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涸沼(ひぬま)は、茨城県の茨城町と鉾田市、大洗町にまたがる汽水湖です。湖のまわりを自転車で回ると、走る距離は22kmから24km前後になります。湖岸には茨城大洗自転車道線(涸沼自転車道)という一般県道が通り、奥野谷を出発点に湖を回るルートは全長22.3kmです。
自転車を持っていなくても、鹿島臨海鉄道大洗鹿島線の涸沼駅で借りれば、その場から走り出せます。
涸沼は2015年5月にラムサール条約の登録湿地になった湖で、冬は湖面にカモの群れが浮かびます。ただ、ルートには湖畔ののどかな道だけでなく、交通量の多い道路も含まれます。

涸沼を回るルートは全長22.3km、うち約3割が交通量の多い道路
湖岸を自転車で回るときに走るのが、茨城大洗自転車道線です。涸沼自転車道とも呼ばれるこの道は、茨城県の一般県道に指定されています。
ルートを記録して共有するサイトのBikemapに載っている涸沼自転車道は、奥野谷がスタート地点で、距離は全長22.3kmです。
舗装路でも車に注意して走る区間がある
このルートは舗装された道路でできていますが、その中には交通量の多い道路が含まれていて、割合は全体の約3割にのぼります。景色を眺めながらゆっくり流せる区間ばかりではなく、車に注意して走らなければならない区間があります。
公園と温泉を休憩地点にできる
一周の途中には、公園、展望スポット、キャンプ場、温泉施設が点々と並んでいるので、立ち寄りながら走る計画を立てやすい湖です。
自転車がなくても涸沼駅でレンタサイクルを借りられる
涸沼駅は鹿島臨海鉄道の大洗鹿島線にあり、1985年に路線が開業したのと同時にできた駅です。駅舎は青く、涸沼観光センターが併設されています。
茨城県の2026年版の案内では、鉾田市にある涸沼駅のレンタサイクルは次の条件です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 台数 | 14台(うち電動アシスト付き4台) |
| 貸出時間 | 9時から15時まで |
| 返却期限 | 16時まで |
| 料金(通常の自転車) | 1回1台200円 |
| 料金(電動アシスト付き) | 1台1,000円 |
涸沼駅のほかに、網掛公園の管理事務所にも貸し自転車があります。
茨城町の湖岸は筑波山を望む広浦公園と親沢公園が見どころ
茨城町の湖岸には、広浦公園と親沢公園、それに涸沼水鳥・湿地センターがあります。
広浦公園は水戸八景「広浦秋月」の地
広浦公園は筑波山を望む名勝で、晴れていれば湖越しに山の姿が見えます。湖に面しているので、釣りもできます。水戸八景に数えられる広浦秋月の碑は、園内のキャンプ場に建っています。
水戸八景は、水戸藩第9代藩主の徳川斉昭が選んだ8か所の景勝地です。「八景」という形のもとは中国の瀟湘八景で、地元の景色を選んで名前をつける風習が日本各地に広がりました。茨城の水戸八景もその1つです。江戸末期の嘉永元年(1848年)、水戸徳川家に納める菓子の絵形「水府八景」にも、広浦秋月は名を連ねています。
写真撮影のガイドは、9月から10月ごろに筑波山の方角の湖面へ月が映り込む景色を、見どころに挙げています。
キャンプ場は予約制です。窓口は涸沼自然公園管理事務所で、使いたい月の2カ月前から申し込めます。
親沢公園は夕日と砂浜の公園
親沢公園は、キャンプにもバーベキューにも使える公園です。砂浜は水深が浅くて広さもあり、訪れた人の口コミには、のんびり水遊びができたという声があります。日が傾くと湖の向こうに筑波山の姿が浮かぶ、夕日の絶景スポットでもあります。
涸沼水鳥・湿地センターは入館無料で双眼鏡も無料
茨城町下石崎の涸沼水鳥・湿地センターは、涸沼の歴史と生きものを展示で紹介する施設で、入館は無料です。館内には小型の水族館やハンズオン展示があり、昔ながらのシジミ漁を体験できるコーナーも用意されています。湖を見渡せるデッキと、40名まで入れるレクチャールームもあります。
開館は午前9時から午後4時30分までです。毎週月曜日(祝日か振替休日にあたるときは翌日)と年末年始は休館します。双眼鏡は無料で貸し出しています。
休憩はいこいの村涸沼の温泉か網掛公園の高台で
湖岸には、ほかにも休憩に使える場所がそろっています。涸沼自然公園や夕日の郷松川、涸沼ヨットハーバーも、湖岸に整備された施設です。
いこいの村涸沼は日帰り入浴とランチができる
いこいの村涸沼には涸沼温泉があり、湖を眺められる展望大浴場は日帰りでも入浴できます。レストランではランチを出していて、ヤマトシジミのしじみ汁も味わえます。敷地にはパターゴルフ場とわんぱくプールもあります。
網掛公園の太陽の広場から湖を一望
網掛公園は湖畔の起伏をそのまま生かした公園で、散策路と木道が通っています。高台の太陽の広場に上がると、涸沼の全体が見渡せます。園内には、野鳥を観察するための台も設けられています。
キャンプ場は涸沼自然公園とサンセット松川
中石崎の涸沼自然公園キャンプ場には屋根付きのバーベキューハウスがあり、日帰りでも使えます。園内の大型複合遊具は、キャンプ場に泊まる人なら無料で遊べます。
大洗町の夕日の郷松川でも、バーベキューとキャンプを楽しめます。キャンプ場は2025年4月にサンセット松川キャンプ場としてリニューアルし、料金体系の見直しで以前より使いやすくなったと案内されています。
涸沼は約6,000年前の入り江が海と切り離されてできた汽水湖
涸沼の水は、海の水と川の水が混じった汽水です。汽水とは、塩分の濃さが海水と淡水のあいだにある水を指し、汽水をたたえた湖を汽水湖と呼びます。環境省は涸沼を「関東地方唯一の汽水湖」と表現しています。
満潮のたびに海水が湖までさかのぼる
汽水が生まれるのは、川を通じて海とつながっているからです。那珂川の支流である涸沼川が北西の端から湖に入り、湖の東北端から出た涸沼川は、もう一度那珂川に合流します。そこから約10km先が太平洋です。このため満潮になると海水が川を逆流して湖まで入り込み、淡水と混ざります。
海水の塩分は約35パーミル(千分率)です。汽水湖の塩分は、海水と川の水がどんな割合で混ざるかによって、広い範囲で変わります。湖に流れ込む川は涸沼川だけではなく、涸沼前川や寛政川、大谷川、石川川なども注いでいます。流れ込んだ水が湖にとどまる日数は、平均すると約50日です。
縄文海進のころは海の入り江だった
約6,000年前、涸沼の場所は海の入り江でした。当時は、氷期のあとの温暖化で海面が上がり、海水が内陸深くまで入り込んだ縄文海進の時代で、海面は現在を約2mから3m上回っていたとされます。関東平野で海面がもっとも高かった時期は6,500年前から5,500年前です。関東平野では台地の縁をたどるように内陸まで貝塚が見つかっていて、縄文海進という呼び名はここから付きました。
やがて気温が下がって海面が引くと、那珂川の自然堤防(川の氾濫で運ばれた土砂が河道の両側に積もってできた微高地)の働きで下流に土砂がたまり、涸沼川の下流が海から切り離されました。こうして入り江が湖に変わったのが涸沼です。
海跡湖としての涸沼
海跡湖とは、もとは海の入り江だった場所が海と分かれて湖になったもので、今も海とつながっている湖も含みます。涸沼も海跡湖の1つです。日本の海跡湖では、湖岸の地形が主に完新世の海水準変動によってでき、最近の2,000年ほどは人間の手も加わって形が変わってきたとされます。
平均水深2.1mの浅く細長い湖
涸沼の面積は935ヘクタール(9.35平方キロメートル)あり、深さは平均2.1m、いちばん深いところでも約6.5mです。形は東西に細長く、浅い湖なので湖面が広く開けて見えます。
2015年5月にラムサール条約に登録、冬はスズガモ約5,000羽が飛来
涸沼がラムサール条約の登録湿地になったのは2015年5月です。登録基準は2、4、6の3つで、保護の制度としては国指定鳥獣保護区特別保護地区にあたります。国指定鳥獣保護区は狩猟が禁止された区域で、特別保護地区はその中でも、鳥獣とその生息地を特に守る必要がある区域です。
ラムサール条約は水鳥の生息地を守る国際条約
ラムサール条約の正式名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」です。国際的に大切な湿地とそこにすむ動植物を守り、湿地を賢く持続的に使う「ワイズユース」を広めることを目的にしています。
冬に走るならカモの群れが見どころ
涸沼では、これまでに88種以上の鳥類が確認されています。冬はマガモやスズガモなどのカモ類がたくさん越冬し、なかでもスズガモは毎年5,000羽ほどが飛来します。この数は東アジア地域個体群の1%を超えていて、涸沼は渡り鳥が冬を越す場所として大切な湖になっています。冬のサイクリングでは、湖面に浮かぶカモの群れも楽しみの1つです。
スズガモは潜って貝類をとるカモで、日本で姿を見られるのは主に10月から3月です。
鉾田市にも野鳥を観察するための観察棟があり、2階に望遠鏡が10台並んでいます。
汽水域にしかいないヒヌマイトトンボ
涸沼には、絶滅が危ぶまれているヒヌマイトトンボのすむヨシ原もあります。ヒヌマイトトンボは汽水域でしか見つかっていない特異なイトトンボです。暮らしているのは、ヨシのような抽水植物が生い茂る汽水の湿地や、河口付近のヨシ原です。オスは黄緑色に黒い斑があります。
国内の分布は本州と九州で、環境省のレッドリストで絶滅危惧IB類に分類されています。おもな脅威は、水位の低下でヨシ帯が水面から出てしまうことや水質の変化、それに開発と道路工事による生息地の消失です。
涸沼のヤマトシジミは手掻き漁で、12ミリ以下は採らない
涸沼は昔から漁業が盛んな湖で、ヤマトシジミやマハゼ、ワカサギの水産業が今も地域を支えています。涸沼と涸沼川は、全国でも有数のヤマトシジミの産地です。
動力を使わない「しじみかき」
涸沼のシジミは、動力を使わない「しじみかき」という手掻き漁で獲ります。長い柄のついた道具で川底のシジミを掻き起こしてカゴに入れ、水面でカゴを振って砂や小さな貝を落としてから船に上げます。カゴの目合い(網目の大きさ)は12ミリメートルと決まっていて、12ミリメートル以下の小さな貝は獲らずに漁場へ残します。陸に揚げたシジミは選別機にかけ、混じった貝殻や石を除いたうえで出荷します。
大涸沼漁協は漁獲量と操業時間を自ら制限
シジミを獲り尽くさないよう、大涸沼漁協は漁業者1人あたり1日の漁獲量、漁獲サイズ、操業時間を自ら制限しています。種苗の放流と清掃にも取り組んでいます。
ヤマトシジミが卵を産むのは6月下旬から9月ごろです。梅雨どきに雨が多くて湖水の塩分が薄まると、産卵が行われにくいとされています。
茨城の家庭ではシジミを酒蒸しに
茨城県の家庭料理では、シジミをニンニクと酒、醤油で酒蒸しにする食べ方が紹介されています。ほかにも、涸沼のシジミに地元の農産物を組み合わせた涸沼ワイルドミックスピザのレシピがあります。
走る前に広浦公園周辺の通行状況と施設の時間を確かめる
広浦公園のまわりの堤防を走るサイクリングコースは、震災の影響で通れない状態になったと茨城県が案内しています。公園と施設の営業時間も、レンタサイクルを借りられる時間も、変わる場合があるので、出かける前に各施設と茨城町、鉾田市、大洗町、茨城県の案内で最新の状況を見ておいてください。








