能登自転車道は、石川県が能登半島の海岸線を周遊する自転車道「能登半島絶景海道(GRANOTO)」として本格整備を進めているサイクリングコースです。2024年1月に発生した能登半島地震からの創造的復興のシンボルとして位置づけられ、総延長約250kmから300kmに及ぶ世界水準のサイクリングルートが2030年度の完成を目指して整備されています。このプロジェクトは単なる道路復旧ではなく、震災の記憶を刻みながら新たな観光資源を創出する取り組みとして、国内外のサイクリストから注目を集めています。
この記事では、能登半島絶景海道の構想内容から各サイクリングコースの特徴、E-bikeレンタル情報、そしてサイクリストを迎える宿泊施設やサポート体制まで、能登でのサイクリングを計画する上で必要な情報を詳しくお伝えします。震災後の道路状況や安全対策についても解説しますので、これから能登を自転車で旅したいと考えている方はぜひ参考にしてください。

能登半島絶景海道(GRANOTO)とは
能登半島絶景海道は、能登半島の沿岸部を走る国道249号や県道大谷狼煙飯田線などを中心とした周遊道路の総称であり、英語名称「Noto Grand Scenic Coastal Route」の頭文字を組み合わせた愛称「GRANOTO(グラノト)」として親しまれています。この名称は、壮大さを意味する「Grand」と「Noto(能登)」を融合させた造語です。金沢美術工芸大学との連携により開発されたロゴマークは、道路標識や広報媒体で統一的に使用され、訪れる人々に「特別な道を走っている」という高揚感を提供することを目指しています。
このプロジェクトが目指すのは、単に道路を舗装し直すことではありません。自転車、自動車、オートバイなど多様な移動手段を受け入れる世界水準のツーリングルートを形成することが目的です。能登半島は日本海に大きく突き出した地形を持ち、急峻な山々が海に落ち込むダイナミックな「外浦(そとうら)」と、富山湾に面し波穏やかな「内浦(うちうら)」という対照的な二つの海岸線を有しています。この地形的特性こそが、サイクリングという移動手段を通じて最もその魅力を発揮するのです。
古くから「能登の里山里海」として世界農業遺産に認定された豊かな文化的景観は、速度の速い自動車旅行では見落とされがちな微細な風景の機微を含んでいます。自転車のペダルを漕ぎながらゆっくりと進むことで、潮の香り、漁村の生活の音、季節ごとに変わる田畑の色彩といった五感に訴える体験が可能になります。石川県はこの地理的優位性を活かすべく、「いしかわ里山里海サイクリングルート」として総延長約630kmに及ぶ県内全域のネットワーク構想を進めており、能登半島はその中核を成すエリアとなっています。
能登自転車道の本格整備における創造的復興の方針
2024年1月1日に発生した能登半島地震は、この地域に甚大な被害をもたらしました。道路の寸断、土砂崩れ、そして最大4メートルにも及ぶ海岸隆起は、従来の観光資源を一変させました。しかし、この未曾有の災害は、単なる復旧にとどまらない新たな価値を創造する復興への転換点となりました。県が策定した「石川県創造的復興プラン」では、「能登が示す、ふるさとの未来」をスローガンに掲げ、震災の記憶を刻みつつ、より強靭で魅力的な地域社会を再構築する道筋が示されています。
GRANOTOの整備は4つの戦略的な方針に基づいて推進されています。第一は「能登の魅力をぐるっと周遊」することです。震災前から存在する「白米千枚田」や「揚げ浜式塩田」といった里山里海の資源に加え、震災によって隆起した海岸や崩落した景勝地などの「震災遺構(メモリアルパーツ)」を新たな観光資源として位置づけ、これらを繋ぐストーリー性のあるルートが構築されています。
第二は「道の駅を拠点としたネットワーク化」です。半島内に点在する道の駅を、単なる休憩所ではなく、サイクリストやドライバーの交流・情報発信拠点として機能強化しています。Wi-Fi環境の整備、サイクルラックや工具の配備、地域産品の提供機能の拡充が進められています。
第三は「サイクリング環境の高度化」です。国土交通省が指定する「ナショナルサイクルルート」への登録を見据え、走行空間の安全性と快適性を飛躍的に向上させる取り組みが行われています。矢羽根型路面表示(ブルーライン)の敷設、トンネル内における自転車通行帯の確保、橋梁の耐震補強と併せた路肩拡幅などが重点的に実施されています。
第四は「おもてなしの街道づくり」です。地域住民と連携し、沿道の景観保全活動や、震災の教訓を語り継ぐガイド機能の育成が行われています。ハード面の整備だけでなく、訪れる人々を温かく迎えるソフト面の充実も重要視されています。
整備スケジュールについて特筆すべき点があります。震災において、耐震化工事が完了していた区間では被害が軽微であったという実績を踏まえ、県は今後の整備計画を当初の予定より2年前倒しし、2030年度の全線完成を目指すと発表しました。これは、インフラの強靭化が地域の安全に直結することを示すとともに、観光復興を一日も早く成し遂げるという強い意志の表れです。
震災遺構を活用した新たな観光資源としてのサイクリングコース
能登半島地震は地形そのものを変容させ、海岸線の隆起は漁業や生活に甚大な影響を与えました。一方で、地球活動のエネルギーを可視化するジオ・ツーリズムの資源として、また防災教育の生きた教材としての価値が見出されています。サイクリストはこれらの場所を巡ることで、単なる観光客としてだけでなく、復興の目撃者・応援者として地域に関わることができます。
地震により、能登半島北部の外浦エリアを中心に、海岸線が最大で約4メートル隆起しました。これにより、かつて海面下にあった地形が露出し、陸地が沖合へ拡大するという劇的な景観変化が生じています。輪島市の「鴨ヶ浦(かもがうら)」では、かつて海水プールとして親しまれていた場所が完全に干上がり、白い岩肌が露出しています。「鹿磯(かいそ)漁港」や「黒島(くろしま)漁港」では、防波堤や岸壁が陸上に孤立し、海底が草原化しつつある場所さえ見られます。これらの風景は自然の力の凄まじさを無言のうちに物語っており、訪れるサイクリストに深い畏敬の念を抱かせます。
珠洲市のシンボルである「見附島(みつけじま)」も姿を変えました。別名「軍艦島」と呼ばれる威容は、地震の揺れによる一部崩落で形を変え、さらに周囲の海底隆起によって、干潮時には島まで歩いて渡れるほどの浅瀬が出現しています。かつて海に浮かんでいた島が、今は陸続きのように見える光景は、能登の地図が書き換わったことを象徴しています。
創造的復興プランでは、こうした被災箇所を隠すのではなく、「メモリアルパーツ」として保存・展示する方針が打ち出されています。珠洲市の「道の駅 すず塩田村」にある揚げ浜式塩田では、海岸の隆起によって波打ち際が遠のき、海水を汲み上げる作業が困難になりました。この現状をあえてそのまま見せることで、伝統製法を守り抜こうとする塩田職人の苦労と工夫、そして復興への執念を伝えるストーリーが生まれています。
輪島市の「白米千枚田(しろよねせんまいだ)」においても、棚田の一部に亀裂が入るなどの被害を受けましたが、修復過程そのものを観光コンテンツ化し、ボランティアや寄付を募りながら再生していくプロセスが公開されています。海に向かって小さな田が幾重にも重なる幾何学的な美しさを見せるこの場所は、夜間にはLEDによるイルミネーション「あぜのきらめき」が行われることもあり、幻想的な風景を楽しむことができます。
能登半島の主要サイクリングコース詳細ガイド
石川県が設定する「いしかわ里山里海サイクリングルート」のうち、能登半島を舞台とする主要コースについてご紹介します。それぞれのコースは異なる魅力を持ち、サイクリストの体力や興味に応じた選択が可能です。
奥能登ルート(ルートNo. 9-06)の魅力と走行ポイント
奥能登ルートは、輪島マリンタウンを起終点として半島先端部を一周する、総距離約163km、獲得標高1,800m超の最難関かつ最美のコースです。外浦と内浦の両方の表情を一度に味わえる贅沢なルートとして、国内外の健脚サイクリストに人気があります。
コース前半、日本海に面した外浦エリアは、断崖絶壁と奇岩が連続する男性的な景観が特徴です。「窓岩(まどいわ)」や「垂水の滝(たるみのたき)」などの名勝が続きますが、地震により窓岩の一部が崩落するなど、景観の変化が著しいエリアでもあります。アップダウンが激しく、特に海沿いから台地へと駆け上がる坂道はサイクリストの脚力を試します。
半島の先端に位置する禄剛崎灯台は、明治時代に建設された白亜の灯台であり、ここからは「海から昇る朝日」と「海に沈む夕陽」の両方を見ることができます。この場所は外浦と内浦の分水嶺であり、風の強さや海の表情が切り替わるポイントでもあります。
半島を折り返して富山湾側に入ると、海は驚くほど穏やかになります。リアス式海岸の入り江が連続する「九十九湾(つくもわん)」や、ボラ待ちやぐらが浮かぶ穴水湾など、漁村の生活が色濃く残る牧歌的な風景が広がります。「見附島」から「恋路海岸」にかけてのエリアは縁結びの伝説や美しい砂浜が続きますが、ここでも隆起による海岸線の変化を目の当たりにすることになります。
能登里浜ルート(ルートNo. 9-04)で体験する砂浜走行
能登里浜ルートは、内灘町から羽咋市に至る約34.5kmのルートで、最大の特徴は「千里浜(ちりはま)なぎさドライブウェイ」を走行できる点です。ここは日本で唯一、一般の自動車や自転車が波打ち際を約8kmにわたって走行可能な砂浜として知られています。
極めて粒子の細かい砂が海水を含んで硬く締まるため、ロードバイクの細いタイヤでも沈み込まずに走行できます。ただし、天候や砂の状態によって走行感は変わるため注意が必要です。波打ち際ギリギリを走る浮遊感と爽快感は、世界中のサイクリストを惹きつける特別な体験となっています。
コース沿いには「道の駅 のと千里浜」があり、無料の足湯やタイヤシャワー(塩分を洗い流すための設備)が利用できる場合があり、サイクリストへの配慮が行き届いています。砂浜を走った後は必ずチェーンや車体に付着した塩分を洗い流すことが大切です。
七尾湾ルート(ルートNo. 9-07)の橋梁と島めぐり
七尾湾ルートは、和倉温泉を拠点に能登島を一周する約70kmのコースです。能登島へと架かる「能登島大橋」と「ツインブリッジのと」は、海の上を空中散歩しているかのような絶景ポイントとなっています。ただし、橋の上は風が強く、大型車の通行もあるため走行には注意を要します。
七尾湾には野生のミナミバンドウイルカが生息しており、運が良ければ走行中に海面を跳ねる姿を目撃できることがあります。コース沿いには「のとじま水族館」や「能登島ガラス美術館」があり、文化的な立ち寄りスポットも充実しています。比較的平坦な区間が多く、初心者から中級者まで楽しめるコースとして人気があります。
羽咋・巌門里山ルート(ルートNo. 9-05)の廃線跡と断崖
羽咋・巌門里山ルートは、羽咋駅から志賀町の巌門を目指す約63kmのルートで、一部区間に旧北陸鉄道能登線の廃線跡を利用した「羽咋健民自転車道」が含まれます。廃線跡ならではの緩やかな勾配と、木漏れ日の中を走る快適さが魅力です。
海岸部に出ると「巌門」周辺の険しい地形が現れます。巌門は、波の浸食によって岩にぽっかりと穴が開いた洞門であり、遊覧船で海からその姿を眺めることも可能です。ただし、遊覧船の運航状況は事前に確認が必要です。里山と海岸の両方の景観を楽しめる変化に富んだコースとなっています。
能登自転車道の現在の道路状況と安全対策
震災から時間が経過し復旧は進んでいるものの、能登半島の道路状況は完全とは言い難い状態が続いています。特に、2024年9月の豪雨災害が追い打ちをかけたエリアもあり、サイクリングには慎重な計画と最新情報の入手が不可欠です。
国道249号や県道38号(輪島浦上線)など、外浦を走る主要幹線道路では、依然として通行止めや片側交互通行の区間が存在します。特に国道249号の一部区間(輪島市門前町道下~珠洲市上戸町北方)は、災害対策基本法に基づく「道路啓開区間」に指定されており、緊急車両や復旧工事車両の通行が最優先されています。この区間では一般車両や自転車の通行が制限される場合があるため、現地の誘導員の指示に必ず従ってください。
仮復旧された道路であっても、アスファルトの継ぎ目に段差があったり、路面にうねりが残っていたりする箇所が多数あります。ロードバイクで走行する際は、タイヤ幅を28c以上、できれば32c程度の太めのものにするか、グラベルロードを選択することが推奨されています。
安全なサイクリングのためには、出発前に公的情報源を確認することが重要です。「石川みち情報ネット」では、県管理道路の通行規制情報をリアルタイムで地図上に表示しており、冬期の積雪情報やライブカメラ映像も確認できます。また、奥能登2市2町(輪島市、珠洲市、能登町、穴水町)が発行する「通れるマップ」は、復旧進捗に合わせて随時更新されており、通行可能なルートを一目で把握するのに役立ちます。
能登半島のトンネルは、震災前より照明が暗い箇所や路肩が狭い箇所が存在しましたが、震災後の工事車両の増加により、トンネル内での危険性は高まっています。高輝度のリアライトとフロントライトの常時点灯、反射材ベストの着用など、被視認性を高める対策が必須です。トンネル内での落石や剥落の可能性も考慮し、ヘルメットの着用は絶対条件となります。
E-bikeレンタルと広域シェアサイクルの活用方法
起伏の激しい能登半島を体力に自信のない層でも楽しめるようにするための切り札が、E-bike(電動アシストスポーツ自転車)の導入と広域レンタルシステムの構築です。これにより、より多くの人が能登の絶景を自転車で堪能できる環境が整いつつあります。
金沢市内を中心に展開するシェアサイクル「まちのり」は、広域観光向けのサービスとして「BYUUN(ビューン)」を展開しています。BYUUNで貸し出されるのは、ブリヂストンサイクル製の高性能電動クロスバイク「TB1e」などが中心です。回生充電機能を持ち、エコモードであれば一回の充電で最大200km近い距離を走行可能とされており、金沢から能登への長距離移動にも十分対応できるスペックを備えています。
特筆すべきは、借りた場所とは異なる場所で返却できる「乗り捨てサービス」の実装です。通常、レンタサイクルは借りた店舗に返却する必要がありますが、BYUUNでは追加料金を支払うことで、和倉温泉、輪島市、珠洲市などの指定ポートでの返却が可能となっています。
例えば、金沢駅で自転車を借り、千里浜なぎさドライブウェイを経由して和倉温泉まで走り(約80km)、そこで自転車を乗り捨てて、帰路は特急列車で金沢に戻るといった柔軟な旅程が組めるようになりました。乗り捨て料金の目安は、和倉温泉エリアで約16,000円、輪島エリアで約23,000円(台数により変動あり)と安くはありませんが、回収コストを考慮すれば、片道サイクリングを実現する貴重な手段として価値があります。
現地で自転車を借りる場合、主要な拠点として「道の駅 輪島ふらっと訪夢」の「楽輪々(らくりんりん)」や「和倉温泉お祭り会館」などがあります。和倉温泉お祭り会館ではE-bikeやクロスバイクのレンタルを行っており、ヘルメットの貸出も行っています。ただし、震災の影響で休業中や営業形態が変更されている場合があるため、必ず事前の確認が必要です。特に「道の駅 すず塩田村」などでは季節営業や休止期間があり、冬季(11月~3月)は営業していないケースが多いです。
サイクリストを迎える宿泊施設とサポート体制
サイクリストにとって、愛車を安全に保管できる宿と、トラブル時に対応できるサポート施設の存在は、目的地選びの決定的な要因となります。能登には、自転車をそのまま客室に持ち込めたり、施錠可能なガレージを提供したりする「サイクリスト歓迎」の宿が増えています。
「能登イタリアンと発酵食の宿 ふらっと」(能登町)は、オーストラリア人シェフと能登出身の女将が営む宿で、能登の伝統的な発酵食(いしる等)とイタリアンを融合した料理が評判です。一日数組限定の小さな宿ですが、サイクリストへの理解が深く、能登の自然と食を深く味わいたい層に支持されています。
「春蘭の里」(能登町)は、古民家を活用した農家民宿群であり、囲炉裏を囲んだ食事や農業体験ができます。オーナーとの距離が近く、震災からの復興にかける生の声を聞くことができる貴重な場でもあります。自転車旅の疲れを癒やす日本の原風景がここにあります。
「温泉民宿 漁火」(輪島市)は、日本海を見下ろす高台にあり、新鮮な魚介料理が自慢です。震災後も営業を継続・再開しており、被災地支援の拠点としても機能しつつ、観光客を温かく迎えています。
道の駅や観光施設は「サイクルステーション」としての機能を拡充しています。これらの施設では、スポーツ自転車に対応したバイクラック(サドルを引っ掛けるタイプ)の設置、空気入れ(仏式・米式バルブ対応)、六角レンチやドライバーなどの簡易工具の貸出が行われています。
特に重要なのが「給水」と「トイレ」です。コンビニエンスストアが少ない奥能登エリアにおいて、これらのステーションは生命線となります。奥能登ルート上の「道の駅 千枚田ポケットパーク」や「イカの駅 つくモール」は、補給と休憩の要衝として機能しています。長距離を走る際は、事前にサイクルステーションの位置を確認し、補給計画を立てておくことが大切です。
能登のサイクリングイベント「ツール・ド・のと400」について
「ツール・ド・のと400」は、30年以上の歴史を持つ日本有数のロングライドイベントです。能登半島を3日間かけて一周するこの大会は、順位を競うレースではなく、完走を目指すサバイバルラリー形式で行われてきました。
2024年の震災を受け、開催が危ぶまれましたが、実行委員会と地元住民の熱意により、形態を変えながらも継続されています。2025年9月中旬には「第37回ツール・ド・のと400」が開催されました。
2025年の大会では、特別企画として「奥能登復興サイクル100」が併催されました。これは、被害の大きかった奥能登エリアを重点的に走行し、参加費の一部を義援金として寄付したり、エイドステーションで地元産品を消費したりすることで、直接的な経済支援を行うことを目的としたものです。
全国から集まるサイクリストが被災地を走ることは、物理的な支援だけでなく、「能登を忘れていない」というメッセージを届ける精神的な支援としての意味合いも強いです。参加者にとっても、復興の現状を肌で感じ、自身の体験として語り継ぐきっかけとなるイベントです。今後もこうしたイベントを通じて、能登とサイクリストの絆が深まっていくことが期待されています。
能登自転車道が目指す世界水準のサイクリングデスティネーション
能登半島自転車道「能登半島絶景海道(GRANOTO)」の整備は、単なる道路工事の枠を超え、能登という地域のアイデンティティを再構築する壮大な試みとなっています。震災によって失われたものも多いですが、隆起した海岸や、困難に立ち向かう人々の姿など、今しか見ることのできない「新たな絶景」と「物語」が生まれました。
2030年の完成を目指して加速するインフラ整備と、それを支えるE-bikeや宿泊施設などのソフトパワーの融合は、能登を世界水準のサイクリングデスティネーションへと押し上げていくでしょう。ナショナルサイクルルートへの登録を見据えた走行環境の高度化も着実に進んでいます。
サイクリストにとって、今、能登を走ることは特別な意味を持ちます。それは、美しい風景を楽しむ旅であると同時に、ペダルを回すその一漕ぎ一漕ぎが、能登の復興を前に進める力となるからです。外浦の荒々しい海岸線と内浦の穏やかな入り江、世界農業遺産に認定された里山里海の景観、そして震災を乗り越えようとする人々の営み。これらすべてが、能登でのサイクリングを唯一無二の体験にしています。
未完成の道を行くことこそが、創造的復興への参加そのものです。能登自転車道の本格整備が進む今、このサイクリングコースを訪れることは、日本の風景と文化、そして復興の物語に触れる貴重な機会となるでしょう。









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