌年5月頃までと長く、コースの終盤にサイクリングの疲れを癒やす休憩として立ち寄るのもおすすめです。
さらに珍しい特産品として、本州では亘理町でしか栽培されていないとされる「アセロラ」があります。もともと南米原産のアセロラは気温5度を下回ると枯れてしまうため、寒さの厳しい東日本での栽培は難しいとされてきました。亘理町でのアセロラ栽培は、親戚がブラジルへ渡ったことをきっかけに土産として持ち帰られたことから始まったとされ、1994年から生産者が本格的な試験栽培に着手し、日本の気候に合った酸味種を中心に、1997年から本格的な栽培がスタートしました。1998年には東京・大田市場への出荷が始まり、東日本で唯一の産地として注目を集めるようになります。東日本大震災の津波では栽培施設も大きな被害を受けましたが、その後の復旧によって生産は震災前の7割以上にまで回復しています。寒冷な東北でアセロラの生果実を味わえるのは全国的にも珍しく、亘理町ならではの特産品です。
防潮堤沿いの区間は太めタイヤが安心
コースの大部分は自転車・歩行者専用道として整備されていますが、区間によって路面状況に差があります。防潮堤沿いの区間などでは、舗装が整っていない箇所や、風の影響を受けやすい開けた地形もあるため、太めのタイヤやある程度の走破性を備えた車体だと安心です。
また、県道など一般道路と交差する橋などの区間では交通量が多くなる場所もあるため、無理をせず歩道を利用する、徐行するといった配慮が必要です。海沿いの区間は日差しや潮風を遮るものが少ないため、季節を問わず紫外線対策や水分補給をこまめに行うことも大切です。特に夏場は熱中症対策として、飲料や休憩ポイントの確認をしておくと安心です。コース中には震災遺構や慰霊の意味を持つ施設も含まれています。写真撮影やマナーの面でも、周辺住民や見学者への配慮を心がけたいところです。
43kmを走り切るには飲料2本と携帯工具が必須
43kmというロングディスタンスを海沿いの日陰の少ない道で走ることになるため、装備面でもいくつか準備しておきたいポイントがあります。
コース上には要所要所にコンビニエンスストアや観光施設がありますが、区間によっては商店が少ない区間も続きます。ボトル2本分程度の飲料に加え、行動食を携行しておくと安心です。専用道とはいえ、路面には砂や小石、震災復旧区間特有の継ぎ目などもあるため、パンク修理キットや携帯ポンプ、簡易工具は必携です。周辺は住宅地から離れる区間もあり、自転車店がすぐには見つからない場所もあります。
海沿いの区間は日差しと潮風を遮るものがほとんどありません。日焼け止めやアームカバー、帽子やサングラスに加えて、海からの風が強い日にはウィンドブレーカーがあると体温調整がしやすくなります。岩切駅・亘理駅のどちらから出発してもゴール後は電車での帰路が基本となるため、普段から輪行に慣れていない場合は、事前に自宅や公園などで一度練習してから臨むと当日スムーズです。コースはおおむね一本道で分かりやすいものの、市街地を抜ける区間や震災復旧区間では迂回が必要な箇所もあります。スマートフォンの地図アプリやGPSサイクルコンピューターを使う場合は、長時間の使用に備えてモバイルバッテリーを用意しておくと安心です。
おすすめの季節は風が穏やかな春と秋
海沿いの開けた景色を存分に楽しめるという特性上、風が比較的穏やかで気候の良い春や秋がサイクリングには特におすすめの時期です。桜や新緑の季節、あるいは空気が澄んで遠くまで見通せる秋は、川沿い、運河沿い、海沿いと表情を変えていくコースの魅力を味わえます。
一方で、亘理町のいちご狩りシーズン(おおむね12月から翌年5月頃まで)に合わせて訪れれば、サイクリングとグルメ体験を組み合わせた小旅行として楽しめます。全長43kmというロングディスタンスを一日で走り切るのはもちろん、岩切から荒浜、荒浜から亘理といった具合に区間を分割し、複数回に分けて踏破していくスタイルもおすすめです。輪行に対応した岩切駅・亘理駅という起点・終点の駅がそれぞれ用意されているため、体力や時間に応じてプランを組みやすいのも、このコースの実用的な魅力のひとつです。
震災復興・伝承みやぎルートの主要区間に位置づけ
仙台亘理自転車道は、単独のサイクリングロードとしてだけでなく、宮城県が推進する広域的なサイクルツーリズムの一部としても位置づけられています。国や県、沿岸自治体などで構成される宮城サイクルツーリズム推進協議会は、震災の記憶を伝えながら沿岸部を巡る「震災復興・伝承みやぎルート」というサイクリングマップを整備しており、仙台亘理自転車道もこのルート構想に含まれる主要な区間のひとつです。名取市など沿線の自治体でも、このルートを軸にした独自のサイクリングコース紹介やレンタサイクル整備が進められています。
宮城県では、石巻市から南三陸町方面にかけての沿岸部を舞台にした「ツール・ド・東北」という大規模なサイクリングイベントも毎年開催されています。震災遺構や被災地の記憶を伝える場所を巡りながら走るという趣旨は、仙台亘理自転車道が持つ性格とも重なる部分です。内陸に目を向ければ、蔵王連峰の山岳路を駆け上がる「蔵王ヒルクライム」のようにアップダウンを楽しむイベントもあり、平坦基調の海沿いを走る仙台亘理自転車道とはまた異なる魅力を持つコースとして走り比べられています。信号や自動車との交錯が少なく、初心者や体力に自信のない人でも距離を分割しながら走破を目指せる点は、こうした山岳系のヒルクライムイベントとは対照的な、仙台亘理自転車道ならではの強みです。
仙台亘理自転車道は、七北田川、貞山運河、太平洋沿岸、そして阿武隈川河口という水辺の風景を一本の専用道でつなぐ、宮城県内最長・約43kmのサイクリングロードです。景観の美しさだけでなく、東日本大震災からの復旧・復興の歴史を色濃く反映した道でもあり、蒲生干潟のような自然、荒浜小学校や千年希望の丘のような震災伝承施設、亘理町のいちごやはらこ飯といった食の魅力までが一本のルートに詰まっています。仙台駅からのアクセスも良好で、岩切駅・亘理駅という輪行しやすい起終点が用意されていることから、初めてロングライドに挑戦する人から、宮城県の海岸線をじっくり走り込みたい経験者まで楽しめるコースです。天候やシーズンを選び、無理のない計画で走ってみてはどうでしょうか。








